マネーボイス メニュー

リアルタイムの買い物情報で投資判断?「オルタナティブ・データ分析」が新たな潮流に=山田健彦

一年も半分が過ぎました。ここで、元旦の日経新聞にあった今年の投資メインテーマ「AI」について改めて見直してみましょう。今後の投資にも役立ちそうです。(『資産1億円への道』山田健彦)

2019年の前半戦を終了、年後半にも注目したい投資テーマはAI

あらためて元旦の日経新聞をチェックしてみると…

今年も前半が過ぎましたが、皆さんの投資パフォーマンスはいかがでしたか?筆者は今年は「元手50万円を1年間で1億円にした」等という派手な成功は望めない年になる、と予想していたのでその意味では予想通りの成績でしたが、儲けの絶対金額では不満足ではあります。

ところで、昨年末の当メルマガで元旦の日経新聞は手元に置いておき、時々読み返してみるべし、という趣旨のことを書きました。実行されていますか?

今年元旦の日経一面トップは「つながる100億の脳」という見出しで、AIを特集しています。やはり今年の投資メインテーマはAIです。

そのAIをまわりで支えたり、そこから派生するサブテーマとしては、

IoT
ゲノム解析
データ解析
コネクテッドカー
自動運転等

がありますが、特に人のゲノム解析分野では2001年には1人の人のゲノム解析にかかる費用は9,500万ドルでしたが、2017年は1,100ドルまで下ってきました。また解析に要する時間も1ヶ月以下に短縮されようとしています。

抗がん剤などの薬は、ある人には劇的によく効くのに他の人には殆ど効かないということがある、といいますがこれはそれらの人の間で微妙にゲノムの配列が異なることが原因とのことで、このゲノム解析技術の進歩により、今後は治癒率の向上や無駄な投薬が減ることから医療費の削減にもつながる事が期待されます。

この元旦の日経新聞の特集を読み返して気づいたことは、AIの使い方の想定例として日経は「人の行う作業を代替する事」を中心に紹介していたことでした。

「家事 片付けは任せた」
「農業 水やり、プロ並み」
「建設 現場の強力援軍」など。

一方、文字量はそれ程多くはありませんが、AIにはできないことも記事に出ていました。AIは「視覚」、「聴覚」の部分で世の中を格段に進歩させましたが「嗅覚」「触覚」「味覚」の部分には手付かずで、これは多分将来に渡って同じであろう、というものです。

つまり「知性」の部分ではAIは強いが「感性」の部分では殆ど無能というものです。「飲食店の店員をAIに置き換えるのは難しい」と記事では指摘しています。

AIにより人が行う仕事が減る部分もあるでしょうが、人の感性や美的センスに関わる仕事は引き続き残ると思われます。

Next: 米国の金融業界がロボ・アドバイザーを取り入れた結果…



やはり「人」がキーか?

AIは資産運用の世界でも活躍し、そう遠くない将来に金融業界から人は駆逐されてしまうかも、と言われています。

構造的な収益性低下に直面し続けている金融業界は、今までコア業務ではない部分にIT技術を利用しコスト削減を行ってきました。約定報告を郵送からWeb確認に切り替えたり、レポートやセミナーをオンラインで提供したり、自然言語分析を使い代表的な質問に機械が答える、監督官庁や顧客への定期的な報告書を作成する等です。

資産運用業界での人が介する業務の代表は投資アドバイス業務ですが、米国ではこの分野の完全無人化を試みロボ・アドバイザーを導入した会社もありました。これはリスク資産に投資する投資家の裾野を広げた功績もありましたが、同時にわかったことは、人はやはり、人によるサービスを好むということでした。

マーケットが急変したときの不安や将来の引退計画の悩みなどの相談相手としては、ロボットでは物足りない、という投資家が特に富裕層に多かった、とのことです。

その経験を経て、米国の主要投資ロボ・アドバイザー会社では、人によるアドバイスも混ぜたハイブリッド型にシフトしているそうです。

AIが弾き出すデータに基づき、顧客の不安心理を解消してあげたり、資産運用に関する知識レベルをデータから推測し、相手の知識レベルに応じた言葉で説明できるような「人」が求められているそうです。「人にしか提供できない業務こそが付加価値の源泉」とのこと。

つまり、AIと最も相性が良いと思われている業界でも「人を完全に機械に置き換える」のは無理で「機械は人を補助する」という戦略が業務の効率面からも顧客の感情面からも支持される、ということです。

Next: 投資分析の新たな潮流とされる「オルタナティブ・データ分析」とは?



投資分析の新たな潮流「オルタナティブ・データ分析」

もう一つ、忘れてならないのは「オルタナティブ・データ分析」というものです。最近出てきた概念ですが、これもAIを取り巻くビッグデータ分析技術の革新的な進歩から出てきました。

「オルタナティブ」とは「代替的」という意味ですが、伝統的な企業・経済分析は企業の財務諸表分析、経営陣やその企業の属する業界団体へのインタビュー、政府や中央銀行が公表する経済データをベースに企業の業績予測を立てるものですが、「オルタナティブ・データ分析」では日々、ほぼリアルタイムで生成されるPOSレジのデータやクレジットカードの使用データをもとに品目的に売上トレンドを分析する、というものです。

「オルタナティブ・データ」の中にはPOSレジやクレジットカードの使用データ以外にもデータとして取れ、数量加工ができるのなら何でも、例えば、スマホが発する位置情報、SNSによる口コミ、音声データ、特定のニュースやYouTube番組の閲覧数や累計閲覧時間、企業が保有する特許数やその内容分析なども含まれます。

背景にはコンピュータの演算処理速度の向上、AIによる自動分析、膨大な量のデータを処理可能としたデータベース、統計分析に優れたデータサイエンティストの出現があります。

このオルタナティブ・データ分析の市場規模は2017年に43億ドルと推計され、2020年の市場規模は90億ドルになる、という報告が出されています。

アメリカの大手投資銀行では、オルタナティブ・データ分析を用いた投資手法の開発に年間1億ドル近くの投資を行っている所もあるそうです。

自然言語分析

ごく最近では「自然言語分析」技術が格段に発達し、企業の特許技術の内容を分類、整理することが短時間で可能となりました。企業が他社と業務提携やM&Aを行おうとする際に、どの分野でシナジーが発揮可能なのか、どの分野で業務が重複しそうなのか等を予測します。

企業は従来、自社内に特許分析の専門部署を置き、人の手でそれらを分析していましたが、1人のスタッフが読解、分析できる他社特許件数は1ヶ月で平均3~4が限度といわれていました。この「自然言語分析」技術を用いることで、格段に処理が早くなり、日本でもこの分析を専門に請け負うベンチャー企業も出てきました。既に上場していますが、興味があれば調べてみてください。

【関連】安倍政権が選択したリフレ政策は間違っていた?なぜ、なかなかインフレにならないのか=吉田繁治

【関連】ミニストップ、193店閉店で経営悪化が止まらない。もう取り返せない4つのしくじり=栫井駿介

【関連】株価大暴落はすぐそこ?参院選・消費増税ほかブラックスワンを招く8つの出来事=斎藤満

image by : Stokkete / Shutterstock.com

資産1億円への道』(2019年7月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

資産1億円への道

[無料 ほぼ 週刊]
資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。