著名投資家ラルフ・ワンガーの信念は「隠れた鉱脈は小型株の中にこそある」。その投資手法は極めてシンプルで、我々個人投資家でも簡単に真似できそうなものです。(『資産1億円への道』山田健彦)
「ワンガー流」で分析すれば今の日本市場にも成長株がいっぱい?
リターン50倍の運用成績、ラルフ・ワンガーとは
ラルフ・ワンガーは、1933年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)で学士、その後修士。1955年MIT卒業。1960年シカゴにあるハリス・アソシエーションで17年間、アナリスト、ポートフォリオ・マネージャーを務めました。
1977年、新たに設立された小型の高成長株に投資するAcorn Fundでファンドマネージャーや最高投資責任者を2003年まで務め、同期間の年平均リターンは16.3%。SP500指数の同期間の年平均騰落率は12.1%です。
16.3%というリターンは、プロとしては平均以下じゃんと思われるかもしれませんが、1977年から2003年までの26年間の年平均値です。26年間を通じたリターンは計算すると約50倍にもなります。申し分のない投資成績です。
投資方針はファンダメンタルを重視する長期スタンス。信念は「隠れた鉱脈は小型株の中にこそある」というものですが、投資手法としては極めてシンプルで我々個人投資家でも簡単に真似できそうなものです。
ラルフ・ワンガーが選ぶ基準は、下記の通りです。
- 小型株
- 財務の健全性が高い
- 高い成長率が見込める
- 有能な経営陣に率いられている
- マクロ経済の動向から恩恵を受けると予想される銘柄
ワンガーは、株価のトレンド(上昇トレンド、下降トレンド)の見極めや投資のエントリーのタイミングは考慮せず、「株価が動く本質は情報」という考え方をし、「どのような銘柄が時代を動かしているのか」を探ることに熱心でした。
小型株に特化した理由は、「小型株は会社の規模が小さいため、変化に対する対応が素早く、時代のニーズへの適応も早い。何よりも意思決定が迅速に行われる。また、収益性も大型株よりも高い銘柄が圧倒的に多い」と述べています。
投資先の選定としては「向こう5年間は、その銘柄が属している業種全般に追い風が吹くかどうか」を重視していました。
「ホームランのような、素晴らしい投資成果を5年、10年、またはそれ以上にわたり達成するには、経済の長期トレンドを見極め、そのトレンドから恩恵を受けるビジネスを見抜く必要がある。そのような調査を通して、将来を見通しにくくしている霧を晴らすのだ」と言っています。
また彼は、「テーマから派生する投資機会」という言葉をしばしば使い、自身の投資方法について説明しています。
「もし、自分がゴールドラッシュ時のカリフォルニアにいたとしたら、金の採掘権を所有する会社に投資するより、シャベルやスコップなど金を掘り当てるのに必要な道具を売るビジネスを展開する会社の方に投資をしていただろう。
なぜなら、金の採掘権が値上がりするのは、せいぜい数ヶ月程度にしかすぎないが、採掘師たちがそれらの道具を必要とする期間は数年に渡るからだ」と言っています。
Next: どんな銘柄が候補に? ワンガー流の投資銘柄発掘
ワンガー流の投資銘柄発掘
さて、我々がワンガーに習って株式投資をするならば、どのような銘柄が候補に上がってくるでしょう?
ワンガー流の選定基準のおさらいですが、下記の通りです。
- 小型株
- 財務の健全性が高い
- 高い成長率が見込める
- 有能な経営陣に率いられている
- マクロ経済の動向から恩恵を受けると予想される銘柄
まず「小型株」ですが、これは時価総額(株価×発行済株数)で見ていきます。せいぜい時価総額が1千億円程度までの銘柄でしょう。
「財務の健全性が高い」には色々な指標がありますが、ここは会社四季報に載っている自己資本比率を使うのが便利で簡単です。自己資本比率が40%以上で区切りをつけます。
次に「高い成長率」ですが、売上高、営業利益、経常利益の伸び率をチェックしていきます。最終利益は会計方針の変更で色々と修正できてしまうので、除きます。
「有能な経営陣」。何をもって「有能」とするのか、これは中々難しいのですが、今回は便宜的に増収増益を何年連続で達成したかで測定してしまいましょう。
最後に「マクロ経済の動向から恩恵を受けると予想される銘柄」ですが、いわゆるテーマ株ということです。経済を動かしているテーマですが、ざっと思いつくままに書き出しても、
- オリンピック関連
- カジノ解禁関連
- 少子高齢化関連
- 民泊関連
- 教育の無償化関連
- 情報セキュリティ関連
- IoT
- 安全保障、防衛関連
- 猛暑関連
- 次世代通信規格(5G)
- 電柱ゼロ計画
- 土壌汚染対策関連
- リニア新幹線
- VR, AR
- 有機EL
- 国土強靭化計画
- 二酸化炭素排出削減
- 農業振興
- 車の自動運転
- 人工知能
- 代替エネルギー
- 働き方改革
- 船のバラスト水問題
などなど色々出てきます。
これらのテーマは、国の新たな政策から浮上してくることがほとんどです。まさに「国策に逆らうな」という先人の教えのとおりです。政府が重点的に予算を配分するこれらのテーマは、ほとんど「骨太の方針」「成長戦略」を見ればわかります。今年もそろそろ今年度版が決定される頃です。ニュースなどに注意します。
Next: 39銘柄が候補に。スクリーニング手法とエントリー時期は?
エントリータイミングにも注意
ワンガー流の投資候補銘柄は、具体的にどのようなものになるのか。四季報オンラインのスクリーニング機能を使って以下の条件で検索をかけてみました。
- 時価総額が千億円以下
- 売上高が前期実績、当期予想、来期予想で、それぞれ前の期よりも最低10%の伸び
- 営業利益、経常利益も同じく前期実績、当期予想、来期予想で、それぞれ前の期よりも最低10%の伸び
- 自己資本比率が40%以上
結果は、13の東証一部銘柄、1つの東証二部銘柄、3つのジャスダック銘柄、そして22の東証マザーズ銘柄の合計39銘柄を抽出できました。
後は、四季報の会社概要などチェックして、テーマ性を内包した銘柄かを確認します。
エントリーのタイミングに関してですが、ワンガーはエントリーのタイミングは特に考慮していなかったのですが、やはり投資可能資金量が限られている個人投資家の場合はタイミングを重視すべきです。
基本は株価が上昇トレンドを描いている銘柄に飛び乗るのが賢明です。この続きはまた次回お話します。
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『資産1億円への道』(2017年5月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。