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なぜ今、ヘッジファンド業界の「二極化」が進行しているのか?=荒川雄一

グローバル市場において、ヘッジファンドは苦戦を強いられています。資金流出の最大の要因は、ずばり「パフォーマンスの低下」です。(『海外ファンドで資産を作ろう!』荒川雄一)

プロフィール:荒川雄一(あらかわ ゆういち)
国際フィナンシャルコンサルタント、海外ファンドアドバイザー。金融機関に影響を受けない独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として、投資顧問会社IFA JAPANほか、リンクスグループ3社の代表を務める。投資教育にも力を入れており、国立高知大学講師、大前研一氏監修BBT大学院大学講師などを歴任、講演回数800回以上。その他、日本経済新聞社、各マネー誌、フジTVなど執筆、出演も多数。

資金流出が続くヘッジファンドは、このまま衰退していくのか?

国内企業年金の動向

今までも何度か「ヘッジファンドの動向」について取り上げてきましたが、ここにきて、また新たな展開となっています。

まずは「国内の企業年金」に目を向けると、新たな動きが見えてきます。GPIFなど公的年金が国内外の株式比率を引き上げているのに対して、企業年金では株式への配分比率が低下傾向にあるのです。

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格付投資情報センターが国内約110の企業年金の「2015年度末の資産構成」を推計したところ、国内外の株式への配分比率が27%となり、初めて3割を切る形となりました。2005年には48%だったので、ちょうどこの10年で20%以上低下したことになります。

代わりに増えた資産が、ヘッジファンドをはじめとする「オルタナティブ」です。10年前は3%しかなかった配分比率ですが、現在は約10%に達しています。

ヘッジファンド自体は苦戦しているものもありますが、企業年金で多く採用されているのが、“絶対収益型”と言われるファンドです。デリバティブを駆使して、相場の影響を極力抑えながら、小さくても着実にリターンを求めるタイプのものです。

国内の企業年金においては、大きくリターンを狙うというよりは、安全性を重視しながら、債券の利回りを若干でも上回るようなローリスクタイプのヘッジファンドに資金が流入していることがわかります。

グローバル市場におけるヘッジファンドの動向

一方、グローバル市場においては、ヘッジファンドは苦戦を強いられています。

一時は、3兆ドルまで残高を伸ばしたヘッジファンドですが、2015年10~12月期に15億ドル、2016年1~3月期には150億ドルが資金流出しました。そして7月には、一カ月で252億ドルもの流出があり、年初からの累計でも559億ドルとなっています。

資金流出の最大の要因は、ずばり「パフォーマンスの低下」です。

米国株の「代表的指数S&P500」が今年に入って、6.7%上昇しているのに対し、ヘッジファンドリサーチ社の調べでは、同期間のヘッジファンドの運用成績は0.8%にとどまっています。

新興国経済の低迷や株式や通貨の乱高下の影響を受けて、運用成績が低迷している中、手数料が通常の投信などに比べ、高く設定されているヘッジファンドから、資金が流出していると考えられます。

Next: 投資家の目的に応じて「二極化」が進むヘッジファンド業界



このようにみてくると、ヘッジファンド業界においても、投資家の目的によって、二極化が進んでいると思われます。

それは、企業年金のように、価格変動を抑えた運用を目的としているケースでは、値動きの大きい株式や債券の代替手段(オルタナティブ)として、利益を大きく狙うというよりは、着実性のあるローリスクのヘッジファンドが用いられているということが挙げられます。

一方、株式並みのリスクを取りながらも、リターンを目指してきたアグレッシブなヘッジファンドについては、パフォーマンスが株式に比べ低下しており、その投資妙味が薄れてきたことから、残高を減らす結果となっていると言えます。

とはいえ、ヘッジファンドの運用手法、戦略には様々なものがあります。各運用会社は、今後も最新のデリバティブ技術を駆使して、新たな商品開発に取り組むと思われます。

従って、今後ヘッジファンド自体が衰退していくとは、個人的には考えていません。総論として、「オルタナティブ投資」は、運用において、やはり必要だからです。ただし、各論として、個別ファンドの中身について、しっかりと分析・検証していく必要があるということです。

引き続き、ヘッジファンド業界の動向についてはウォッチし、適宜、取り上げていきたいと思います。

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海外ファンドで資産を作ろう!』(2016年9月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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