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本業はどうよ? 米アマゾンのEコマース事業が凄いことになっていた件=シバタナオキ

Amazonの本業「EC事業」について解説します。スマートスピーカー開発やクラウド事業など多角化が進んでいますが、本業はどのような位置付けなのでしょうか。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2017年12月12日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

完全なる「1人勝ち」状態。Amazonの本業はやっぱり凄かった

Amazonの本業「eコマース」

今回はAmazonの本業であるeコマース(EC)の話を書いてみたいと思います。

Amazonといえば、クラウド市場を開拓したり、最近ではスマートスピーカーという新しい市場を開拓したりという具合に、新しい発明を次々と行なっていく企業というイメージがありますが、本業のEC事業は一体、現在どのような位置付けになっているのでしょうか。

アメリカの小売市場とEC市場の規模感と市場成長率

初めに、アメリカの小売全体とECの、それぞれの市場規模感と市場成長率を見てみたいと思います。

2017年第3四半期の3ヶ月間での数字ですが、小売全体では$1.269T(約126兆9,000億円)という市場規模です。前年同期比で見ると+4%で成長しているのがアメリカの小売市場になります。

一方でアメリカのECを見てみると、同じく3ヶ月間の数字で$107B(約10兆7,000億円)という市場規模があり、年間成長率は+15.5%となっています。

ECが小売全体に占める割合、EC化率を見てみると約8.4%となっていますが、上の数字を見ればわかる通り、ECの方が成長スピードが圧倒的に早く、小売の市場へECが侵食していっているというのが現状です。

Amazonの決算概要

次にAmazonの2017年7月~9月期の四半期の決算の概要を見てみたいと思います。

北米のEC事業だけを見ることにしますが、四半期あたりのネット売上が$25B(約2兆5,000億円)を超えました。そして前年同期は+35%と、異常に早いペースで成長しています。

また年間に換算すると、過去12か月間でネット売上が$95B(約9兆5,000億円)に到達しているという、恐ろしい規模感で成長を続けています。

AmazonのアメリカでのEC市場シェア

ただし、上で掲載したAmazonのネット売上というのは、Amazonに出品している出店店舗などのサードパーティの売上が100%計上されていません。つまりAmazonの直販でない部分に関しては、取扱高でない数字が混ざっているという意味です。

Amazonのアメリカにおける取扱高がどの程度になるのか、推測した記事を見てみたいと思います。

Web leader Amazon.com Inc. (No. 1) also had a monster Q3, as it reported North American net sales of $25.45 billion in the period ended Sept. 30, up 34.9% from $18.87 billion a year ago. Amazon does not publicly report total sales on its marketplace, including items sold by other merchants, but Internet Retailer estimates U.S. consumers purchased $44.49 billion on Amazon’s sites, up 28.8% from $34.55 billion.

これによると、同四半期におけるAmazonのアメリカにおける取扱高の合計は$44B(約4449億円)を超えており、YoY+28.8%で成長しているという推計がなされています。

上で記載したアメリカのEC全体の市場規模を踏まえると、AmazonはアメリカのECにおいて、41.6%ものマーケットシェアを誇っていることになります。

たった1社で40%を超えるマーケットシェアを誇っているというのは、対象となるマーケットがECという非常に巨大なマーケットであることを考えればとても凄いことですし、逆に恐ろしいレベルであるとも言えるでしょう。

Next: 大きすぎるAmazonの影響力。EC市場における驚くべき事実とは?



さらに驚くべき事実が…

さらに驚くべき事実を1つ書いておきたいと思います。

AmazonのアメリカにおけるECの取扱高は、推計で過去1年間で$14.36B(約1兆4,360億円)増えました

これをアメリカのEC全体の過去1年間での成長と比べてみると、なんとアメリカのEC全体の過去1年間での増加分におけるAmazonのシェアが、69.3%もあることになります。

つまり、YoY+15.5%という悪くないペースで成長しているアメリカのEC市場全体において、その約7割をAmazonが占めているということになります。

逆の言い方をすると、アメリカにおけるECの成長は、Amazon1社によってもたらされていると言っても過言ではありません。

少し違う推計ですが、AmazonのECにおける市場シェアは年々拡大を続けており、2021年には市場シェアが50%まで到達するのではないかと予測するメディアもあります。

eBayの決算概要

勘のいい読者の方の中には、他のECのプラットフォームは一体どうなっているんだと気になる方もいらっしゃるかもしれませんので、ここでは比較対象として、「eBay」を見てみたいと思います。

このグラフが、eBayの取扱高の推移です。

同じく2017年7月~9月期を見てみると、取扱高は約$8.8B(約8,800億円)で、YoY+5%に留まっています。

eBay単体で見てみると、EC市場が+15.5%で成長しているのに対し、自社はYoY+5%でしか成長できてないという具合に、徐々に市場シェアを失っていっているというのが現状です。

逆に言うと、そのぐらいAmazonのパワーがアメリカでは強く、年々市場シェアが拡大していっているということが、よくご理解いただけると思います。

Next: まとめ:米EC市場で「完全に1人勝ち」状態のAmazon



まとめ

以上を簡単に整理します。

・アメリカのEC市場全体の前年同期比成長率は+15.5%
・AmazonのアメリカECでの市場シェアは41.6%
・アメリカのEC市場の成長分のうち、Amazonのシェアは69.3%

このように、完全に1人勝ち状態になっているというのが、アメリカECにおけるAmazonの現状です。

日本では、楽天・Amazon・ヤフーショッピングの3社が三つ巴状態になりつつあるようにも見えますが、アメリカでは1社だけ頭が抜けてきた印象です。

今後もどうなるのか、注目していきたいと思います。

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image by:Jonathan Weiss / Shutterstock.com

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決算が読めるようになるノート』 2017年12月12日号『AmazonのアメリカでのEC市場シェアいえますか?』より抜粋
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