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将来はアート作品が株式証券化する?ブロックチェーンを活用した芸術分野の未来とは=高島康司

今回はアートの分野におけるブロックチェーンの適用を紹介。2018年から急速にプロジェクトの立ち上がりをみせるこの分野でも、ブロックチェーンの期待度が大きい。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2019年2月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

2018年が導入元年となったアート分野、今後の動きは?

ライブオークションなど、さまざまなイベントが開催された

2018年は、アートの分野におけるブロックチェーン導入の元年になった年だったのかもしれない。ブロックチェーンテクノロジーの著名な国際的イベントである「イーサリアム・サミット」では、アートの分野におけるブロックチェーンの適用が紹介され、これを記念するライブオークションが開催された。

また、最大手のオークション会社のひとつであるイギリスの「クリスティー」は「アート+テックサミット」を開催し、この分野におけるブロックチェーン導入の可能性を討議した。

またアート作品取引プラットフォームの「マエケナス(Maecenas)」は、イギリスのアートギャラリー、「ダディアニ・ファイン・アーツ(Dadiani Fine Art)」にて、世界的なポップアートのアーティスト、アンディ・ウォーホールの作品、「12分儀の電気椅子」の所有権を分割し、その31.5パーセントが仮想通貨のビットコインとイーサリアムで販売された。販売総額は560万ドルにも及ぶ。

そして11月に「クリスティー」は、ブロックチェーンを活用した登録会社、「アートリー(Artory)」と提携し、3億1,800万ドル相当のバーニー・A・エブスワースの作品のオークションを開催した。オークションによる所有権の移転がすべてブロックチェーンに記録された。

これらはほんの一例だが、このように2018年は、アート分野におけるブロックチェーンの適用が真剣に模索された最初の年にとなった。どの試みも結果が上々だったので、これから導入が一挙に拡大する可能性がある。

Next: なぜ、アート業界でブロックチェーンが注目されるのか



ブロックチェーン適用のエリア

アート分野でブロックチェーンの導入が期待されている分野は、次の4つだ。

1)所有権と来歴の記録

アートは、特に中間業者の介在が多い分野だ。それらは、アートディーラーや美術商、そしてアートギャラリーなどだ。どんなアートの作品でも、こうした多くの中間業者を介して市場に出てくる。信頼できる中間業者の存在は、アート作品のオリジナリティーを証明するためには重要だ。

他方アートの世界では、贋作は大きな問題である。スイス、ジュネーブにあり、アート作品が本物かどうかを判定する「ザ・ファイン・アーツ・エキスパート・インスティテューション(FAEI)」によると、判定が依頼された作品のうち、なんと50パーセントが贋作か、ないしは間違ったアーティストの作品として登録されていたという。

暗号化されたデジタルデータのブロックを相互につなげ、ネット上に複数存在する分散台帳に記録してハッキングやコピーを防止できるブロックチェーンのテクノロジーは、アート作品のオリジナル性の証明とその来歴、そして所有権の移転の履歴を安全に記録するには絶好の手段となる。どんなアート作品でもブロックチェーンに記録されていれば、スマホのアプリを通して作品の必要な情報が簡単に参照できる。これは、オリジナリティーの証明が価値の源泉であるアート作品にとって、非常に重要だ。

伝統的なアートにおけるオリジナリティーと来歴の記録は、次のようなステップで行うことができる。

a)作品のすべての記録がブロックチェーンに登録されると同時に、作品のオリジナリティーを証明する独自のトークンを発行する。

b)作品が購入されると、所有権移転の証明として、トークンは購入者に渡される。

c)作品の所有者が変わるたびに、このトークンも移転する。

d)こうしたトークンの移転は、すべてブロックチェーンの分散台帳に記録される。すると、トークンの出所が、これを最初に販売したアーティストや美術商のウォレットにさかのぼることができなければ、このアート作品のオリジナリティーには問題があることになる。

2)所有権の分割

伝統的なアートであればあるほど、非常に高価になる。数百億円にもなる名画も数多く存在する。このため、伝統的なアート作品の所有は富裕層に限られ、一般の人々とは縁遠い分野になっている。

このような状況でブロックチェーンを活用すると、高価なアート作品の所有権を分割して、分散台帳に記録することが可能となる。ブロックチェーンはハッキングやコピーが困難なので、高い安全性が確保できる。そのため、ひとつのアート作品の所有権を細かく分割し、それらを比較的に安い価格で多くの人々に販売することができる。購入されたアート作品は、アートギャラリーなど、購入者がいつでも鑑賞することのできる安全な場所に保管される。

3)コピーの防止とオリジナリティーの確保

いまアートは、デジタルな領域で大きく発展している。CGIや写真、そして動画などあらゆるタイプのデジタルアートが大はやりだ。

しかしデジタルアートの場合、コピーがとても容易だ。ネットでは、オリジナルの膨大なコピーが出回っている。人々の良心に訴える以外に、これに対する有効な対処法はいまのところない。

ところが、ブロックチェーンの分散台帳を活用すると、デジタルアートの作品に、それが制作された日時と作者の署名をデジタルスタンプとして刻印することができる。こうすると、ブロックチェーンを参照することで、作品がオリジナルであるかをどうか容易に確認できる。このスタンプがないものは、偽造か違法コピーとして判定できる。

4)仮想通貨による販売

アート作品は、相当に高価になることも多い。これをオークションなどで落札しても、支払い金額の送金に銀行の手数料がかかることも多い。これはコスト的にロスになる。もし仮想通貨による販売と支払いができるなら、銀行に比べると送金手数料は抑えることが可能になる。

Next: 現在のアート分野で活用されているブロックチェーンとは



発表された作品と稼働しているプロジェクト

アートの分野におけるブロックチェーンの適用にはこのようなメリットがあるが、ブロックチェーンそのものを題材にした興味深いアート作品も出現している。

また、特に2018年からブロックチェーンのサービスを提供するプロジェクトが多数立ち上がっている。すでに発表された作品や、稼働しているプロジェクトで注目されているものをいくつか紹介する。

ブロックチェーンを題材にした作品

アートを販売するプラットフォームとしてブロックチェーンを活用するのではなく、ブロックチェーンを活用したり、それを題材にしたアート作品がいくつか生まれている。すべてユニークなものばかりだ。

・トレバー・ジョーンズ(Trevor Jones)

これは、アートのためのプラットフォームではない。ブロックチェーンをテーマにしたアートの個展である。

トレバー・ジョーンズというスコットランドのアーティストが、ブロックチェーンそのものを題材にしたアートを制作し、その個展をエジンバラのギャラリーで開催した。題名は「DISRUPTION: The Art of Blockchain(崩壊:ブロックチェーンのアート)」である。これはARのゴーグルを使って、これまでにはないアートの体験をするもので、ブロックチェーンが既存の通貨のシステムに与えたと同じ衝撃をアートの分野にも与えるという確信に基づいているという。

アートの内容そのものが、ブロックチェーンの導入によって変化する可能性を秘めている。

公式サイト:
https://www.trevorjonesart.com/

紹介ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=LdUSc5h4_A8

・クリプトアート(CryptoArte)

これもブロックチェーンを使ったアート作品。
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・ネオン・ディスクリクト(Neon District)

ブロックチェーンやパズル、そしてゲームを活用したアート作品。
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Next: 実際にブロックチェーンを活用したプラットフォームの存在



ブロックチェーンを活用したプラットフォーム

既存のアート販売のシステムを打ち壊すためにブロックチェーンを活用するプロジェクトも多数立ち上がっている。すでに稼働しているものを紹介する。

・アートプロ(ArtPro)

中間業者を排除したアートのマーケットプレイス

アートの価格は多くの中間業者の介在によって高価になっている。このため、アートは一部の富裕層しか買うことができない。しかしもし、アートの販売者と購買者を直接結ぶことができれば、中間業者が排除されるので、アートの価格は庶民にも手が届く水準まで安くなることだろう。

「アートプロ」は、販売者と購買者が直接つながる市場をブロックチェーンで構築することによって、アートを購入しやすい価格帯にすることに貢献する。

また「アートプロ」は、VR(拡張現実)のためのスマホ用のアプリで購入希望のアート作品を事前に体験できるサービスも提供する。

公式サイト:
https://art-pro.io/

紹介ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=GMyrOcdBXbA

・マエケナス(Maecenas)

アート作品の所有権を、細かく分割して販売するプロジェクト。
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・オールパブリックアート

ブロックチェーンを活用して中間業者を排除したマーケットプレイス。
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・アートバイト(ArtByte)

トークンを通してアーティストを財政的に支援するためのプロジェクト。
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・アートチェイン(ArtChain)

デジタルIDを発行して、アート作品のオリジナリティーを証明するプロジェクト。
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一挙に拡大しつつある分野

これがアートの分野におけるブロックチェーン適用の概要だ。筆者はこのメルマガの記事を書くために、各分野のトレンドを把握する必要から、英語圏のメディアを中心にしてかなりに本数の記事を読むが、今回のアートの分野はやはり2018年が大きな転換点になっていたとの印象が強い。昨年が、この分野におけるブロックチェーン適用の臨界点であったのかもしれない。プロジェクトの多さには驚かされた。今回紹介したものは、注目されているもののほんの一部だ。

その意味では、アートの分野におけるブロックチェーンの導入は一気に進むのかもしれない。案外、非常に高価なアート作品が証券化され、比較的に多くの人が購入可能な投資対象になるのかもしれない。まさにアートの株式化だ。もしかしたら、将来そうしたアートの証券を組み込んだ金融商品が出回る可能性だってある。

また、これから立ち上げが予定されている新規のプロジェクトとなると、数はもっと多い。次回は、そうしたなかでも注目されているプロジェクトを一挙に紹介する。

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』(2019年2月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン

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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。

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