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ゆっくりでいいなら億万長者確定!常勝のS&P500インデックス投資法=東条雅彦

インデックス投資シリーズを開始して、いつもよりも多くの質問が寄せられています。中でも最も多くいただいている質問は、「今、S&P500に投資したいと思っているが、それは正しい投資行動なのか?」というものです。

現在、バンガード S&P500 ETF(VOO)の価格は210ドル前後で推移しています。過去から現在までの価格推移を眺めると、明らかに高値に見えます。去年の12月に私が参加した講演会でも、あのジム・ロジャーズ氏が米国株への警戒感を露わにしていました。

インデックス投資では、タイミングを意識せずに、決まった期間で決まった金額をどんどん買っていく、という方法を取ります。しかし、この手法に違和感を持つ人が多いのも事実でしょう。

本当のところ、インデックス投資において、「売買のタイミング」はどこまで意識しなければいけないのでしょうか?考えてみましょう。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

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億万長者になりたいなら、慌てずじっくり「インデックス投資」がオススメ

ほぼ確実に利益になる! S&P500に投資することのメリット

どんな投資でも、「リターンは平均年利、リスクは標準偏差」で表せます。ファイナンス理論ではリスクを「危険」ではなく、「価格変動のバラツキ」だとみなします。そして、このリターンとリスクの大きさは正比例します。

リターンの高い投資を狙う場合、価格変動が大きく上下に振れる投資を実行しなければいけません。反対にリターンの低い投資で満足する場合、その見返りとして価格変動は小さくなります。

大雑把なイメージで、銀行預金債券投資株式投資の3つは、次のようなイメージになります。

<銀行預金>

開始:100万円
1年後:100万円 (前年比0%)
2年後:100万円 (前年比0%)
3年後:100万円 (前年比0%)
⇒平均年利:0%、標準偏差:0%

<債券投資>

開始:100万円
1年後:98万円 (前年比-2%)
2年後:104万円 (前年比+6.12%)
3年後:106万円 (前年比+1.92%)
⇒平均年利:2%、標準偏差:3.32%

<株式投資>

開始:100万円
1年後:80万円 (前年比-15%)
2年後:110万円 (前年比-29.4%)
3年後:125万円 (前年比+13.6%)
⇒平均年利:7.7%、標準偏差:18.3%

銀行預金は完全に平和ですが、そのかわり平均年利も標準偏差もほぼ0%です。

それよりも少し高いリターンを狙う債券投資では、銀行預金よりも高い利益が得られます。そのかわり、元本保証はありません

もっと高い利益を狙う株式投資の場合、価格変動がどうしても激しくなってしまいます。

しかし、S&P500のようなインデックス投資に投資する場合、平均年利は常にプラスであり、途中経過を気にしなければ、ほぼ確実に利益になります。(後で詳述します)

決して手を出してはいけない「2つの投資」

さて、もし次のような投資(=投資案件A)があったとしましょう。

<投資案件A>

開始:100万円
1年後:200万円 (前年比+100%)
2年後:400万円 (前年比+100%)
3年後:800万円 (前年比+100%)
⇒平均年利:100%、標準偏差:0%

100万円を投資すると、200万円⇒400万円⇒800万円と毎年、倍々ゲームで増えていきます。投資案件Aの標準偏差を求めると、なんと0%です。

毎年、決まって2倍に増えていき、価格が上下にブレずに前年比が常に+100%なので、標準偏差も0%となります。超ローリスク・超ハイリターンな投資です。

さらに、もう1つの投資(=投資案件B)を紹介します。

<投資案件B>

開始:100万円
1年後:80万円 (前年比-20.0%)
2年後:50万円 (前年比-37.5%)
3年後:5万円 (前年比-90.0%)
⇒平均年利:-63.1%、標準偏差:29.7%

100万円を投資して、次の年に80万円に下がって、その翌年は50万円、そして3年後にはなんと5万円になってしまいました。平均年利は-63.1%となります。

前年比は-20.0%⇒-37.5%⇒-90.0%と変動しているため、標準偏差を求めると、29.7%となります。これはもう悲惨な投資としか言いようがありません。超ハイリスク・超ローリターンです。

すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、投資案件Aと投資案件Bは一般的には、それぞれサギ(投資詐欺)カモ(カモにされる)と呼ばれています。

上記のような投資案件に関わってはいけません。図解すると、次のようになります。

リスクとリターンの関係

私たち長期投資家は、「投資すべき」の範囲で活動していくべきです。そして、S&P500への投資は平均年利が9.7%、標準偏差が17%(1965年~2015年の値を元に算出)となっており、「投資すべき」の範囲の中でも、かなり優秀な部類に入るのです。

Next: S&P500 年次リターン表から分かる「衝撃の事実」とは?



S&P500 年次リターン表から分かる「衝撃の事実」とは?

Wikipediaの英語版には「S&P500の年次リターン表」が掲載されています。

この情報はとても重要なのですが、なぜか日本語版のWikipediaでは省略されています。大きな表となるため、スマホで見ている人は後でパソコンでも確認することをオススメします。

これを見れば、なぜウォーレン・バフェットが身内にS&P500への投資を推奨しているのかが、一目瞭然でわかるでしょう。

このS&P500のリターン表は1974年から2016年までの年利を示しています。英語で書かれている列名はそれぞれ次の意味になります。

これらの列名を眺めると、なんとなく伝えたい事がわかるかと思います。この表はS&P500の保有期間が長くなればなるほど、「確実にプラスの収益が得られる」ということを示しています。こちらの解説をご覧ください。

S&P500 リターン表(解説その1)

S&P500の年利(配当込み)は1970年から1974年の5年間で「+4.01%⇒14.31%⇒18.98%⇒-14.66%⇒-26.47%」(赤線の範囲)と推移しています。

大きく上昇した年もあれば、大きく下落した年もありました。この5年間の平均年利を求めると、-2.35%です。

S&P500は1973年と1974年に、それぞれ-14.66%、-26.47%と大きく落ち込みました。1973年にS&P500への投資を開始して、翌年の1974年に売ってしまった人は、-14.66%と-26.47%と資産が減っていき、散々な結果に終わっています。

しかし、投資を開始したタイミングにかかわらず、5年間、保有し続けた場合、概ねプラスになっています。マイナスになったとしても、3%未満の値です。

さらに保有期間を伸ばして、10年にした場合の平均年利を示しているのが右隣の列です。

期間を延ばせば延ばすほど、収益がプラスになっていきます。

Next: S&P500は15年以上保有すると、ほぼ100%の確率でプラス収益になる!



S&P500は15年以上保有すると、ほぼ100%の確率でプラス収益になる!

さらに詳しく見ていきます。先に挙げたWikipediaに記載されているS&P500のリターン表には、とてつもなく重要な情報が潜んでいます。

保有期間を5年⇒10年⇒15年⇒20年⇒25年と伸ばしていくと、最低リターンがどんどん切り上がっていくのです。

わかりやすいように、5~25年間の保有で、リターンがマイナスの年を赤枠で囲いました。一番下に、High、Low、Mediumと記載していますが、これは「最高年利、最低年利、単純平均年利(※)」となっています。
(※)Mediumの値は標準偏差ではなく単純平均年利の値です。

最低年利を水色の枠で囲いました。下記の表をご覧ください。

S&P500 リターン表(解説その2)

5年間の保有では合計で5回、マイナスに落ち込んでいます。マイナスになったといっても、最低でも-2.35%になっていて、それほど、大きな落ち込みではありません。

ただ、少し気になるのは、21世紀に入ってからのS&P500のリターンが落ち込んでいる点です。マイナスリターン(赤枠)は、2001年以降に集中しています。

近年のパフォーマンス低下問題は、S&P500に限った話ではなく、バークシャー・ハサウェイでも同じです(このことは、インデックス投資よりも高いリターンを求める投資家には
大切なことです。また別の機会で詳しく取り挙げます)。

次に、5年から10年に保有期間を延ばしたケースを見ていきましょう。10年間の保有では2008年、2009年の2回だけがマイナスリターンでした。これはリーマンショックの影響です。

さらに10年から15年、20年、25年と保有期間を延ばしたケースを見てください。15年以上の保有では、マイナスリターンがなんと0回!水色の最低年利を見ると、保有期間が長ければ長いほど、成績が良くなっていることが伺えます。

<最低年利の推移(水色の枠)>

5年保有:-2.35%
10年保有:-1.35%
15年保有:+4.24%
20年保有:+7.68%
25年保有:+9.15%

S&P500への投資は「ほぼ確実に勝てる勝負」です。しかも勝負を引き延ばせば延ばすほど、勝率が100%に限りなく近づいていきます。20年保有で最低でも+7.68%の平均年利を獲得しているというのは驚くべき事実でしょう。

<年利7.68%の運用を20年間、続けた場合>

・100万円 ⇒ 878万円
・500万円 ⇒ 2,196万円
・1,000万円 ⇒ 4,392万円
・2,300万円 ⇒ 1億102万円

バフェットの「ゆっくりとお金持ちになるのはかなり簡単です」という言葉が身にしみります。

私は一番大きな間違いは、正しい貯金の習慣を早いうちに学ばないことだと思います。貯金というのは習慣なのです。誰もが早くお金持ちになろうとします。ゆっくりとお金持ちになるのはかなり簡単です。しかし、すぐにお金持ちになるのは簡単なことではありません。

ウォーレン・バフェット

Next: 私たちは「常勝のS&P500」に“いつ”投資すればいいのか?



私たちは「常勝のS&P500」に“いつ”投資すればいいのか?

そこで多くの人がインデックス投資を実践する上で、「いったい、いつS&P500への投資を開始すれば良いのだろうか?」という疑問を抱きます。

一般的なインデックス投資論では、本稿で見てきたように「保有期間の長さ」がリターンを決定づけます。

そのため、S&P500への投資を開始するタイミングをうまく捉えるよりも、コンスタントに投資を続けて、保有を継続することに集中することが推奨されています。

インデックス投資について、膨大な歴史的なデータを用いて研究しているジェレミー・シーゲル博士の著書『株式長期投資のすすめ』の内容(127~128頁)を以下に引用します。

15年以上もロバート・エガートはエコノミストの予測を集計し、「ブルーチップ経済指標」として発表している。1979年7月のブルーチップ経済指標によれば、多くのエコノミストが景気後退はもう始まっていると予測していた。

しかし、NBER(全米経済研究所)は景気のピークは1980年1月と決定した。エコノミストは、1980-82年の厳しい景気後退の予測にも失敗した。1985年4月には、多くのエコノミストが景気拡大は1986年12月に終わると予測していたが、これは実際よりも3年半も早すぎた。1987年の株価暴落ののち、エコノミストは成長率予想を引き下げたが、実際には経済成長率は4%に加速した。<中略>

株式の価値は企業収益を基盤する。景気循環は企業収益の重要な決定要素である。もし景気循環を予想できたなら株のリターンはきわめて大きい。だが実際には難しい。さまざまな経済統計が開発されているが、予測の精度は上がらない。最悪のやり方は、景況感を後追いすること。これには株式をその高値で買い、安値で売ることになる。

投資家への教訓は明らか。経済分析をもってしても株に勝つのは難しい。景気の転換点を当てるのは、その時期を過ぎてからで、その時に株価はもう動いている。

注目すべきは「エコノミストは、1980-82年の厳しい景気後退の予測にも失敗した」という部分です。驚くべきことに、エコノミストの景気後退の予想にもかかわらず、S&P500はその後、約20年間にわたって黄金時代を迎えます。

1980年代、1990年代はほとんど負けることがなく、毎年のように+20%~+30%のペースで上昇が続いています。この黄金時代は、ITバブルが崩壊する2000年に入るまで続きました。

<黄金時代>

1980年+32.50%
1981年-4.92% ←小休止
1982年+21.55%
1983年+22.56%
1984年+6.27%
1985年+31.73%
1986年+18.67%
1987年+5.25%
1988年+16.61%
1989年+31.69%
1990年-3.10% ←小休止
1991年+30.47%
1992年+7.62%
1993年+10.08%
1994年+1.32%
1995年+37.58%
1996年+22.96%
1997年+33.36%
1998年+28.58%
1999年+21.04%

<ITバブル崩壊>

2000年-9.10%
2001年-11.89%
2002年-22.10%
2003年+28.68% ←バブル崩壊から脱出!

毎年、年初に「今年の株価は上がるか?下がるか?」という特集記事が出回りますが、この種の予想が当たらないのと本質的には同じ話です。景気後退を予想して、S&P500への投資を見送っていると、その期間分、機会損失になります。

シーゲル博士の結論は「いつでもいいから、とにかくS&P500に投入せよ!」です。

Next: いきなり全資金投入はアリ? 結局どういう買い方が良いのか



いきなり全資金投入はアリ? 結局どういう買い方が良いのか

シーゲル博士の研究結果を元に考えると、S&P500を長期で保有すれば、損はせずに利益になることわかった!

そして、ウォーレン・バフェットが一般の人向けに「資産の90%をS&P500に、残りの10%を債券に投資せよ」と言っている真意もよくわかった!

それでは、いきなり全資産の90%をS&P500に投入するのが正しい方法なのでしょうか。

シーゲル博士は「配当をひたすら再投資する」という手法を勧めています。しかしながら、具体的にS&P500の購入手法についてまでは踏み込んでいません。

ヒントになるのが、シーゲル博士の著書『株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド』で語られている「移動平均戦略」です。シーゲル博士は、移動平均戦略の有効性に一定の評価を下しています。

株価が移動平均線に近づいた時(または移動平均線よりも下回った時)が買い時だということは特に目新しい話ではありません(短期トレーダーに好まれている手法です)。

移動平均線とは、一定期間の株価の終値の平均値をつなぎ合わせた折れ線グラフのことです。

例えば、10日移動平均線であれば10日分の終値を合計して10で割った株価を求めます。営業日が1日進む毎に直近10日分の終値の平均株価を求めていき、その10日分の平均株価を繋げた線を「10日移動平均線」と呼びます。

10日移動平均線よりも現在の株価の方が高ければ、過去10日間の平均に比べて、株価が高くなっているということが一目でわかります。

最終的な結論として、シーゲル博士は「バイ&ホールド」には勝てないという立場を貫いており、移動平均線はあくまで目安程度に留めておいた方が良さそうです。

バンガード S&P 500 ETF(VOO) 日足(SBI証券提供)

今のS&P500はいずれの移動平均線よりも高くなっており、少し相場が加熱していることが伺えます。

逆に2015年8~9月、2016年1~2月の株価は移動平均線よりも下回っており、バイ&ホールドをしたい人にとっては良いタイミングでした。

繰り返しますが、あくまで移動平均線は一般的な目安であって、これを信じて、短期的な売買を行ってはいけません。

ドル・コスト平均法で購入するとリスクが大幅に減る

S&P500等の株式は500社に分散されているとはいえ、価格変動がとても大きいという特性を持っています。過去のデータでは、S&P500は1年で±37%程度の上下運動があり得ます

もしある一時期に一点集中で購入した場合、運悪く高値で掴まされると、プラスの収益に到達するまでに時間がかかってしまいます。

そこで長期投資家の間でよく使われている購入手法が「ドル・コスト平均法」(定額購入法)です。一度に購入せず、資金を分割して均等額ずつ定期的に継続して投資します。

例えば「予定資金を12分割して、月末ごとに資金の1/12を投入し、一年かけて全量を買う」という手法です。価格が高い時は購入数量が少なく、安い時には多くなるため、単純な数量分割に比べ、平均取得単価が下がるというメリットがあります。

価格が下がった場合のみならず、上がった時にも買う点で難平(ナンピン)買いとは異なります。

ドル・コスト平均法は、シーゲル博士が推奨している「配当金をひたすら再投資する」という手法とも相性が良い点にも注目です(S&P500の配当金支払いは年4回です。博士のアドバイスに従えば、結果的に年4回、配当金をドル・コスト平均法で購入することになります)。

参考までにドル・コスト平均法を下記に図解で示します。比較のために「定量購入法」も併記します。

<定量購入法>

毎回10株と決まった数量を買い付ける→購入価格が毎回変わる

<ドル・コスト平均法(定額購入法)>

毎回1万円と決まった金額で買い付ける→購入株数が毎回変わる

ドル・コスト平均法と定量購入法の比較

市場株価がどのように動いても、定量購入法よりもドル・コスト平均法(定額購入法)の方が平均購入単価が安くなります。一見、不思議に感じるのですが、理屈は簡単です。

ドル・コスト平均法は毎回1万円と投入金額を固定しているので、株価が割高になっている時は購入株数が少なくなり、反対に割安になっている時は購入株数が多くなります。その結果、平均購入単価が下がるというカラクリです。

さて、次回のメルマガでは「S&P500を購入する際に割安・割高は本当に関係ないのか?」という点について、ベンジャミン・グレアムの観点に立って、インデックス投資への適用を試みます。「シーゲル博士 vs. グレアム師匠」の対決です。乞うご期待願います。

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2017年2月12日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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