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老後“前期”と“後期”でお金の使い道は大違い。我慢しないシニアライフを送るための老後資金の正しい貯め方と使い方=牧野寿和

老後と一口に行っても、健康でまだまだ活動できる“前期”と、なかなか動くの難しくなる“後期”に分けられます。前期で健康なのに、後期のことが心配で、行きたかった旅行や趣味を始められないというのはとても残念なことです。後期の計画をきちんと立てれば、我慢せずにシニアライフを快適に送れます。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

老後の生活に向けたお金の基礎講座

今回は、老後の生活に入る前に、身に着けておきたい、年金生活を支えるお金の役割の基礎知識を学びます。

1.老後の生活とお金
2.お金をどう考えて生活する
3.生涯、家計支出は続く
4.現役中に慣れた貯蓄をする
5.老後の生活はお金を使うことが基本
6.老後の生活には2つの時期がある
7.老後の時期でお金の使い方は違う
8.老後の家計を把握する
9.お金は使うのが基本
この順番で話を進めていきます。

1.老後の生活とお金

老後の生活とは、家計の主な収入が、年金の生活を言います。

老後の生活に入ると、お金は単に生活のために使うものと考えている方もいます。

しかし、お金への考え方は、老後の生活に入るとともに、急に変えることはできません。これまでの数十年間で体験した生活を引継ぎます。

老後の生活でのお金の使い方の基本は、現役中にすでに形成されているのです。

ただ、現役の生活でもお金の貯め方や使い方を模索したように、老後の生活に入ってからも、いろいろと考えることはあるでしょう。

しかし、長年の習慣と身体の衰え、収入の減少から、現役の時代のように柔軟に変更を試みることは難しいことです。

2.お金をどう考えて生活する

あなたはお金をどのように見ていますか?

・目標を達成するための道具
・生活に安らぎや安心感を与えてくれるもの
・怖いもの、凶器、人を傷つけるもの

と、歳を重ねるにつれて、また、その人の生活環境や体験によっても見方は様々でしょう。

ただし、お金は生涯お付き合いします。したがって、お金を敵視するより自分たちの生活を向上してくれるものと考えて、お付き合いした方が得策です。

3.生涯、家計支出は続く

お金は、

・社会保険料(健康・介護、年金※)
・生活費(衣食住、水道光熱費など)
・自家用車などの維持費
・住居費
・各種税金(所得税、住民税など)
・旅行、趣味娯楽の費用
・生命、医療、火災といった保険料

などに、生活環境や年齢に応じて、老後生活でも家計より出ていきます。

(※)原則、介護保険の納付期間は40歳から生涯、国民年金は20歳から60歳まで、厚生年金は適用事業所勤務すれば70歳まで納付

Next: 老後になっても現役中のような貯蓄は可能



4.現役中に慣れた貯蓄をする

何か欲しいものがあれば、目標額を決めてお金を貯めて、お金が貯まったら目的のものを買います。

貯める資金が不足するようなら、生活費を削ってでもお金を貯める人もいるでしょう。

また、そのお金を貯めるには、

・銀行の定期預貯金口座
・株式や投資信託、個人向け国債といった金融商品を運用
・個人年金といった保険の商品を運用
・不動産運用
・金などの現物で運用

といった方法があります。

なお、現在、銀行の預貯金では、利子利息がほとんど付かないことは周知の通りです。しかし、単に貯えを増やす考えならタンス預金よりも安全です。

また、銀行の預貯金や一部の保険商品、個人向け国債以外の金融商品などは、投資した資金(元本:がんぽん)が、保証されていません。

つまり、景気や市場の動向などによって、運用した資金が元本を下回るリスクがあります。たとえば、ある会社の株式を10万円で買って、現在その株価が8万円に下がっていれば、元本を下回っているということです。

さらに、海外の金融商品で運用するときは、単に、高利回りに目を向けるのでなく、為替リスクや、政治的、社会的、軍事的な緊張が高まる地政学リスクなども考慮することが大切です。

現役の間に、自分に適した貯蓄方法を決めて慣れておくことも必要です。

5.老後の生活はお金を使うことが基本

老後の生活で、現役の時代とちがうことがあります。

そのひとつに、お金は、上項「4.現役中に慣れた貯蓄をする」のように貯めて使う生活から、すでに貯めてあったお金を使う、といった生活に変わることです。

老後の生活は、お金を使うことが基本になるのです。

Next: “前期”と“後期”で大違い。2つの老後時期の生活と出費



6.老後の生活には2つの時期がある

また、一概に老後の生活といっても、2つの時期に分けることができます。

まず、ひとりで自活した生活が可能といわれる75歳くらいので「健康寿命」の期間です。

それと、それ以降身体が衰える期間です。

前期の期間は、勤務のために時間が取られることなく、時間はあります。まだ、身体は現役を引継でいます。

したがって、自由に動けて、旅行などに出かけることができる分、家計の支出は現役より増えるかもしれません。

また、後期の期間は、体力の衰えとともに遠出の機会は少なくなるでしょう。また、いわゆる食が細るような状態になるかもしれません。

したがって、家計の支出は少なくなっていくでしょう。ただし、医療費や介護の費用が増える懸念はあります。

7.老後の時期でお金の使い方は違う

つまり、老後前期は、旅行や趣味娯楽費、人によっては相続税をねん出するために、お金を貯めることが必要になるかもしれません。

どのように貯めるかは、上記「4.現役中に慣れた貯蓄をする」に記載したように、現役の時代を思い出して、または引継いくことになります。ただし、年金が主な収入となり、収入が減った分を考慮しながら、貯めることになるでしょう

老後後期は、この時期にお金を貯める必要はありません。

いままでに貯めたお金を取り崩して使っていくことです。

ただ、単に取り崩していくと、貯蓄が減って心細くなるでしょう。

そのようにならないために、およそ男性81歳、女性87歳の平均寿命よりそれぞれ5歳くらい長生きをする。

また、夫婦の場合は、夫と妻が同級生の時は平均寿命の男女差6歳、つまり、妻が6年間一人で生活する。

といった想定をして、毎年の収入から家計の支出を差引き、貯蓄がいくら残るかシミュレーションして、お金は十分足りることを知り、安心して生活をおくることです。

Next: 老後後期に入る前に老後の家計をシミュレーションしておこう



8.老後の家計を把握する

老後生活に入ってから、現役当時の収入は見込めません。

したがって、老後の生活が苦しくなるかは現役中に家計収支の推移のシミュレーションをして、必要なときは直ちに家計の支出の見直しをすべきです。

また、このシミュレーションは、老後前期でも定期的に行い、今後の家計収支を把握していくことです。

なお、上記の「老後後期」に入ってから、(「6.老後生活には2つの時期がある」参照)お金が足りなくなったときの対策としては、現役中にまた老後前期でも旅行の費用など調整することで可能です。

ただし、老後後期に入ってから、気が付いては、手遅れになりかねません。

9.お金は使うのが基本

このように、老後の生活ではお金は使うことが基本です。

ただし、老後の生活に入った直後に、年金だけの収入になり、収入が減っても支出を抑えることができなく、今後の生活が心配になり、楽しみにしていた老後の旅行や、始める予定だった趣味を止めた、と聞いたことがあります。

大変残念なことです。

上記のような家計収支のシミュレーションを定期的に行いながら、老後の生活でも、お金は使えばいいのです。

その人が、人生で培ったお金の使い方は、老後の生活でもお金の使い方の基本になります。

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image by:LightField Studios / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2022年9月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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