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11月まで円高・株安が続くも、1ドル105円で一旦は下げ止まりか=長谷川雅一

いま市場では「さらなる円高が進む」との予想が大勢を占めているようです。実際、右を見ても左を見ても「円高材料」ばかりで、ドル高の余地など皆無に見えます。ただ、僕は「この先、一気に、さらなる円高が進む動きにはなりづらいのではないか」と見ています。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』長谷川雅一)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

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テクニカル的に115円まで反発の可能性、ただし戻りは一時的

連休明けが怖い?一時1ドル105円台をどう見るか

投資家にとっては「波乱のゴールデンウイーク」となりました。米ドル/円が一時、105.50円付近まで下落(円高に)。

本メルマガの2016年2月24日号で、僕は「円高のゴールは105円」と書きましたが、その予想が現実となりました。
円高の「ゴール」は105円 特に驚くこともない妥当水準を目指す=長谷川雅一

欧米の株式市場も、のきなみリスクオフの動きになっており、さえません。

日本の株式相場は「お休み」ですが、連休中も日経平均に連動する「シカゴ日経225先物」は動いており、一時15,800円付近まで下落しました。もちろん、急激な「円高」に連動しての下落でした。

4日(水)の段階で、米ドル/円は、いったん107.40円付近まで上昇する場面がありましたが、いぜんドル売りが優勢。

為替の影響を受けやすい日本株も、まだしばらく低迷する可能性がありそうです。「6日(金)の株価がどうなるか怖い」という方も、いらっしゃるでしょう。

予想できた日銀会合の「現状維持」

今回の円高のキッカケになったのは、言うまでもなく4月28日(木)に、日銀が、金融政策の現状維持を決めたことです。

でもこれ(日銀の現状維持)、実は予測が可能でした。事前に、本田内閣官房参与が、「4月の追加金融緩和はない。6月にやる」という主旨の発言をしていたからです。

この発言は、なぜか大きく報道されませんでしたが、細かくニュースをチェックしていれば、誰でもキャッチできた情報です。やはり、トレードをしている限り、ニュースチェックは怠れません。

株価は「単なるウワサ」で上昇していた

逆に、この「本田発言」の前に出た、出所のハッキリしない、「日銀が銀行への貸し出しにマイナス金利を付与する可能性あり」というニュースは、大々的に報道されました。

この「いかがわしい」情報(単なるウワサ?)で、28日のお昼まで、株、為替が上昇していたのです。
日銀プレー?ブルームバーグ報道を信じて狩られるのは個人投資家=長谷川雅一

そして、28日(木)の正午頃。日銀の「現状維持(追加金融緩和なし)」が発表されると、米ドル/円は一気に3円急落。日経平均も600円ほど急落しました。

ところが、株と為替の暴落は、これで終わりませんでした。そのあとさらに、さまざまな「悪材料」が飛び出したからです。

Next: ドル円を1円下落させた黒田総裁の爆笑会見/為替操作を始めたアメリカ



米ドル/円をさらに1円下落させた黒田総裁の「爆笑会見」

28日(木)の午後3時半過ぎから、日銀・黒田総裁の記者会見がありましたが、これが追加の「悪材料」となりました。

黒田総裁が、(いつものように)ヘラヘラ、ニタニタと笑いながら、時には声を上げて爆笑しながら、まったく緊張感のない記者会見を行ったのです。
黒田さん、「プライドの高い人たち」を怒らせると面倒ですよ=ショー

この「無責任」ともとれる黒田会見の影響で、さらに円高が進みました。「ダメだこりゃ」という「ドル売り、円買い」が出たのです。米ドル/円は、黒田総裁の記者会見が終わる頃までに、さらに1円下落。28日のうちに、4円も円高が進んでしまいました。

黒田総裁の「ウソ」は聞き飽きた

黒田総裁の口癖は、「金融政策はうまく行っている。景気も上向いている」です。要するに、公然と、平気で「ウソ」をつくわけです。

むしろ正直に、「全力でやっているが、思ったように効果が出ない。さらに方法を考えつつ、なんとかして効果を上げたい」とでも言った方が、マーケットは安心するでしょう。

3年間も「異次元の金融緩和」を続けてきたのに、まったくうまく行っていない。にもかかわらず、金融政策の要である黒田総裁が、「大丈夫だ」とヘラヘラ笑っている。投資家が「リスク回避」に動くのは当然でしょう。

黒田総裁にはまだ「任期」が残っているそうですが、もしもスポーツ選手なら、あるいは一般企業の社員なら、とっくに解雇でしょう。

いつも「上から目線」で、人を小馬鹿にしたような態度で記者会見する黒田総裁。安倍総理と同じで「自信満々」なのでしょう。せめて、もう少し謙虚に、真剣な表情で会見すべきでした。

「為替操作」を始めたアメリカ

さらに悪材料は続きます。29日になって、アメリカの財務相が、日本を、「為替操作の疑いがある国」として、為替政策の「監視対象国」にリストアップしたのです。
米「為替政策監視国」に指定された日本の自業自得と麻生財務相の勘違い=近藤駿介

先日も、ルー財務長官が、昨今の為替の動きに対して、「秩序的である」と、これ(ドル安)を容認する発言をしました。しかし、年初から20円近くも米ドル/円が下げているのです。誰がどう見ても「秩序的である」ハズがありません。

それに加えて「日本の監視リスト入り」です。しかも、よりによって、このタイミングで!為替相場がさらなる円高に動いたのは当然の反応です。

…というより、これは「計算ずく」の意図的な「ドル安誘導」でしょう。つまり、アメリカは、ルー財務長官の発言や、「監視対象国リスト」の発表などで、自国通貨「ドル」を意図的に安く誘導しているのです。

最近の一連の動きは、アメリカによる「為替操作」と言っていいでしょう。

Next: 「世界通貨安戦争」が始まった/米国が欲する矛盾した2つの果実



「世界通貨安戦争」が始まった

アメリカの大統領選挙の様子を見ているとわかりますが、今、アメリカは、「自国の利益のみを追求する姿勢」に傾いています。

極端な話、「アメリカ国民だけが幸せになればいいじゃないか」という感覚が強くなっているのです。

共和党で勝利を確実にしたトランプ氏も、次期大統領になるであろうクリントン氏も、クリントン氏を苦しめているサンダース氏も、同じような主旨の発言をしています。

「利上げ」と「ドル安」を両立させたい米国の狙い

今、アメリカは「利上げ」しようとしています。しかし、利上げをすれば、自国の通貨が上がってしまうという弊害が出ます。自国の利益を追求するためには「ドル安」にしなければならない。

「利上げ」しつつも「ドル高」にしないためには、他国の通貨安につながる政策を牽制すればいい、ということでしょう。

アメリカは「利上げ」と「通貨安」という矛盾する2つの果実を得るために、あからさまな「為替操作」をしかけてきたのではないか、と思います。

これまで、眠れるライオンのように、極端なドル高が進んでも黙っていたアメリカが、「ドル高は許さんぞ!」と吠えたのです。これは「世界通貨安戦争」の始まりと言ってもいいでしょう。

日本は今こそ、日本と同様「監視リスト」に加えられたドイツや韓国などと連携して、
「アメリカは、財務長官の発言や監視国リストの発表といった形で、自国通貨(ドル)を安く誘導しようと為替市場に圧力をかけている。こうした行為は間接的な『為替操作』ではないか?」
と、アメリカに抗議すべき状況かもしれません。

とどめを刺した「オーストラリアの利下げ」

さらにさらに、悪材料は続きます。5月3日に、オーストラリアが政策金利を2.0%から1.75%に引き下げたのです。

これは、豪ドルの価値を下げることになります。つまり、これも自国通貨(豪ドル)を安く誘導する「通貨安攻撃」です。

当然のごとく豪ドル/円は円高の方向に動き、米ドル/円も、その影響を受けました。これで「止めを刺された」かっこうになり、とうとう、105.50円付近まで円高が進んだのです。

現在は自律反発で、107円付近まで戻していますが、まだ下落(円高)の流れは止まっていません。

Next: 米ドル/円は105円付近でいったん下げ止まるか?しかし――



米ドル/円は105円付近でいったん下げ止まるか

さて、問題は「このあと」です。マーケットでは、「さらなる円高が進む」という予想が大勢を占めているようです。

実際、現在のところ、右を見ても左を見ても「円高材料」ばかりで、ドル円が上昇する(ドル高になる)余地など皆無に見えます。

ただ、僕は、「この先、一気に、さらなる円高が進む動きにはなりづらいのではないか」と見ています。

もちろん、米ドル/円の105円は、週足の200日移動平均線のラインであり、これは、「高くも安くもないレベル」ですので、さらなる円高が進む「余地」は十分にあります。

しかし、すでに年初から20円の下落です。「いくら何でも、短期間に下げすぎた」と思うのです。

テクニカル的に見て、このあとの下落スピードは、ゆるやかなものになる可能性がありますし、反発の可能性もあります。いったん反発が始まれば、テクニカル的には115円までの上昇がありえます。

つまり、「米ドル/円は、105円付近で、いったん下げ止まる可能性もある」と思うのです。ただし、アメリカの「ドル安政策」が明確である中、反発の上値は限られるでしょう。

日経平均も、14,000円付近まで下落する可能性をはらみながら、意外に「15,000円のサポートが強そうだ」と見ています。かといって、急騰急落が激しく、先が読みづらい。積極的に買える相場ではありません。

「明るい」相場展開は見えない

このあとの相場のイメージをまとめます。

もうしばらくは「円高、株安」の流れが続く。しかし、為替の105円付近、日経平均の15,000円割れ付近では下げ止まり、いったんは反発するのではないか。

ただし、反発があったとしても、それは「一時的な反発」で終わる可能性が高く、少なくとも11月まで「円高、株安」の流れは続きそうだ。

また、今回の米ドル円の下落が、このまま102円まで進む可能性を否定できないし、今年の後半、米ドル/円は90円まで下落しているかもしれないので要注意である。日経平均も14,000円までの下落は十分にありえる。

アメリカの景気減速がちらつく中、アメリカでは大統領選挙が終わる11月まで、積極的な投資をしようというムードになりづらいこと。原油価格は長期低迷しやすく、いぜん中国経済も怪しいこと。そんな中でイギリスのEU離脱問題もクローズアップされること。

こうした状況を見る限り、なかなか「明るい」相場展開は見えません。

Next: ジェットコースター相場は続く



ジェットコースター相場は続く

相場はいつも「同じ状態に飽きる」ものです。今のような「リスクオフ」も長くは続かず、やがてまた「リスクオン」が巡ってきます。そのとき相場は「リスクオン」の理由を探して、上昇の理由を「あと付け」します。

今後も「上がると思ったら下がり、下がると思ったら上がる」という、ジェットコースター相場が続きそうです。

そしてしばらくの間、アメリカの「参戦」によって幕を開けた「世界通貨安戦争」という「マネーの世界大戦」が、マーケットを大きく揺さぶり続けるのではないか、と思います。

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2016/5/4号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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