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吹き飛んだ楽観と強気。僕が考えるトランプ相場「撤退の条件」=長谷川雅一

12日深夜のトランプ会見には驚きました。僕は、トランプ氏は「大統領として、うまくやるだろう」と楽観していましたが、あの会見で、いわゆる「トランプリスク」を目の当たりにして、その「楽観」がガラガラと崩れてしまいました

僕は2017年の投資について、「安くなったら買い」というスタンスをとっていました。しかし、12日深夜のトランプ会見を見て、買う気を失いました

いよいよ「トランプ政治」が始まります。これからの相場がどうなるか?僕の新たな予想を詳しく書きます。今年はやはり、投資家にとって大変な1年になりそうです。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017/1/15号より)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

疑念はやがて確信に?僕の楽観論は間違っていたかもしれない

「トランプ相場」の持続性に疑問符

12日深夜に、トランプ米次期大統領の記者会見が行われました。今年の相場は、そのすべてがトランプ氏にかかっていると言っても過言ではありませんので、これは非常に重要なイベントでした。

ありがたいことにNHKが同時通訳付で放送してくれたので、僕は、リアルタイムで会見を見ることができました。

会見を見て、僕は、「まずいな」とつぶやきました。トランプ相場の持続性が非常に危うくなったと感じたからです。

そして、「この会見をキッカケに、ドル円相場のトレンドは上昇から下落へ反転するだろう」と直感しました。

実際、トランプ氏の会見が行われている最中から米ドル/円は下落を始め、116.80円付近から114.20円付近まで、最大で2.6円ほど下落しました。翌日、米ドル/円は一時113.80円付近まで下落。週末(13日)の米ドル/円は、日経平均の反発上昇にともない東京時間こそ堅調でしたが、そのあとは、じり安の動きでした。

13日(金)の22時30分に出た小売売上高などの指標が好調で、米ドル/円は、いったん115円を上回る強い動きも見せましたが、その後また売られて、結局114.50円付近で力なく引けています。

トランプ会見を経て、多くの投資家が「ドル買い」から「ドル売り」に、トレードの方向を変えたのです。

ドル円相場は1ドル=100円に向け反転しはじめた?

トランプ会見から先週末までの動きを見る限り、やはり、「ドル円相場が反転した」と見るべきではないか、と僕は思います。ドル円の上昇トレンド(円安方向の流れ)が終わって、下落トレンド(円高方向の流れ)に入った可能性が高いと考えます。

米ドル/円は12月15日118.70円付近まで上昇したあと、なかなか120円に到達できないまま、ゆるやかに上値を切り下げてきました。そして、トランプ氏の記者会見を機に、115円のサポートを割り込みました。

ドル円レートは5円刻みで動くことが多いので、こうなると、ドル円が次に向かうのは110円です。ドル円相場は、すでに110円を目指して下落を始めたと見るべきだと思っています。

以前にも述べたように、ドル円の長期チャートのトレンドは下向き(円高方向)で、レートの落ち着きどころは100円付近である、というのが僕の持論です。そもそもドル円は115円でも「高い」水準なのです。

何かあれば、米ドル/円は125円付近まで吹き上がることがあるが、それは一時的な現象であって、結局は100円に戻ろうとするのがドル円相場の基本性質だと、僕は考えています。今、その「戻り」が始まった可能性があります。

117円近辺まで反発しても、もう積極的には買いづらい

もちろん、これまでの上昇トレンドの影響がまだ残っていますし、トランプ氏の政策に対する期待も、なくなってはいません。「大統領就任式」という華やかなイベントも控えています。

ですから、すぐにドル円が急落するような動きにはならないかもしれません。反発しては売られるような、ジグザグの値動きになる可能性もありますし、横ばいの動きになるかもしれません。

発表される経済指標がよければ、あるいはトランプ氏の就任式をキッカケに、いったん116~117円付近まで、米ドル/円が反発する場面すらあるかもしれません。

したがって、110円到達には、それなりの時間を要する可能性がありますし、下落トレンドがハッキリしない可能性もあります。しかし僕は、米ドル/円が積極的に買われる局面は終わり、今後は、上値が重く売られやすい動きが続くのではないか、と予想しています。

その原因は、就任前からすでに「スキャンダルまみれ」になっているトランプ氏です。トランプ氏が「相場の重し」になったのです。

Next: これまでの「楽観論」を「悲観論」に置き換える必要が出てきた



あの記者会見で僕の「楽観論」は吹っ飛んだ

2017年の相場について、僕は昨年末、「トランプ氏の政治が意外とうまく行き、夏頃までは上昇トレンドが続くのでは?」と予想しました。

しかし、僕のこの「楽観論」は、12日深夜の記者会見で、こっぱみじんに吹っ飛びました。僕だけでなく「世界が失望した」のではないかと思いますし、あの不穏な空気から「明るい未来」を描くことができた人は、あまりいなかったのではないかと思います。

あの記者会見については、「期待された経済政策についての言及がなく、失望感から相場がリスクオフになった」などと報じられました。

しかし、僕は、あの会見の本質は「トランプ政治の危うさが露呈されたこと」であり、それがリスクオフの要因だったと見ています。経済政策への言及がなかったから下げたわけではない、と思うのです。

また、「確かに雰囲気は悪かったが、トランプ氏の経済政策が変わるわけではない。大丈夫だ」といった楽観論も聞かれました。しかし、僕は、あの「雰囲気の悪さ」こそが大問題だと感じています。

トランプ政治の「息苦しさ」がリスクオフ要因となる

先の記者会見は、いわゆる「ロシア疑惑報道」の否定から始まりました。その論調は一方的で「CNNの報道はデマである」の一点張りでしたが、メディアとの「ぎくしゃく感」や、会見場の「息苦しさ」は相当なものでした。

日本でも安倍総理の長期政権下で、報道が政府寄りとなり、特定秘密保護法案や安保法制が強行的に採決され、次は「共謀罪の法制化」も検討されるなど、「息苦しい」状況が続いています。

先日は、政府を批判する内容が含まれる書籍(『日本会議の研究』)が発売禁止になるなど、ちょっと驚くような出来事もありました。

ただ、こうした日本の状況など「かわいく」思えるほど、あの会見場の「息苦しさ」を強く感じました。

今後、あの調子で「トランプ政治」が進むとしたら?相場にとっては、かなり「まずい」ことです。あの「息苦しさ」が相場のリスクオフ要因になる可能性があります。

また今後、実際に具体的な「まずいこと」が出てくるのではないか、という予感もあります。

当選後の穏健な姿は「仮の姿」だった?

僕は、当選後のトランプ氏のスピーチに「賭けた」のです。あの穏やかで融和的だったスピーチに。

彼が、あの路線で政治をやってくれるんだったら、アメリカが、そして世界が、いい方向でまとまる可能性がある、と。しかし、どうやら、そうはならないようです。

トランプ新大統領が、先日の会見で見せたような、強権的、独裁的な態度で政治を進めたら、どうなるか。

まず、彼の国(アメリカ)が混乱します。いえ、すでに十分、アメリカは混乱しています。そして、アメリカが混乱したら、どうなるか?世界が混乱します。

トランプ氏は、ろくに事実関係を調べもしないで外国を批判したり、外国に無理な要求をつきつけたりもします。そうすれば、当然、外交がぎくしゃくしますし、地政学的リスクも高まります。

世界が混乱して、地政学的リスクが高まったら?政治経済が混乱してマーケットに不安心理が充満したら?当然、マーケットはリスクオフになり、円が買われ株が下がります

そうなったら最後、アメリカの金利が上がろうが、アメリカが革新的な政策を実行しようがリスクオフの流れは止まらないし、それがむしろ「裏目」に出たりするようになる可能性があります。

彼が、当選後のスピーチのような穏健な態度ではなく、選挙運動中の「獣(けもの)」のような姿で、大統領職を遂行するとなれば、これまでの楽観論を悲観論に置き換える必要が出てきます。

僕が提示した、相場に対する楽観的な見方も、当然、撤回しなければならなくなります。

Next: 18,500円なら買いなのか? いや「安くなったら買い」は危険だ



「安くなったら買い」は危険だ

僕は2017年の投資について、「安くなったら買い」というスタンスをとっていました。しかし、12日深夜のトランプ会見を見て、買う気を失いました

市場関係者の中には、「まだまだ買いだ」という見方があるようです。事実、13日の東京市場では、日経平均は152円の上昇となり、トランプ会見後にただよっていた嫌なムードが払拭されたようにも見えました。

金曜日の引け後、僕は、「ほら、やはり大丈夫でしたね」と話す、市場関係者の声を聞きました。

しかし、金曜日はSQでしたから、その影響もあったでしょう。また、数字をよく見れば、13日の日経平均株価の終値は19,287円。19,300円にも到達できていません。

振り返れば、年末年始の上昇も、まったく物足りない結果に終わっています。政府が莫大な資金を、株式市場に投じているにもかわらず。

大幅調整に要注意、安易な押し目買いも禁物

1月16日からの相場は要注意だと、僕は思っています。このまま「脳天気」な相場が続き、日経平均株価の、上は19,500円ぐらいまで、あるかもしれません。

しかし一方で、下も18,500円ぐらいまであるかもしれないと見ておくべきではないか、と思っています。

さらに、「では、もしも日経平均が18,500円まで下げれば買いですか?」と聞かれても、「買いです」と答える自信がありません

最近は、米ドル/円が多少、円高にふれても、日経平均が下げづらい状況が続いていますが、これは為替が、まだ115円付近と「十分に円安圏内だから」です。

僕は、今週以降、為替は116円~112円ぐらいのレンジ内で、売り優勢に動くのではないか、と予想していますが、円高トレンドがハッキリしてくれば、当然、日経平均にも影響が出てくるでしょう。

すでに「混乱の時代」は始まっている

このメルマガで、僕は、「トランプ相場は終わらない」「2017年1月に『暴落』は起こらない」と書いてきました。しかし、その「トランプ相場」はすでに終わってしまったかもしれません。

日本政府による株の買い支えも粛々と実行される中、「株が下がらない理由」も多く、前述のように、まだすぐにハッキリとした下げ相場は来ないかもしれません。

しかし、12日深夜のトランプ氏の記者会見で「混乱の時代」が始まったことを、我々投資家はハッキリと認識しておかなければならない、と思っています。そしてこの「混乱の時代」は、トランプ氏が大統領であり続ける限り続くのです。

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017/1/15号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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