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FRBがしれっと米国経済「後退」に警鐘。2019年の利上げ「打ち止め」はある=藤井まり子

パウエルFRBがしれっと密かに「2019年から2020年にかけての経済後退」に警鐘を鳴らしています。それを回避するため、大胆な政策変換を行う可能性があります。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2018年6月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

6月のFOMCは「インフレ放置政策」へ転換するための伏線だった

パウエルFRB議長「アメリカ経済が底堅く成長している」

パウエルFRBは6月のFOMCにて0.25%の利上げを行い、政策金利を1.75%から2.00%へと引き上げました。これは想定の範囲内です。

ドット・チャートでの利上げ予測は、2018年は「3回の利上げ」から、「4回の利上げ」へと増えました。これも想定の範囲内です。

そして、FOMC声明文は大幅に短文化されました。「フォワードガイダンス」について書かれた4つの文言がごっそりと削除されています。

「FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる(中立)水準を下回るレベルで推移する」「ただし、これらは今後入手するデータ次第」などなどをバッサリと削除したのです。

これは、一部のマーケット関係者には「サプライズ」だったようです。

今回のFOMCでは、声明文でも、その後の記者会見でも、パウエルFRBの「アメリカの底堅い経済成長」への自信の現れていました。

パウエルFRB議長は、記者会見でも、「アメリカ経済が底堅く成長している」ことを強調、マーケット関係者を驚かさないように細心の注意を払いながら、「その結果、政策金利は中立金利に近づいている」と明快に宣言。

国内のエコノミストの多くは、この日のFOMC発表に「想定の範囲内」と余裕の対応を示しました。

しかし、私はちょっと違う見方をしています。パウエルFRB議長は、目立たないように警鐘を鳴らす「隠れタカ派」なのではないでしょうか?

2019年内には「金融引き締め」がありえる

FOMCは毎回のように、以下のような「FRBによる経済見通し」を表にして、数値で改定・発表してきました。

13日に改定・発表された景気見通しでの最も大きな変更は、結論から言うと「2019年の政策金利見通し」です。前回(3月分)の2.9%から、今回(6月分)は3.1%へと、0.2%も引き上げられたのです。

「わずか0.2%の変更じゃないの? それのどこか大きな変更なの?」と侮るなかれ。この0.2%の違いには、その中立金利との比較においては、天国と地獄のような大きな違いが存在しているのです。

3月予想の「2019年の政策金利:2.9%」だと、「2019年内はまだ“金融引き締め的にはなっていない”」という可能性が余裕でありました。

ところが、ところがです。今回6月予想の「2019年の政策金利:3.1%」になると、「2019年の政策金利は、2019年には“金融引き締め的になっている”」可能性があるのです。

0.2%といったコンマ以下のわずかな変更が、土石流のような大きな違いを、しれっと(そっけなく?)静かに暗示しているのです。

Next: FRBが警鐘を鳴らす、2019年から2020年にかけての経済後退



FRBが警戒する「2019年から2020年にかけての経済後退」

FRBによる経済見通しの詳細は、「経済見通し(PDFファイル)」の表をご覧ください。

上記グラフの見通しでは、ざっくり言葉だけで言えば、「アメリカでは、トランプ大統領が『景気の良い時の大型減税』などという経済学の教科書にも載ってないような掟破りをしたので、この春からとうとうインフレが火を噴き始めた」と、今のFRBはとても困惑している様子がうかがわれます。

上記のグラフでは、「今のFRBは『2%インフレ目標』を掲げているので、今後は穏やかなペースながらも政策金利を4回くらい引き上げていかざるを得ない」としています。

ところがFRBは、「このままでは、2019年のどこかの時点で、FRBの政策金利は中立金利を上回って、金融引き締め的になってしまうだろう」「その結果、アメリカ経済の成長率は、2019年から2020年にかけて穏やかに減速していくかもしれない」という、けっこう恐ろしいことを、しれっと平静を保ちながら、静かな警鐘を鳴らしているのです。

が、どういうわけか、この日本では、こういうことを解説するエコノミストが存在していません…。

FRBが密かに訴えていること

この表の数値が、「平たく言えば具体的に何を訴えているか?」については、ざっくり以下の6点が挙げられます。

  1. トランプ減税のおかげで、失業率が異常に下がっている
  2. トランプ減税のおかげで、放っておくとインフレにも火が付きそう
  3. 2018年は「2%の物価安定目標」を遵守するために(インフレを予防するために)、穏やかなペースながらも4回の利上げを行っていくしかないだろう
  4. その結果、2019年には、FRBの政策金利は中立金利を上回って、FRBの金融政策は金融引き締め的になってしまうかもしれない
  5. その結果、アメリカ経済は、2019年から2020年にかけて減速していくかもしれない
  6. すなわち、「角(2%物価安定目標)を矯めて牛(実体経済)を殺す(ツノヲタメテウシヲコロス)」ような事態が起きるだろう

と、上の表は、しれ~っと目立たないように警鐘を鳴らしているのです。

いみじくもバーナンキFRB前議長が、「トランプ大統領の大幅減税のせいでFRBの仕事がしづらくなっている」と言っているのは、こういうことなのです。

6月FOMCは「インフレ放置政策」へ転換するための伏線

私は、パウエルFRBは2019年の早い時期に、政策金利の引き上げを「打ち止める」と予測します。あるいは、2019年から「2%インフレ目標」を、「3%インフレ目標」へと切り替えるかもしれません。

そうすれば、パウエルFRBは、2019年の政策金利の引き上げを「穏やかな引き上げ」から「もっともっと穏やかな引き上げ」へと、変更できます。

あるいは、パウエルFRBは、2019年から「物価水準目標」という新しい金融政策へと大転換するかもしれません。

いずれにせよ、これらの政策は、どれが採用されるにしても、私が昨年末より予測していた「インフレ放置政策」です。

Next: 米国経済はこれから沸騰? リセッション入りを先延ばしする策がある



米国経済のリセッション入りを向こう数年は先送りできる

これら「インフレ放置政策」は、アメリカの経済成長をもっともっと息の長いものに変えて行きます。アメリカの好景気は向こう数年くらい先延ばしできるかもです。

「打ち止めにする」にせよ、「3%インフレ目標へ変更する」にせよ、「物価水準目標」といった「新しい金融政策」に方向転換するにせよ、これらの「インフレ放置政策」が実施されれば、もちろん株式市場は沸騰します。

せっかくアメリカ経済のファンダメンタルズが良好なのに、言い換えると、ミレニアム世代が一戸建て住宅を購入する年齢に達して、今後の景気見通しが良好なのに、中央銀行であるFRBが、「角を矯めて牛を殺す」政策の維持するなんて……そんなもったいないことをするのは誰でも嫌ですよね?

利上げ「打ち止め」は近い

6月に入ってからは、連銀関係者の間では「中立金利」の議論が盛んになってきています。これは、「政策金利の引き上げは2019年のどこかで打ち止めたほうが良いのでは?」といった議論の「伏線」です。

パウエルFRB議長は、2019年からはFOMC開催ごとに毎回記者会見すると言っています。これも、「FRBがどこかの時点でインフレ放置政策へシフトする伏線」でしょう。

6月18日には、「物価水準目標」の熱心な推奨者であるウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁が、NY連銀総裁に就任しました。彼は「中立金利」の研究者としても有名な人物です。これも「インフレ放置政策へシフトする伏線」でしょう。

というか、長々を記してしまいましたが、6月13日にFOMCが発表した「FRBによる経済見通し」そのものが、「インフレ放置政策への伏線」そのものだったのです。

世界の中銀関係者の間では、「物価水準目標」についての議論がとても活発になっています。

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とうとう本格的に火を噴き始めた通商問題

詳細解説:トランプ減税のおかげで失業率が異常に下がっている

詳細解説:トランプ減税のおかげでインフレに火が付きそう

詳細解説:「2%物価安定目標」を遵守するために4回の利上げを行うしかない

詳細解説:2019年、FFレートは金融引き締め的になる

詳細解説:2019年末から2020年にかけて、米国経済の成長率は穏やかながらも減速してゆく

詳細解説:パウエルFRBは「角を矯めて牛を殺す」のか?

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・タカ派色を強めて「インフレ退治」に乗り出したFRB~愛読者様からのご質問コーナー開設(6/15)
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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2018年6月19日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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