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投資は「放ったらかし」では儲からない?積立投資と比較した結果どうなったか=山田健彦

前回紹介した「積立投資」を使ったコスト・ゼロの株を作る方法に続き、株式投資の戦術として目の前の市場動向とどう向き合っていくかを考えていきます。(『資産1億円への道』山田健彦)

【参考】下落相場でも無関係!時間分散で、リスクを取らないコスト・ゼロ株のつくり方=山田健彦

株長者が言う「放ったらかしていたのが良かった」は本当か?

積立投資のパワー

日本の高度経済成長期やバブルの頃に社会人になった方とお話すると、株長者となった人が少なからずおられます。

会社の従業員持ち株会でコツコツと長期に渡り自社株を購入し続けたり、子供さんが入社することになった会社の株を「子供がこれから世話になる会社だから…」と長期に渡り買い続けた方々です。

配当だけで年に数百万円は普通で、年金も合わせると悠々自適で趣味に勤しみまさに人生を謳歌している感じの人達です。

積立投資のパワーを目の当たりにする思いです。

Buy and Holdはどうか?

ところで、長期投資には上記のような「長期間に渡る時間分散投資」と「一度買って、そのまま持ち続けるBuy and hold」の2つがあります。

「個人投資家は機関投資家と異なり決算が無いので、含み損が出ていても、ずっと持ち続けられるのが強み。長期で持ち続ければ、一時的な含み損状態に陥っても回復が期待できる」などとマネー雑誌にも出ています。

筆者に言わせれば、こんなデタラメで無責任な論調はありません。上記のような株長者になれた人は別ですが、個人投資家の運用資金は、将来の引退後の生活資金や、自宅購入費用等の資金の一部などとしていつか必要になる資金であることが多いのです。その必要なときに運用益がマイナスになっていたら、どうするのでしょう。

必要となる時期に向けて、利益確定などの出口戦略は絶対必要なのです。

Buy and Holdの問題点

Buy and Holdとは、一度購入したら、買い増しもせず、売却もせずに単に長期に渡りずっと持っている、という事ですが、例を上げて検証していきます。

<例1>

まず、日経平均の動きを見てみます。日経平均の史上最高値は1989年12月29日の3万8,915.87円ですが、このときに日経平均に連動する投資信託を購入したら、今でも損益はマイナスです。

<例2>

米国のS&P500指数の推移では、2007年のサブプライムローン問題に端を発した下落直前の高値は2007年10月9日の1,565.15でした。この値を奪還するのは、2013年3月28日(1,568.61)と5年半近くかかっています。

<例3>

米国のITバブル崩壊(2000年3月)直前のNASDAQ総合指数の最高値は2000年3月10日の5048.62。

その値を奪還するのは2015年4月23日。15年超かかっています。

これだけ見ても単に持ち続けるBuy and hold作戦は危険な時もある、というのが分かるでしょう。

一般に株式投資の成績は経済の発展状況に左右されます。バブル期の日本のような、高い経済成長が続いたときはともかく、現在のような低成長、かつ世界経済の先行き不透明感が漂う状況ではBuy and hold作戦はご法度です。

Next: もしもあのとき、Buy and holdしていたら?



やはり、積立投資が良い

では上記の各例で、最高値で買ってしまったものの、その後、積立投資をしていたらどうなったのか見てみます。

まずは例1の日経平均の場合です。税金、手数料は考慮していません(以下、同じ)。最初は、日経平均が史上最高値を付けた1989年12月29日の3万8,915.87円。この日に3万円相当の予算で買い付けをし、それ以降、毎月予算3万円で月初の第一営業日の始値で積立投資をしていった、と仮定します。

この場合、1996年2月に損益がプラスに転じました。7年ちょっとです。1989年12月29日の3万8,915.87円で買ったまま何もしないでいれば、今でも損益はマイナスのままです。

例2のS&P500指数の場合。ここではサブプライムローン問題に端を発した下落直前の高値である2007年10月9日の1,565.15を300ドル相当で買った人がその後、毎月第一営業日の始値で同じく300ドル相当を継続して購入していったと仮定して検証しました。ドルベースでは2年2ヶ月後の2009年12月には損益がプラスに転じました。

2007年10月9日に買ったまま塩漬けにしておいたなら、回復するまでに5年半近くかかっているので積立投資の場合は、その半分の期間でプラスに転じたことになります。

例3のNASDAQ指数の場合ですが、米国のITバブル崩壊直前のNASDAQ総合指数の終値ベースで最高値の2000年3月10日の5,048.62で300ドル相当買った人が、同じく毎月300ドルで月初の第一営業日に積立投資したとすると、瞬間的には6ヶ月後の2000年9月には損益がプラスに転じています。その後暫くの間もみ合いが続き、安定的にプラスとなるのは、2003年11月以降ですが、4年もかかっていません

積立投資をせずにそのまま持ち続けていたら、2015年4月23日まで、なんと!15年以上待ち続けなければならなかったのです。

積立投資による時間分散投資の凄さがご理解いただけるかと思います。

Next: 超長期投資家と言われるバフェット氏が成功している理由とは?



超長期投資のバフェット氏の場合はどうか?

ここで、「超長期投資で成功しているバフェット氏がいるではないか!」という反論が出てくるかと思います。

たしかに、投資の神様といわれるバフェット氏の投資スタンスは超長期投資といわれ、1銘柄の平均保有年数は24年を超えるそうです。

しかし、バフェット氏はそのポートフォリオの中の個々の銘柄の持株数を変えずにずーっと持ち続けているのか、つまりBuy and Hold作戦を貫いているのか、というと、そうではありません。

バフェット氏はその時々の経済状況に応じて個々の銘柄の保有数を増やしたり、減らしたりして調整しています。

※参考:iBillionaire:ウォーレン・バフェット

上記Webサイトから直近の2018年9月末の保有銘柄数トップ10を見ることが出来ますが、この3ヶ月前の6月末のものと比べると、トップ10の保有銘柄も保有割合も変わっています

アップル、バンク・オブ・アメリカ、ユー・エス・バンコープ、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースは買い増ししていますが、ウェルズ・ファーゴは一部売却しています。

また3ヶ月前の報告では保有比率トップ10に入っていたフィリップス66、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンは9月末のレポートではトップ10から姿を消しました。

このように、超長期投資を掲げるバフェット氏でさえ、買ったらそのまま、という訳ではないのです。

買ったら、そのまま放ったらかし、は良くないのです。

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資産1億円への道』(2018年12月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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