2期連続のマイナス成長となったGDPに対し「成長の足かせになっているのはやはり消費増税」と言うのはFPの落合陽平氏。マイナス成長下にありながら消費増税を行おうとする安部総理に対しては「全くわからない」としながらも、安倍総理がラジオで発した言葉から、消費増税回避の道は閉ざされていないと期待を寄せます。(『落合王子のマネーアカデミー』)
安倍政権に消費増税を先送りする覚悟はあるか?
日本経済の足かせはやはり消費増税
内閣府が11月16日に公表した2015年7-9月期のGDP速報値によれば、実質成長率は前期比▲0.2%、年率換算で▲0.8%となった。前回4-6月期は年率▲0.7%だったので、2期連続のマイナス成長ということになる。
加えて、2014年度の年間実質成長率は▲0.9%ということなので、残念ながら日本経済は衰退し続けていると言わざるを得ない。
その一方で、失業率は目覚ましい改善を見せている。2015年10月の完全失業率は3.1%と前月に比べて0.3ポイント改善している。第2次安倍内閣以降、失業率については非常にうまくいっていると言っていいだろう。
過去のメルマガでは何度も指摘をしているが、成長の足かせになっているのは、やはり5%から8%に上がった「消費増税」であると言わざるを得ない。
1989年の消費税導入、そして1997年の5%への増税により、消費税収は増加したものの、所得税や法人税の税収はそれ以上に減少。所得税や法人税が減収となっているのは、私たちの給料が減ってしまったこと、あるいは失業者が増加したことを意味している(所得税は私たちの給料から政府に徴収されるため)。
増税が必要になる理由は2つしかない
私には、マイナス成長している現在の日本において、さらに10%に増税する理由が全くわからない。なぜなら、増税する理由は基本的には2つしかないからだ。
- インフレにより過熱した景気を冷やすため
- 税収を増やすため
であり、それ以外に増税する理由はない(副作用としての効果はいくつかある)。
マイナス成長下において、増税をして税収が増えるわけがないし、そもそもマイナスなのに、なぜ景気を冷やすのか。何度も言うが全くわからない。
増税したほうが良い場面は確かにある。例えば景気が過熱しているときだ。いわゆるインフレが急速に進み、景気が悪化することがある。こういった場合は、増税などをして景気を冷ますことで沈静化することができる。
報道番組を見ていると、政府の軽減税率について「あーだこーだ」議論をしているが、これは、消費税が増税されることが前提となっている。確かに安倍総理をはじめ、内閣府は増税を前提にしているような行動や発言をしているし、「普通にいけば増税」というのはコンセンサスなのかもしれない。
消費増税回避に含みを持たせる安倍総理
だが、2015年7月23日のニッポン放送『ザ・ボイス そこまで言うか!』で、安倍総理は消費増税に関する質問に対して非常にきわどいニュアンスの話をしている。
国の信任を維持するためにも1年半後には上げますよということを、わたし、お約束してますから、約束通りしっかりと実行できる状況を作っていく、その自信はあります。
ただもちろん、世界であのリーマンショックのような大きな出来事があれば、それに対して対応しなければいけませんけど。
つまり「上げないかもしれない」という可能性を示唆しているのだ。
政治家というのは、僕らが思っている以上に、言葉には慎重に慎重を重ねる。政治家にとって言葉とは商売道具であり、発言1つで天国にも地獄にも行くのだ。いくら生放送のラジオ番組だからといって、想定外のことは絶対に言わない。
私はこの1点に大きな期待を持っている。安倍総理のたったこの一言に、安倍総理の覚悟が見え隠れしているようにも思える。
「リーマンショック級が起きれば……」これは中国経済の衰退を表してはいないだろうか。そんなことを想像しながら、私は安倍総理に期待している。
『落合王子のマネーアカデミー』2015年12月1日号より一部抜粋
※太字、小見出しはMONEY VOICE編集部による
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これまで1000世帯以上のライフプランニングを手掛けてきた若手ファイナンシャルプランナー「落合 陽平」がお届けする”お金”と”経済”のはなし。
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