マネーボイス メニュー

人工知能(AI)革命前夜。私たちが間もなく目にする「天国と地獄」とは=東条雅彦

普段、私はほとんどテレビを見ないのですが、とても興味深い番組が連続で放映されていました。

・2017年6月24日(土) TBS報道特集『AI(人工知能)と生きる未来』(30分)
・2017年6月25日(日) NHKスペシャル『人工知能 天使か悪魔か』(50分)

前者の報道特集については、かなり広い範囲にわたってAIの活用シーンを紹介しており、誰が見てもわかりやすい内容になっていました。後者のNHKスペシャルの方は少し上級者向けのように感じました。

「これはありだ」と感じたので、本稿では前者の「報道特集」を中心に取り上げていきます。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

果たして人工知能(AI)の発明は「人類最後の発明」になるのか?

人工知能を扱った番組が急増中

AI革命は、2020年代の中盤ぐらいに始まると言われています。そのため、2017年の現在は「AI革命前夜」とも呼べるべき位置にあるのですが、すでにフライング気味にAI革命が始まっているようにも思います。

6月24日と25日、連続で人工知能を扱った番組が放送されました。今後もこういう特集が増えていくることが予想されます。

24日(土)に放送されたTBS報道特集『AI(人工知能)と生きる未来』は、タイトルは「未来」となっていますが、すでに現在進行系の話です。「今、AIを活用したサービスやシステムがどのように利用されているのか?」について、一通り紹介されています。ぜひメルマガ読者さん全員に視聴していただきたい、と思える内容でした。

25日(日)に放送されたNHKスペシャルの方は、NHKらしい人間の生き方や倫理を問うような内容でした。人によっては、こちらの方が面白いと思えるかもしれません。

本稿では、TBS報道特集を中心に、ざっくりと紹介していきます。

【関連】人間はAIに敗れるか?投資の世界に訪れるシンギュラリティ(技術的特異点)=田渕直也

報道特集『AI(人工知能)と生きる未来』より

【1】組織ストレス予測サービス(00:00~03:34)

メンタルケアを必要とする従業員を人工知能で発見して、労務管理に役立てるサービスについて、紹介されています。

日立ソリューションズによると、約50%の確率で労務管理のデータ解析で精神的な問題で休職に至る人を当てられるそうです。私は昔、俗にいうブラック会社に勤めていたので、このシステムはとてもありがたいと感じました。

しかしながら、ブラック企業の経営者は、この手のシステムを導入しようとは考えないでしょう。「社員が鬱になってしまっては大変だ」と考える経営者のいる企業は、間違いなくホワイトだと思います。

本来、導入されるべき企業には導入されず、導入が不要な企業には導入されるということが起きるのかも…と感じました。組織ストレス予測サービスの内容自体は、社会的な意義もあり、とても素晴らしいと感じました。

【2】人工知能の基幹技術「ディープラーニング」とは!?(03:35~10:33)

囲碁の対局で井山裕太六冠が人工知能「DeepZenGo」に敗れて、将棋の対局でも佐藤天彦名人が人工知能「Ponanza」に負けてしまいました。ここでは、トップ棋士達がまったくコンピューターに歯が立たなくなった理由がわかりやすく解説されていました。

人工知能はここ1、2年で飛躍的な進歩を遂げました。それが「ディープラーニング」という技術のおかげです。

<従来>
ルール・特徴パターンを人間が定義して、設定する→人工知能

<ディープラーニング>
大量のデータで学習させる→人工知能→ルール・特徴パターンを導く

従来の人工知能は、人間が決めたルールや特徴パターンの範囲内で動作します。対して、最近はディープラーニングという手法を導入し、人間は最初から何もルールを設定することはありません。大量のデータをコンピューターに投入して、コンピューター自身にルールや特徴を導き出してもらいます。そのため、システムを作った技術者ですら、人工知能がどんな答えを出してくるかはまったく予想できません

人工知能はディープラーニングによって、人間の脳の中で行われている思考プロセスに似た動きをしながら、短期間に大量の学習を行っていきます。これにより、人工知能は人間の能力を大きく超えることに成功したのです。

Next: SFの世界が現実に!AIが普通に活躍する社会が近づいている



【3】「群衆行動解析」で街の人々の異変を検知する(10:34~14:12)

東京都豊島区では、NECが開発した「群集行動解析」システムを導入しています。防犯カメラの映像から街で起きた異変、犯罪、トラブル等を自動で検知できるシステムです。

これを見て私は、監視カメラを監視する警備員は不要になると感じました。

従来の監視カメラはどちらかいうと、「犯罪が起きた後の証拠や捜査目的」で使われてきました。このNECのシステムでは、リアルタイムに人々の異常な行動を検知できるため、犯罪を未然に防ぐのに役立つと思います。

【4】急性白血病の患者を救ったIBMのWatson(14:13~18:48)

人工知能は医療の分野にも浸透しつつあります。

医者も生身の人間なので、患者の診断結果を見落とすことがあります。ところが、コンピューターは人間のように疲れることもなければ、気が散ることもありません。黙々と正確に作業することを得意としています。

MRIの画像診断を人工知能に支援してもらっている医師がインタビューに答えていて、「今では人工知能がないと不安です」と話していたのが印象的です。

そして、IBMのWatsonの活躍についても取り上げられています。

Watsonは2000万件以上の医学論文、薬剤情報を学習して、人間の医師が治療するのに苦労していた白血病患者に対して正しい診療を下しました。「この患者はただの白血病ではなく『二次性白血病』ではないか?」と判断して、これがドンピシャだったのです。

その判断を下すのにかかった時間は、なんと10分! 医師もこのスピードにはとても驚いていました。

Watsonに支援してもらえれば、医師の仕事効率が格段に向上すると思います。

【5】自動運転は8割ぐらいはすでに完成している!(18:49~22:01)

この自動運転については「百聞は一見にしかず」で、ぜひ動画を視聴してみてください

私が見た感じ、ほぼ完璧な運転をしています。高速道路ではなく一般道でも、スムーズに自動車を操作しています。とんでもない時代が来たものです。

自動運転については、概ね8割は完成しているとのことです。残りの2割は「悪天候」や「道路の舗装状態が悪い」などの悪条件だと、間違った操作をしてしまうそうです(これも映像で確認できます)。

Next: 20年後、人間の仕事の半分はガチでなくなる



【6】「ロボットは東大に入れるか」東ロボプロジェクト(22:02~27:54)

東ロボプロジェクト」についてはニュース記事で読んだことはあったのですが、映像で見ると、とても迫力を感じました。ロボットが人間と同じように問題を読み解いて、答案用紙に文字を書き込んでいます。なんとも恐ろしい光景です。

まだ東京大学に合格する所までは行っていませんが、全国の有名大学を含む7割の大学に合格するレベルに達しています。

東ロボは、以下のような文章を読み解くのが苦手だそうです。

(1)岡田と広島に行った
(2)岡山と広島に行った

人間であれば、(1)の岡田は「人物」で、(2)の岡山は「地名」だとわかります。しかし、コンピューターには「岡田」という駅も地名もあり、「岡山」という名前の人間もいると判断します。コンピューターは文脈で判断するのが苦手なのです。

さらに、放送の中では次の問題が出されます。

(A)幕府は1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
(B)1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

このAの文章とBの文章の意味は同じでしょうか? それとも異なるでしょうか? これは中学生の44%、高校生の23%が正解できなかった問題になります。東ロボはこの手の文章が苦手なため、正解できませんでした。

この問題の答えは実際の動画でチェックしてみてください。

【7】10~20年後には仕事の半分がなくなるのはガチです!(27:55~29:37)

報道特集『AI(人工知能)と生きる未来』を見る限り、10~20年後には半分の仕事がなくなるという話はガチだと思います。

AI革命は2020年代の中盤頃から本格的に立ち上がってくることが予想されていますが、現時点でも結構、スゴイことになっています。

30分程度の番組なので、ぜひ下記より視聴願います。

TBS報道特集『AI(人工知能)と生きる未来』(30分)

Next: 人工知能は天使か悪魔か。NHK「AI特集」とホーキング博士の警告



NHKスペシャル『人工知能 天使か悪魔か』より

今年春、将棋界の最高位・佐藤天彦名人と最強の人工知能が激突する「電王戦2番勝負」が行われました。これまで人工知能の前に屈してきたプロ棋士たち。最後の牙城だった佐藤名人もまた、完膚なきまでに叩きのめされました。佐藤名人はインタビューで「人間には想像すらできない手を指してくる」と驚きを隠しません。

NHKスペシャルのAI特集は、将棋界最高の頭脳・羽生三冠が最先端の人工知能技術を追いながら、将来の行く末を予想します。

人工知能は天使なのか? それとも悪魔なのか?

こちらの番組はやや玄人向きの内容になっています。メルマガ読者さん全員にオススメしているわけではありませんが、興味のある人は下記のリンクよりチェックしてみてください。

NHKスペシャル『人工知能 天使か悪魔か』(50分)

ホーキング博士が警告するAI革命の到来

イギリスの天才物理学者ホーキング博士は、人工知能の発達に強い危機感を表明しています。

ホーキング博士はメディア等のインタビューで、次のように答えています。

このように、まるで人類の終焉を予期するような話をしています。

人間がAIに支配されるという世の中がやってくるのかどうか。「いやいや、そんなSF映画の世界じゃあるまいし」と言いたいところです。しかし、すでに私たちが子どもの時に見たSF映画の世界が現実になろうとしています

自動運転無人店舗については、もう実用化寸前のところまで来ました。医師と同じレベルでMRI画像を見て、腫瘍を検知できるコンピューターも完成しています。IBMのWatsonは、なんと患者の治療方針を提示することもできます。

AIが人間の能力を超える未来は、ほぼ確定しています。大切なことなので本メルマガでは何回も繰り返していますが、いわゆる「ハイテク企業ブーム」はブーム(流行)ではありません

ホーキング博士が指摘しているように、人工知能の発明は人類最後の発明になる可能性すらあるのに、「一時的なブーム」であるはずがないのです。

私はAlphabetの株価が20%ほど下がるのなら(状況によってはIBM、Amazon等も)、IB証券に借り入れしてでも、買い集めてもよいと思っています。

【関連】スーパーマリオでゆるーくわかる!AlphaGoが世界最強棋士に勝利した意味=東条雅彦

【関連】人工知能(AI)は人間から「トレーダー」という職業を奪いさるか?=矢口新

【関連】アマゾンのAI食料品店『Amazon Go』はあと5年で世界を何色に塗り替えるか?=吉田繁治

ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2017年6月29日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~

[無料 週刊]
■電子書籍『バフェット流投資入門(全292頁)』をメルマガ読者全員に無料プレゼント中♪世界一の投資家ウォーレン・バフェットの投資哲学、人生論、さらに経済や会計の知識が、このメルマガ一本で「あっ」と驚くほど簡単に習得できます!!著者はバフェット投資法を実践して、6000万円の資産を築き、さらにヒッソリと殖やし続けています。(ブログよりも濃い内容でお届け☆彡)●バフェットの投資法を小学生でもわかる例え話で学べます。●複利マジックで経済的自由の達成を目指します。●日本経済の現状から取るべき投資戦略がわかります。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。