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「ビットコインは怪しい」と思う日本人が知るべき仮想通貨の未来=俣野成敏

近年、新たな偽札対策の一環として、中国が検討しているのが「国の中央銀行が主体となって『仮想通貨を発行する』」という案です。

噂によれば、ビットコインの取引は中国人が8割以上を占めているともいわれます。それは、中国国民が自国通貨に対して不安を抱いていることの表れです。

現在、中国以外にも英国、オランダ、カナダなど、仮想通貨の発行を目指している国は複数あります。確かに中国政府の関係者がいうように「マネーロンダリングや脱税対策にも効果を発揮する」という一面はあるでしょうが、ことはそれだけにはとどまりません。

実は「国が仮想通貨を発行したがる」ことの背景には、単なる貨幣の「電子マネー化」だけに限らない、より大きな目的が潜んでいるのです。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年1月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【続編】「仮想通貨詐欺」にご用心!ビットコインの落とし穴はこう乗り越えろ=俣野成敏

もう後戻りはありえない。日本政府が仮想通貨を発行する日

仮想通貨はやっぱり「怪しい!?」

2016年、信販会社大手のジェーシービーが20代~60代の男女1000人を対象に仮想通貨に対する調査を行なったところ、約30%の人が「仮想通貨はよく分からない」と答えており、さらに「積極的に使いたい」と答えた人の割合は約10%にとどまっていることがわかりました。

比較的「新しもの好き」の20~30代だけで見た場合でも、使いたい人の割合は20%程度に過ぎず、どの年代でも「どちらかといえば使いたくない」「まったく使いたくない」と答えた人の合計が半数以上にのぼったことが明らかになっています。

上記の記事では、「いまだ仮想通貨に対する周知・理解は進んでいない実態が浮き彫りになった」といった調子で書かれています。記事の内容は「ビットコインを使いたい人って、まだこれしかいないんだ?」的な論調で書かれていますが、僕はむしろ「この時点で既に半数近くもの人が『使いたい』と思っている」という事実に驚きました。世の中は、まだほとんどの人がビットコインをひとつも持っていない状態だというのに、です。

このような状況の中で、「使いたい」と思ってる人が潜在的に半分近くいるというのはすごいことです。

もともとビットコイン自体は、デジタル通貨というよりは、金の仕組みに近いといえます。金は天然資源ですから、人間が勝手に生み出すことはできず、すでに地球上の75%は採掘済みだといわれています。金の価値は、金が「貴重=有限」だからこそ保たれているのです。無限にあれば、誰も欲しいとは思いません。

ビットコインも、金と同じく有限です。「電子通貨なのに?」と思われるかもしれませんが、ビットコインは誕生した時から2100万枚と発行予定枚数が決まっています。もともとの製作者はいますが、現在はその人の手を離れて、自動操縦になっています。2100万枚になったらそれ以上発行できないようにあらかじめプログラミングされていて、それがビットコインの価値を保つ役割を担っているのです。

かつて、紙幣はその価値を保証するために金で裏付けを行う必要がありました。これを金本位制といいますが、要は「この紙幣は、いつでも金と交換できます」という状態にすることです。そうしないと、基本的にはただの「紙」に過ぎない紙幣を、誰も信用してくれない可能性があったからです。

現在は、金に代わって国が貨幣の価値を保証しています。ところが今、人々の貨幣に対する信頼が揺らいでいます。

紙幣は有限に見えて、実際は無限に近いものです。中央銀行には、もともと「通貨の発行量を調整することによって通貨の価値を一定に保ち、物価の安定に努める」という役割があります。しかし今、通貨を発行したい欲求にかられた国家を抑制できている中央銀行はほとんど存在しません

当然ですが、世の中に出回る貨幣が増えればその分、価値が下がります。それによって起こる一番わかりやすい例とは「物価上昇」でしょう。

たとえば百円ショップにいくと、以前は5本1パックだった電池が今は4本しか入っていなかったり、1個100円だったものが150円に値上がりしていたりと、量が少なくなっているか値上がりしているかのどちらかになっています。一見、同じに見える100円でも、買えるものが少なくなっている=価値が下がっているということの証です。

給料も上がらないのに、お金の価値が下がっていくということは、我々の資産が目減りすることを意味します。文頭のところでお伝えしたように、中国の方々がビットコインを好んで使う理由というのも、自分の資産を守ろうとしているからです。

ビットコインが、これだけ短期間のうちに急速に人々の間に広まっているのは、こうした時代的背景があるのです。

仮想通貨は身近な「金融革命」

ここまで、仮想通貨が急速に広まりつつある様子や、国家ですら仮想通貨に着目し、発行を検討している段階にあることをお伝えしました。

仮想通貨とは、電子マネーの一種です。主にインターネット等を通じて物品やサービスの対価として使用できるもので、現状は中央銀行などの公的な発行主体や管理者は存在していません。

2016年5月、参議院本会議で改正資金決済法が可決され、仮想通貨が決済手段として認められることになりました。これまでの仮想通貨はモノ扱いだったために、購入するに際しては消費税がかかっていましたが、今年(2017年)の7月より、消費税の課税対象から除外されることになっています。

当メルマガでは今週、来週の2週に渡り「仮想通貨」について取り上げます。

最近、ニュースなどで度々耳にする仮想通貨ですが、すでにSuica(スイカ)WAON(ワオン)Edy(エディ)など多くの電子マネーが存在する中にあって、なぜ仮想通貨だけがこれほど騒がれているのでしょう?仮想通貨は、他の電子マネーとどう違うのでしょうか?

仮想通貨について人々が知りたいこととは、「仮想通貨とは何か?」「仮想通貨によって、僕らの生活はどう変わっていくのか?」「仮想通貨とどう付き合っていけばいいのか?」といったことだと思います。

謎めいた印象のある仮想通貨ですが、本特集を通じて、その謎が少しでも解明され、あなたが仮想通貨に興味を持つきっかけとなるのであれば、嬉しく思います。

それでは、早速始めましょう。

Next: なぜ仮想通貨は誕生したか?2つの理由と「ナカモト論文」のポイント



1. なぜ、仮想通貨は誕生したのか?

仮想通貨とは、インターネット上で決済手段として用いられる、暗号化された電子データのことです。ですから本当は、「暗号通貨」と呼ぶのが正しい呼び名ですが、混乱を避けるために当メルマガ内では「仮想通貨」で統一することにします。

仮想通貨は、新しい概念です。生まれたばかりのため、まだ多くのことが流動的で安定していません。しかしその反面、大きな可能性を秘めています。

まずは仮想通貨が誕生した経緯を簡単に見ていくことにしましょう。

【仮想通貨が発達したきっかけは「ナカモト論文」】

電子通貨が現実的に考えられるようになったのは、1990年代のインターネットの普及と無縁ではありません。具体的にいうと、1995年にはアメリカでFuture of Moneyという委員会が存在しており、日本でも1990年代後半には、さかんに実証実験が行われていました。

仮想通貨の中でも、初めて商用で用いられたとされ、現在、もっとも普及が進んでいるのが「ビットコイン」です。一般に、ビットコインは2008年10月にサトシ・ナカモトという謎の人物が「ビットコイン:P2P電子マネーシステム」という、わずか9ページの論文を発表したことから始まったとされています。

電子通貨を実現する上で、もっとも難題とされてきたのが「二重使用問題」です。電子通貨は現物がなく、理論上ではいくらでも製造可能です。1度受け取ったお金で何度も決済できるようでは、通貨としての価値を持ちません。電子通貨を決済手段として使うためには、その通貨の価値が担保されており、かつ「このお金を使った取引が唯一無二である」ということを証明する必要があります。

実際には、リアル通貨の場合でも、海外送金などのような遠方への送金時に同様の問題が起きています。海外送金といっても、現実には本物のお金を送っているわけではなく、データをやり取りしているだけだからです。

この問題に関して、ナカモト論文を引用してみましょう。

「インターネットでの商取引は、ほぼ例外なく、信頼できる第三者機関、つまり金融機関に頼っているのが現状である。……インターネットの特性上、金融機関は常にトラブルに見舞われる危険性があるため、完全に非可逆的な取引を扱うことができない。金融機関が、これらのコストや仲介手数料を上乗せすることによって、少額取引の可能性が失われている」

ここでのポイントをまとめてみると、以下の通りです。

(1)理論上、誰でも参入できて、データの改ざんが可能な電子取引では、通貨の担保性と取引の正当性を証明するために、信用の置ける金融機関を通しているのが現状

(2)電子上の取引は、完全に記録を消してしまうと、その取引が正当なものだったかどうかの証明ができなくなる。「記録を消さない」ということは管理が必要ということであり、費用が発生する

(3)金融機関を通すことによって、そこでの管理費や仲介手数料が上乗せされるため、少額決済を利用することができず、電子商取引の発展の妨げとなっている

ここには、仮想通貨誕生の直接的な理由が記載されています。

【仮想通貨が必要とされた背景】

インターネットの普及により、現在は人々が、お互いがどこにいるかは関係なしに、時間と距離を越えてつながることができる世の中です。これによって消費者の需要も多様化したため、少額のコストで、一部の人々を相手に行うビジネスも可能になりつつあります。

ところが、ビジネスの基盤であるはずの「決済」に関して、業界ではいまだに有効な手段を見い出せてはいません。ネット上では世界中の会社と瞬時に取引できるのに、銀行から海外へ送金しようとすると時間がかかり、手数料も1回の取引につき数千円程度かかります。

現在、ECサイトの主要な決済手段として使われているのはクレジットカードになりますが、これも実際は1回の取引につき3%~5%の手数料をカード会社から請求されています。誰がその手数料を負担しているのかというと、お店です。

一見、カード手数料は消費者には関係ないようにも見えますが、現実にはその費用分は値上げ圧力となります。巡り巡って、結局は買い手がそれを負担することになるのです。

このように、これだけ便利な世の中でありながら、現状に見合った少額取引決済を可能にする方法が、実はまだ見つかっていないのです。

仮想通貨が必要とされた背景には、

(1)インターネットの利便性を、本当の意味で活かした決済手段がないこと
(2)従来の送金方法では手数料が高く、人々の需要に対応できないこと

…の2点がベースとして流れています。

Next: ビットコインが普及すれば、現在の「銀行」はいらなくなる



2. ビットコインの特徴とは

現在では、ビットコインを筆頭に、星の数ほどの仮想通貨が「生まれては消える」といったことを繰り返しています。それはまさに創世記といっていい状態です。

今、「世界の3大仮想通貨」と呼ばれているのは「ビットコイン」「イーサリアム」「リップル」ですが、その仕組みを理解するには、やはりビットコインを例にするのがもっとも望ましいでしょう。本特集もビットコインを中心に話を進めていきたいと思います。

【ビットコインが普及すれば、銀行はいらなくなる】

ビットコイン誕生のもととなったナカモト論文には、このように書かれています。

「必要なのは、取引相手が信用できるかどうかではない。必要とされているのは、暗号技術に基づいた電子取引システムである。これによって、取引を希望する2者が、第3者機関を介すことなく直接取引をすることができるようになる」

これが実現できれば、第3者機関に支払うコストが不要となって少額決済が可能となり、それが経済の発展に寄与するというのがナカモト氏の主張です。しかしこの一文は、実際はそれ以上に大きな意味を持っています。

そもそも商売をする際に、必ずしも顔見知りだけと取引をするわけではありません。特にネットを介した取引となると、ほとんど知らない者同士で行われることになります。

そうなった際に安心して決済を行うためには、これまでは主に金融機関(第3者機関)を通す必要がありました。たとえば銀行やクレジット会社などが本人に代わってお金を徴収したり、送金したりすることによって、取引が間違いないかどうかを保証してきたわけです。

ところがビットコインのシステムではそれがいらないとなったため、これが普及することになったりすれば、銀行やクレジットカード会社などのビジネスモデルが成り立たなくなります。

【ビットコインは、国家の利権をも侵す】

さらに、絶対に通貨を偽造できない仕組みをつくれば、国家による通貨の裏付けそのものが不要となります(ビットコインの仕組みについては後述)。

もともと、現在の1万円札の製造コストは1枚20円ほどだといわれていますから、お金自体には価値はありません。ほとんどの通貨が、「国家への信頼によって価値を担保されているに過ぎない」という現代社会においては、国の動静が金融危機を誘発しやすい状態にあります。最近でいうなら2016年11月、インドのモディ首相が突如高額紙幣の廃止を発表したために、インド国内は大混乱に陥りました。

この一件が引き金となって、現在、ビットコインは1BTC(ビットコインの単位)あたり15万円を超える高値が付いています(2017年1月5日現在)。資金の逃避先としてビットコインが選ばれているということは、人々が仮想通貨を「金融危機が及ばない通貨」として認識し始めているということの表れではないでしょうか。

ナカモト氏の「第3者機関を不要にする」という思想は、国家の既得権益を犯しかねない思想をはらんでいます。国にとって、通貨発行権こそが最大の利権だからです。このように、ビットコインは「第3者機関の仲介」と「国家による保証」の両方を、暗号システムによって一挙に不要にできる可能性があることを示唆したのです。

Next: ビットコインの仕組みを成立させている「逆転の発想」とは?



3. ビットコインの仕組み

サトシ・ナカモト氏が、暗号通貨システムについての論文を発表したのは2008年10月ですが、そのわずか3カ月後には、ナカモト論文をもとにBitcoin-Qtというソフトが立ち上がり、初めてのビットコインが生成されました。

ナカモト氏がどういう人物なのか、その正体はいまだに明らかにはなっていません。上記の通り、ビットコインは既得権益を大きく侵す存在です。万一、姿をさらせば身辺に危険が及ぶことになるため、今後も名乗り出ることはないと見られています。

【莫大な設備費を投じても、旧来型金融システムのダウンは防げない】

ビットコインは、どこかの企業が開発して管理している、というものではありません。ナカモト論文に基づき、多くの研究者が構築したシステムの組み合わせで成り立っています。ナカモト氏は、すでにビットコインの開発・管理に携わってはいません。

ビットコインの登場以後、あまたの仮想通貨が登場していますが、どれも基本的には開発者がそのまま管理しているため、完全に中立な立場の仮想通貨は、今のところビットコインがほぼ唯一といえるでしょう。つまりビットコインは「自動操縦状態」にあるということです。

ビットコインのシステムは、市井の技術者がお互いに分担、開発し、現在も改良が続けられています。管理責任者のいないビットコインは一見、無計画で不安定なようにも感じられますが、実はこのような開発方法は、現在広く普及しています。オープンソースはその一例であり、有名どころではLinuxやSolarisなどがあります。

一般に、管理者の責任のもとに、データやシステムが一括管理され、そこに利用者が接続してサービスを受ける形態をクライアントサーバー方式といいます。たとえば銀行のシステムや、企業が管理しているセキュリティシステムなどがそれにあたります。

通常、クライアントサーバーシステムは、万一に備えてサーバーやバッテリー、バックアップ用設備などが二重三重に用意されています。営業している最中にシステムがダウンしては大変ですから、企業は莫大な設備投資を要求されます。しかし、それをしても完全にシステムダウンを防ぐことはできません

【発想を逆転させたビットコイン】

それに対して、ビットコインが採用しているのは、P2P(ピアトゥピア)方式と呼ばれるものです。クライアントサーバー方式が、中央サーバーを起点に、主にデータの送り手と受け手に分かれているのに対して、P2P方式では、端末同士が直接つながり、双方向のやり取りが可能となっています。

P2P自体は以前からあったもので、日本では2004年にP2Pを利用したWinny(ウィニー)というファイル共有ソフトが、著作権法に触れているとして問題になったことがあります。

ビットコインの仕組みをまとめると、

(1)特定の管理主体を持たない
(2)中央サーバーを持たず、P2Pで利用者同士のパソコンをつなげて、取引を処理する(ブロックチェーンシステム・後述)
(3)一般の取引は、ウォレット(財布)というソフトを通じて取引データの記録を行う

…ということになります。

「仮想通貨の実態とはどのようなものなのか」を一言でいい表すと、それは「取引データ記録が連なったもの」のことです。

先ほど「仮想通貨が発達したきっかけは『ナカモト論文』」のところでもお伝えしたように、現物がなく、ただの電子データに過ぎない仮想通貨は、いくらでも複製できるため、常にその取引が正当であることを証明する必要があります。ですからビットコインは、「過去の全取引データ」をさかのぼれるようにして、不正できないようにしたのです。

さらに、ビットコインでは、その過去の取引データがすべて公開されており、誰でも見ることが可能です。

銀行や会社などの管理主体を持つネットワークでは、セキュリティは管理主体が責任を負っているという性質上、閉鎖的でしかも有限なものです。けれどビットコインの場合は、常にネット上にさらされているため、かえって不正がしにくい状態になっています。

管理主体を持つネットワークが、システムダウンを起こさないように多大な労力を費やしているのに対して、ビットコインは逆転の発想から、「システムがダウンする」ことを前提につくられています。

P2P方式を採用しているビットコインは、複数のコンピューターが横につながり、誰でも同じ作業ができるようになっています。世界中に散らばるすべてのコンピューターが一度に落ちることはありえません。どこかが落ちてもどこかが処理し、取引を続けていけるように設計されているのです。

ビットコインは管理者がいない」という欠点を、「参加者すべてが責任者となる」ことによって解決し、同じ発想で、セキュリティも強固なものにしているのです。

Next: 「ビットコインは怪しい」は本当か?/マウントゴックスが与えた影響



4. 「ビットコインは怪しい」は本当か?

ビットコインの基本的な構造はお分りいただけたのではないかと思います。ここまでお読みいただいた方が、次に抱く疑問とは「なぜ、仮想通貨は度々事故が起こっているのか?」ということだと思います。

実は、それらの事故はビットコインが持つ安全性とは関係のないところで起こっているのです。

【ビットコインが「通貨になった」瞬間】

ところで、ビットコインは最初から通貨として機能していたわけではありません。2009年1月に初めて発行された時は、ただのゲームコインと大差ない代物に過ぎませんでした。

初期のビットコインは送金テストを行ったり、実験し改良するといったことを繰り返しながら、マニアの間に徐々に広まっていったものと考えられます。ある時、エンジニアが暗号理論のメーリングリストに「誰か1万ビットコインとピザを交換しない?」と面白半分に書き込み、それに応じた人がいたことから、やがて本物の通貨として機能するようになったというのは、有名な話です。

ビットコインが、一気に値上がりするきっかけとなったのは、2013年に起こったキプロスの金融危機でした。その後も、ギリシャの取り付け騒ぎ中国の人民元切り下げインドの高額紙幣廃止など、有事の際には必ず値上がりしています。現在、ビットコインの時価総額は1兆円を超え、人々が資産分散を考える際の選択肢のひとつとして、検討されるまでになっています。

【マウントゴックスが与えた影響】

日本人が「仮想通貨」という概念を初めて知ったのは、やはり「マウントゴックス事件」からになるでしょう。不運なことに、この事件によって、日本人の間ではすっかり「仮想通貨=怪しい」というイメージが定着してしまいました。

マウントゴックス(Mt.Gox)とは、ビットコインの私設取引所のことです。もともとは、カードゲームの稀少カードを売買する取引所として始まりましたが、後にビットコイン取引が儲かると見て、業態転換をしています。その目論見が当たり、業態転換後に売上は急上昇。2013年には世界のビットコイン取引の7割を扱うまでになっていました。

2014年2月末、それまでも支払い遅延が起こっていたマウントゴックスは全取引を中止し、数時間語にはサイトが閉鎖されます。記者会見ではフランス人の社長が、「システムの脆弱性を突かれてビットコインが流出した」と謝罪しましたが、そこから「システムの脆弱性=ビットコインの通貨としての安全性の問題」と曲解されました。

マスコミも、多くの識者も「中央管理システムのないビットコインが、通貨としての機能を保てるわけがない」と発言しました。後に、この事件は社長の自作自演だったことが判明しますが、それでも「ビットコイン=怪しい」のイメージだけは、人々の間に残ってしまったのです。

米ドルなどを思い浮かべてみていただければお分かりのように、通貨であるビットコインは、そのままでは使うことができません。たとえば日本人が持っていないビットコインを使いたい場合、まずは日本円を支払って、ビットコインを購入(両替)しなければなりません。マウントゴックスとはこの、ビットコインを購入するための両替所だったわけです。

両替所とは、ビットコインを運営する側ではなく、いわば利用する側です。彼らにとって、ビットコインとはあくまでも「売り物」に過ぎません。「システムが脆弱」というのは、「お店」である取引所の脆弱性のことであって、ビットコインそのものの脆弱性ではないのです。

去年(2016年)は、6月に「第2の仮想通貨」と期待されているイーサリアムと、8月にビットコインの香港取引所から、大規模な資金流出事件が起きています。やはり、どちらも仮想通貨のシステム自体ではなく、両替所や資金集めのために組んだファンドのシステムからハッカーに侵入されています。

このように、仮想通貨の事故は、通貨そのものよりも、むしろその周りで起こっているという事実を、忘れないようにしてください。

Next: 管理主体を持たないビットコインのセキュリティが強固なワケ



【ビットコインのセキュリティが強固なワケ】

管理主体を持たないビットコインに対するもうひとつの疑問とは、「誰がコインを生成しているのか?」ということではないでしょうか。それに関しても、ビットコインは巧妙な仕組みを用意しています。

特定の管理者のいないビットコインでは、代わりにP2Pによってつながった自由参加者によってシステムが維持されています。しかし、これを完全に参加者の善意に頼っているようでは、システムが不安定になってしまいます。そこで、ビットコインでは参加者にインセンティブを用意しています。それは「システム維持に協力してくれた人に新しく生成したビットコインを支給する」というものです。

「ビットコインのシステム維持に協力する」とはどういうことかというと、それは「取引の正当性を承認する」作業のことを指しています。ビットコインの取引が行われた際には、必ずその取引が正当なものか、ウソではないかを確認する作業が入ります。この作業をマイニング(採掘)と呼びます。

ビットコインでは、もっとも早く承認作業を終えた人にコインが報酬として支払われるシステムになっています。現在では、作業を行うためには超高速コンピューターと大量の電力を必要とするため、個人でマイニングをするのは難しくなっています。現在、一般的に行われているのは「プールマイニング」と呼ばれる、チームプレーでの採掘です。

ところで、ビットコインの取引は、その都度行われるわけではなく、約10分に1回、溜まった未処理の取引を一括処理し、認証します。このデータの塊を「ブロック」と呼びます。取引の度に、ブロック(取引データの塊)が鎖のように連なってゆきます。これを「ブロックチェーン」といいます。

各ブロックは、内部に一つ前のブロックの電子署名を含むことによって、ブロック同士のつながりを強化しています。もし、途中でチェーンを切って取引を詐称しようとしても、中に含まれている電子署名が違っていたら偽造がバレてしまいます。バレないためには、電子署名も偽造しないといけませんが、その間にも、どんどん正しいブロックチェーンは伸びていくため、そのすべてを偽造するのは、事実上不可能とされています。

このように、ビットコインの仕組み上、詐称するよりは、同じ労力を使って正規の手段で運営に関わってゆく方が、結局は得策となるようなシステムになっているのです。この仕組みを、「プルーフ・オブ・ワーク(proof of work)」といいます。
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【続編】「仮想通貨詐欺」にご用心!ビットコインの落とし穴はこう乗り越えろ=俣野成敏

【2017年1月5日号 Vol.32 仮想通貨って一体何?(上)~あなたの身近で起こっている金融革命~目次】

〔1〕イントロ:
仮想通貨はやっぱり「怪しい?!」

〔2〕本文:
仮想通貨って一体何?(上)
~あなたの身近で起こっている金融革命~

1、なぜ、仮想通貨は誕生したのか?
◎仮想通貨が発達したきっかけは「ナカモト論文」
◎仮想通貨が必要とされた背景

2、ビットコインの特徴とは
◎ビットコインが普及すれば、銀行はいらなくなる
◎ビットコインは、国家の利権をも侵す

3、ビットコインの仕組み
◎莫大な設備費を投じても、システムダウンを防げない
◎発想を逆転させたビットコイン

4、「ビットコインは怪しい」は本当か?
◎ビットコインが「通貨になった」瞬間
◎マウントゴックスが与えた影響
◎ビットコインのセキュリティが強固なワケ

5、今、熱い注目を浴びている「ブロックチェーン技術」とは
◎コストを抑えるために考え出された2つの方法
◎ブロックチェーンでは、ビットコインの送受信はできない
◎実際にビットコインを購入・使用するには?

6、「仮想通貨が僕らの身近にある」未来
◎仮想通貨を通して「見える未来」
◎日本政府が仮想通貨を発行する時

7、もう、後戻りは「ありえない」

★本日のワンポイントアドバイス☆★
電子マネーとビットコインの違い4項目

〔3〕次回予告(予定):
仮想通貨って一体何?(下)
~仮想通貨詐欺にご用心!~

〔4〕セミナーのご紹介:
天才起業家のセールスノウハウを大公開します!

〔5〕今週のQ&Aコーナー:
お金を500万円増やすには、どうしたらいいの?

〔6〕今週の気になるトピックス:
1、国が180度方向転換!副業が「OK」の世の中へ

〔7〕編集後記:
【無料動画プレゼント】動画のテーマは「癌」!


※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年1月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2017年1月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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