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ドイツ政情不安が意外な悪材料に。移民問題が回復基調の世界経済に水を差す=馬渕治好

日本ではあまり報道されていませんが、ドイツの政治情勢が市場の悪材料となる危険があります。今週の市場展望とともに、現状と今後に起こりうる展開を考えます。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2018年6月17日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

注視が必要。メルケル辞任も含めた今後ありうる6シナリオとは?

過ぎし花~先週(6/11~6/15)の世界経済・市場を振り返って

<3中央銀行の会合には、一部予想外の動きもあり、欧米株や為替に小波乱>

先週は、米欧日の中央銀行の会合がありました。前号のメールマガジンで予想していた展開に比べて、連銀はやや緩和縮小に前向きECB(欧州中央銀行)はやや慎重と市場が解釈し、米ドル高・ユーロ安が進みました。また米国株の重石となり、欧州株は支えられる展開もありました。

週末には、米政権が対中報復関税リストを公表したことが、株価の悪材料とされましたが、事前に予定されていたことなので、売りの口実となった感があります。
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来たる花~今週(6/18~6/22)の世界経済・市場の動きについて

<ドイツの政治情勢は、大きな悪材料にならないとは予想するが、要注意>

<まとめ>
今週は、あまり大きな材料がありません。先週世界市場を動かした要因として、米欧の金融政策などは既に消化されており、米国の対中報復関税については、心理的な重石となっても、「いまさら感」のある材料でもあり、あまり引きずるとも見込みにくいです。このため、市場動向は慎重ながらも、世界経済の緩やかな回復に沿った基調を、徐々に取り戻すと考えます。

ただ、ドイツの政局が不透明さを強めています。今後の展開は多くの可能性があり、必ずしもメルケル政権の崩壊につながるとは限りません。そのため、世界市場を大きく揺らすとは見込んでいませんが、現時点であまり騒がれてないだけに、かえって要注意だと考えます。

<詳細解説>
今週は、あまり大きな材料がありません。もちろん、経済統計の発表などはそれなりにあり、経済動向をみるうえでは重要です。

たとえば日本では、6/18(月)に5月の貿易統計が発表され、このところ伸び悩んでいる輸出の動向が気になるところです(編注:原稿執筆時点6月17日。財務省が18日発表した5月貿易統計によると、輸出は米国・中国・欧州連合向けともに堅調したものの、3カ月ぶりの貿易赤字となっています)。

また、6/20(水)に5月の訪日外国人客数が公表されるため、インバウンド消費との関係で注目度が高いです。米国でも、6/19(火)発表の5月の住宅着工件数、6/20(水)発表の5月の中古住宅販売件数など、住宅関連の統計が多く発表されます。

ただ、こうした統計で、市場が大きく振れるとは見込みにくいです。

6/22(金)には、OPEC総会が予定されています。米国でガソリンなどの価格が高いと、国民の不満が強まるとして、このところトランプ大統領が、原油価格が下落することを望むような発言を繰り返しています。こうした点などから、OPECが減産体制を緩めるとの観測も生じています。ただ、生産目標が大きく変更されることにはなりにくいでしょう。

こうして、世界市場全体の地合いとしては、決定打となる材料が欠けるなか、先週の米連銀やECBの動きは、既に消化されていると考えられます。また、米政権の保護主義的な動きは、心理的に市場に影を落とすでしょうが、悪材料としては「いまさら感」もあります。6/15(金)のニューヨークダウ工業株指数の動きも、ザラ場安値からは切り返しているため、保護主義に対する懸念は目先の材料としては、一旦織り込んだ可能性があります。

こうした点から、世界市場は、経済実態などに沿った動きに復すると見込みます。投資家は慎重ながらも、徐々に株式などに資金を振り向けていくでしょう。

ただし気になる動きがあります。ドイツの政治情勢ですが、与党内で移民政策を巡っての亀裂が大きくなっています。それが今後どういう形で展開するかは、様々な可能性が想定され、必ずしもメルケル政権の崩壊につながるとは限りません。

したがって、世界市場を大きく揺らす事態には陥らないと見込みますが、今あまり騒がれていないだけに、悪材料の「伏兵」として警戒した方がよいとは考えます。

Next: 悪材料として警戒を。現在のドイツ政治状況と、今後ありうる展開は?



来たる花~今週(6/18~6/22)の世界経済・市場の動きについて

<現在のドイツの政治状況と、今後ありうる展開は?>

ドイツでは、連立与党のうち、メルケル首相を擁するCDU(キリスト教民主同盟)と、CSU(キリスト教社会連盟)は、別の党でありながら1949年からずっと提携してきたため、あたかも1つの党派のように見なされることが多いです。現在の連立政権は、この両党と、SPD(社会民主党)との「大連立」によるものです。

そのCSUの党首であるゼホーファー内相が、移民政策について、メルケル首相に対する批判を強めています。内相は、身分証明を持たない移民や、他のEU加盟国で登録を済ませた後、ドイツに流れ込んでくる移民を、他国に追い出すべきだという主張を強めました。

CSUは6/18(月)に党大会を予定しており、ここで党として、そうした移民に対する強硬姿勢が承認される可能性があります(編注:原稿執筆時点6月17日。ミュンヘンで開かれたCSUの党大会では、移民問題に対する強硬姿勢への支持を確認。ゼホーファー内相は、移民をEU内で最初に登録した国に送り返すことがでできるよう、メルケル首相に対して他のEU加盟国政府と月内に合意するよう求めています)。すると、移民に比較的寛容なCDUとの対立が生じかねません。

そうした情勢が、ドイツの政局に具体的にどんな展開を生じるかについては、次のように多くの可能性が考えられています。

考えられる今後の展開

1)メルケル首相がゼホーファー内相の解任を行ない、CDUとCSUの亀裂が鮮明化する。この解任があってもなくても、CSUが首相の不信任案を議会に提出する可能性がある。

2)不信任案が提出されるとして、それがすぐだという展開もあるが、6/28(木)~6/29(金)のEU首脳会議を、CSUが待つこともありうる。ここでメルケル首相はEU加盟国全体に対し、移民政策を再考することを呼びかける意向で、EUがある程度移民の規制に同意することになれば、CSUが矛を収めることも考えられる。

3)不信任案が議会に提出されることになった場合、不信任案が可決され、議会が解散することになると、選挙の洗礼で議席を失うかもしれないと恐れる議員が多く、不信任案が否決される、ということはありうる。

4)ただ、CSU(46議席)が不信任案に賛成すると、他の連立与党のCDU(200議席)とSPD(153議席)では353議席となり、ドイツ下院(連邦議会)の全709議席の半数にわずか達せず、不信任案可決の展開も否定できない。

5)不信任案が可決された場合、再選挙となることがありうる。この場合、選挙結果についての不透明感が強まる。

6)あるいは、不信任案が可決されると、メルケル首相が辞任し、再選挙とならない、という展開もありうる。その場合、CDUの実力者であり、現下院議長のショイブレ氏が首相に就く可能性が高いと見込まれている。この場合は、引き続き3党連立という枠組みが維持されることもありうるため、政治的な不透明感があまり広がらない結果になるかもしれない。

以上のように、様々な可能性が示唆されており、再選挙となって欧州市場中心に揺れる展開は否定はできませんが、落ち着きに向かうこともありえます。そのため、世界市場が大きく波乱に見舞われる公算は限定的だと考えます。

ただ、現時点ではこのドイツの政治情勢についての報道は、もちろん欧州メディアでは多いのですが、日本では少ないです。

また、欧州メディアを含めても、特に単純な事実のみに関する報道(ゼホーファー内相によるメルケル首相の移民政策批判を伝えるだけ、など)で、先行きの展開などを懸念する声が全般に少ないように思われます(BBCなどは、連立政権崩壊の危機だと伝えていますが)。

ですので、悪い方向に事態が進んだ際は、市場が意外感を持って受け止める恐れがあり、注視する必要はあると考えます。

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中期シナリオ結論:日経平均株価、米ドル/円

世界経済・市場の用語などの解説:ポピュリズム(大衆に迎合した政治姿勢)

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image by:360b / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2018年6月17日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2018年6月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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