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報道されぬ2020年危機。日本経済があと3年で「どん底」に落ちる3つの理由=藤井聡

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年11月28日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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凋落は避けられないのか? 2020年の日本を襲うトリプルパンチ

実態的に衰退している日本

メディア上では、内閣府発表の最新の経済統計に基づいて、「7-9月GDP年率1.4%増、16年半ぶり7期連続プラス成長」などと報道されています。もちろんこれは誤報ではありませんが、この見出しから受けるイメージほど、日本経済は好調では決してありません
※参考:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-14/OZ6KHZ6TTDS501

そもそも、今期の成長は「外需主導」でもたらされたもので、国民の暮らしに直結する内需は大きく冷え込んでいるのが実態です。実際、(GDPの1%程度を占める「純貿易」を差し引いた)「内需GDP」に着目すれば、前期比の実質成長率はなんと「-0.18%」(532.1兆円→531.1兆円)です。

これは文字通りのマイナス成長。つまり「衰退」局面にあるのが今の日本経済なのです。

さらにデフレータに着目すれば、前年同月比でみれば「0%プラス」、つまり、完全な横ばい(102.8→102.8)となっています。ちなみに前年同月比のデフレータは、四期連続「マイナス」だったのを考えれば、いくぶん改善したとも言えますが、成長局面にないことは明白

16年半ぶりの好景気なのであれば、デフレータは対年前年比でも明白にプラスで、内需実質GDPも明確にプラス成長しているはずですから、好景気だなんて絶対に言えない状況にあるのが、我が国の今の実情なのです。

事実でなく「イメージ」が幅をきかす、悲しき日本

ちなみに、これらの数字はいずれも政府がホームページで公表しているもので、誰でもすぐに確認できます。
※参考:http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2017/qe173/gdemenuja.html

しかし、メディアも学者もエコノミストも、そうした確認作業をしてまで情報発信している方はごく一部。政治家、官僚、エコノミストを含めた大半の国民が「新聞の見出し」だけに基づいて意見(あるいは「発言」内容)を形成しているのが実情です。

結果、「今、日本経済は景気が良い!」というイメージが世間を席巻し、結果的に、今、景気回復のために必要不可欠な補正予算の水準も、当方の主張の「5分の1程度」の水準に落ち着きそうな気配となっています。
※参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23945470X21C17A1EE8000/

そもそも補正予算の規模を検討する際、その趣旨に「景気対策」という目的を付与するか否かが決定的に重要なのですが、今回は景気対策という趣旨が付与されなかったのです。

それもこれも「今、日本経済は景気が良い!」というイメージが支配的だったから

言うまでもありませんが、事実でなくイメージを判断基準にするような人物や企業や国家の将来はロクでもないものになるのは必定。
(#万が一にもこの意味が分からないという方がいるなら是非、「闇金ウシジマくん」でも見て人生勉強してください)

だからイメージが幅をきかせる今の日本は、「どん底」へと落ちぶれることもまた必定なのです。

Next: 日本をどん底にたたき落とす「3つの要因」



日本をどん底にたたき落とす「3つの要因」

実際、具体的に状況を確認すれば、このまま行けば日本経済は確実に「3年以内」にどん底へとたたき落とされてしまうことがハッキリと見えてきます。

その理由は3つ

第1に、2019年秋の10%の消費税増税。これによって日本の消費はさらに冷え込み、デフレ化は決定的なものとなるでしょう。

第2に、残業を規制する「働き方改革」。このまま無為無策で働き方改革を進めてしまえば、日本人の給与所得がトータルで5~8兆円も縮小するだろうと試算されています。それはもう、消費税を2~3%程度上昇させる程のインパクトを与えます。そして今のまま行けば、この制度は2019年頃、実施される見通しです。
※参考:http://toyokeizai.net/articles/-/188466

第3に、オリンピック特需の終焉。今、特定指標を見れば全国の建設需要は微増しているように見えているのですが、それもこれも皆、オリンピック特需があるから。実際、オリンピック特需がない東北や近畿では激しく建設需要が縮小しているのが実情です。ですから、2020年のオリンピックが終わればその特需がなくなり、一気に全国の景気全体が冷え込むことは必定です。

しかも増税と働き方改革による景気へのブレーキがかかる2019年には、このオリンピック特需が最も盛んですから、その両者の悪影響がにわかには表面化してこない、という事態が予期されます。

今の日本は事実や理性でなく、単なる「イメージ」で政治的決定も下されてしまうほど愚かな国に成り下がっていますから、このまま行けば、オリンピック特需のせいで2019年には抜本的な対策が取られないという最悪の事態となる事が予期されます。

そうなると、2020年にオリンピック特需が消えた途端に、増税、働き方改革、オリンピック特需の終焉という「トリプルパンチ」が襲いかかり、日本経済が一気にどん底へとたたき落とされることになるわけです。

Next: イメージを捨て理性で判断すれば、日本は簡単に救われるのに



イメージを捨てて理性に基づいて判断すれば、日本を救い出せる

無論、それまでに世界のどこかで大型のバブルが崩壊したり、朝鮮有事が起きたり、あるいはそれらの帰結として円高が一気に進めば、日本経済の凋落はさらに早まることになるでしょう。

――こんなこと、少し考えれば誰でも分かる簡単な未来です。

だから普通ならそんな当たり前の予想に基づいて、

  1. 大型補正予算をただちに組んで景気を上向かせる
  2. 残業規制の悪影響を最小化するための徹底的な賃上げ対策を図る
  3. それらの対策が成功しているか否かを逐次モニタリングする
  4. 必要に応じて増税延期やさらなる追加大型補正や、当初予算の拡充を進める

という対策が図られ、そんな「悪夢」はいともたやすく回避されることになるはずなのですが――残念ながら我が国は今、「理性」に基づく予想や議論よりも、「イメージ」の方がはるかに強い力を持っているので、どれだけ簡単に回避できる「悪夢」でも、その到来を止めることができないのです。

政治の劣化が「亡国」に直結する

つまり政治の劣化は、亡国に直結しているのです。

これから確実に訪れるであろう「2020年危機」を回避するためにも、まずは1人でも多くの方に本稿の趣旨をしっかりと理解いただき、そして、1人でも多くの方々にこの情報を伝えて頂きたいと思います。

経済危機は、地震や台風のようにその発生自体を止められないという種類の危機ではなく、「政治の力」によって食い止め得る危機なのです。「国民の力」で、そしてそれに裏打ちされた「政治の力」で、これから確実に訪れるであろう2020年の経済危機を乗り越えたいと――切に願います。

追伸:2020経済危機への対策を阻む最大の障害は「プライマリーバランス制約」。その制約を撤廃し、日本を救う対策を縦横似展開するためにも是非、こちらをご一読ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4594077323
image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年11月28日号より

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