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「移民国家・日本」への道~自称愛国者たちはなぜ怒らないのか?=三橋貴明

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年11月3日, 4日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

押し寄せる偽装難民。このままでは日本全体が「修羅の国」になる

技能実習制度、介護分野にも解禁

先日11月1日に技能実習制度が介護分野に解禁されました。

発展途上国の外国人が日本で働きながら技術を学ぶ技能実習制度は、1日から新たに介護が対象に加わり、介護施設などで外国人実習生の受け入れが可能となります。

外国人技能実習制度は、発展途上国の外国人を対象に、日本で働きながら技術を学んでもらう制度で、実習生は去年末の時点で農業や漁業、製造業などの70を超える職種で合わせて23万人に上っています。<後略>

出典:外国人技能実習制度 介護施設でも受け入れ可能に – NHKニュース

人手不足という生産性向上の絶好の機会が訪れたにも関わらず、我が国は安易な移民受入拡大に動き、経済成長の芽を摘むと同時に、移民国家化への道を着実に歩んでいっています。

「カネ、カネ、カネ」の政治と経済

なぜ、生産性向上ではなく、外国人労働者なのか。もちろん、そちらの方が「安い」ためです。

結局のところ、WW1以前の第1次グローバーリズムの世界。特定のグローバル資本の政治力が巨大化し、「グローバル市場で利益を上げるためには、国民の人件費は上げられない」という、百年前以上も昔の発想で、日本の「経済」や「政治」は進んでいるという話です。

カネ、カネ、カネ。誰もが目先の利益のみを追求し、経世済民を忘れ去る。まあ、企業が自社の利益のために動くのは仕方がない面もありますが、問題は政治です。

政治までもが「カネ、カネ、カネ」。政府の役割を放棄し、給料の引き上げや生産性向上は民間企業に丸投げ。自らは、絶対に財政支出拡大に動かない。「だって、クニノシャッキンデハタンスル!」というわけでございます。

企業は企業で、自社の利益拡大のために、国民を「安く雇用する」ための政治的動きに余念がない。

技能実習制度が、介護分野に続き、コンビニエンスストアにも対象範囲が拡大するのは確実だと思います。何度も書いていますが、すでにコンビニ業界は完全自動レジという、生産性向上のための技術投資や設備投資が始まっています。この状況で、「外国人を安く雇用できる」制度を拡大することは(すでに、留学生がコンビニで働いています)、技術進歩にブレーキをかけることになりかねません。

やがて、日本は移民国家化し、現在の欧米諸国の人々のように「テロ」に怯えながら生きていくことになるのでしょうか。それ以前に、国民の貧困化が続くため、社会は荒れに荒れることになると思いますが。

移民国家化と格差拡大が引き起こす「国民の分断」

個人的に恐ろしいのは、日本は、移民国家化や所得格差拡大により、国民の分断が進んでは「決してならない」国である点です。

理由はもちろん、我が国が自然災害大国であるためです。

自然災害大国で、移民国家化や格差社会化してしまうと、いざ「次なる大震災」の際に、国民が助け合うことなく、まさに北斗の拳のごとき修羅の世界に突入することになります。

自然災害大国である以上、日本国民はナショナリズム(国民の助け合いの意識)を破壊するグローバリズム、移民国家化、所得格差拡大に抗う必要があります。

次なる大災害を生き延びるためにも、日本国は移民国家になってはいけないのです。

Next: 日本に押し寄せる「偽装難民」法務省が珍しくまともな改善策を?



法務省、「外国人就労を大幅に制限」する方針を固める

法務省は、これまでの難民に対する、「申請6か月後から一律に日本での就労を許可する」という、極めて問題がある制度を改め、就労を大幅に制限する方針を固めたとの報道が流れています。

就労目的の「偽装申請」が横行する日本の難民認定制度について、法務省は、申請6か月後から一律に日本での就労を許可する現在の運用を撤廃し、就労を大幅に制限する新たな運用を始める方針を決めた。

早ければ11月中にも実施する。年間1万人を超す申請者の大半が就労できなくなるとみられ、急増する申請数の大幅な抑制が期待される。

同省関係者によると、審査には平均約10か月かかっていたことから、新たな運用では、全ての難民申請者について申請2か月以内に「簡易審査」を行い、四つのカテゴリーに分類。「難民の可能性が高い申請者」については、6か月が経過しなくても、速やかに就労を許可する。同省幹部は、ここに分類される申請者は、全体の1%未満とみている。<後略>

出典:難民「偽装申請」防止へ新対策、就労を大幅制限 – 読売新聞

ほとんどが「偽装難民」

何しろ、後ほど紹介する図の通り、我が国の難民認定申請数は増加の一途をたどってます。その割に、難民認定者は30人に満たない

要するに、日本で難民申請する人のほとんどが「偽装難民」なのです。何しろ、「借金から逃れるために難民申請する」といった申請すら、真面目にチェックをしなければならないのです。

偽装難民だろうが何だろうが、とにかく日本で難民申請しさえすれば、6か月後から働けるという異様な状況でした。当たり前の話ですが、短期ビザで日本に入国し、難民申請をすることで職を得ようとする偽装難民が、増加の一途を辿っていました。

<日本の難民申請数と認定者数(人)>

出典:三橋貴明公式ブログ『新世紀のビッグブラザーへ

新たな制度では「難民の可能性が高い申請者」については、6か月が経過しなくても、速やかに就労が許可されます(全体の1%程度とのことです)。

代わりに、明らかに難民に該当しない者、あるいは再申請者については、在留期限後に入管に強制収容されることになります(その後、本国に送還される)。

難民申請制度の規制強化は、昨今の日本にしては珍しくまともな動きです。

Next: 難民問題を他国からとやかく言われる筋合いはない



他国からとやかく言われる筋合いはない

難民認定制度が厳格化されると聞くと、「外国から批判されるのでは?」などとナイーブ(幼稚)な感想を抱く国民が少なくないのが現代日本なのでしょうが、それこそ「主権」の問題です。

日本国が難民を受け入れるのか、受け入れないのか。あるいは、移民労働者についていかに考えるかは、それこそ我々が主権に基づき、判断するべき事項なのです。他国から、とやかく言われるべき問題ではありません

しかも、日本は先進国の一員として、難民を法に則って受け入れています。日本で難民申請する外国人のほとんどが「偽装難民」であることが、問題なのです。真の意味の難民は、普通に日本に滞在できます

今回の難民関連の規制強化で、偽装難民は激減すると思います。

先進国の甘い対応が移民問題を引き起こす

ドイツもそうですが、結局は、「○○国は、移民に甘々で、これこれの手続きをすれば、普通に働ける」といった情報の蔓延が、移民拡大を引き起こすわけです。

実際、日本に偽装難民として滞在するための「マニュアル」を教示するビジネスを展開していたネパール人が、今年はじめに逮捕されました。

11月1日(日本時間)のNYのテロで実行犯として逮捕されたウズベキスタン人は、移住希望者に抽選でグリーンカード(アメリカの永住権)を付与する「移民多様化ビザ抽選プログラム」を利用し、米国に滞在していました。

【関連】移民国家化する日本。「外国人労働者受け入れ」がもたらす悲惨な未来=三橋貴明

アメリカのトランプ大統領は、「多様化抽選プログラムを終了する手続きを開始する」と、同プログラムを終了することを表明。現在、アメリカは世界各国の応募者の中で、抽選で5万人にグリーンカードを付与しています。しかも、当選者の親族も永住権を得られるという「寛容」な制度です。

日本の難民申請制度にせよ、アメリカの移民多様化ビザ抽選プログラムにせよ、先進国の「寛容」(日本の場合は「適当」)な制度が、各国に災厄をもたらしているというのが「現実」なのです。

日本では前述の通り、技能実習生という「制度」が介護産業にも適用され、さらにはコンビニ産業にも展開されることは確実です。

結局、各国の移民比率を決定しているのは「制度」であることを認識した上で、別に外国人を排斥しろなどと主張する気はありませんが、「節度あるグローバリズム」の道を、日本もアメリカも探らなければならない時期なのです。

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年11月3日, 4日号より
image by:Takashi Images / Shutterstock.com

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