スポーツの世界におけるブロックチェーン適用の概要を紹介。今回はe-スポーツではなく、実際のスポーツにおけるブロックチェーンの適用状況を見てみましょう。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2019年4月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
観戦するだけでなく、さまざまな参加の形が楽しめる
現在縮小しつつあるスポーツ観戦ビジネスの新たな広がりに期待
インターネットの中継やe-スポーツの興隆に押され、ビジネスとしてのスポーツ観戦は次第に縮小している。スポーツが非常に盛んなアメリカでさえ、この15年間でメジャーリーグ・ベースボールの売上は8.6%下落し、またフットボールも毎年2%の割合で売り上げが減少している。
そのような状況で、ブロックチェーン導入への期待は大きい。この新しいテクノロジーで開拓されるビジネス分野があるからだ。今回はその1として、この分野の概要を紹介する。いま、次のような適用が考えられている。
スポーツのスポンサーシップ
企業がスポーツチームのスポンサーとなることは、スポーツ産業によって大きなビジネスになっている。何億ドルもの収益をもたらすこともまれではない。たとえば2014年にイギリスの代表的なサッカーチーム、「マンチェスター・ユナイテッド」は「シボレー」とスポンサー契約を結んだ。「マンチェスター・ユナイテッド」の選手は「シボレー」のロゴが入ったユニフォームを着て試合に出ることになったが、この契約金は8,000万ドルであった。このようなスポンサー契約は、どのスポーツの分野でも当たり前になっている。
いま仮想通貨の取引所が、スポーツチームのスポンサーとして名乗りを上げ始めている。これはブロックチェーンというテクノロジーをスポーツに適用するものではないものの、小さなチームではスポンサーシップの契約料を仮想通貨で受け取るケースも出てきた。さらにチーム全体ではなく、個々の選手が仮想通貨の発行元と契約し、契約料を仮想通貨で受け取るケースもある。
このように、仮想通貨が契約料の支払いに使われる事例は今後も増えることが期待される。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・スポーティコ(SPORTYCO)
有望な選手に仮想通貨で先行投資をするプロジェクト。
公式サイト:https://sportyco.io/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=wKx6Uy7roI8
Next: 選手への先行投資にもブロックチェーンを活用
マイナーリーグやアマチュアへの支援
「ビッグ・リーグ・アドバンス(Big League Advance)」というベンチャーが興味深いプロジェクトを開始した。有望なマイナーリーグの選手に先行投資をして、その選手が後に大きな年俸を稼ぐようになったとき、年収の10%を報酬として受け取るというものである。
マイナーリーグやマイナーチームに在籍している選手の年俸は非常に安い。そのため、ベストのコンディションを維持することも難しい環境にいる。そのような選手にとっては、先行投資でまとまった金額を得られることは大変な助けになる。
「ビッグ・リーグ・アドバンス」は、契約の改ざんや改編の危険性がないように、選手との契約の管理はブロックチェーンで行われる。新しい試みだ。これから「ビッグ・リーグ・アドバンス」は、プロの選手のみならず有望なアマチュアにも投資の枠を拡大する計画だ。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・プレイヤートークン(PlayerToken)
個々の優秀な選手を記念したユニークなトークン。
公式サイト:https://playertokens.co/
ダフ屋と偽造チケットの防止
どの分野のスポーツでも、ダフ屋による高額なチケットや偽造チケットの販売は大きな問題となっている。ダフ屋の組織がチケットを買い占め、それをファンに高額で販売したり、オンラインのサイトで巧妙に偽造されたチケットを販売し、それを購入した人々が大きな被害を受けることも起こっている。
ブロックチェーンを活用したe-チケットを使うと、この問題は回避することができる。そもそもオンラインチケットであれば、ダフ屋の出現は防ぐことができる。そして、販売されたオンラインチケットをブロックチェーンで管理すると、いつ、誰が、どの席のチケットを購入したのか記録し、それを購入者がスマホのアプリで見ることができる。
こうしたシステムによるオンラインのe-チケットであれば、ダフ屋と偽造を排除することができる。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・イベントチェーン(Eventchain)
「EVCトークン」を発行してチケットの安全な取引を行うプロジェクト。
公式サイト:
https://eventchain.io/home
紹介ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=z3CdMF_-88w
・ブロックパーティー(Blockparty)
チケットの購買者をブロックチェーンに登録し、不正と偽造を防止するプロジェクト。
公式サイト:https://www.goblockparty.com/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=Couqy-hpikQ(日系人のユーザーによる紹介)
Next: アスリートのあらゆるデータを計測・管理、さらに流出を防ぐことも
選手のデータ管理
最近のスポーツでは、センサーなどのテクノロジーの進歩により、アスリートに関するあらゆるデータが計測可能になっている。それらには、試合のデータだけではなく、選手の体調にかかわる微細なデータが含まれる。こうしたデータの種類と量はどんどん増えている。
一方、人気のスポーツでは、優秀な選手の引き抜きが可能かどうかが、ビジネスの命運を決する場合もある。このようなとき、選手のこうしたデータ大変に貴重だ。そのため、チームの選手データを管理しているサーバのハッキングさえ起こっている。
こうした状況で選手のあらゆるデータをブロックチェーンのシステムで管理できれば、ハッキングやデータの盗用などは防ぐことができる。ブロックチェーンのこうした活用はこれから拡大するはずだ。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・ダイノ(DYNO)
選手の身体コンディションのデータを管理するプロジェクト。近いうちに公式のICOを開始する模様だ。
公式サイト:https://dyno.io/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=pcTGrKVT5NM
・リンポ(Lympo)
身体的健康のデータを仮想通貨で販売するプロジェクト。
公式サイト:https://lympo.io/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=GKqU-v4f6-I
Next: 新しいスポーツの楽しみ方「ファンタジースポーツ」とは?
ファンタジースポーツのトークン化
いま「ファンタジースポーツ」という新しい分野が人気を集めている。これはファンがゼネラルマネージャーとなり、さまざまなチームで活躍している選手を集めた現実には存在しないチームを作り、勝利するチームに賭けるというものだ。選手のデータは実際の選手の成績と連動しおり、選手のパーフォーマンスが上がれば、その選手が所属する「ファンタジースポーツ」のチームのパーフォーマンスもよくなる。
ゲームは毎回の試合で競うものと、シーズン全体で競うものとがある。勝利した選手とチームに賭けたファンには賞金が支払われる。これはスマホで簡単に参加できることから人気を博し、すでに32億ドルのビジネス規模になっている。
しかし「ファンタジースポーツ」の問題は、賞金の分配である。ゼネラルマネージャーがファンのひとりであり、企業ではないこともあるので、賞金の分配でトラブルが発生することが多くある。ファンの思い違いで賞金が得られると思っていたのに入らなかったなどというケースもある。
そのようなとき、ブロックチェーンの導入は非常に便利だ。選手のパーフォーマンスや応援しているファンをブロックチェーンで記録すると、誤解が生じる可能性はほとんどなくなる。
また、仮想通貨を導入することもできる。チーム専用の仮想通貨を発行し、それをファンに販売するのである。これを購入したファンは、これを相互に交換することもできるし、また賞金の支払いはこの仮想通貨で行うことができる。ファンは仮想通貨を現金化してもよいし、次のゲームの掛け金に使うこともできる。
いまインテルが「ファンタジースポーツ」にブロックチェーンを導入する実証実験を行っている。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・ノーリミット・ファンタジースポーツ(No Limit Fantasy Sports)
「ノーリミット・コイン(NLC2)」を使った「ファンタジースポーツ」のプラットフォーム。
公式サイト:https://www.cryptofantasysports.com/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=2JOqb7OhOVc
ドーピングテストの結果の管理
いまアマチュアでもプロスポーツでも、ステロイドなどの薬物の使用は大問題になっている。2014年にロシアのソチで開催された冬季オリンピックでは多くのロシア選手がドーピングで陽性反応が出た。
だがこれは、ロシアに限ったことではない。世界のどの国でもドーピングは非常に大きな問題になっている。そして、それとともにドーピングテストの結果を隠蔽するようなことも頻繁に行われている。
このような状況で、選手のドーピングテストの結果を厳重に管理できれば、ドーピングの問題は緩和されるに違いない。もしハッキングやデータの改ざんが難しいブロックチェーンでドーピングテストの結果を細かく管理できれば、ドーピングの蔓延を防止できる助けになるはずだ。
Next: 応援したい中小規模のチームにブロックチェーンで投資できる?
地方の小規模なチームへの投資
人気のあるプロチームでは問題とはならないが、地方の小規模な中小のチームでは、必要な資金の獲得が大きな問題となることも多い。こうしたチームは企業からの支援に依存しているところもある。
こうした状況で、ブロックチェーンと仮想通貨を活用した投資のシステムを構築すると、ファンの小規模な投資で資金を集めることができる。チームは所有権の一部を分割して、株券のように販売するのである。販売は独自の仮想通貨で行われ、購入者の情報はブロックチェーンで管理される。
もし投資したチームの成績がよく、パーフォーマンスが向上すると、このチームの仮想通貨の取引価格を必然的に上昇する。これはよい投資の機会になる。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・ソシオス(Socios)
ファンがチームに投資し、トークンを獲得するプロジェクト。
公式サイト:https://www.socios.com/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=aoJ_rEolNug
ファンの囲い込み
チームがファンを確実に囲い込むことは、ビジネスとしてスポーツが成功するための重要なポイントである。どのスポーツのどのチームもファンの囲い込みにはやっきになっているのが現状だ。多くのファン感謝イベントが開催されている。
そのような状況で、ブロックチェーンのシステムを活用するファン囲い込みの方法が模索されている。フェースブック、インスタグラム、ツイッターなどのSNSや、ユーチューブのような動画配信サービスにチームに関する話題を投稿すると、そのチームが独自に開発した仮想通貨がもらえる仕組みだ。ファンは、このトークンを使ってチームが提供するグッズをショップから購入できる。
またこうした仮想通貨が、一般の市場に上場する可能性も十分にある。それを売ると現金化できるので、投資の対象にもなる。
<すでに稼動しているプロジェクト>
・ブロックサイド(Blocside)
お気に入りの選手のアバターをスマホで作ることができるファン用のサービスを提供するプロジェクト。
公式サイト:https://blocside.io/
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=d4-B22gP_vo
Next: オンデマンドのスポーツ観戦の課金をスムーズに
オンデマンドのストリーミングによるスポーツ観戦
試合のライブでもオンディマンドでも、インターネットのストリーミングによるスポーツ観戦は、すでに日常化している。特に珍しくはない。オンデマンドの課金サービスも多い。
このような状況で契約内容の自動実行機能を実装したスーマトコントラクトのブロックチェーンを導入すると、ユーザーがストリーミングを見ると自動的に課金されるサービスが比較的に容易に立ち上げることが可能になる。導入のコストが比較的に安いことが期待されるため、地方の中小のチームでも導入可能になる。そのため、配信から得られる収益はすべてチームに入る。
▼注目されているプロジェクト
最後に、いまこの分野で注目されており、ICOがまだ間に合うプロジェクトを紹介する。
・マイティビーチェイン(MyTVchain)
評価:4.1
スポーツクラブが独自のチャンネルを開設できるプロジェクト。
動画配信サイトの普及にしたがって、スポーツクラブの集客数は減少している。スポーツクラブにとっては、新しいメディアがない限り集客数を取り戻すことは困難だ。
「マイティビーチェイン」は、このような状況に対応するためのプロジェクトだ。スポーツクラブが、好きな試合やシーンをアレンジした独自のユニークなチャンネルを作ることができる。動画はブロックチェーンのシステムで管理され、配信される。動画の取引には独自のトークンが使われる。
公式サイト:https://mytvchain.io/
PreICO:
2019年5月1日から6月30日まで。
ICO:
2019年7月1日から8月31日まで。
・ビットカデミー・フットボール(Bitcademy Football)
評価:4.0
有望な若いフットボール選手に投資をして育てるためのプロジェクト。
先進国のみならず低開発諸国でも優秀なフットボールの選手がいるはずだ。しかし、彼らには十分な資金がなく、コーチにもトレーニングをする機会にも恵まれていない。
「ビットカデミー・フットボール」は、こうした選手を独自に開発したAIを駆使して発見し、投資をするプロジェクトである。投資はすべてブロックチェーンによって管理される。このようにして、有望なプロフットボールの選手を育てて行く。
公式サイト:https://bitcademy.io/?utm_source=icobench
紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=_4ohxV6JUcg
ICO:
2019年5月1日から7月31日まで。
これが、スポーツの分野におけるブロックチェーンのプロジェクトだ。他の分野同様、これからスポーツの分野でもブロックチェーンの導入が進む可能性が大きいように思う。
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・ブロックチェーンが健康と医療分野にもたらす革命(1)(5/1)
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・ブロックチェーンがもたらす教育分野の革命(2)〜ICO一挙紹介(4/24)
・ブロックチェーンがもたらす教育分野の革命(1)(4/17)
・ブロックチェーンの適用で変化する再生可能エネルギーのプラットフォーム(2)(4/10)
・ブロックチェーンの適用で変化する再生可能エネルギーのプラットフォーム(1)(4/3)
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『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』(2019年4月2日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。