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米国のデフォルトを煽りまくるイエレン財務長官の狙いとは?政治的駆け引きが現実になる恐れ=今市太郎

米国のイエレン財務長官が全米のメディアに出まくって、債務上限問題が解決しないと米国はデフォルトに陥ることを猛烈に訴求しはじめています。見方によってはむしろデフォルトを煽っているかのようにも見え、その狙いがどこにあるのか注目を集めはじめています。(『 今市太郎の戦略的FX投資 今市太郎の戦略的FX投資 』今市太郎)

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イエレン財務長官が「デフォルト」煽り?

日本にいますと今ひとつよくわかりませんが、ここ1か月あまり、米国のイエレン財務長官が全米のメディアに出まくっています。

何を語っているかと言えば、債務上限問題が解決しないと米国はデフォルトに陥ることを猛烈に訴求しはじめており、見方によってはむしろデフォルトを煽っているかのようにも見える時間が続いています。

米国の債務上限問題はかなり聞き慣れた言葉

この米国の債務上限問題はオバマ政権の頃からかなり頻繁にメディアに登場し、一時は相場にも相当な影響を及ぼす材料となっていたことは記憶に新しいものがあります。

米国には連邦政府が国債を発行して調達する債務にあらかじめ上限が設定されており、議会が承認しない限り、その上限を突破して債券を発行することはできません。

ひとたび上限に達成して国がなんの支払いもできなくなれば、米国債はデフォルト・債務
不履行に陥る可能性が高くなります。

実際オバマ政権時代にはこの債務上限を巡って米国債の格付けが1ランク下がったという大事件も起こっていますから、決して楽観視はできない問題といえます。

トランプ政権時にはトランプはかなり冷静で、これを政治問題化することを在任期間中は避けてきたこともあり、議会で大論戦となることはありませんでした。

しかし、新型コロナ感染爆発以来、国民にカネを配り、FRBはQEインフィニティと称して市場に大量の資金を投入した結果、完全にインフレ状態になっています。

そして連邦債務は過去最大のレベルに達しており、政治的な問題以前に、かなり大きな爆弾を抱えていることは間違いない状況です。

ただ戦後米国ではこの債務上限問題は102回も議会で変更されていますから、年中行事化していることもまた事実。

最後は議会がなんとかすると楽観視する国民がほとんどであることもまた事実となっています。

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大統領選を意識?共和党との対決姿勢がイエレンの狙いか

ということで、債務上限問題はそう目新しいテーマではないのですが、ここ1か月あまり、正確にいえば昨年の年末あたりから、イエレンはこの問題を猛烈に煽りはじめています。

このまま議会がもめ続けることになれば、6月中旬にデフォルトに陥ることを明確に示唆しはじめています。

下院の主導権を握る共和党は、民主党がまず今後の歳出削減自体に同意しない限り債務上限引き上げを見合わせると強硬な姿勢を打ち出しています。それに対する、イエレンの逆恫喝にも見えてきます。

とはいえ、ここまで財務長官が独り歩きしてメディアに登場し、デフォルトを煽るというのもかつてなかったパフォーマンスであり、なぜここまでやるのかについては様々な憶測と違和感が醸成しはじめています。

とくに足元では、21年にもいったん登場したことのある緊急資金繰り措置に着手する話も飛び出しはじめており、給付時期が差し迫っていない「公務員退職・障害基金」と「郵便退職者医療手当基金」などへの拠出を停止する、つまり基金から一時的にせよカネを引っ張りだして政府の運営資金にするといった驚くべきプランも明らかにし始めています。

この領域で働く公務員にとっては「寝耳に水」の驚くべき話にもなっており、社会的に大きな関心事に発展することはどうやら間違いない状況になってきています。

イエレンとしては「共和党が議会で反対するから国がぶっ壊れかかっている」と主張したいのでしょう。

しかしバイデン政権になってからの放漫財政は凄まじく、すでに連邦債務は33兆ドル(日本円にして4,000兆円)を超えていますから、税収で金利を負担することさえできなくなりそうな危機的な状況です。

まあ伝統的な手法でいえば、どこかでいきなりドル安政策を始めて米国債の価値を大きく下げ、
日本をはじめとする米債大量保有国が大損して負債の一部を負担させられる……という時間が到来することになるのではないでしょうか。

やり方を間違って一時的にせよデフォルトに陥れば大災害に

6月まではまだ時間がありますから、とにかく何とか解決の道を探ることになるのでしょう。

しかし、この手の話は議会が政治的な駆け引きの材料として利用しはじめますと、一時的にせよデフォルトというまさかの自体をひき起こすリスクは相当高く、イエレンの警告が本当に現実のものになるといった事態に突入してしまうこともありえます。

ここからの状況の推移からは目が離せない状態になりそうです。

Next: 米国債の格下げがトリガーに?デフォルト煽りの結末は…



米国債の格下げがトリガーに?

とくに格付け機関がこの件を巡って米国債の格付けにまた手をかけるようなことになれば、相場への影響は甚大でドル売り加速が進むことも考えておかなくてはならない状況です。

それにしても鈍重ではっきりとした政策を打った試しのないイエレンがここまでデフォルトを
煽りまくるというのは、嫌な気分以外なにも生まれないのが正直なところ。

どこに真意があるのか、非常に気になります。

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