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日本が優秀…だと?「我が国の政治家はバカだ」は万国共通だった=北野幸伯

自国エリートをバカだと思い、他国エリートを賢いと思う――これは「万国共通の現象なのではないか?」と言うのはロシア在住歴25年の国際関係アナリスト・北野幸伯さん。日本の政治家や官僚にはウンザリという方にこそ読んでほしい「国際政治小話」です。(『ロシア政治経済ジャーナル』)

「自国政府をどう思うか?」の問いに肯定的な答えはほとんどない

日本の政治家と官僚に絶望している人へ

皆さん、「日本の政治家はバカだ!」「官僚はバカだ!」という話をよく聞きませんか?ご自身でもそう思っていませんか?

私は先日、『グローバリズムが世界を滅ぼす』(エマニュエル・トッド、藤井聡、中野剛志、柴山桂太、堀茂樹、ハジュン・チャン著/文春新書)を読みました。

これが本当に面白い本で、よい点を挙げたらキリがないのですが、その中で、非常に尊敬する中野剛志先生が、こんなことをおっしゃっています。

TPP問題についてあまりにバカげた議論が横行しているので、たとえば地方の講演で、私が間違いを指摘します。
すると、聴衆の方々は私の説明を理解して、必ず同じ質問をされるのです。
「私は別に教育のある人間ではありませんが、私でもわかるような話を、どうして東京大学を出ている、あんなにお勉強をされた人たちがわからないのでしょうか」と。
私(注:中野先生)が、「いやいや、東大を出たからとおっしゃいますが、そんなに頭がいいわけじゃない。バカばっかりなんですよ」と答えると、その質問者は「そんなはずはないでしょう」と必ずおっしゃる。
私(注:中野先生)はむっとして、「何であなたにそうじゃないってわかるんですか。私は毎日そいつらと付き合ってるんですよ」と反論する(笑)。
出典:『グローバリズムが世界を滅ぼす』224p

中野先生が日本のエリートについて、上記のようにおっしゃられた。すると、ソ連崩壊、アメリカ発の経済危機、アラブの春などを予測し的中させたフランス人学者のエマニュエル・トッドさんがこう言ったのです。

日本のエリートに問題があると聞いて、私は動揺しています。歴史上、日本のエリートは、フランスのエリートよりも素晴らしいと思っていたからです。
出典:『グローバリズムが世界を滅ぼす』226p

なんと!エマニュエル・トッドさんは、「日本のエリートは素晴らしい」と思っていたのです。そして、自国(フランス)のエリートについて語りはじめます。

フランスはバカなテクノクラートを輸出しています。パスカル・ラミー(WTO事務局長)やクリスティーヌ・ラガルド(IMF専務理事)などです。彼らは、経済金融関係の国際機関のトップにいる。
その一方で、フランスの経済はガタガタです。通貨システムが経済を破壊しています。これがいわゆるグラン・ゼコール(フランス独自のエリート養成教育機関)を出たテクノクラートの成したことです。
決定的な政策は行われていません。彼らにはプロジェクトがない。夢を描くこともできない。

トッドさんは、「日本のエリートは優秀だ」と思う反面、「フランスのエリートはダメだ!」と思っているのですね。

「自国エリート=バカ」と思うのは万国共通?

私は、いろいろな国の人たちと話をしてきましたが、

  1. 「自国エリート=バカ」と思う
  2. 「他国エリート=賢い」と思う

この2つは「万国共通の現象なのではないか?」と思っています。

ロシア人だって同じこと。彼らは、

を理由に、「政府は無能だ!」と確信しています。もっとも、ロシアの場合、それが「プーチン批判」につながらず(!)、ターゲットはメドベージェフ首相以下閣僚たち。

旧西ドイツの人たちに会うと、「メルケルは共産主義者でダメだ!」などと言います。

Next: 「日本の政治家・官僚はダメ!」と感じるのは極めて普通のことだった


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「日本の政治家・官僚はダメ!」と感じるのは極めて普通のこと

出張や旅行でいろいろな人と知り合い、機会があるたび「自国政府をどう思うか?」と聞きます。

肯定的な返事が返ってくることはメッタになく、「あれがダメで、これがダメで」と不満を言われることがとても多い。一方で、「日本はいいね~」などと言われるのです。

というわけで、皆さんが「日本の政治家はダメ、官僚はダメ!」と感じているのは、極めて普通のことなのですね。

そのことを踏まえたうえで、2つのことが重要だと思います。

1. 変化が全然起こっていないように見えても、政治に働きかけ続ける

たとえば、ここ数年で、日本人の大変多くが「自虐史観」から脱却しました。しかし、その変化が始まるまでに、多くの人が長年にわたって働きかけを続けてきました。

私も、10年ぐらい前から一貫して「自虐史観は捨てましょう」と書き続けていました。全然変化が起こらないような手ごたえのない時期が続き、ある年、一気に動くことが多いです(慰安婦像問題も、最近急に良い方向に変わってきました)。

2. 自分自身の人生について政府をアテにしないこと

とはいえ、政治や政府が変わるのは長い時間がかかります。それより、自分自身の人生を変える。これは、自分1人の決意だけでできるので、今日からはじめられます。

国に働きかけるのは、自分のためというより、「国とみんなのため」。自分自身の生活は、「自分で変えてやる!」という決意と気概が必要ですね。

まずは「私自身」が「自立人間」になる。「自立人間」が集まった国が「自立国家」になります。だから、「日本の自立」は「私の自立から」なのです。

ちなみに今日のネタ元『グローバリズムが世界を滅ぼす』は、本当に面白い本です。今回は、中野先生とトッドさんの「エリート批判」の部分だけとりあげましたが、我ながら「ひどいな」と思います。

「グローバリズム」「新自由主義」の問題点が、論理的、多角的によくわかる内容になっていますので、是非ご一読ください。

【関連】プーチンがいま考えていること。ロシアが米国を倒す5つのステップ=北野幸伯

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ロシア政治経済ジャーナル』(2015年9月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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