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新元号に浮かれるな。新年度に入ってわかった2019年の日経平均が下げて終わる理由=江守哲

今年は「1月と2月が上昇し、3月が下落したケース」になりました。このようなパターンは、1966年以降で過去5回だけ。そしていずれも年間騰落率がマイナスです。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2019年4月1日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

売りを検討するのは7月以降? 今年の鬼門は5月・8月・11月だ

18年連続、4月は海外投資家が買い越し

日本株は先週までは軟調でした。やはり米国の「逆イールド」が株価の上値を重くしました。しかし、新元号「令和」の発表を受けて、週明けの新年度入り相場では急騰しています。

新元号発表を前に投資家心理が高揚していたこともあり、週明けの市場はかなり強い動きで始まりました。そして、新元号発表が近づくと上昇幅が拡大しました。

市場はこのような材料が大好きですね。

さて、これまで日本株はほぼ毎週、外国人投資家に売り込まれてきました。しかし、4月は外国人投資家が買う傾向が強いのが特徴です。18年連続で買い越しています。したがって、今年も買い越すのではないかとの期待もあります。

このような楽観的な期待は、意外に簡単に株価を押し上げてしまいます。投資家は常に楽観的ですので、よい材料にはすぐに伸びつきます。ですので、このようなわかりやす材料は買いを促しやすいといえます。

逆イールドへの関心が低下し、米国株が上昇するなど強い動きになれば、日本株も連動してしばらくは上昇するかもしれません。

まずは3月初めの高値2万1,860円を超えるかを確認することになるでしょう。そのうえで、12月の戻り高値の2万2,698円を目指すかを確認したいところです。

そこまで上昇すれば、さすがにいまのEPSではPERが13倍を超えます。そのような期待感を日本株に持てるのかどうか。投資家のスタンスが問われることになりそうです。

まして、2万4,000円などという水準にまで上昇すれば、PERは14倍になります。さすがにここまでの上昇は厳しいでしょう。

2万4,000円を付けた当時よりも経済環境が悪化し、企業業績にも懸念があります。そう考えると、高値更新は難しいと考えておくのが賢明でしょう。

今年の年間騰落率はマイナス?

さて、今年は「1月と2月が上昇し、3月が下落したケース」になりました。3月はわずかではありますが、下落しました。

このようなパターンは、1966年以降の日経平均株価では過去5回しかありません。しかし、その5回はすべて年間騰落率がマイナスになっています。つまり、下げています

過去のデータに基づいて考えると、昨年末の2万0014.77円を今年の年末には下回っていることになります。つまり、いまからショートすれば、過去の統計ではほぼ収益になるといえます。

それらの年の4月のパフォーマンスをみると、3回がプラス、2回がマイナスでした。平均では0.33%のマイナスです。また、すべての年で8月は大きく下落しており、平均8.60%下げています。これは無視できない数値です。

ただし、5月は堅調で、6月も底堅いので、7月以降に売りを考えることになるでしょう。

このように、いずれは下げることになりそうですので、今後も売り目線でよいと考えています。ただし、一時的に戻すことがありますので、そのような動きには注意が必要でしょう。

とはいえ、結局は売り場探しということになりそうです。

Next: 10連休に要注意!今年の鬼門は5月・8月・11月



今年の鬼門は5月・8月・11月

以前にも解説したように、今年の鬼門は5月・8月・11月です。8月に大きな動きが来るとすれば、いまから焦って動かないことも重要でしょう。

これらのデータから、7月頃から売りを検討していくことになりそうです。ちなみに、7月には参議院選挙があります。

また、10月には消費増税が控えています。これも大きな材料です。夏場に株式市場は不安定になる場面がありそうです。

さて、基本的に、日経平均株価は「上がらない指数」であることを念頭に入れておきたいところです。

米国株が上げても上げ幅は小さく、米国株が下げるとそれ以上に下げます。構造的にこのような仕組みになっています。したがって、常に売り目線で対処するのが良いと考えています。

その意味でも、以前ご紹介したオプション取引が有効になってきます。コールオプションの売りを繰り返すと、上昇時にも対応しながら収益獲得の機会が増えます。特にいまのような市場環境では最も機能する戦略といえます。

引き続き、株価は上がりづらい状況

外国人投資家の売り姿勢が強く、株価は上がりづらい状況です。

4月は通常、買ってくる時期ですが、株価動向を見ながら確認したいところです。

東京市場でも金利低下逆イールドが話題になっています。それだけ、株価の下落への懸念が裏にはあったといえます。「金利低下は好材料」ではなく、むしろ株価にはネガティブ材料と考えるべきでしょう。

また、日米金利差の縮小で円高になりやすくなっています。これも株価を抑えやすいといえます。

企業業績の伸び悩みも懸念されます。EPSもBPSもすっかり頭が重くなってきました。伸びを欠いているのは、企業業績の伸び悩みが背景にあります。

この傾向は、今後業績見通しの悪化が示現することで、さらに強まっていくでしょう。特に日本の企業業績が明らかになってくる10連休以降の株価動向には注意が必要でしょう。

Next: 日銀の政策運営が失敗した場合、日本の金融市場は大混乱になる



配当権をめぐる動き

3月26日は配当権利付き最終売買日でした。この日に株式を保有していれば、個別企業の配当を得ることができる権利を確保できます。投資家はその権利を確保することに躍起になります。

しかし、過去を見ると、その後に株価が下げることが少なくありません。今回の日経平均の配当権利落ち分は172円でした。

3月27日以降の市場でこの権利落ち分をすぐに埋められるかに注目していましたが、結果的に月内には埋めきれませんでした。これ自体はネガティブな印象があります。

しかし、週明けの市場でこれを完全に埋めています。この基調が続くと、目先は強い値動きになる可能性がありそうです。

黒田日銀総裁の発言からわかること

黒田総裁は保有しているETFについて「期末時点で時価が簿価を下回る場合は、引当金を計上する。決算上の期間損益は下押しされる」としました。

その一方で、「ただし、日銀の損益は国債の利息収入やETFの分配金の収益などいろいろな要因を組み合わせて全体として決まってくる」とし、「ETFの要因だけを取り出して、債務超過になる水準を答えるのは適当ではない」としました。

さらに、「量的・質的金融緩和は、バランスシート拡大で収益が押し上げられる一方、出口時には、当座預金に対する付利金利引き上げによって収益が減少しやすい」と指摘しました。

そのうえで、「経済・物価情勢が好転して付利金利を引き上げる場合には、長期金利も相応に上昇する」とし、「当座預金に対する支払い利息が増える一方、保有国債はより高い利回りの国債に順次入れ替わるため、受け取り利息は増加する」として、「出口時の収益面への影響は、受け取り利息も含めたバランスシート全体で考える必要がある」としました。

また、「15年度から利息の受け払いで利益が上振れる局面では、一部を積み立て、下振れる局面では取り崩すことのできる債券取引損失引当金の拡充を行った」とし、「こうした措置は、出口に向けた収益の振れを平準化して、財務の健全性を確保する観点から一定の効果を持つ。事前の対応としては十分なものと認識している」としました。

さらに黒田総裁は、「日銀が保有する国債の残存期間は7年強だ」とし、「景気が回復し、物価が上がる中での長期金利はなだらかな形で金利が上がる時には、金利の高い国債に乗り換えていく。付利が引き上げられても、両面をみていかなければならない」と繰り返しました。

また、「保有国債は償却原価法を採用しており、長期金利が上昇して国債価格が下落しても、決算上の期間損益で評価損失が計上されることはない。大きな問題が生じることはない」としました。

株価が本格的に崩れ出した時、日銀が目先の金融政策に加え、自身が保有する株価対策も行う必要に迫られます。

これは大変な作業になるでしょう。黒田総裁の政策がいつまで通用するのか、今後はこれまで以上に難しい政策運営を迫られることだけは間違いなさそうです。

そして、その政策運営が失敗した場合、日本の金融市場は大混乱になることだけは確かです。

Next: 日本企業の未来は暗い?日銀短観、景況感は悪化へ



日銀短観、景況感は悪化へ

最後に4月1日に発表された日銀短観ですが、大企業製造業の業況判断DIは12で、市場予想の14を下回りました。12月調査では19でした。6月の予測は8となり、前回の12から低下する見通しです。

大企業製造業の19年度想定為替レートは108.87円でした。18年度は109.41円でしたので、さらに円高方向で見ていることになります。

日本の企業は実態はよくないとみています。この点にも注意が必要かもしれません。

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株式市場:米国株は過去最高値が視野に、日本株も堅調

為替市場:ドル円は急伸

コモディティ市場:金・原油ともに反落

今週の「ポジショントーク」~市場動向を興味深く見守る

今ヘッジファンド投資戦略~「レイ・ダリオ氏の変心?」投資戦略構築のポイント

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2019年4月1日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

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