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日経平均は1万8,000円が妥当。なぜ多くの投資家は割安感のなさに気が付かないのか=江守哲

現在のドル円の水準で見れば、アベノミクス相場以降の日経平均とドル円の関係から算出される日経平均の理論値は、おおむね1万8,000円です。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2019年3月4日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

SQ前の動きに要注意。長期的には、日経平均は1万8,000円が基準

2万2,000円近くまで上昇か

米国株、日本株ともに堅調です。日経平均は4日の市場で2万1,800円台を回復しています。米国景気の底堅さを受けた円安・ドル高を背景に、輸出関連株を中心に買い戻されています。

しかし、東証1部の売買代金は低迷したままで、迫力不足の感は否めません。また、物別れに終わった米朝首脳会談は、経済への影響はないとして市場の反応は限定的となっています。一方、米中通商協議の期限延長が正式に発表され、貿易問題での緊張緩和が買い戻しを誘発しています。

ここまでの日本株の動きは、米国株にかなり劣後しているとはいえ、基本的には米国株の写真相場です。したがって、良くも悪くも米国株次第です。

今週は中国の全国人民代表大会(全人代)があります。中国株が堅調さを取り戻していますので、東京市場も楽観的になる可能性があります。

まして、ドル円が円安で推移しています。上昇期待が高まる場面もありそうです。場合によっては、2万2,000円近くまで上昇する場面があるかもしれません。

<米中通商協議の期限延長>

米中両国は3月1日としていた貿易協議の期限を延長しました。さらに、新たな期限は定めず、首脳会談での最終合意を目指す方針です。ここでもうやむやになってことが好感されているようです。期限を設けずに協議を続けることは、市場では米政府は合意に前向きと受け止められているようです。協議が順調に進む間は期待感が続き、相場を下支えする可能性があります。

しかし、合意できなかったということは、米国が満足していないことを意味します。市場の見方は実際には誤りでしょう。

<全人代>

一方、5日に始まる全人代では、中国政府が19年の成長率目標を示す見通しですが、6.5%以上の成長率目標を示した場合には、株式相場にとって好影響があるとの見方が多いようです。

中国政府は景気後退を避けるため、減税などの景気対策を実施しています。期待感が高まるのも仕方がないところでしょうか。

SQ前の動きに注意

日経平均は18年10月の高値から12月の安値までの半値戻しである2万1,700円水準に到達しました。

これで、「半値戻しは全値戻し」といった、古株の株式市場関係者が声高に指摘しそうです。しかし、半値戻しが全値戻しになる根拠はありません。これはデータでも確認されています。わけのわからない、根拠のない希望や期待に惑わされないようにしたいものです。

さて、8日には先物・オプションの特別清算指数(SQ)算出日が控えています。SQ前に日経平均が上昇した場合、値幅が振れやすくなるでしょう。SQが再び起点になり、市場のトレンドが大きく転換する可能性は十分にあると考えます。

いずれにしても、割安感がないわけですから、米国株が崩れるといずれ大きな調整場面が来るでしょう。

日本株が割安ではないことに気づいていない投資家が多いうちは、高値圏を維持するかもしれません。しかし、いずれ気づかざるを得ないでしょう。

Next: 日銀は日経平均が1万8,000円以下にならないように動く?



日銀は日経平均が1万8,000円以下にならないように動く?

黒田日銀総裁は、「2%の物価目標実現される状況の下では、出口・正常化を検討する」と発言しました。

また、「ETF買い入れはイールドカーブ・コントロール(YCC)のひとつの要素であり、現状はこうした政策が必要」との認識を示しました。

さらに、「20年度も物価目標2%に達する可能性は薄く、その先になる」としました。

日銀保有のETFについては、「時価が簿価を下回っても、財務の健全性や株価にマイナス影響与えることはない」とし、「ETF買い入れの効果と副作用については今後も十分検討を進める」としました。

さらに、「TOPIXが1,350を下回ると、日銀保有のETFの時価が簿価を下回る」とし、初めて保有コストを示しました。

TOPIXベースで1,350ポイントですから、日経平均に置き換えると、おおむね1万8,000円となります。この数字は今後の「マジック・ナンバー」になるでしょう。

つまり、これ以下にならないための政策が打たれる可能性があるというわけです。

日本市場を避ける海外投資家

日銀は民間企業で、かつ上場企業ですので、株価が下落すると保有資産の価値が目減りします。最悪のケースでは、上場維持ができなくなるリスクもあります。

もっとも、そうならないように、日銀はみずから直接的な政策を打つことができます。これは非常に大きなポイントでしょう。

とはいえ、海外市場が崩れれば、その限りではありません。その場合には、日銀は政府とともに、日銀の会計制度を急遽変更するなどして、日銀に損が出ないように飛ばしをやるでしょう。それくらい平気でやるのがアベクロ(安倍首相と黒田総裁)です。この点は甘く見ないほうが良いでしょう。

一方で、このように操作されている市場には、外国人投資家は資金を投入しません。このような愚策をやっているからこそ、日本株は上昇しないのです。期待感もなければ、政策で支えられているだけです。

Next: ドル円水準から見ても日経平均は1万8,000円が妥当



日経平均は1万8,000円が妥当

現在のドル円の水準で見れば、アベノミクス相場以降の日経平均とドル円の関係から算出される日経平均の理論値は、おおむね1万8,000円です。まさに、日銀の保有ETFのコストになるわけです。

このように考えると、日経平均は一度は1万8,000円程度に下げたほうが良いということになります。それまでは、割高な状態が続くことになります。

副作用を認知しない日銀

一方、日銀の片岡審議委員は、「日銀は大胆なことをもっとやるべきだ」とし、追加金融緩和によりデフレ脱却を早期に実現した上で、緩和を終わらせる金融政策の正常化を急ぐべきとの考えを示しています。

黒田総裁の就任後に始まった大規模な金融緩和は4月で丸6年になります。現在の政策で、地方金融機関の収益悪化など副作用に懸念が強まっています。

しかし、片岡委員は「現状は金融機関などに具体的な副作用があるとは認識していない」とし、「現行の緩和策を続けるだけでは結果的に副作用が累積していく」と指摘しました。

さらに、「政策を平時の状態に戻すために時間もコストもかかる」として、脱デフレへ思い切った手を打つべきだとの考えを強調しています。

追加緩和の手段については、「満期まで10年以上の国債金利をさらに押し下げるべきだ」との持論を改めて示しました。

また、経済や物価情勢の不確実性が強まる中、「金融政策と財政政策の連携をより強化する必要もある」としています。

金融政策の限界が来ている今、このような発言は虚しさ(むなしさ)しかありません。自身の存在意義を誇示したいのでしょうが、もはや日銀の役割は終わっています。

Next: 短期的な動きはどうなる? 引き続き下落リスクを念頭に



3月末時点で2万1,800円を超えているのか、下まわっているのか

さて、このように考えると、長期的には日経平均は1万8,000円を基準に見ていけばよいでしょう。

あとは、短期的な動きを見ていくだけです。いまは先物主導の買い戻しで上げているだけですので、逆の動きになれば下げ足も速いでしょう。引き続き下落リスクを念頭に見ていきたいと考えています。

四半期ベースでは2万1,800円を割り込んでいれば、長期トレンドが下向きとの判断は変わりません。つまり、今月末時点で2万1,800円を超えているのか、下まわっているのかがきわめて重要ということです。

一方で、1万9,200円を割り込むようだと、下げ基調が鮮明になり、かなり厳しい下げになるでしょう。

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株式市場:米国株は過去最高値が視野に、日本株も堅調

為替市場:ドル円は急伸

コモディティ市場:金・原油ともに反落

今週の「ポジショントーク」~市場動向を興味深く見守る

今ヘッジファンド投資戦略~「レイ・ダリオ氏の変心?」投資戦略構築のポイント

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