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書き換えは必要?「遺言書」の有効期限と賞味期限を理解しよう=山田和美

相続は、現状を知らないと、「うちには関係ない…」と目を背けてしまいがち。その結果、実際に相続が起きた後、残されたご家族が困る様子をたくさん見てきました。(『こころをつなぐ、相続のハナシ』行政書士 山田和美)

骨肉の争いを避け、円滑な相続を実現するための重要ポイント

遺言書に有効期限はあるのか?

遺言書がないと、残された家族が困るかなあ」「自分も遺言書を書いた方が良いかも」。なんとなく、このように感じている方自体は、少なくないと思います。

私は、セミナーでも、このメールマガジンでも、繰り返し「遺言書の必要性」をお伝えしています。しかし、どうしても先延ばしにしてしまうという方が多い印象。「まだ早い」とか、「いずれ検討すれば良い」と感じているのです。

このように、遺言書の必要性自体は感じていても、いざ作成するとなると、作成するタイミングについて、悩まれる方も少なくありません。

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では、ここで一つ疑問です。遺言書には、有効期限のようなものはあるのでしょうか。

結論を言えば、遺言書に有効期限はありません。そもそも遺言書は、遺言者の死亡時に効力が生じるもの。そのため、有効期限という考え方にはなじまないのです。仮に50歳の時に作成した遺言は、その方が100歳まで生きたとしても、もちろん効力を持つということです。

また、公正証書遺言であれば、公証役場に原本が保管されますが、遺言者が120歳になるまでくらいは保管されるといわれています。

そのため、遺言書を作るにあたり、「有効期限」については気にする必要はありません

ただし、遺言書の作成後も状況は変わる

ただし、あまり長い時間が過ぎていくと、財産や家族との関係性など様々な状況が変化していきます。そのため、一度遺言書を作成したからといってそのまま放置するのではなく、できれば毎年内容を見直し、このままで良いのか、書き換えるべきなのかを検討することをお勧めします。

とはいえ、遺言書が公正証書である場合には、作成に費用もかかります。ですので、そう頻繁に書き換えるわけにもいきません。そのため、最初に遺言書を作る段階で、以後状況が変わっても、できるだけ書き直さなくて良い工夫をしておくと良いでしょう。

例えば、予備遺言を記載する方法。

予備遺言とは、万が一、遺言書で財産を渡したい相手が自分より先に亡くなってしまった場合に備え、「自宅不動産は長男〇〇に相続させる。ただし、私の死亡以前に長男がすでに死亡していた場合には、自宅不動産は長男の長女〇△に相続させる」などと、第二候補の受取人まで記載しておく方法です。

ここまで記載してあれば、万が一長男が先に死亡してしまった場合でも、遺言書を書き換える必要はありません。

また、預金については金額までは記載せず、口座番号までの記載にとどめておくことです。こうすることで、預金口座の中のお金を移し替えることで、渡す配分を変えることも可能です。

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相続トラブルになるのは、遺言書が残されていないケースが多い

実は、相続が起きてから困ってご相談に来られるケースの多くで、遺言書は残されていません。不慮の事故や突然のご病気などというケースも少なくなく、やはり「自分にはまだ早い」と思って遺言書を作成されていなかったのだと思います。

今後状況が変わるかもと考え、「まだ早い」と先延ばしにしてしまう気持ちもわかりますが、その結果、残された家族が困っているケースは非常に多いのです。

遺言書には有効期限はありませんし、また、状況の変化に対応する記載をすることも可能です。

ぜひ、元気で、早すぎるかな?と感じられているうちから、遺言書の作成を検討していただきたいと思います。

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こころをつなぐ、相続のハナシ』(2016年10月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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