マネーボイス メニュー

生涯「おひとり様」で生きると決めたら準備する3つのお金とは?他人に頼る覚悟も必要=牧野寿和

生涯をひとりで過ごすと決めたら、「終の棲家(ついのすみか)はどこにするのか?」「生活する費用は生涯あるか?」「自分の財産はどのように処分するのか?」の3点を考えておく必要があります。現役のうちに準備できるよう、それぞれについて詳しく解説します。(『 【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 』牧野寿和)

【関連】コロナ禍で放置された「中高年ひきこもり」60万人に増殖、老いた親に限界が来たらどうなる?迫る日本壊滅のタイムリミット=鈴木傾城

プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

生涯「おひとり様」が考えておくべき3つのこと

ファイナンシャルプランナーの私のところには、生涯をひとりで過ごすと決めた方から、リタイアメントプランニング(老後の生活や資金計画)の相談が来ます。

同様のケースで私が必ず提案または確認することが、次の3つです。

1. 終の棲家(ついのすみか)はどこにするのか?
2. 生活する費用は生涯あるか?
3. 自分の財産はどのように処分するのか?

生涯ひとりで生活すると決めたら、快適に老後の生活をしていけるよう、現役の間から準備しておく必要があります。

今回はこの3つの内容について詳しく解説します。

現在と何がどのように変わるかを想定する

終の棲家(ついのすみか)はどのような住居で暮らしていくのか、その参考になるお話をしていきます。

なお、この記事では、生涯をひとりで過ごすと決めた方を「Aさん」として解説していきます。

Aさんに限らず、私たちは、自分だけではなく、親・兄弟といったまわりの人も毎年歳を取っていきます。これから生活をしていくうえで、何がどのように変わっていくか。想定しながら、老後のプランニングをしていくことが大切です。

また、親・親戚・縁者にもまったく世話になることなく生涯を終えると決めない限り、また決めたとしても、自分より年の若い人に何らかの関係を持っていくことは、生涯で必ず必要です。

Aさんに関わる、家庭環境や親戚関係で、考慮していくことが、必要になるかもしれません。日本の法律でも、定められているところでもあります。

1. 終の棲家(ついのすみか)はどこにするのか?

まず、生涯どこに住むのか、Aさんの現在、そしてこれからの家計の収入や支出、それに貯蓄残高の推移を考慮しながら、主に次の4つのパターンを参考に決めておくことです。

<実家に住む場合>

最初に、実家に住む場合です。

Aさんは、現在実家で、親と同居をしていて、両親が亡くなったあとも、この実家に引きつづき住んでいくとします。

Aさんに兄弟がいなければ、Aさんは、この実家を、両親が亡くなった後に相続するか、また生前には、相続時精算課税制度を利用して、実家をAさんが所有して、住んでいけばいいでしょう。

また、Aさんに兄弟がいたら、両親が亡くなったあとこの実家を含めて、両親の遺産分割をどのようにするのか、決めておくことが必要になります。

決めていく中で、実家を相続することをほかの兄弟に、納得してもらうことが大切です。

この場合に、実際の相続をするときに、兄弟との間で、金銭のやり取りが生じることもあります。

そして、実家をAさんが所有して、住んでいくことになるでしょう。

なお、所有したあとは、次に解説する「自宅を購入して所有する場合」と同様に、維持管理を考えて生活をしていくことになります。

なお、実家に住んで生活していた当時の、親の住宅関連の家計収支は、参考になることでしょう。

<自宅を購入して所有する場合>

戸建であれ、マンションであれ、自宅を購入して所有する場合は、生涯の維持管理を考えます。実家を所有したときも同様です。

住み続けるあいだの家計からの支出です。たとえば、固定資産税や都市計画税といった、納税の費用が、また、戸建であれば、将来のリフォーム費用や水回りなど急な修繕費を準備しておくこと。マンションであれば、自室のリフォーム費用や毎月の修繕積立金などです。

自宅を購入するのに、住宅ローンを組んで、借入れる金額は、現役中に完済できる額までです。

今から、住宅を購入する場合は、住宅ローンの毎月の返済額から、購入物件の上限を決めることができます。返済中に、返済が困難な状況がみえたら、すぐに返済している金融機関に、状況を説明して、善後策を検討してもらうことです。

また、中古住宅を購入について、端的に言えば、戸建の場合は、リフォームがされている住宅で、快適に、生涯過ごせる住宅か、マンションの場合は、戸建てに加えて、将来、大規模な修繕が必要な建物など、毎月の修繕積立金以外に、負担する費用が具体的にどのくらい必要か、といった確認をすることが大切です。

Next: 賃貸で大丈夫?「終の棲家」の盲点/生活費はいくら必要なのか



<賃貸住宅の場合>

賃貸住宅で、現在住んでいる部屋に生涯住み続けるなら、その部屋に住み続けことができる生涯の家賃の確保が必要です。

ただ、その建物が築古の場合に考えておくこととして、その建物が、将来取り壊されることです。

たとえ壊された後に、またそこに賃貸住宅が建てられても、家賃が高くなることも考えられます。また、賃貸住宅が、建てられないこともあります。

また、歳を取ってから、現在の賃貸住宅から、ほかの賃貸住宅に引っ越すことを、計画している場合、将来のことはわかりませんが、現状は、高齢者のひとり住まいの入居を、家主は嫌う傾向です。

最悪の場合は、高齢になってから、住むところがなくなることも、考えられます。

従って、賃貸住宅に生涯住む計画の場合は、少なくとも、築年数の浅く、生涯家賃を払っていける賃貸住宅に、住むことが賢明です。

<同居を考える>

歳を取ってからか、それともすでに、Aさんは、兄弟や親族の家に同居することも、考えられます。兄弟や親族が亡くなったあと、その兄弟や親族の子どもと、同居することもあるでしょう。

このような同居をする場合、Aさんの住むところが、誰の持ち物、つまり所有しているのかによって、ここまで解説したような住宅に関連したAさんの負担額も違ってきます。

また、賃貸住宅に同居する場合、戸建ての賃貸でも、スペース的にAさんは、上記のような家族との同居も可能でしょう。

賃貸住宅で同居をする場合は、この住宅は、誰が賃貸借契約をして、家賃の負担を誰がするのか明確にして、Aさんはそれ相応の負担が必要になります。

なお、たとえば、Aさんが、Aさんの兄家族と同居して、Aさんの兄夫妻が亡くなったと、Aさんの子どもの家族と同居できるかといった、将来、問題が生じることが懸念されます。

このように、住むところを決めておくことは、言い方に語弊があるかもしれませんが、他の家族を巻き込んだり、端的お金の絡む問題でもあり、現役中からの検討が必要なのです。

また、いわゆる「施設」に入居するといった、選択肢もあります。

2. 生活する費用は生涯あるか?

生涯ひとりで生活をすると決めたら、まず、心配になるのが、「生涯の生活費のこと」と、私のところに相談にみえる方から、耳にすることがあります。

確かに、70代や80代と高齢になってから、家計が破たんしては、兄弟や身寄りも高齢になっていることも多く、善後策を考えるにしても、困難をともないます。

そこで、現役のうちに、現在の家計収支と貯蓄そして将来得ることができるであろう収入、人によっては資産運用の収益から、老後生活のしかたを決めておくことが大切になります。

<家計支出額の変化を調べる>

そのためには、現在の家計収支をまず把握して、そして、老後の生活の費用も把握することです。

家計の収入は、今の生活を続けていくことを前提にすれば、将来もらう年金も含めて、生涯、得る大まかな数値が把握できます。

しかし、家計の支出の方は、現在の生活費を基準値として、推測するしかありません。

たとえば、ひとり世帯の家計において、現役の生活と老後の生活とでは、歳とともに食費や遠方への旅行費用などは、少なくなるかもしれません。

しかし、反対に医療費や介護の費用は、増えるかもしれません。

従って、家計から出ていくお金の内容は変わっても、金額的には、変わらないと考えておくことができます。

<老後の家計支出額、減少の対策>

また、老後の生活に入ってから、今までの生活が維持できなくなり、その時の収入に応じて、生活の質を落とすことは、「こころ」に病を抱える原因になりかねないと、医師から聞いたこともあります。

老後の生活に入ってから、仕方なく生活の質を落とす可能性があるならば、現役中からの対策を打っておくことが、たとえば、その老後の家計支出額と同額の生活を、今すぐに始めることも必要です。

<貯蓄と運用>

老後の生活費と年金収入の差は、現役時代から貯めてきた貯蓄や、資産運用の収益を取り崩して、埋め合わせます。

ただ、株式投資や投資信託といった、投資した元本が、運用次第では、元本以下の金額になってしまう、いわゆる元本が保証されない金融商品で、運用することには、馴染まない人もいます。

そのような人は、銀行の預貯金などの定期預貯金といった、元本の保証されている金融商品を運用して、確実に貯蓄額を増やしていけばいいのです。

Next: 生涯ひとり…自分の財産はどのように処分するのか?



3. 自分の財産はどのように処分するのか?

次に、ひとり暮らしの人が亡くなった時に、その財産はどのように処分するのか、生涯ひとり暮らしをすると決めたAさんを例にみてきます。

<ひとり暮らしの人の相続>

Aさんの自分の財産は、自分の持ち物と言いかえることもできます。

Aさんが亡くなったあとの持ち物は、Aさんの親が生きていれば親が相続します。

すでに親が亡くなっていれば、Aさんの兄弟姉妹が相続します。

このAさんの親や兄弟姉妹のことを法定相続人といいます。

また、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その兄弟姉妹の子ども、つまりAさんの甥や姪が相続人となります。

この甥や姪のことを代襲相続人といいます。なお、Aさんの兄弟姉妹の孫は、代襲相続人にはなりません。

また、「遺贈(いぞう)」といって、Aさんが、生前に遺言書を書いて、法定相続人または法定相続人以外の特定の個人や地方自治体、NPO法人といった団体や法人に、Aさんの持ち物の一部、または全部をゆずることもできます。

相続をするにあたり、遺贈も含め、Aさんの持ち物の価値によって、もらった人が、相続税を納付することもあります。

<負の遺産になりかねない>

次に、Aさんが亡くなった場合に、Aさんの持ち物はどのようになるのか、具体的な状況をみていきます。

たとえば、Aさんが実家に住んでいて亡くなった場合は、

既に両親が亡くなっていれば、Aさんの兄弟姉妹が相続することになります。

すでに、兄弟姉妹がほかのところで、持ち家で住んでいれば、実家は、売却してその収益を兄弟姉妹で分けます。

しかし、だれも住まないで、空き家のままにしておいても、兄弟姉妹のうちのだれかに、固定資産税の納付通知が届くことになります。

また、Aさんが、兄弟姉妹のうちの家族と同居していて亡くなれば、相続の内容は変わってくるでしょう。

Aさんは、この実家のケース以外でも、単に持ち物を残していくだけではなく、何らかの対策をして、旅立たないと、負の遺産を残して亡くなったことに、なりかねないのです。

<自分のことは自分で決める>

つまり、Aさんは、生前に、自分の持ちものをどのようにするのかを、決めておくこと。またみずから処分しておくことも大切です。

たとえば、骨とう品や美術作品の収集家であれば、上述の遺贈するところのほかに、近くの博物館や美術館に寄付する。

また廃棄するのに、費用がかかるのであれば、自ら処分するか、その費用を、Aさんが亡くなったあとに、処分を依頼する人に託す。

「立つ鳥跡を濁さず」といわれるような、自分のことは自分で決める、行動計画を、ここは結構、時間も費用も掛かるようですので、老後の生活に入る前から準備しておいた方がいいでしょう。

<ひとりですべてのことはできない>

とはいっても、ひとりですべてのことはできません。

従って、老後の生活を始める前から、兄弟姉妹や親戚、縁者に、または信託が委託できる個人や法人に、Aさんの後見人になってもらうことを、決めておくことが大事です。

後見人になってもらうには、それ相応の費用が必要になるかもしれません。

しかし、その負担以上に信頼できる後見人がいれば、安心したひとりくらいができることでしょう。

ひとり暮らしは、自分の意思で、大方のことが選択できます。というより、しなくてはならないのです。

【関連】「その保険、必要ありません」シニアライフに不可欠なお金の基本【第1回~金融と保険~】=牧野寿和

【関連】いくら貯めれば老後破綻しない?生活レベルに合わせた必要貯金額の算出方法=牧野寿和

【関連】日本人の8割が加入する生命保険はムダだらけ。対策すべきは不慮の事故より長生きリスク=俣野成敏

image by:beeboys / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ 』(2022年4月6日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ

[無料 週刊]
ご自身の描いた老後の生活を実現するために、 40代から、退職・完全リタイアをするまでに、 やっておくべきことがあります。 そんなことはわかっているよ!! でも、行動に移せないんだよね…… 実は、何から始めようか迷っているんだよ!? そもそも、何をしたらいいのかわからないんだよね??? そんな方のために、同年代の私、 「人生の添乗員(R)」が、 ファイナンシャルプランナーとして13年の実績と、 自身の人生経験から、 40代から、退職・完全にリタイアをするまでにすべき、 「貯蓄」と「節約」について、 毎週、1テーマずつお伝えします

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。