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ウクライナ戦争で米ドル覇権は失墜へ。ロシア制裁の「抜け道」となる人民元経済圏=今市太郎

西側諸国から経済制裁を受けているロシアですが、資源大国であるがゆえに、完全な取引停止を実行することは各国もできずにいます。ロシア資源は中国を通じて取引が継続される可能性があり、このことは世界の基軸通貨としてのドルの座を揺るがしかねない状況です。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

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制裁後も続くロシアの資源取引

ウクライナ情勢は依然として混沌としており、ロシアがどこを落としどころとしてくるのか、様々な憶測が飛び交いはじめています。

その一方で、西側諸国は結束して「SWIFT排除」を中心とした経済制裁を行い、ロシアを相当に傷めつけることとなっております。

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ロシアルーブルは急落し、中銀は為替介入もままならず、さらに下落の道を歩むであろうことは容易に予想できるところとなってきています。

ロシアルーブル/円 日足(SBI証券提供)

さらにロシアの債券の利払いや償還についても手出しができない状況に陥っており、来週にはとうとうデフォルトに陥ることが確実な情勢になってきています。

ただ、どれだけロシアを金融システム的に追い詰めても、世界有数の資源国であることは変えられません。

米国はひとりロシア原油の禁輸措置を打ち出していますが、欧州各国は必ずしも完全禁輸には賛同できていないようで、日本もサハリンの油田開発からは足抜けできない微妙な状況が続いています。

こうなるとSWIFT規制はしても、何らかの形でロシアとの取引が残る可能性は非常に高くなっており、ならば決済システムはいったいどうするのか?……という歪んだ問題が顕在化してくる状況です。

Next: 中国が味方する?ロシアに独自CIPSを開放か



中国はロシアに独自CIPSを開放か

ここで気になるのは、中国の存在です。

今のところ中国がロシアの戦争に加担するということはなさそうですが、この先、ひっそりと支援する可能性はあります。

というのも、中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム・CIPSを導入して実際に稼働しています。これには中国や欧米の大手金融機関のほか、日本勢からも三菱UFJ銀行とみずほ銀行の中国法人が同システムに接続できる状態を確立しています。

もちろん現状ではその利用額は限られているようですが、ロシアがSWIFTから締め出されても、欧州や他の国々との資源取引が続くことになるなら、すでに89カ国でも利用されているこの仕組みが台頭する可能性が出てくることになります。

これまで原油の決済といえば、ドル建てで米ドルを利用した取引が占有してきたのはご案内の通り。

しかし、今回のロシアの締め出しによって、リアルな原油取引市場はそうはならない危険性がかなり高くなりそうです。

米国にとっては、金融面でのロシア制裁は「痛しかゆし」の状況に陥ることが危惧されるところです。

米ドルの外貨準備が制限されるなら、そもそも中国は米国債を買わなくなる

米ドルは戦後、国際間での資本取引や貿易取引において広く使用される決済通貨として機能しており、基軸通貨の座を延々と守ってきたのは厳然たる事実です。

その座が維持されているがゆえに、各国とも外貨準備といえば世界のほぼ6割が米国債を購入してドルを確保してきたわけです。

しかし今回、ロシアは蓋を開けてみれば「金(ゴールド)」「ユーロ」へのシフトを非常に強めており、2018年あたりから米国債保有額を意識的に激減させています。
※参考:ロシア、米国債を大量売却 制裁強化を懸念か – 日本経済新聞(2022年3月9日配信)

こうした状況を傍で見ている中国が、同じような動きに出る可能性は否定できません。

そもそも原油・天然ガス・鉱物資源にまで人民元建て決済が進むとなると、ドルの国際的な地位に大きな変化が出ることも想定しておく必要がありそうです。

米国債をの大口保有者である中国でさえ、将来的にその保有を激減させるリスクが高まることになります。

Next: ロシアの「ウクライナ侵攻」は習近平の罠だった?



ロシアの「ウクライナ侵攻」は習近平の罠だった?

ロシアがデフォルトするとなると、資金調達面でも様々な障害が発生するものと思われます。

それを中国がことごとく助け、売れない原油も天然ガスも皆中国が購入してくれる、あるいはとん挫が危惧されるサハリンの開発についても、中国が主体的に資金を投入してくれる……という状況になれば、実質的に中国プロジェクトとなります。

そうなれば、ますます北方領土エリアでの日本の地位は下落することになりそうで、このあたりの状況を米国は正確に理解しているのかどうかが非常に気になるところです。

ソ連の元最高指導者・故フルシチョフ氏の曽孫にあたるニーナ・フルシチョワ氏がデイリー・ミラー紙に寄稿していますが、「習近平と重要な協定を締結したプーチンは、結果的に習近平の思うつぼにすっかりはまっている」と厳しい指摘をしています。

これが本当にそうなのかどうか。それは、ここからの動向を見ていればわかることでしょう。

現状を見ると、どうやらその見立てはまんざら嘘ではなさそうな状況になりつつあります。為替にも劇的な変化が示現することになるのかも知れません。

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  • ロシア制裁の裏で台頭する中国~金融市場ではドルが基軸通貨の座を失う可能性も(3/9)
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  • 年利20%だからスワップ狙いでロシアルーブル円を底値で買うなど絶対やめるべき(3/8)
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  • 3月第二週相場分析(3/7)
  • 3月4日ロンドンタイムショートコメント(3/4)
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  • ロシアのウクライナ侵攻はすっかりFRBの政策変更理由として重用か(3/4)
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  • 原油価格暴騰で国内実質インフレ率2%を超えると日銀は緩和措置を終了するのか(3/1)

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今市太郎の戦略的FX投資』(2022年3月9日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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