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経済危機に備える世界。米国「破綻寸前の銀行リスト」に隠された警告とは?

米銀行を監視する機関「FDIC」が2018年第1Qの総括を発表。破綻寸前の銀行リストを更新しました。全体として好調としていますが、見逃せない警告が隠れています。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2018年6月5日, 6日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

メガバンクが新たに「破綻寸前」判定。経済は金融業界から崩れる

「破綻寸前の銀行リスト」に起きた変化

米国連邦預金保険公社(FDIC)という機関があります。米国預金者の預金保護をするだけでなく、全米の銀行業界を監視して、破産寸前の銀行をリストアップしています。

そして銀行業界のドミノ倒し連鎖倒産を防ぐため、実質破綻した銀行の吸収合併をさせるなどの再生処理を行う組織です。2018年1月から6月現在まで、破綻処理は1件もありません。

米連邦預金保険公社は、2018年第1四半期「銀行業界の概括」をMARTIN J. Gruenberg総裁の名で公開しました。

通常、このような発表は、国民を安心させるために行われます。当然、警告は少なくなるのですが、今回はその警告に的を絞って、発表のポイントを翻訳しながら紹介します。

「米銀行業界は好調」との発表

米国の銀行業界は、純益も総収益も増加し、銀行資産のローン残高も増え、金利収入も増えている。そして、「問題銀行数(破産寸前で監視が必要な金融機関)」も減り続けている

銀行分野の業績は改善され、経済成長は記録的だが、この経済サイクルの終局面でのリスクを監視することが重要である。

貸し出し競争の結果、高リスクで長期の貸し出しローンに手を染めている金融機関もある。それゆえ、必ずやって来る景気の降下に対しての準備が必要で、その時には不適切な混乱を起してはならない。

赤色棒グラフ:全米の銀行全部の四半期の非金利収入額
青色棒グラフ:四半期の純金利収入額

合計で収入総額は198.8B$で、前年同四半期比で8.3%の伸びとなっている。全銀行の80%以上が、前年同四半期よりも収入が増えたとのこと。純金利収入は8.5%増え、非金利収入も7.9%増加。

上図は、銀行が貸し出したローンの質を示しており、安定している。青色折線グラフはローン返済の延滞率で、やや改善。赤色折線グラフの不良債権の償却率も横這いとなっている。内訳としては、クレジットカードの不良償却・損失処理がもっとも多かった。

貸し出しローン長期化ほか「悪い発表」も

良い話だけではなく、問題もある。貸し出しローンの長期化である。

黄色棒グラフ:15年以上の長期ローン
赤色棒グラフ:5年から15年未満の中期ローン
青色棒グラフ:3年から5年未満の短期ローン

いくつかの銀行については、金利リスクに対する耐久度が低く、連邦預金保険公社としては監視が必要である。

青色線グラフは「問題銀行数(破産寸前で監視が必要な金融機関)で、これは前の四半期より3行(95行→92行)減少し、2008年第1四半期以来で最低のレベルとなった。

この第1四半期には銀行破綻は1件もなく、新たにリストに加わったのは3行である(ややこしいが、95行から6行が外れ、3行が加わったということになる)。

以上が、総裁発表の概要です。ただ、意図的に述べていない事象があります。

隠される銀行業界の危機

まずは、問題銀行の具体的な名称。これは当然、発表ができません(この銀行の具体名については後述します)。

次は、発表しているのに解説していない事柄です。再び上図の(エ)を見ていただきたい。3行減って92行になったのにも関わらず、問題銀行の総資産額が10B$(1兆円)位から60B$(6兆円)位に増えています。

これは取りも直さず、比較的大きな金融機関が新メンバーとして「破綻寸前グループに入会した」ということになります。これですぐに米国の金融システムが揺らぐことはないでしょうが、景気回復で安心できるというような状態ではないことは明らかです。

Next: 新たに破綻寸前と判定されたのはどの銀行? 金融業界から崩れる世界経済



新たに破綻寸前と判定された「ドイツ銀行」

米国連邦預金保険公社が、問題視している新たな「破産リスクの高い銀行」は、どうもドイツ銀行のようだという報道があります。

モーニング・スターの報道で、WSJ紙も同様の報道を出しています。ポイントを翻訳しながら解説します。

米国連銀は、ドイツ銀行の米国部門が「問題・障害のある状況」であると判定したようである。このような判定は、大手銀行の業務を妨害する可能性があるため、非常に稀な事態である。

この「問題のある状況」という格付けは、連銀としては最低レベルである。

連銀の格付けがこのレベルに指定されると、経営陣の解雇や新規雇用も連銀の監督下で行われることになり、解雇に伴う特別退職金などの支払いにも、連銀の許可が必要となる。

連銀の格付けが「問題のある状況」に落ちた場合、その銀行に対しては当然、米国連邦預金保険公社などの他の金融監視当局も監視対象になる。

連銀や監視当局の内部での秘密格付けは、1から5のランキングで分類されており、「障害のある状況」にある銀行のランキングは4または5となる。

さらにこの「問題のある」銀行は、米連邦預金保険公社の「問題銀行リスト」に追加される。

米国連邦預金保険公社の発表によれば、2018年第1四半期の「問題銀行リスト」の総資産額は42.5B$増加していた。

ドイツ銀行傘下の米国「ドイツ銀行米国信託会社(Deutsche Bank Trust Company Americas)」は、2018年3月31日時点で42.1B$の資産を保有しているので、第1四半期に増加した金額レベルに酷似している。

これに対し、米連銀及び連邦預金保険公社はコメントを避けた。

他方、ドイツ銀行本体の報道担当者はこの件に関し、「金融当局発表については、コメントをしない」と語り、さらに「本体及び米国子会社は充分な資産と流動性を保有している」とコメントした。

ドイツ銀行は、今後も何千人ものリストラ解雇を行い、世界中の株式市場で自己勘定取引から引き揚げる「巻き戻し政策」をする計画がある。

ドイツ銀行は連銀ストレステストを2015年、2016年、2017年で連続不合格となっている。また米国財務省は、同行の賭博業務に対して数B$もの罰金を課徴している。

消息筋によると、昨年、連銀は何度も同行に対して貸し出しローンの相対取引の管理及び評価が正当なものかどうかを問い質しているそうだ。

連銀としては、特にヘッジファンド向けの貸し出し、他銀行への貸し出しに関する買い戻し契約に関して、早く巻き戻しをせよと要請しているようだ。

また、複数の内部消息筋によると、昨年、同行の複数の経営陣は「連銀が言うほど、我が行の買い戻し契約の危険性は高くない」と内部で議論をしていたとのこと。

ということで、米国連邦預金保険公社(FDIC)の「問題銀行リスト」の最新の加盟銀行は、「ドイツ銀行」です。

Next: 世界は何を怖れているのか? 世界中銀「金準備」に起こったある変化



世界は何を怖れているのか?

前述の米国連邦預金保険公社の懸念が出ているのと同様に、世界は何かを怖れています。景気のサイクルが変化しており、それが博打相場の株価にも影響が出るのかという懸念です。

<米国S&P500指数での上昇相場と下落相場の長期サイクル>

期間は1920年から現在までで、青色部分が上昇相場、金色部分が下落相場のサイクルです。

現在の上昇相場は108ヶ月継続していて、上昇率は262%です。これまでの最長・最大は1990年代の152ヶ月継続の518%です。

ただし、当時と現在とでは大きな違いがあります。現代とは異なり、当時の米国は病弊・疲弊していなかったのです。

<世界中央銀行の金準備(トン数)の変化>

2008年まではずっと減っていたのですが、リーマン危機を境に、考えを改め、「金準備」を最後の安全資産としてずっと増やしているのです。

ただし、増やしているのは新興国の中央銀行ばかりです。

いったい、何を怖れているのか? それは皆さまのご想像にお任せいたします。

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【関連】本当はボロボロの米国経済。景気悪化の「兆候」を示す3つのデータ


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・「破産リスクの高い銀行」はどうもドイツ銀行(6/6)
・米国連邦預金保険公社の発表を裏読みする(6/5)
・イタリアで何が起きているのか(6/4)
・南アの金鉱山、従業員解雇で閉山へ/人民元建て原油先物市場発足のその後(6/1)

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5月配信分
・トップが逃げ出す大手名門小売チェーン/シアーズ、リストラが間に合うか?(5/31)
・ドイツ銀行、やはりリストラ解雇はさらに拡大(5/30)
・米国の嫌がらせに対抗するには、これが一番かも?(5/29)
・脱米ドル:太平洋の小さな群島国家が、正貨として新幻想通貨を創設(5/28)
・テスラ駄目かも?/欧州とイラン、そして米ドルの運命(5/25)
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・雇用状況の実態:2018年4月解雇通知/英国通信業界でもリストラ(5/16)
・落ちゆく米ドル紙幣の価値(5/15)
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・サプリメント業界の低迷~中流階級が痩せ細るので/(5/8)
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・損失が大きすぎるので廃業(5/1)

4月配信分
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2月配信分
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いつも感謝している高年の独り言(有料版)』(2018年6月5日, 6日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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