マネーボイス メニュー

From 首相官邸ホームページ

特定秘密保護法と安倍内閣の「政治主導」~議事録はどこへ消えた?=不破利晴

内閣法制局は、集団的自衛権の閣議決定に関する議事録を作成していなかった。これは官僚文化を大いに逸脱した行為だ。このような内閣法制局の体たらくでは、後になって情報公開を要求したとて、情報を公開するにも公開できないことになる。そんな議事録がないような法案が益々増えてゆくだろう。(『インターネット政党が日本を変える!』不破利晴)

特定秘密保護法と安倍内閣の倒錯した「政治主導」

まずは官僚のメンタリティーを知る

最近読んだ中で『現役官僚から学ぶ仕事の極意』(著:井上健介/泰文堂)はなかなか興味深い著作であった。

筆者の井上健介氏は東京大学卒業後、約5年間民間企業に勤務し、その後に官僚となり某省庁で働いてるといった異色の現役霞が関官僚である。

井上氏によれば官僚とは究極のサラリーマンであり、数十人中、2~3名しか存在しないキャリア官僚の頭の回転の速さは名に恥じず尋常ではないらしい。

彼の言葉でいうところの頭に凄いCPUが備わっており、恐るべき速度で物事を理解し、仕事に落とし込んでいる。そんな一握りの人間たちが日本という国家を動かしているというのだ。

この著作は全体的には巷に出回っているビジネス関連本の範疇を出てはいないが、私が“なかなか興味深い”と思ったのは、この著作の中に以下のくだりを見つけたからである。

官僚では、チームで処理すべき案件がある場合も、ミーティングをして、仕事の難易度別にこの「最短効率」を探る作業をします。この作業がすなわち「(仕事の)戦略を練る」という作業であり、ここにはしっかりと時間をかけます。

とはいえ、会議室でホワイトボードを使って協議する、というミーティングではなく各自が自分の席についたまま、発言者の言葉をメモして「これはどこで調べれば早いかな」などと判断する作業です。

ただし、その作業での発言や判断は、いわゆる「議事録」的なメモとして必ずしっかり書面に残す……というのが、官僚の仕事の文化です。

たとえば「この問題はAさんにヒアリングするのが一番早い」という判断が出たら、なぜAさんへのヒアリング、という選択になったか、という経緯まで書き残しておき、メールで共有するのです。

出典:『現役官僚から学ぶ仕事の極意』(著:井上健介/泰文堂)

「文書として残す」ことこそ官僚の本質

「民主党が、官僚主導から政治主導にすると息巻いたものの、結果として見えてきたのは、官僚なき政治は、アマチュアのような政治行政に終始する」とまで自信を込めて言い切るほど官僚文化絶対主義を堂々と開陳する著者、井上氏のことだ。

上述した「文書として残す」といった行為は、官僚にとって仕事以上の、皮膚感覚に根差した絶対的行為と見て間違いなさそうだ。

つまり、端的に言えば官僚の仕事とは、文書を残すことなのである。そして、その文化はこれまで脈々と踏襲されてきた。この「踏襲」も官僚の文化の1つであるという。新しいことは求めず、かつてあったものを踏襲することに力点を置いている。それが官僚の基本的なメンタリティーである。

Next: なぜ?作成されなかった「集団的自衛権」に関する議事録


初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

インターネット政党が日本を変える!

[月額540円(税込) 毎週火・木曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

なぜ?作成されなかった「集団的自衛権」に関する議事録

ここで私は非常に疑問に思うのだ。その疑問は2015年11月25日の東京新聞1面の連載記事「言わねばならないこと」に目を通した時に沸き起こった。

この連載記事は、特定秘密保護法について幅広い方面より識者や文化人の意見を掲載するもので、この日で58回目となっていた、いわば東京新聞らしい連載記事である。

この日は、長野県短大助教で公文書管理の専門家である瀬畑源(せばた はじめ)氏が、専門である公文書管理の観点から特定秘密保護法を語る内容であった。そこに見逃せない記述があったのである。

そもそも内閣法制局は、憲法解釈を変えて、集団的自衛権の行使を容認した昨年七月の閣議決定に関する内部検討の議事録を残していなかった。文書自体がなければ、公開しようにもできない。

出典:【言わねばならないこと】(58)情報公開 市民の声で 公文書管理の専門家・瀬畑源氏 – 東京新聞

ないがしろにされた「官僚の流儀」

前掲の『現役官僚から学ぶ仕事の極意』を読んだ者なら「おやっ」と思うだろうし、この内閣法制局の文書管理に大いに違和感を持つだろう。なぜなら、省内のミーティングですら議事録を残さなければ気が済まないのが官僚というものであった。これこそが官僚を官僚足らしめている源泉であったはずだ。

しかし、内閣法制局は、よりによって集団的自衛権の閣議決定に関する議事録を作成していなかった。これは、官僚文化を大いに逸脱した行為だ。

この法案に関わった官僚たちはこれで納得できたのだろうか。矛を収めることができたのだろうか。甚だ疑問である。

加えて、『現役官僚から学ぶ仕事の極意』によれば、法をつくることも「踏襲」であることに起因するらしい。つまり、今までに存在する法律用語を使わないと、法律として認められないようなのだ。だから「過去に同様の言い回しがあったか」が非常に重要な問題になる。

この慣習からも、官僚に大きなストレスを与えただろうことは想像に難くない。

Next: 官僚たちも辟易?安倍内閣の倒錯した「政治主導」


初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

インターネット政党が日本を変える!

[月額540円(税込) 毎週火・木曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

官僚たちも辟易?安倍内閣の倒錯した「政治主導」

特定秘密保護法は官僚のための法律であるようなことが頻繁に叫ばれてきたが、案外、官僚たちもこの法律には辟易としているのではなかろうか。であれば、これを主導したのは官僚ではなく官邸ということになる。そうなると、その主導とは極めて歪で倒錯したものであったあはずだ。

安倍政権は内閣法制局の人事にまで介入し、政権寄りの人物を長官に据えた経緯がある。

官僚は人事がすべてである。長官に抜擢された者も、おいしい餌を与えられながら安倍政権になお一層懐柔されたことだろう。そのことが特定秘密保護法を現実化することに大いに追い風となってしまった。

民主党が政治主導を発揮できなかったアマチュア集団だったことに対して、現在の自民党は政治主導を発揮しているように誤解されるかもしれない。

しかし、それが仮に政治主導であっても、それは倒錯した政党主導であることは言うまでもない(そもそも、憲法に抵触する法案を連発することが政治主導と
言えるのかは大いに疑問である)。

このような内閣法制局の体たらくでは、瀬畑氏に指摘されるまでもなく、後になって情報公開を要求したとて、情報を公開するにも公開できないことになる。そんな議事録がないような法案が益々増えてゆくだろう。

果たしてこれが近代民主国家と言えるのだろうか。私は公文書すら管理できない国はまともな国ではないと考えている。

【関連】無防備すぎる日本の原発と「核テロリズム」の危険性=不破利晴

【関連】あなたの仕事人生を灰色にする「お金の罠」~ごほうびの心理テスト=ゆうきゆう

【関連】上級国民のための安倍政治、上級国民のためのTPP=九州大学准教授・施光恒

【関連】日本成長の切り札。安倍総理に消費増税を凍結する覚悟はあるか?

【関連】甘利大臣「ここが正念場」のカン違い根性論で日本の貧困が加速する=三橋貴明

インターネット政党が日本を変える!』(2015年12月1日号)より
※記事タイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

インターネット政党が日本を変える!

[月額540円(税込) 毎週火・木曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。