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株価大暴落はすぐそこ?参院選・消費増税ほかブラックスワンを招く8つの出来事=斎藤満

ここから参院選開票、消費増税ほか株価暴落のリスクを孕んだイベントが目白押しです。今後の「買い場」「売り場」を探るためにチェックしてみましょう。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年7月12日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

絶好調の米国経済にも陰りが…世界同時株安のリスクはそこら中に

ブラック・スワンの卵が8個

方向感が出にくくなった株式市場ですが、今後の「買い場」「売り場」を探るためのイベントをチェックしてみましょう。

これまで株の買い場を逃し、「押し目」を待っている人のために、相場が下がりそうなイベントを中心に8つほど考えてみます。

すでに大量保有している方は、逃げるタイミングの材料にしていただければ。

その1:参院選の開票結果

まず目先では7月21日の参議院選挙の投開票があります。

ここまでの調査では共同通信など一部メディアが「与党が改選過半数の勢い」としています。改選議席124の過半数は63議席ですが、自公でこれをクリアするとの予想になっています。

安倍総理は勝敗ラインを53議席まで下げたのに対し、与党内から「それは低すぎる。せめて63議席にすべき」との批判も聞かれます。

市場の期待値が高い中で与党が大きく議席を失うと、市場は不安の売りに出る可能性があります。

自民党内部の調査では決して楽観を許さない結果が出ていると言い、総理周辺では神経質になっています。それが元ハンセン病家族のために国が控訴しないことを「安倍総理が決断」としてメディアに売り込み、韓国への強気姿勢で保守派の支持を固めようとしています。これらは危機感の表れです。

前回の選挙でも秋葉原での応援演説では「安倍帰れ」「安倍辞めろ」の罵声が飛び、今年は事前に安倍総理がどこで応援演説するか隠しています。反安倍キャンペーンを準備させないためのようですが、党首がそれだけ強い反発を買っていて「大勝」できるのでしょうか。

改選の76から63以下に減ると、責任問題が浮上し、政権が揺らいで株売りとなる可能性があります。

その2:米FOMCリスク

そのあと7月末には米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)があり、FRBは恐らく0.25%の利下げに出ると見られています。

10日の議会証言で利下げを示唆する発言があり、可能性は低いのですが、万が一パウエル議長が意地を見せてトランプ大統領の利下げ圧力に屈しない立場をとり、利下げを見送れば、長期金利の上昇、株売りが強まります。特に米国株はバブル的な高水準にあるだけに、ショックの売りも大きくなる面があります。

逆に0.5%の利下げがなされたり、0.25%の利下げでも、先行き追加利下げを示唆するような声明文や議長コメントが出ると、株は買われるかもしれませんが、ドルが大きく下落して円高が日本株の売りにつながるリスクが出てきます。

ブラック・スワンとしては議長とトランプの対立(言い換えるとFRBの大株主、国際金融資本とトランプ政権の対立)が前面に出るケースで、債券・株ともに売られ、日本株もつれ安となります。

Next: 4-6月のGDPはマイナスか。消費増税ほか景気後退要因が目白押し



その3:8月の日米通商協議結果の発表

当面、これが最も大きなイベントになると見ます。

すでにトランプ大統領から「素晴らしい結果が出る」と示唆されていますが、「素晴らしい」のはトランプ大統領にとっての話で、むしり取られる日本は大きな打撃となります。その内容が厳しくなることは想像に難くないのですが、市場がどこまで織り込めているのか。

恐らく、農産物についてはTPPが歯止めにならないほど、日本が譲歩を余儀なくされ、最大の黒字稼ぎである自動車は、大幅な輸出削減を「自発的に」提示させられることになり、米国で現地生産していない自動車メーカーや部品供給者が打撃を受けます。

選挙前に出ると安倍政権が選挙を戦えないほどのダメージが、選挙後の8月に提示されることになります。自動車関連株はさらに大きく売られる懸念があります。

その4:4-6月のGDPがマイナスに

8月の初旬に4-6月期のGDP(国内総生産)が発表になります。4月、5月は生産や個人消費が好調を示唆する指標が見られますが、1-3月に弱い需要にも拘らずGDPをプラス(2.2%)成長にした在庫、外需がその分反落すると見られます。

消費や設備投資が多少プラスになっても、この2つが反落してマイナス成長となる可能性があります。

その5:10月の消費税引き上げ

消費税についてはギリギリのところで延期になる可能性がゼロではありませんが、現時点では99%引き上げられる方向で進んでいます。

これには様々な「対策」が講じられる予定ですが、車を買う人、家を建てる人はメリットがあっても、ほとんどの人はその恩恵にはあずかれず、幼児を持たない世帯やキャッシュレスになじまない人々にとっては、増税だけが残り、消費が圧迫されます。

実質賃金が今年になって5か月連続で減少し、内閣府の「消費動向調査」や、日銀の「生活意識に関するアンケート調査」をみても、家計の「景況感」は下落傾向にあり、物価上昇を「懸念」しています。

その中での消費税増税は、持続的な圧迫要因になり、消費停滞を長引かせます。各種対策にもかかわらず、消費の悪化が報じられると、株はやはり売られると見られます。これまでも消費税後に株価は下げています。

Next: 米中貿易戦争、ハードブレグジット…世界をブラック・スワンが襲う



その6:英国の合意なきEU離脱

10月には英国がEUからハードブレグジットを行う可能性があります。

すでに英国からは日本企業も含めて多くの企業が欧州大陸に拠点を移しています。従来、ハードブレグジットは回避したい意向が強かったのですが、新政権になってこのリスクが高まっています

国民投票でブレグジットを選択したときほどのショックはないとしても、双方にとって負担の大きいハードブレグジットとなれば、改めてポンド売り、株売りが避けられないと見ます。

そして英国、EUだけの影響に留まらず、双方の成長率低下を通じて、日本や中国経済にも冷却効果が及び、そこでの株価下落にも波及します。

その7:不透明な米中通商摩擦

どちらに転ぶかわからない米中通商摩擦の問題がしばらく不安材料になります。

直近は大阪での米中首脳会談実現、通商協議再開を好感して買い材料になりましたが、依然不透明感は払しょくできていません。市場の期待に反する結果となって、再び売り材料になるリスクは少なくありません。

中国の習近平体制としては、政権を揺るがす米国への譲歩ができないだけに、国有企業への補助金停止を法制化するには大きな抵抗があります。

一方、トランプ大統領が選挙に向けて「融和姿勢で株高」を選択するのか、強いリーダーとして中国強硬策をとるのか、トランプ次第の面もあります。

合意で株高となれば利食いのチャンスですが、現時点では市場を不安にするリスクがやや高いと見ます。

Next: 絶好調の米国経済にも陰りが…世界同時株安のリスクはあちらこちらに



その8:米国の景気後退

上記のリスク要因は、米国経済が堅調な間は、一時的な売りで「押し目」には良いかもしれませんが、米国経済が景気後退に入るようだと、株の調整が長引きます

FRBの利下げ姿勢で逆イールドが緩和されつつありますが、ISM製造業など製造関連の指標が急速に悪化しています。

米国経済が景気後退に入る場合は、売りが一時的では済まなくなる可能性があるので「押し目」拾いは慎重にする必要があります。

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2019年7月配信分
  • 株式市場、今後のブラック・スワンは(7/12)
  • 発想の転換、押してもダメなら引いて見な(7/10)
  • 米長期金利低下と株高の正体(7/8)
  • 年金不安で物価押し上げに強い抵抗感(7/5)
  • トランプがもたらした世界的な製造業不況(7/3)
  • 米中会談、最悪の事態は回避(7/1)

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マンさんの経済あらかると』(2019年7月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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