先物取引の天才、ポール・チューダー・ジョーンズは、その華々しい投資成績とは裏腹に徹底したリスク管理が信条です。そんな彼は今の米国市場をどう見ているのでしょうか?(『資産1億円への道』山田健彦)
「攻撃よりも防御が大切」伝説の投資家は今の市場をどう見る?
先物取引の天才、ポール・チューダー・ジョーンズとは
ポール・チューダー・ジョーンズは、1954年生まれ。先物トレードの「天才」と誰もが認めた人です。ハーバード・ビジネス・スクールに受かりながら「今から学ばなければならないことは何も無い」と思い直し、入学を辞退したことも有名です。
綿花の先物取引で天才ぶりを発揮し、5年以上に渡り、年平均99%超というリターンを叩き出しました。投資手法としては、マクロ経済データを重視したトレードで、冷徹なまでのリスク管理、エリオット波動を重視した逆張り手法。1つのトレード期間は、数日から数週間という比較的短期トレードです。後に、チューダー・インベストメントを創業します。
ジョーンズ氏は、TEDでも「私たちが資本主義を見直すべき理由」と題して講演しています(日本語字幕付き)。
徹底したリスク管理
ジョーンズから学びたいのは、攻めの手法ではなく、徹底したリスク管理です。
例えば、あなたが取得コスト1,000円の銘柄を持っているとします。そして現在、その銘柄の株価が1,300円になったとします。このとき、普通の人なら株価が1,001円まで下げることがあっても、まだプラスだから問題ないと考えます。しかし、ジョーンズは、取得コストは関係なく、現在1,300円の株価がこの先上昇するのか、下落するのかのみを考え、下落すると予想したら躊躇なく売却します。
1,000円という取得コストでリスクを考えるのと、1,300円という現在の株価でリスクを考えるのでは、リスク管理上は明らかに後者が有利です。
また、普通の人は例えば「5%株価が下がったら、ロスカットする」というルールを設定しても、なかなか守ることができません。
「もう少し我慢すれば株価は反転、上昇するかも」と考え、我慢してしまいます。そして、やや時間はかかったものの、運良く株価が反転、上昇してきて、利益を出して売却することができた、とします。
このような成功体験(?)を持ってしまうと、次に同じような場面に遭遇した時に、過去の成功体験を引きずってしまい、人は同じ行動を取ってしまいます。「もう少し我慢すれば、今度も株価は反転し上昇してくれるはず」と考えるのです。
その結果、5%のロスで済んでいたはずのものが、20%、30%、ひどいときには半値まで株価が下がって「いまさら、ロスカットしてもなぁ~」と考え、塩漬け株の山を築いてしまうのです。
失敗というのは、成功した経験があるから起きるのです。
ジョーンズは、自らに課したルールを冷徹に守り、自分の投資行動を客観的に見ることのできる人と言われています。
3秒前の自分のミスでも、まったく気にすることはないそうです。「ミスをしたら、正しい道に戻れば良いだけ」とさらっと言っています。
その他の名言として、
「最も重要なルールは攻撃ではなく防御」
「どのリスクポイントで撤退するのかを明確にしておかなければなりません。優秀なトレーダーほどリスクコントロールに多くの力を注いでいるものです」
などがあります。
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