福岡銀行の元・頭取で、元・日銀理事の佃 亮二氏(つくだ りょうじ氏)が、福岡市の大濠公園で「水死」か「転落死」しているのが見つかりました。佃氏(87歳)は、福岡では知らない人はいないというぐらいの有名人です。
一方で、元・日銀理事でもある佃氏(日銀から、福岡銀行へ)は、プラザ合意やバブル崩壊当時の日銀の実務者で、日銀の迷走ぶりを知る「生き証人」でもありました。(『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』児島康孝)
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当時を知る実務者として、何があったのかを証言して欲しかった…
大濠公園で「水死」「転落死」?
共同通信によりますと、11月15日午前5時25分ごろ、福岡市中央区の大濠公園で池に男性が浮いているのが見つかり、近くに住む元福岡銀行頭取 佃亮二さん(87)の死亡が確認されました。
さて、この佃亮二さんは、長年、福岡銀行の頭取(日銀から転出)を務めた、地元経済界では100%知られている有名人です。
今回のニュースを聞いて、佃さんを何度も取材した経験のある私には、やや違和感はあります。
佃さんは、悪く言えば、日銀からの天下り。しかし、能力がケタ違いに優れ、福岡銀行の外部からも、これぞ「バンカー」として尊敬されていました。
また、佃氏は、プラザ合意(1985年)やバブル崩壊(1990年)当時の日銀の実務者であり、国際金融や国内の金融に詳しい地方銀行の頭取としては、「出来過ぎ」た存在でもありました。
頭取を後任に譲ったのちは、福岡の財界活動にも協力していました。
福岡市の大濠公園の状況は…
福岡市中央区の大濠公園(おおほりこうえん)は、綺麗に整備された庭園型の公園です。
一時期は水質が問題になりましたが、近年は池の水も綺麗で、池のまわりをジョギングしたり散策したりと、環境が良い憩いの場になっており、人通りもそれなりに多い公園です。周辺には高額なマンションが多くあり、財界人も住んでいます。
もとは草香江(草ヶ江 くさがえ)と呼ばれた博多湾の入江でしたが、黒田藩(日銀・黒田総裁の祖先)が福岡城の外堀として活用。昭和2年(1927年)に「東亜勧業博覧会」、昭和4年に、大濠公園として開園しました。
設計は、明治神宮や日比谷公園を設計した本多静六博士が手掛けています。
こうした環境で、早朝から散歩やジョギングをする人も多くいます。
実際、かつて、他の地場大手銀行の頭取も早朝の散歩を日課としていたりと、早朝に佃氏がいた場所としてはまったく違和感はありません。
しかし、「水死」「転落死」ということになりますと、福岡を知る人には、違和感があります。なんで、そんなところで?という、感じなのです。
確かに、水辺には、すぐに近寄れます。そして、池の水を覗きこんだりして、滑り落ちることも考えられなくはありません。
親水型の公園で、岸辺と池の水の高低差はほとんどありません。
しかし、誤って落ちた場合、声を出したり、バシャバシャすれば、すぐに誰かに気付かれそうな公園です。朝早くからジョギングや散歩をする人も多いからです。
ただし、何らかの原因で、岸辺で意識を失って、そのまま倒れこむという可能性は、ないことはありません。87歳とご高齢であり、それは考えられるのですが…。
しかし、普通、福岡の人なら、そりゃ、ちょっと変だよね、と感じる状況ではあります。
Next: 尊敬されていた佃亮二氏。「プラザ合意」「バブル崩壊」ほかその功罪は?
尊敬されていた佃亮二氏
佃氏は、福岡銀行の頭取時代も全くいばる様子もなく、的確な経営判断で、内外から高い評価を得ていました。物腰も柔らかく、多くの人から愛される存在だったのです。
佃氏は、物腰が柔らかい反面、腹が座った方でした。佃氏は、昭和6年(1931年)生まれ、熊本県玉名市の出身。中学の時には、満州鉄道幹部の父親と満州にいて、終戦の際のソ連・中国の攻撃を直接経験しています。このときの経験があるので、戦後はよほどのことでも動じなかったのでしょう。
日銀を経て、福岡銀行の副頭取、頭取となり、2000年まで、約10年近くも福岡銀行の頭取を務めました。現在の福岡銀行の基盤を、つくり上げたとも言えます。
こうした、福岡銀行の元・頭取である佃氏ですが、一方で、「プラザ合意」「バブル崩壊」の生き証人でもありました。
プラザ合意後に、日銀が「高目放置」
佃氏は、「プラザ合意」の際の日銀の実務者であり、当時、三重野氏と日銀を動かしていました。
1985年に「プラザ合意」があり、ニューヨークのセントラルパーク近くのプラザホテルで、先進5ヵ国がドル安で合意。
ドル円の為替レートは、1ドル=235円付近から、1年後には1ドル=150~160円付近へと、急激な円高が進みました。
この後に日銀は、「高目放置」といわれる短期金利の事実上の高め誘導を行い、金融引き締め効果で、さらに円高に拍車がかかったといわれています。
そしてその後、円高が落ち着くと日経平均が暴騰。そして、1990年のバブル崩壊へと続きます。
佃氏は、バブル崩壊後にも高金利を続ける三重野総裁に、バブル崩壊後に、引き締めすぎだと懸念していました。
しかし、三重野総裁はマスコミに「バブル退治」と持ち上げられて、金融引き締めを続け、地価と株価の暴落策を続けていたのです。
佃氏は、バブル崩壊後しばらくまで日銀にいて、こうした経緯を熟知した実務者でもありました。
日銀の政策の誤りについて最も良く知る人物であり、「生き証人」であったのです。
プラザ合意で日銀がどう動き、また、バブル崩壊の前後に何が起きていたのか?
貴重な証言者でもあった佃氏は、多くを語らないまま、この世を去ってしまいました。
Next: 黒田日銀は「プラザ合意」当時と同じことをしている?
黒田日銀は「プラザ合意」当時と同じことをしている?
考えてみますと、現在の日銀の短期金利の相対的な高め誘導策も、プラザ合意後に似ています。一般人には、金融引き締めと見えずに、実は金融引き締めなのです。
ですから、デフレ不況は、日銀の金融政策(金融引き締め)により、必然的に続いているわけです。一般人やマスコミは、金融緩和だと思っていますが…。
貴重な証言者を失った
こうした中、日銀の誤りのまさに「実像」を知る佃亮二氏が多くを語らないままこの世を去ったことは、残念でなりません。
赤裸々な、「プラザ合意」「バブル崩壊」について、日銀の実務者として、何があったのかを証言して欲しかったと思っています。
まさか大濠公園で…というのは、福岡を知る人には当然の感覚でしょう。単なる偶然なのか、それとも…。これ以上は、佃氏でないとわかりません。
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『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』(2018年11月17日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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日本に影響を与えてきた欧米勢の勢力図が変化し、国際情勢も激変の時期を迎えています。トランプ政権の前の欧米勢力は、日本の1990年のバブル崩壊以降、日本の衰退を狙ってきました。超長期の経済サイクルである、コンドラチェフ・サイクルが、戦後最悪の大底でもあったことから、日本経済はデフレに陥り、低迷したままであったのです。ところが、トランプ政権の誕生以降、欧米勢の勢力は変化し、日本の今後も、大きく変わろうとしています。このメルマガでは、有料読者に限定して、ちょっと書きにくい話にも踏み込んで、欧米勢の動きをお伝えします。