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誰がフランス抗議デモを扇動?カラー革命やアラブの春に近い「黄色いベスト」運動=高島康司

いまフランス全土を席巻し、マクロン大統領の辞任をも迫っているフランスの「黄色いベスト運動」について解説する。外部勢力がこれを扇動している可能性が高い。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2018年12月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

トランプ政権を批判していたマクロン氏、事実は後でわかる?

フランス国民の7割が支持する「黄色いベスト運動」

いまパリを中心にしてフランス全土、2,000箇所で「黄色いベスト運動」と呼ばれる大規模な抗議運動が展開している。

これは、マクロン政権が計画している燃料税引き上げに抗議して11月17日に発生した運動だが、フェイスブックなどのSNSを通じて全国に広まった。デモ参加者が路上作業用の黄色いベストを着ることから「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト運動)」と呼ばれている。

12月1日には全国で約13万6,000人が参加。パリではエトワール凱旋門周辺に黄色いベストを着た数千人が集結し警官隊と衝突した。広場は催涙ガス発炎筒の煙に包まれた。

運動への支持は高く、一部の新聞によるパリのデモ後に実施した世論調査では、国民の7割が支持しているという結果だった。

極右と極左による暴徒化

国民による抗議運動が民主主義の正当なプロセスとして認められている欧米諸国では、デモは決して珍しい光景ではない。数十万人規模のデモも比較的頻繁に発生しており、抗議運動によって政府の政策が変更されることもしばしばである。特にフランスやドイツではそうだ。

また、今回の「黄色いベスト運動」のように一部のデモ隊の参加者が、警官隊に向かって投石したり、周辺の建物や車両に火を放つなど暴徒化し、混乱に乗じて近隣の商店での略奪行為などが発生することも数年に1度くらいの割合で起こっている。暴徒化したデモ隊を警官隊が催涙ガスや放水車で排除する光景も欧米諸国ではときおり見られることである。

しかし、今回の「黄色いベスト運動」は、フランスを象徴する凱旋門の落書きと内部の破壊のような激しい暴力や、全国2,000カ所の拡大という規模の点では近年まれに見る激しい運動になっている。

また、移民排斥とナショナリズムを主張する極右と、移民受け入れと社会主義を主張する極左が、一緒に抗議運動に参加していることも特徴的だ。

これらは相互に相手を敵として認識する両極端のイデオロギー集団だ。全面的に衝突してもおかしくない集団が一緒に抗議運動に参加しているということだ。

これは欧米の抗議運動でもかなり珍しいことだ。いわばアメリカでいうなら、トランプを熱烈に支持する愛国者の集団と、社会主義を目標にトランプに激しい憎悪で抗議をしている「アンティ・ファ」とが同じ抗議運動に参加しているようなものだ。アメリカでは、愛国者の集団と「アンティ・ファ」は敵対して衝突し、暴力事件も起こしている。「黄色いベスト運動」のような状況は、アメリカではまず考えられない。

Next: マクロンの政策は時代遅れ。強い不満で団結した国民たち



マクロンへの強い不満

こうした両極端の集団が行動を共にできるのは、現在のマクロン政権に対する強い不満を共有しているからである。

伝統的に国民の力が強いフランスは、長年所得の再配分政策に重点をおいていた。手厚い社会保障と比較的に充実したセーフティーネットである。しかし、こうした政策を維持するために、政府債務が拡大した。さらに、企業による労働者解雇の規制や週35時間労働制の法制化など、労働者保護を目的にした規制が多く、企業から見ると投資を困難にさせる要因になっていた。このため低い経済成長率高い失業率が常態化していた。

マクロン政権はこうした状況を打破しようと、大胆な改革を打ち出した。企業の解雇手続きの簡素化不当解雇補償額の上限設定などの労働市場改革を実施した。

さらに、法人税率の段階的な引き下げ、金融資産にかかわる富裕税の廃止、投資やイノベーションの促進、デジタル経済化の推進などの改革を断行した。

要するに、労働市場の大幅な規制緩和と企業や投資家への減税により、企業が投資しやすい環境の整備を目標にしたのだ。こうした改革によって投資が促進され、企業活動が活性化すると、経済も成長し雇用も伸びると考えた。

時代に逆行する「グローバリゼーション」政策に国民が激怒

こうした改革は、80年代後半のサッチャー政権下のイギリスや、メルケル政権のドイツ、さらに2000年代前半の日本の小泉政権による「構造改革」など先進国の多くの政権が実施し、経済成長を軌道に乗せることに成功している。

それとほぼ同じ内容のことをマクロン政権は行おうとしているに過ぎない。

しかし、改革が実施される歴史的なタイミングが問題だ。イギリス、ドイツ、そして日本が実施したこのような改革は、まさに自由な市場原理に基づくグローバリゼーションの改革だ。10年前の金融危機以前であればそれなりの支持も得られた。

だが、いまは反グローバリゼーションのトランプ大統領やバーニー・サンダースといった人々が象徴するように、グローバリゼーションが作りだした極端な格差と中間層の分解という現象に直面し、グローバリゼーションの矛盾の是正がもっとも重要な政治的目標になっている。

そのようなとき、格差の拡大中間層の貧困化という結果が見えている改革を支持するフランス国民は少ない。むしろ、あまりに早急に断行された改革が引き起こした問題のほうが目立ち、抗議運動につながったと見てよいだろう。

Next: 抗議運動を扇動するは外部勢力か。事実はだいぶ後になってからわかる…



外部勢力の介入か

こうした背景から見ると、今回の「黄色いベスト運動」は、起こるべくして起こった抗議運動である。それは、大多数の国民が納得しない大胆な改革を断行するマクロン政権に対する怒りと苛立ちの現れである。

しかし、こうした抗議運動が体制転換のための道具として使われてきたのも事実である。2014年の「ウクライナ政変」、2011年から拡大した「アラブの春」、2011年のリビアの「カダフィー政権の崩壊」、2005年の旧ソビエト共和国で起こった「カラー革命」などはそうした例だ。

あらかじめ存在していた国民の社会的な不満に火をつけ、体制転換へと誘導したアメリカやイギリスの情報機関が関与していたことは、だいぶ後になってから事実が明らかになることが多い。

たとえば、10月15日の英紙「ガーディアン」は、1970年代から現代まで、イギリスの警察機関は124件の抗議運動に工作員を送り込み、政治的な目的でこうした運動を利用したことを暴露した。また、リビアで起こった抗議運動を煽って暴力的な革命へと誘導するために、イギリスの特殊部隊が送り込まれていたことは、2012年に明らかにされている。また、英米の情報機関やNGOの関与を取材した秀逸のドキュメンタリーも数多く公開されている。

カラー革命を先導した勢力

具体的な例を見て見よう。2003年から2005年にかけて旧ソビエトの共和国で起こった「カラー革命」だ。これにより、各国の親ロシアの政権が崩壊し、欧米を支持する政権に転換した。「カラー革命」の真実はあらゆる資料から明らかになっている。

「カラー革命」が起こったグルジア、ウクライナ、キルギスなどの国々には、かなり早いうちから米国系のNGOが国内で活動しており、抗議運動を財政面、資金面から強力に支援していた。

それらは、米国務省系の人権団体、「フリーダムハウス」、共和党系の「国際共和党機関」、民主党系の「全国民主党機関」、米政府系の「米国国際発展機関」、そして投資家、ジョージ・ソロスの「オープンソサエティー」などの組織である。

グルジア、ウクライナ、キルギスでは「クマラ」、「ポラ」、「ケルケル」などの青年運動組織が体制転換を目指す革命運動を主導した。彼らは主要な大学のキャンパスで大学生を中心にリクルートし、大学生にデモの組織の方法、抗議集会の運営方法、民衆への呼びかけ方などを訓練した。

こうした青年の抗議団体を財政的に資金援助したのが、上記のアメリカのNGO組織だった。彼らは、資金援助のみならず、青年の抗議団体そのものの結成にも深くかかわっていることも知られている。これがカラー革命の裏の事情である。このようにカラー革命は、明らかにアメリカの工作で実現した可能性が極めて高いのである。

黄色いベスト運動の場合は?

では、いまの「黄色いベスト運動」はどうなのだろうか?「カラー革命」と同じように、アメリカ、ないしはイギリスの支援を受けた外部の訓練組織が介入している可能性はあるのだろうか?

いまのところ、運動がリアルタイムで進行中なので、これを具体的に示す証拠はまだ出てきていない。現在、大手のネットメディアの信頼できる調査ジャーナリストが現地で取材しているので、これから裏にある事実が次第に明らかになるはずだ。

おそらく、当初は平和的な運動としてスタートしたものを暴徒化させた極右と極左の活動家のなかに、前述のような組織でトレーニングされたか、またはCIAのようなアメリカの情報機関の工作員が介入しているのかもしれない。この可能性は高いと筆者は見ている。

Next: トランプ政権を批判していたマクロン氏。暴動デモを扇動する狙いは…



狙いは「マクロン政権の弱体化」

それでは「黄色いベスト運動」の拡大と暴徒化を主導した勢力が存在するとすれば、その目的はなんだろうか?

もしこの勢力がアメリカの支援を受けた機関であるとすれば、その目的ははっきりしている。マクロン政権の弱体化であろう。

周知のようにマクロン大統領は、反グローバリズムの保護主義を標榜し、自由貿易の国際秩序を拒否するトランプ政権に対してもっとも批判的なリーダーの一人である。

トランプを苛立たせる「欧州軍」構想

マクロン大統領の、トランプ大統領を苛立たせるアメリカ批判は有名だ。

11月14日、マクロン大統領はメディアのインタビューに応じ、「アメリカはわれわれの同盟国だが、フランスの大統領として『すべての安全保障をアメリカにゆだねます』と言えるのか。答えはノンだ」と述べた。そして、「同盟関係にあることは奴隷となることとは違う。アメリカには頼るべきではない」と述べ、ヨーロッパ各国が一体となって防衛にあたるため、ヨーロッパ独自の「欧州軍」をつくる必要性を改めて強調している。

また11月5日、第1次世界大戦の終結100年に合わせた地元ラジオ局のインタビューで、ロシアに加えて米国からも欧州を防衛していくためには「真の欧州軍」が必要だと強調している。

これに対してトランプ大統領は、「欧州軍」の創設について「アメリカを侮辱するものだ」とツイッターに投稿した。これは、安全保障政策をめぐる米仏の亀裂が鮮明になっていることの現れだ。

一方ドイツのメルケル首相は、「いつか真の欧州軍を創設するためのビジョンに取り組むべきだ」と述べ、トランプ米大統領の批判を受けたフランスのマクロン大統領の構想に対する支持を表明した。

Next: 狙い撃ちされるマクロン政権、ゴーン逮捕にも繋がってくる…



狙い撃ちされるマクロン政権

このようにマクロン大統領は、アメリカから距離を取る姿勢を明確にし、アメリカを主体にした「NATO軍」に代る「欧州軍」の創設を主張している。脱アメリカ化の方向だ。

このようなマクロン政権を国内問題で手一杯にして弱体化させ、「欧州軍」の創設の動きを阻止したいとの欲望をトランプ政権が持ったとしても不思議ではない。いま、マクロン政権が狙い撃ちされている。

【関連】日本では報道されないフランス暴動デモの凄まじさ、民衆は増税に怒っている=児島康孝

先頃起こったルノーと日産の元会長、カルロス・ゴーンの逮捕は、フランスを代表する企業のひとつであるルノーを弱体化する戦略のひとつであったと見ることもできないわけではない。

いずれにせよ、「黄色いベスト運動」の拡大と暴徒化に外部の勢力の関与があるなら、これを示す具体的な証拠はこれから多数明らかになってくるはずだ。これは記事を改めて書くことにする。

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※太字はMONEY VOICE編集部による

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