マネーボイス メニュー

なぜ「ダイキン工業」過去最高益でも株価1割下落?海外市場で起きた2つの異変。長期投資家にとって今はチャンスか=佐々木悠

ダイキンの株価が決算を受けて10%暴落しました。ダイキンは日本を代表する優良企業であり、日経平均に対する寄与度も上位5%に入ることが多い、注目されている企業です。今回はダイキンの24年3月期第3四半期決算を分析し、投資判断を行います。なぜ株価は下がったのか?今から投資して良いのか?考えていきましょう!(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

【関連】トヨタ「EV出遅れ」を長期投資家が高く評価する理由。米国市場を制覇する2つのシナリオ=佐々木悠

プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

ダイキンの成長過程

まずは、ダイキンの事業内容を説明します。

一言で表すと、空調機のグローバルメーカーです。売上では空調機メーカーで世界トップであり、近年は北米、欧州を中心に成長してきました。

その成長要因は様々です。

このような上手い経営を持ってして、世界No.1の空調機メーカーとなったのです。

出典:24年2月9日現在 各社空調事業売上高より抽出

しかし、株価は暴落しています。

ダイキン<6367> 日足(SBI証券提供)

いったい何が起こっているのでしょうか?

24年3月期 3Qの決算は厳しい内容

24年3月期 3Qの累積の業績は売上高と営業利益ともに過去最高を更新しています。

しかし3Q単体(23年10月〜12月)で見ると売上が予想以上に伸び悩み、増収減益の厳しい内容となりました。

その主な要因は、近年業績を牽引してきた、北米と欧州の販売動向です。

ここからは、主にその2つの市場の現状を深掘りしていきます。

Next: 海外市場に異変……ダイキンの成長は続くのか?



米国は住宅向けが伸び悩む

まず、米国市場の動向を確認してみましょう。

特に苦戦しているのが、住宅用です。

住宅用は通期予想では前年比+になる予想でしたが、実際は約-20%であることが%想定よりも30〜40ポイントほど売れていないことがわかります。これは、主にインフレや住宅金利の上昇による、不動産需要の低減の影響を受けているためです。

一方で、業務用の大型空調であるアプライドは好調です。

これは主に、データセンター向けであると言われています。データセンターとは、インターネット用のサーバやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの装置を設置・運用することに特化した建物です。

これは生成AIの台頭によって、データセンター需要が増加。それに伴った空調需要の増加であると推察されます。

しかし利益率が高いのは、住宅用です。こちらの販売動向が悪いことが、3Q単体の減益に影響していると考えられます。

欧州は住宅とHP事業が伸び悩む

次に欧州の販売動向を見てみましょう。

住宅用が伸び悩む理由は、米国と同じです。インフレ対策の金融引き締めによって、消費マインド低下の影響を受けています。

一方で、さらに状況が悪いのが、ヒートポンプ事業です。

ヒートポンプ空調の特徴は、化石燃料を使用しないことため、エコであることです。環境意識が高い欧州ならではの商品かもしれません。

出典:ダイキンの空気の技術

しかし、このヒートポンプが前年比60%増となる予想が、23年3月期3Qまでの販売実績は▲35%。大苦戦と言えるでしょう。

このヒートポンプ事業は燃料価格が高騰した21年〜22年にかけて、大幅に販売台数を伸ばしました。しかし現在は、ガス価格が落ち着きを取り戻していることや、欧州グリーンディールに伴う補助金が削減されたことによって販売数が伸びていません。

この利益率が高いとされている、住宅用とヒートポンプが伸び悩んでいることが、3Q単体の減益に影響していると考えられます。

Next: ダイキンに投資するべきか?長期投資家の判断は…



ダイキンに投資するべきか?

ここまでをまとめます。

これまでの成長を支えていた、米国と欧州の販売動向が悪化していること。それに伴って、3Q単体で減益となったことが、市場にショックを与えたものと考えられます。

しかし、現在のPERは約23倍前後です。過去10年のPER平均は26倍ですから、やや割安感があると言って良いでしょう。

ダイキンと大手証券会社のアナリストとの質疑応答会では、

「正直、今期の売上・利益の計画達成はハードルが高い」といった発言があったようです。

今後ポイントは、以下のあたりになります。

私は、ダイキンは中長期的に成長していく企業である、という認識は変わっていません。しかし成長地域の販売動向が、やや不透明感が高くなった決算であると感じました。

現状、人によって投資判断が分かれる状態だと思います。個人的には、4Qで発表される25年3月期の通期見通しを、しっかり確認してからの判断が、より安全性が高い投資になると考えています。

【関連】なぜ「ダイキン」過去最高益も株価20%下落?直面している3つのリスク。長期投資家はどう判断すべきか=佐々木悠

【関連】暑すぎる「地球沸騰化」でダイキン株は買いか?世界一のエアコンメーカーと言える3つの理由と今後の成長性=佐々木悠


つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。またYouTubeでも企業分析ほか有益な情報を配信中です。ご興味をお持ちの方はぜひチャンネル登録して動画をご視聴ください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。

【関連】サイバーエージェント株価40%下落…復活の道はあるか?「ウマ娘」「Abema」という2大問題児の命運を長期投資のプロが分析=佐々木悠

【関連】バフェットが現金を積み増し…株価暴落は近い?個人投資家が真似すべき5つの備えと1つの禁忌=栫井駿介

【関連】三菱UFJ株は買いか売りか?長期投資のプロがやっている分析手法“6つの手順”と投資判断を解説=栫井駿介

image by: multitel / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年2月9日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問

[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。