米国株の下落を受け、証拠金取引の個人投資家は市場から駆逐される時間帯にさしかかっています。プロの世界も同様のようで、投資ファンドの一部では投資資金の半分をやられてしまい、もはやもとの世界には戻れないとファンドマネージャー自体が放心状態になって、その閉鎖を待つだけといった黄昏モードも示現しはじめています。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2022年5月24日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月分無料のお試し購読をどうぞ。
米国株急落、追証をくらう投資家続出へ
5月FOMCでFRBが50bpの利上げを実施し、この先も同様の利上げを複数回実施と示唆したこと。また、6月からいよいよ資産縮小(QT)を実施するとしたこと。
これらはあらかじめ相当、市場に織り込まれているとされていました。
そのため、たしかに発表直後は材料出尽くし感が強く出て、株も大幅に買い戻されてほっと一息のような雰囲気が醸成されたものでした。
しかし、その翌日から結局、米株は激しく売られることになりました。
マージンデットで証拠金取引をしていた向きは、プロのファンドも個人投資家も、過去の大暴落に比べれば実額は大きくなかったにも関らず相当数が傷んでしまい、すでに退場を余儀なくされて追証の残債に悩まされているという状況が展開されているようです。
この状況をメディアはどうも正確に伝えていませんし、本邦の証券会社にとっては不都合な真実ですから、ほとんど詳細を伝えることはないようです。
しかし、実態としては我々個人投資家が米国の外側から見ているよりも、はるかに状況が悪いのは間違いなさそう。
このままでは個人投資家のかなりの部分が市場から完全に駆逐されかねないところまで追い詰められていることがわかります。
「下げは絶好の押し目買い」などと吹聴していた輩はすでに退場か
2年前の新型コロナの感染で米国政府が給付金を支給したあたりから、ネットの証券アプリを利用したサービスには大量の顧客と資金が投入され、その一部はロビンフッダーなどともてはやされました。
それも完全に今は昔の状態のようで、足もとではミーム株もまったく振るわずに大きく値を落としていますし、SNSサイトを見て業績など関係なく皆で押し寄せて株価を吊り上げるといった個人ベースの仕手戦のような状況も完全に影をひそめています。
ロビンフッダーの場合、リアルにお金を借りて投資していた向きも多かったでしょうし、そもそもレバレッジをかけているという点では借金投資ですから、個別株で6割〜7割引などというかつて経験したことのない状況に陥れば、残ったのは借金だけということになります。
何の知見もないものの、ノリとSNSでの連携プレーで投資を行ってきたいわゆる素人の不届き者は、すでに一斉排除されてしまったようです。
Next: プロの投機筋でも退場続出?悲惨なのは国内のFX個人取引…
プロの投機筋でもすでに存続を諦める向きが出ているとかいないとか…
激しい損失を食らっているのは、個人投資家だけではありません。
プロの世界も同様のようで、投資ファンドの一部では投資資金の半分をやられてしまい、もはやもとの世界には戻れないとファンドマネージャー自体が放心状態になって、その閉鎖を待つだけといった黄昏モードも示現しはじめているようです。
ミレニアル世代、Z世代は2008年のリーマン・ショックの経験もないわけですから、過度なマージンデットを利用して取引して壊滅状態に追い込まれるというのは、個人投資家と変わらぬ状況のようです。
まったく笑えないのが国内のFX個人取引
ここまでは海の向こうの米国のお話というイメージが強いわけですが、国内でも正確には情報が出てこないものの、相当なダメージを食らっているのが店頭FX業者のようです。
一般社団法人金融先物取引業協会が開示しているデータによれば、取引量は20年3月のコロナ暴落直後に新規参入が激増した時以来の活況を呈しているはずなのに、ほとんどの個人投資家は今回の凄まじい円安を利益として確保できず、逆に大きな実損・含み損として抱えたたまま苦しい状況に追い込まれているようです。
この3か月あまりの相場の動きは、決して暴落があったわけではありませんから、追証が発生して支払い不能という案件はまったく出ていないようですが、長年培ったドル円の逆張りトレードが相当な仇になったようで、レベル感からの戻り売りで強制ロスカットになるなど損切に追い込まれた向き、あるいはなんとか含み損で持ちこたえている投資家が、ほとんど身動きのとれない状況に陥っていることが窺われます。
レバナス民も夢のあと
もっと言えば国内の個人投資家でネット証券を通じて米国株の投資信託などに手を出した向きは、売りさえしなければ実損ではないながら、年初から見た場合、市場でもとかく話題になったレバナス投資信託などは額面の50%割れまで下落が進んでおり、投資原資の回収すらおぼつかないのが現実のようです。
こうした相場状況になりますと、ここから先、相場がさらに下落するたびに個人投資家は適宜駆逐されることになります。
またそれが「負のスパイラル」のように相場を押し下げるという悪循環に陥るのは時間の問題と思われます。
Next: 投資は自己責任。「バフェットが買ったから大底」を疑え
「バフェットが買ったから大底」を疑え
なんとか生き残っている我々個人投資家も、さらに巻き添えを食う可能性は相当高くなります。
過去の知見であっても、いったん疑ってみる。また投資戦略は自ら苦労して情報を集めて精査したうえで、自己決定で行うことを徹底される必要がありそうです。
誰誰が上と言ったから上方向に買ってみた…などという稚拙なやり方は、残念ながら通用しない状況に陥っているというわけです。
どうも周辺を見渡していますと、米株もそろそろ底入れかといった話が出てきますしバフェットも買ったんだから大底つけたという楽観論もかなり目にする状況です。
やはり潜在的リスクに対しては、もっとより積極的に個人の判断でどうするのかを真剣に分析することが必須の時間帯になっていることを感じさせられます。
くれぐれも、お気をつけてトレードされますように。端的に申し上げて、リーマン・ショック以降、ここまで様子がおかしくなったのははじめてです。
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