マネーボイス メニュー

韓国経済は崖っぷち。始まった世界同時不況で日本に頼れず「ウォン孤児」に落ちる=勝又壽良

世界経済は後退期に入ったようです。主要各国の製造業PMIで、好不況の分岐点である50割れが増えているからです。輸出依存の高い韓国経済は窮地に陥っています。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年8月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

「米中頼み」では未来がない。韓国ウォンは3度目の通貨危機へ

世界経済は不況入りへ

世界経済は、リセッション入りしたようです。主要各国の製造業PMI(購買担当者景気指数)が、好不況の分岐点である50割れが増えているからです。

中国は、今年5月から50割れしました。

米国も7月では51台を維持していますが、昨年8月の61.3をピークに下降状態に入っています。この状態で推移すれば、50割れは避けられません。

韓国は、この米中両国を主要輸出先にしています。米中経済が不況入りすれば、韓国経済は「万事休す」となります。韓国製造業は、既に2012年から「万年不況」です。製造業PMIは、ほぼ「水面下」(50割れ状態)にあります。韓国政府は、この厳しい現実を認識せず、最低賃金の大幅引き上げを強行したのです。体力の落ちた人間に、マラソンを強いるようなもの。この結果が何をもたらしたのかは、このレポートの後半で取り上げます。

世界経済の現状を見る上で、原油市況の低迷が象徴的です。

米国がイランやベネズエラからの石油輸出に厳しい制裁措置を取っているにもかかわらず、4月末以降、22%以上も下げたのです。石油以外の商品も消費の伸びが減速したため、価格は18年半ば以降、横ばいか下落の動きとなっています。こうした国際商品市況が軟調に転じているのは、主として、中国の輸入が減っていることを反映したものです。

中国「為替操作国」問題で米中摩擦はさらに長期化へ

米中貿易戦争の終結を見ないことが、国際商品市況に大きな影響を与えています。さらに悪いことに米国は、中国を「為替操作国」に認定しました。

この対象になると、中国はIMF(国際通貨基金)と協議しなければなりません。IMFは先頃、中国の経済政策に関する「年次審査報告書」の中で、「中国の為替政策には柔軟性と透明性で一段の向上が必要」との認識も示していました。同時に、為替市場介入の詳細を公表するようにも促していたのです。これは、米国が中国を「為替操作国」認定する前のIMFによる判断です。

現行の「管理変動相場制」は、為替相場が政府管理下にあるがゆえに、どうしても不明朗性がつきまといます。この際、思い切って先進国並みの「自由変動相場制」に移行すれば、このような不明朗性を払拭できるのです。

中国人民元は、IMFのSDR(特別引出権)に昇格する際、自由変動相場制移行と資本取引の自由化を約束した経緯があります。「為替操作国」問題は、人民元の国際化に動き出す契機となります。

これが実現すれば、長い目で見て米中貿易戦争も沈静化するでしょう。「市場機構」によって決まる通貨価値が、貿易取引のバロメーターになるからです。世界経済の安定化に寄与するだけに、中国も腹を固める時期なのです。中国は、「非市場機構」によって世界覇権を握るという時代遅れの野望が、いかに世界経済で摩擦を生むか。それを認識すべきなのです。

「為替操作国」問題は、米中貿易戦争がさらに拡大するリスクも孕んでいます。米中が泥沼の争いに落ち込み、米国が第4弾3,000億ドルの関税を10%からさらに引き上げると、世界経済は最悪の事態に突入します。

Next: 中国の動き次第で世界経済は最悪の事態へ/韓国製造業は万年不況



中国の動き次第で世界経済は最悪の事態へ

IMFは、中国に対する「年次経済審査」の発表で、関税を25%に引き上げた場合、需要低下や金融環境の引き締まりにより、中国の経済成長はその後1年間で0.8ポイント押し下げられ、「世界全体に著しい悪影響が波及する」と分析しました。これは確実でしょう。

そうなった場合、韓国経済の受ける影響は甚大です。IMFは、第4弾3,000億ドルの関税が10%のままなら、中国のGDPは0.3ポイントの減少と試算しています。

一方、中国が感情的な反発をしないで、「為替操作国」問題でIMFとの協議を受け入れる場合、事態は大きく変わってきます。

自由変動相場制と資本取引の自由化を行えば、中国経済は「市場化」に向けて動き出します。中国は、今年の経常収支の赤字が予想されています。「市場化」が実現すれば、一時的に人民元相場は大きく「元安」に振れる事態になります。当然、資本流出が起こるでしょう。

そういう事態を経過した後で、人民元の自由変動相場制資本取引の自由化は、中国経済の不透明性を最低限に抑えて、外国資本の中国流入を誘導できます。中国が、迫り来る経済危機に対して、どのように対応するのか。それは、世界経済はもちろん、韓国経済の「運命」も左右するのです。

韓国製造業は万年不況

ここから、韓国経済について取り上げます。

米国、中国、韓国の製造業PMIのデータを示します。米国では「ISM製造業指数」と呼ばれています。中韓は、製造業PMIの名称です。

        米国  中国   韓国
2019年7月  51.2  49.7  47.3
2019年6月  51.7  49.4  47.5
2019年5月  52.1  49.4  48.4
2019年4月  52.8  50.1  50.2
2019年3月  55.3  50.5  48.8
2019年2月  54.2  49.2  47.2
2019年1月  56.6  49.5  48.3

2018年12月  54.3  49.4  49.8
2018年11月  59.3  50.0  48.6
2018年10月  57.7  50.2  51.0
2018年9月   59.8  50.8  51.3
2018年8月   61.3  51.3  49.9
2018年7月   58.1  51.2  48.3 
(資料:インベスティング・ドットコム日本版より筆者作成)

韓国製造業は、すでに2012年からPMIがほとんど50を割った状態です。要するに「万年不況」でした。

それでも韓国経済が回ってきたのは、米中の景気に支えられて輸出が伸びてきた結果です。ところが、頼みの米中景気が下降に向かえば、もはや韓国の輸出は伸びません。

この「米中頼み」の韓国経済は現在、重大局面という認識を持たなければならないのです。

Next: 「米中頼み」では未来がない。韓国ウォンは3度目の通貨危機へ



韓国の輸出減少が止まらない

韓国の中央銀行である韓国銀行は8月8日、今年5月以降、米中貿易紛争がエスカレートし、韓国の輸出減少幅が拡大していると発表しました。

それによると、輸出減少の推移が2008年のリーマン・ショック後に起こった韓国の通貨危機や、2000年前半のITバブル崩壊当時と似ており、非常に懸念される事態であると指摘しました。

      輸出数量指数     輸出額
2019年4月 +2.2%       −6.9%
2019年5月 −3.3%       −9.7%
2019年6月 −7.3%       −13.7%
(資料:『朝鮮日報』8月9日付 数値は前年比 4月は1〜4月の平均値)

今年1〜4月の輸出額は月平均で6.9%の減少でしたが、5月には9.7%、6月には13.7%それぞれ減少するなどマイナス幅が拡大しています。7月の輸出額も前年比11%減で、昨年12月以来8カ月連続のマイナスとなっています。

輸出数量指数(造船を除く)は、今年4月は2.2%の増加でしたが、5月、6月は下落幅が拡大しています。これは、企業の操業度を下げ企業コスト高める要因になっています。

韓国銀行は輸出額や輸出数量指数の減少について、「米中貿易紛争が世界の景気と貿易の不確実性を高め、それが韓国の輸出減少の一因になった」と分析しました。その通りです。

輸出に依存する韓国経済が、真っ先に深刻な衝撃を受けるパターンが繰り返されるという見方なのです。

韓国ウォンは3度目の通貨危機へ

輸出額の減少は、貿易収支の減少をもたらし、最終的に経常収支黒字額へ響いて来ます。そうなると、ウォン相場の下落に結びつき過去2度も経験した「通貨危機」につながりかねません。韓国銀行が、「輸出に依存する韓国経済が、真っ先に深刻な衝撃を受けるパターンが繰り返される」と控え目に言っているのは「通貨危機」再来への危惧です。

6月の経常収支は、63億8,000万ドルの黒字と暫定集計されました。経常収支の黒字幅は、昨年6月に比べて10億8,000万ドル(14.5%)の減少となりました。上半期の経常収支の黒字額は、217億7,000万ドル。前年同期(289億ドル)より24.7%も減少したのです。

半期基準で見ると、欧州発財政危機の真っ最中であった2012年上半期(96億5000万ドル)以降、7年ぶりの最も少ない黒字幅でした。上半期の輸出額が前年比9.8%減少して、2年半ぶりに減少に転じた結果です。

韓国銀行は7月の経済予測で、経常収支の黒字を上半期は215億ドル、下半期は375億ドルで、今年590億ドルと予想しました。この予測は、通常下半期に輸出が集中することを計算に入れたものでした。

世界経済がリセッション入りという現実を考えれば、不可能です。韓国銀行は、この経済予測を発表して1ヶ月も経たないうちに一転して、前記のような通貨危機に備える警報を出すに至ったのです。韓国政府が、まだ事態の深刻さに気付かないのもやむを得ないでしょう。

Next: 対日関係冷却で崖っぷち。韓国の企業格付けは総崩れに…



企業格付けは総崩れに

国際格付け機関であるスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7月10日、韓国の200大企業の格付けが「否定的」評価というサイクルに入っていると診断しました。格付けが上がる企業より下がる企業のほうが多いという意味です。特に半導体、自動車など、韓国主力産業である企業の経営状況が。2021年まで厳しいだろうと予想したのです。

S&Pは、企業格付けでは「否定的」というサイクルに入っていると警戒しています。同日発表した「高まる信用リスクに直面した韓国企業」と題した報告書によると、厳しい韓国国内の営業環境と企業の攻撃的な財務政策、規制リスクなどが韓国企業の格付けに負担を与えていることを考慮したものです。S&Pは、「グローバル需要の鈍化と貿易紛争の激化は、韓国企業の業績低下として現れ、今後12ヶ月間、追加的負担になるだろう」と指摘しました。

同じ国際格付け機関であるフィッチ・レーティングスは8月9日、韓国の国債格付けを上から4番目の「AAマイナス」に据え置くと発表しました。見通しも「安定的」を維持したのです。その理由として、「北朝鮮に関する地政学的リスクや高齢化など中期的な構造的課題を抱えているものの、堅固な対外金融、安定的なマクロ経済成果、健全な財政運用などがこれを相殺する」と判断の背景を説明しました。

国債格付けでは「安定的」という評価です。しかし、企業格付けが引き下げられる「否定的」状況では当然、将来は歳入が減少します。この状態で、「堅固な対外金融、安定的なマクロ経済成果、健全な財政運用」が、いつまで保つのか保証の限りでありません。過去の通貨危機発生前では、国債格付けがいずれも明るかったのです。それが、突然の嵐に巻き込まれました。今回も、その「例外」ではないでしょう。

対日関係冷却で崖っぷち

韓国政府は、国債格付けで「安定的」という評価が出ているので、突然の嵐に巻き込まれるという深刻な認識がありません

そのためか、日韓経済摩擦の対応だけに心を奪われています。日本による、対韓国の半導体製造3素材に関する輸出通関手続きの厳しい審査は9月一杯で終わります。その後、日本から韓国への輸出は平常ペースに戻る見込みです。

こういう日本側の事情を冷静に判断せず、対日報復に余念がありません。日本に対して、「ホワイト国除外」を決定しました。9月には細目を決めて発表する予定です。自動車関連を中心に3〜4品目の輸出管理を厳しくするようです。

これは、日本から逆に自動車部品の「輸出規制」が発動されるリスクを誘発します。そうなると逆に、韓国が不利になる懸念が強まります。韓国は、感情的な反発が度を過ぎており、危ない橋を渡ろうとしています。

日韓には、通貨スワップ協定がありません。世界で「安全通貨」の代表とされる「円」とのスワップ協定がないことは、命綱のないことと同じ意味です。日韓通貨スワップ協定は、交渉中に韓国の対日外交姿勢の悪化で、日本側が交渉を打ち切ったままです。韓国は事実上、「通貨の孤児」となっています。

韓国は、中国と通貨スワップ協定を結んでいます。冒頭で検討したように、中国経済自体が重傷です。人民元の信用が揺れている状況で、どれだけサポートできるかわかりません。

韓国は改めて、日本と「喧嘩」をした代償の大きさを知ることになるでしょう。

続きはご購読ください。初月無料です

【関連】韓国、無年金者が54.1%の衝撃。文在寅政権の反日と税金ばら撒きで自滅していく=勝又壽良

<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>

※2019年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2019年8月配信分
  • 世界リセッション入り、高い輸出依存の韓国に衝撃、非常事態目前で「ウォン孤児」(8/13)
  • 長引く米中対立、韓国が最大の被害国、文氏は反日報復に夢中で無策(8/8)
  • 日韓全面衝突、「政経分離」に怯える韓国、外交優位に立つ日本(8/5)
  • 拡大する金融不安の中国、倒産企業債権がGDPの10%、足下に迫る経済危機(8/1)

いますぐ初月無料購読!

image by:대한민국 청와대 at Wikimedia Commons [public domein], via Wikimedia Commons

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年8月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

【関連】ミニストップ、193店閉店で経営悪化が止まらない。もう取り返せない4つのしくじり=栫井駿介

【関連】損保ジャパン4000人削減で最悪の労働搾取モデルが完成。業務自動化で年収250万減へ=今市太郎

勝又壽良の経済時評』(2019年8月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

有料メルマガ好評配信中

勝又壽良の経済時評

[月額864円(税込)/月 毎週木曜日(年末年始を除く)予定]
経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。