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ソフトバンクGに「孫切り」懸念。ウィーワーク破綻で多額の損切りも、赤字の根本原因は残ったまま=今市太郎

ソフトバンクグループ(SBG)が出資する米国シェアオフィス大手「ウィーワーク」が経営破綻に陥りました。負債額は約190億ドルと見られていますから、社債を含めて140億ドル程度のエキスポージャーがあるとされるSBGの損失は突出しています。この件でSBGは今回、はからずも多額の損切りを実施することを余儀なくされていますが、投資判断総責任者の孫さんの問題もかなり大きいと言えます。やがて孫さんを切る「孫切り」を余儀なくされる時間がやってくることが非常に危惧されます。(『 今市太郎の戦略的FX投資 今市太郎の戦略的FX投資 』今市太郎)

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※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2023年11月10日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

予想通りに破綻した「WeWork(ウィーワーク)」

本日は為替のお隣の株式市場のお話です。 このメルマガ このメルマガ では定期的にソフトバンクグループ(SBG)の件について敢えて取り上げていますが、実は今年8月後半、 今市的視点のメルマガ 今市的視点のメルマガ のほうで『今や破たん申請寸前のウィーワークとは一体なんだったのか?』という内容を配信させていただきました。

そして11月6日、そのウィーワークは正式に破産申請を提出することになり、予想どおりの結末を迎えることとなりました。

ユニコーン企業のIPOですから、もちろんそのすべてが成功するわけではないというのは当然の話。

しかしながら、この会社にそこまで孫さんが入れ込んで投資する必要があったのかという視点で振り返ってみますと、大きな問題が見えてくることになります。

孫正義さん「直感依存」投資の挙句がこのザマというお話

ウィーワークは2010年に創業した、いわゆる共同オフィス提供の事業者です。2019年あたりには「ユニコーン企業」として猛烈に注目を浴びました。

それに目をつけたのが、ソフトバンクグループの孫正義さん。当時、社内では反対の声もあったようですが、そもそもここまで天才的な投資感覚で会社を大きくしてきた孫さんの判断ですから、結果的には誰もウィーワークに対する投資を抑止することはできなかった様子。

結果としてソフトバンクグループとビジョンファンドの双方から、創業者アダム・ニューマンに巨額の投資を実施。IPO前の持ち株をなんどもキャッチボールすることで無理やり時価総額を470億ドルにまで押し上げて、IPOに臨もうとしました。

公開前の持ち株のやりとりにより時価総額を大きくするというのは結構どこでもやる方法ですから、一概にSBGを責める訳にもいかないでしょう。しかしまあ、海のものとも山のものともわからないが話題のユニコーン企業のIPOというのは、こんなものであったことが今さら理解できる状況です。

ただ「早期にIPOを実現して、早いところ投資資金を回収したい」と考えたのが仇になったのか、この2019年にIPOを申請するために当局に提出した書類から、実は大幅な損失が生じていることが露見。さらに利益相反も指摘される始末で、IPOどころの騒ぎではない事態に追い込まれることになります。

慌てたSBGサイドは、そもそも評判の悪かったこの創業者アダム・ニューマンをゴールデンパラシュートといった手法で多額のカネを握らせて叩き出す戦略に打って出ることとなり、その後はSBGが主体となって経営の立て直しをはかります。そして2021年10月、SPACという合法ではあるもののいかがわしさ満点の手法で見事、上場を果たすこととなりました。

ただ上場初日は11ドル78セントで値を終えていますから、この時点での時価総額は約90億ドル(約1兆円)ということで、2019年の幻の評価額470億ドルのたった2割に過ぎないかなりの低水準のIPOとなってしまいました。

とにかくカネを出してIPOの価格を釣り上げ、早期にIPOを実現して多額の時価総額を獲得して売り抜ける……というお手軽手法からは程遠いIPOを実現したことになるわけです。

しかし、その後この会社は新型コロナの感染大爆発など想定外の逆風にさらされることになり、上場からちょうど2年の今、あっけない終焉を迎えることとなってしまいました。

Next: 孫さん窮地。ソフトバンクグループの損失は140億ドル(2.1兆円)か



SBGの損失は株式・債券含め総計140億ドルか

直近で発表となっているSBGの7~9月期の連結最終決算では、9,311億円の損失がすでに明らかになっています。

さらにウィーワークは4-9月期で約2,340億円の損失を計上しているものの、総額は115億ドル(日本円にして1兆7,000億円超)と推計されていますので、損失はまだまだこれから計上される可能性が高まります。

ウィーワークの今回の経営破綻による負債額は約190億ドルと見られていますから、社債を含めて140億ドル程度のエキスポージャーがあるとされるSBGの損失はある意味突出しており、結果的に言えば「労多くして益なし、さらに損失あり」という哀しい結果になったことがわかります。

関係者の話では、SBGはウィーワーク以前はこうしたユニコーン企業への投資は驚くほど慎重だったそうで、今回のこの件は完全に孫さんの入れ込み判断ミスであったことが見え始めています。

アームのIPOでもわかったこの手の投資の難しさ

SBGといえば、直近では2016年に取得し株式の非公開化をはかった「アーム」を7年かけてようやく新規IPOすることに成功し、大きな利益を上げたという明るい話題が思い出されます。

たしかに120億ドル、日本円にして1兆8,000憶円にものぼる利益に見えますが、これ7年を通じた金額で、ファンドの世界ではよくベンチマークにされるS&P500の指数株式投資をしていればこの間に137%の運用益を獲得することができたとされていますから、170%のSBGのケースはそれほど凄まじい運用益を稼いだ話ではなく、今やIT株の先兵となっているNVIDIAは同じ期間になんと3,600%もの収益を得たことと比較しても、お世辞にも一流のファンドのIPO投資であるとは言えない現実がそこにあることがわかります。

この手の投資の世界では1発、2発でも大成功すればたしかに目利き感のある神様と崇めたてられることになるのは言うまでもありませんが、どうも孫さんはここへきてそうしたずば抜けた感性を持ち合わせているわけではないことが見え始めています。

これまで獲得した利益もさることながら、投資の失敗で失った金額は驚くほど多額になっており、いいこともあれば悪いこともあるのがこの手の世界と割り切ることができるのかどうかが、かなり微妙になっている状況です。

SBGは今回、ウィーワークの破綻ではからずも多額の損切りを実施することを余儀なくされていますが、冷静に考えると、投資判断総責任者の孫さんの問題もかなり大きいと言えます。

やがて孫さんを切る「孫切り」を余儀なくされる時間がやってくることが非常に危惧されるところ。そのくらい、今回の損失は深刻なものとなっているのです。

これが本邦を代表する上場企業であるということも相当、心許ないものを感じる状況です。

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  • 昨日のドル円の150円台後半の急落はOP見合いの仕掛け売買(10/27)
  • 値幅と日柄からドル円がこれ以上上がらずに下落に転じるというまさかの可能性(10/27)
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今市太郎の戦略的FX投資 今市太郎の戦略的FX投資 』(2023年11月10日号)より抜粋
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