日銀が金融緩和策の一部修正を決定し、マーケットを驚かせました。金融緩和を拡大させながら、実質的な利上げという日銀の矛盾した政策に違和感を感じます。日銀は1989年12月25日に金融政策の変更をし、その年3回目の利上げを発表し、その後にバブルが崩壊しました。その後、失われた33年が続きます。今回の決断は地獄の門を開けるほどのインパクトに感じます。(『 花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編 花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編 』)
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外資系投資銀行を経てFPに。2015年からシンガポールに移住。ジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)をインタビュー監修。『シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。「ホンマでっか!?TV」「有吉ゼミ」などテレビ出演や講演経験も多数。
日銀サプライズで相場混乱
こんにちは。シンガポール在住、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。
日銀が金融緩和策の一部修正を決定し、マーケットを驚かせました。長期金利の変動幅を「プラスマイナス0.25%程度」から「プラスマイナス0.5%程度」に変更しました。同時に日銀は国債買い入れ額を従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増やしました。
金融緩和を拡大させながら、実質的な利上げという日銀の矛盾した政策に違和感を感じます。
このサプライズを受けて、日経平均株価は大幅に下落をし、銀行株は上昇しました。金利上昇はお金を貸して利ざやを得るビジネスモデルの金融機関にとってはプラスになるからです。
東証REIT指数はニュースを受けて下落し、前日比5.31%の下落。借り入れコストの上昇はREITの収益を圧迫するからです。レバレッジをかけたREITや不動産投資は厳しくなるのかもしれません。
また、円相場は日米金利差の縮小から1ドル133円台前半と4円以上値上がりし、21日に関しては131円台をつけました。
国債先物中心限月3月限は前営業日比1円72銭安の146円14銭と大幅続落。新発10年国債利回り(長期金利)は同15.5bp上昇の0.405%。一時0.460%と2015年7月以来の高水準を付けました。
※参考:日銀 金融緩和策の一部修正決定 円相場急激値上がり 株価下落 – NHK(2022年12月20日配信)
※参考:〔マーケットアイ〕金利:日銀の指し値オペ結果、5年債は1兆0189億円が応札・落札 – ロイター(2022年12月20日配信)
今回、金融関係者も予測していなかったまったくのサプライズで、日銀の行動はマーケットを混乱させました。ようやく経済がよくなる兆しが見え、賃金が上昇すればという状況の矢先にこの判断は合理的な決断ではなく、政治的な要素が働いたことが予測されます。
日本円は“紙くず”に?日銀が債務超過に陥る可能性を指摘する声も
元参議院議員で経済評論家の藤巻健史氏は、国債を大量に保有している日銀の評価損が大きくなっており、これ以上金利を上げたらそれがさらに膨らみ、債務超過になってしまう可能性があると指摘しています。
※参考:日銀の緩和見直しは追い詰められての決断? 藤巻健史氏「円は“紙くず前夜”」- ABEMA TIMES(2022年12月22日配信)
日銀の国債保有額は約535兆で発行残高約1,066兆に対して約50%になります。債券利回りの上昇は価格の低下を招き、債券を保有している日銀に損失が出るのです。
※参考:日銀国債保有、初の5割超 – 日本経済新聞(2022年12月20日配信)
※参考:日銀「1989年」以来の大決断 未来は天国か地獄か – 日本経済新聞(2022年12月21日配信)
日銀は1989年12月25日に金融政策の変更をし、その年3回目の利上げを発表し、その後にバブルが崩壊しました。その後、失われた33年が続きます。
今回の決断は地獄の門を開けるほどのインパクトに感じます。
Next: 変動金利で住宅ローンを借りている人は要注意なのか?
変動金利で住宅ローンを借りている人は要注意なのか?
金利の上昇は為替レートを一時的に円高に誘導します。海外旅行に行ったりしやすくなるでしょう。しかし、円高は輸出企業の利益を圧迫します。また、金利上昇は住宅ローンを借りている人や中小企業の経営者を苦しめることになります。
長期金利の上昇によって住宅ローンを借りている人への影響はどうなるでしょうか。
住宅ローン金利が変動型の場合、基準となる「短期プライムレート」に影響を受けます。短期プライムレートとは、「最も信用力が高い企業向けの最優遇貸出金利」であり、銀行が企業に対して融資をするときの基準となる金利になります。
実際の融資は、レートに企業の信用力に応じて金利が上乗せされます。不動産担保ローンの場合は、融資先の信用力と担保となる不動産の価値によって判断されます。
短期プライムレートは2009年 1月から年1.475%のままです。想定外の日銀による利上げですが、短期プライムレート(変動金利の基準金利)が上がるまではタイムラグがあります。
※参考:長・短期プライムレート(主要行)の推移 – 日本銀行
本来、短期プライムレートは金融市場の動向によって毎月変動します。そして、短期プライムレートに連動する変動型ローンは、決められたタイミングで金利の見直しを行い、その時点の短期プライムレートの水準によって、それ以降の金利が決まります。
金利の見直しのタイミングは、「半年ごとの年2回」とするのが一般的です。そのために、今すぐに上がるわけではありません。
また、住宅ローンの変動金利が上昇すると不満が出るためにしばらく据え置かれる可能性もあるでしょう。
しかし、将来的に永遠に変動金利で低金利の資金調達ができるわけではありません。長期金利が0.5%の防衛ラインを突破したら上げざるを得ないでしょう。
※参考:住宅ローン、変動金利への借り換え進む? 固定金利は上昇の可能性 – 朝日新聞デジタル(2022年12月20日配信)
金利上昇中に変動金利への借り換えはセオリーではありません。しかし、短期プライムレートはマーケットで決まるわけではないために、一時的に変動金利のほうが得という歪んだ状況が発生しています。
米国では10月末の30年固定の住宅ローン金利が6.92%と高騰しています。日本で長期の住宅ローン金利が上がったとしても許容範囲でしょう。いずれ金利が急上昇して爆発をするリスクを抑えるためには固定金利にしておいても悪くないとは思います。
これまでの日銀は金利を上げることができないという見方が一変して、マーケット関係者の信認を得るのが難しくないかという懸念があります。
また、長期金利が0.5%の防衛ラインを突破したらどのような世界が待ち受けているのか未知数です。藤巻氏が言われているように、日銀を破綻させ、新しい日銀を作るなどもあり得るのかもしれません。
米国の利上げは天井を打ったのか。外貨両替をするタイミングは?
米国の利上げは2023年前半に収束し、後半はマーケット次第で利下げに転じる楽観論もあります。米国が利下げに転じれば更に円高になる可能性もあります。しかし、米国の物価がいきなり落ち着いたりするのかは疑わしいものです。
いつ為替を替えたらよいかという質問をよく受けますが、私だったら今のタイミングと――
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- 日銀の政策変更サプライズは日本経済を破滅させるか 外貨両替をするタイミングは?(12/23)
- 円高は最後の外貨両替のチャンスか ドル安から急上昇する金と銀(12/9)
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花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編
花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編
』(2022年12月23日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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