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日本株が世界で最も有望? ファンドの見方と日本経済を左右する3つの外部要因=山崎和邦

日経新聞によるとファンドマネージャーは世界の株式市場で日本株を最も有望と見ているそうだ。はたして本当にそうか。日本株の未来を左右する3つの外部要因を解説する。(山崎和邦)

※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2018年10月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

最大のリスクは中国? 3つの問題を乗り越えねば株高は来ない…

円安で企業業績は上方修正へ

今年の5月以降、6月・7月・8月と毎月挑戦した2万3,000円で毎回跳ね返された。これを抜いた途端に2万4,000円台を素通りして通過したが、その反落は大きかった。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

ドル円相場は1円の値動きで、主力企業20社で1,000億円の営業利益の増減になるという。2〜3年前トヨタは円ドル1円で400億円と言われていた。今年の各社の想定レートは105円前後らしい。したがって110円台が続いて決算を迎えることができれば、上方修正も必ずある

日経新聞10月18日号の記事によれば、ファンドマネージャーが世界の株式市場で日本株を最も有望だと見ているのだそうだ。日本株が1位となるのは4年ぶりだそうである。

弱気に傾きかけている投資が増え続けている中で日本株が世界一になるということは、欧米に比べてリスクが少ないという消極的かつ相対的な理由で選ばれたに過ぎないのではないかと思う。

下がるときはあっという間

先週、週初15日(月)は日経平均が急落し8月21日以来の2ヶ月ぶりの安値を付けた。2万4,000円台に乗った2日目の10月2日にマスメディアは「26年11ヶ月ぶりの高値を示現」と騒いだが、当メルマガは10月7日号で「ここで値固めをしなければ先行きは良いことはない」と述べた。

果然、そこから約2,000円下げた。下がる時の株価は、株式の自分の重さで下がるから加速度がつく。2,000円上がるには時間がかかるが2,000円下がるときは速い

ファンダメンタルな要因や外部要因としては、米国が引き金を引いた。米国というよりもトランプが引き金を引いた諸々の要素が並べられるし、中国株の底割れ懸念もある。原油高の恐れもあり、ほかにも色々と並べられる。

要するに相場という生き物が下がりたがっていた。その生理作用である。「理屈は(あとから)貨車に積まれてやってくる」のだ。

Next: 日本株の未来を決める3つの外部要因は? 乗り越えねば株高は来ない



日本株のトレンドを決める3つの外部要因

ところで中長期的に日本株の将来を考えると、基本になることは何と言っても企業価値そのものである。これが株価構成の根本要素であることには常に間違いはないが、それは「レベルの問題」であって、本稿で常に言うところのトレンドを決めるものは、むしろ外部要因である。

その外部要因で大きいものは、以下の3つに大別できるであろう。

  1. 米中貿易摩擦が生む世界経済の縮小
  2. 米国経済そのもの
  3. 新興国の債務超過

外部要因その1:米中貿易摩擦が生む世界経済の縮小

関税引き上げが直接的に米・中・日の経済成長率に与える影響は、追加関税によって増えた税収を債務返済に充てるのか、財政支出に充てるのか、財政出動に充てるのかによってかなり違ってくる。

財政出動がなかった場合は、米国は0.29%のマイナス影響(本稿で言うところのブーメラン現象)があり、財政出動があった場合には米国は貿易摩擦の影響はゼロとなる(この予測は大和総研の試算による)。

「貿易戦争がこれで打ち止めならば、経済に与えるマイナス影響の底は見えてきた。あとはトランプ政権が財政政策にどこまで踏み切れるか、それによって米国経済の好調が保てるかが決まってくる」(大和総研より)。

外部要因その2:米国経済そのものの問題

米国景気がこのまま続けば、来年7月には120ヶ月という史上最高記録を超えて史上最長を更新する。黄金の60年と言われたケネディ大統領前後の頃、ケネディ大統領の後108ヶ月の長期景気、最長はITバブルの120ヶ月、これを来年7月には全部超えて史上最高となる。

およそ史上最長とか何十年ぶりとかいうことが現れた場合には、用心するに越したことはない。しかし、そういう時に限り、それはなお続くという合理的に見える意見が出回るものだ。

現に120ヶ月続いたITバブル景気の時も「ニューエコノミー」という言葉が流行り、これからはネットで交易できるから物流が極めて合理的になり、今までの経済と違ったものになる。ニューエコノミー時代が来るという理論が、筆者が述べるよりももっともっと理路整然と説得力をもって流行ったものだ。

概ね、そういう時に全てのつじつまがあった時に反対現象が起きると思って警戒感が必要であろう。

Next: 最大のリスクは中国経済の失速。日本株に春は来るのか?



外部要因その3:新興国の債務過剰

これについて最大のリスクは何といっても中国経済の失速である。

FRBが昨年から利上げを本格化させ、ドル資金が米国に戻ってくると新興国での通貨安に結び付いた。ただし金融危機さえ起こらなければ、新興国の経済規模は小さいから世界の実体経済に与える影響はさして大きくはない。

ところが、中国経済が失速すると影響は大きい。世界で2番目の巨体だからだ。現在の中国は巨額の債務を抱えている。その他にシャドーバンキングと称する金融商品(資産運用業務)の残高が約2000兆円(120兆元)あるとされる。これは中国のGDPに対して巨額である。

こういう環境の中で米国の対中制裁が強硬になればなるほど、中国の債務依存体質は強まる。米中貿易摩擦が中国の債務超過問題に火をつける可能性がある。

米中の全面貿易戦争が来年以降も続くとすると中国経済が危機的な状況に陥ることも否定し難く、株価はそれの警鐘シグナルとして先行して動く。昨今の上海株の動きはその一端であろう。

今ここに簡単に列挙した3つの問題、これを乗り越えていかなくては日本株の中長期の株高はあり得ない。

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image by:Songquan Deng / Shutterstock.com

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山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2018年10月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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