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米株高を支えたGAFAが天井を迎え、ついにNY市場は終焉するのか=山崎和邦

13人の専門家のうち10人が年度内の高値予想を切り下げ、予想平均は2万4,800円から約1,000円切り下げとなる2万3,777円となった。今後の日米の株価について解説します。(山崎和邦)

※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2018年11月25日号の一部抜粋です。最新の11月分の定期購読はこちらからどうぞ。

日経平均の高値予想を専門家が約1,000円切り下げた背景

いずれ来るNY株・日本株の減速に向け、「専門家たち」は高値予想を切り下げ

日経ヴェリタス紙11月18日~24日号を要約すると下記のようになる。

「13人の専門家」のうち10人が高値予想を切り下げてきた。

10月14日号のアンケートでは年度内の高値予想の平均は2万4,800円だったが、今回の高値予想は2万3,777円と、約1,000円切り下がった。

前回、2万6,000円を予想していた野村アセットマネジメントは今回の予想で2,500円切り下げて2万3,500円に引き下げた。JPモルガンも2万6,000円を2,000円引き下げて2万4,000円に訂正した。

以上は日経ヴェリタス誌の記事である。

以下は筆者の私見であるが、「状況を見て高値予想を切り下げる、そしてまた切り下げる専門家たち」の言い分を聞いていると、売り指し値を出しておいたところ売れないので指値変更して引き下げる。また売れないのでまた指値変更を切り下げる、また指値を引き下げるということを繰り返して結局は売り損なう、という優柔不断な顧客たちの顔を筆者は連想する。

「専門家たち」であろうが、顧客としての投資家であろうが、人間の知恵は何千年間も進歩するものではない。強気相場は陶酔の中で消えていく、これは本稿で何度も引用したがジョン・テンプルトンの「上昇相場は悲観の中で始まり…」から続く最後の言葉である。

NY市場の先導役は天井をついたか

所謂GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)と呼ばれる米国のIT大手は、世界の株式時価総額の上位のほとんどを占めているが、これが今回の上昇相場の最大の特徴であった。もちろんNY株の先導役であった。

2000年前後のITバブルの頃は赤字企業でも将来の収益性を買って株高となったが、今回のデジタル経済の主役はそういう性質のものではない。収益はついて回ったが、PER100倍というレベルまで買い上がった。今は一旦立ち止まってGAFAの実力を見定めようという局面に入ったのかもしれない。

現在の米景気は半年以内に後退期に入る局面ではないだろう。しかし、ここまで株高を支えた経済成長と企業収益の伸びと過剰流動性の供給はいずれもピークアウトした可能性はある。言うまでもなく株価は経済成長や企業収益に先行する。米国株の急落局面を見ると20日前にはボラティリティが急騰している。

ボラティリティの急騰が相場急落を引き起こすというアノマリーはある。本稿で何度か述べたように「お化けは同じ顔では出てこない」。1980年代「ジャパン・アズ・ナンバーワン」として絶賛された日本経済、90年代の欧州、2000年前後の米国のITブーム、その後のBRICsが絶賛を浴びた。このように局面は全て変わってくる。今回のNY株の一見陶酔状態もまた変わった姿で現れた

Next: 米景気は、90年代の史上最長記録を更新するのか



米景気はいつまで続くか

現行の米国の景気拡大局面は来年6月で10年となり、7月には史上最長を記録する。90年代のクリントン政権のときの120ヶ月を上回ることになる。しかし、米国内の人口動態の変化により、米国のGDPの潜在成長率は2%に低下する可能性がある。

1929年以降の大恐慌の寸前の1928年に大統領選挙に立候補した共和党のフーバーの選挙公約は「すべての鍋にニワトリを、すべてのガレージに車を」であった。その後大恐慌時代、アメリカはホワイトカラーまで含めた史上最大の失業に悩んだ。

そのトラウマを引きずってか、FRBの二大使命は、(1)通貨価値の安定(これは世界中のどの中央銀行でも共通した主目的である。日銀はこれがたった一つの使命である)と、(2)雇用の安定、である。これがFRBの二大使命である。

そこで米ギャラップの調査によると、米国人の現代の最大の問題は政府に対する不満であり、経済に対する懸念はほとんど下位の方だと言う。米経済は強いと考えられている。少なくとも完全雇用が実現されている。大恐慌時代の寸前にフーバーが言った「全ての鍋にニワトリが入った状態」が実現されている。

労働市場は数十年ぶりの好調である。失業率は1960年代のジョン・ケネディ大統領時代以来の低水準である。この米国人の「すべての鍋にニワトリが入った状態」はFRBの二大目標の一つが完成されたということになる。

過去数十年、米国のインフレの鍵となってきたのはエネルギー価格の上昇である。つまり原油問題だ。来年の経済見通しで米国も日本も注目すべきなのは原油価格の問題であろう。

FRBは周到かつ賢明だった。2016年後半から既に「出口戦略」を確実に実行しつつある。16年後半から今まで2年間で0.25%ずつを8回値上げして合計2%を利上げした。これはリーマンショック前のレベルに同じに戻した。

万が一景気が後退した場合でも、いつでも利下げでカツを入れる準備ができている。ECBもそれに倣いつつある。この点で最も日銀が遅れていると言わねばならない。

Next: NY市場のハイテク株ブームの行方とは



PER100倍がNY市場を横行したハイテク株ブーム

先週週央はNY市場のハイテク株ブームの決算悪を受けて、東京市場でも半導体関連株が急落した。アップルは10月の高値から2割下落した。

「いざなぎ景気大相場」の末期に野村證券が“発明”したG・PER(Growth PER)という、実現するか否か判らない将来の収益まで織り込んで、将来の成長分までを算入したPER、これでもってPERは100倍などということが平気でNY市場に横行している。

これは、ニュートンも2万ポンド損した(★註1)という南海泡沫会社(South Sea Bubble)と同じ構図である。まだ発見されない金鉱脈がもし発見されればこうなる。さらに発見されればこうなる、次々と発見されればこうなるという架空の株価を欧州投機家が追究し、最後には勿論目が覚めて株価は当然暴落した。

P・F・ガルブレイスが「頭脳に極度の変調をもたらすような陶酔的熱病」(★註2)と定義した「ユーフォリア」とは、この時発生したし、その少し前1637年に大天井を付けて暴落したアムステルダムのチューリップ球根バブルもそれであった。

その後、人類の歴史にバブルは何回も発生したが決して同じ形では現れない。だから筆者は「お化けは同じ顔では出てこない」というのだ。これでニュートンは2万ポンド損した。2万ポンドという数字は、当時の造幣局局長の10年分の年収に相当したという。

(★註1):ニュートンは物理学者であり数学者であることで知られているが、実は高級官僚で造幣局の局長だった。「僕は天体の行方は計算したし、微分積分も発明したが、株価の行く末だけは判らなかった」と言ったという話しは有名である。ケインズが母校ケンブリッジ大学キングスカレッジの300年先輩のニュートンの遺稿を整理したがそこに出てくる言葉である。

(★註2):「バブルの物語」原題A short History of Financial Euphoria(ガルブレイス著、鈴木哲太郎訳、ダイヤモンド社,1991年刊)

Next: 10月からのNY市場の下落の背景を解説



NY株の終焉はいつ来るか

陶酔が覚めれば現実に戻る。10月の下げは米国の利上げが続いて世界のマネーの量が減り始めるという現象が背景にある。「利上げ=株下落」ということは、半年も前から本稿では言い続けていたことであった。

しかし、その底流には世界景気・米景気の寿命は如何に、という疑問が伏在する。

日経新聞17日版の記事によれば、「スマートフォン専用証券のワンタップパイ(東京)は1万人強がアップル株を保有しており、投資家は含み損を抱えたという。アップルを代表とするハイテク株の急落で世界の投資家が同時に打撃を受けたという10月以降の波乱相場によって、短期投資家の退場を余儀なくされたであろう。こういうところからも09年の大底から見ると4倍になったNY株、トランプラリーで25%上がったNY株、これらの終焉が近いということが見えてくる」。

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当面の市況

世界の主要企業の4割の株価が弱気相場入りだが、日本の「官製相場」は底入れしにくい

NY市場の成長株

中国景気後退は世界の金融市場に激震を与える恐れがある

米中問題は貿易戦争に限らず軍事衝突の可能性さえ含みつつある

青春期相場・壮年期相場・老年期相場の大天井と、その終焉時のPERによる底入りの計測

「金融正常化へのジレンマ」

日銀の出口戦略-黒田緩和の幕の引き方

来年1月から本格化する日米貿易交渉で円高不安はあるか、あまりないと思う
円安傾向は伏在している

先回のG7に続いてまたもや失敗に終わったAPEC首脳会議

「外交の安倍」が存在感を示す好機が来た

原油価格

10年前からの読者Iさんからの「6740JDIについて」の質問

DJ-【オピニオン】第3段階へ移行するトランプ外交(出所:ダウ・ジョーンズ、2018年11月20日)

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報 「投機の流儀 (罫線・資料付)」*相場を読み解く』2018年11月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2018年11月25日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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