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米中貿易戦争は市場に織り込み完了、今年1月以来の買いシグナル点灯で米株は買いか?=江守哲

米国株は戻り歩調です。米中貿易戦争への懸念がいったん織り込まれ、直近のレンジ上限を回復しつつありますが、今後はどう動きいていきそうかを解説します。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2019年9月2日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

米中貿易戦争はさらに激化へ?米市場への影響はどうなるのか

米中貿易戦争懸念は織り込まれて、米国株は戻り歩調

米国株は戻り歩調です。米中貿易戦争への懸念がいったん織り込まれ、直近のレンジ上限を回復しつつあります。

中国外務省の担当者が30日、貿易協議に関して米国と「効果的な話し合いを続けている」と発言したことが伝わると、協議進展への期待が拡大し、この日のダウ平均は上昇して取引を開始しました。7月の個人消費が前月比0.6%増と堅調だったことも景気への安心感につながったようです。

ただし、週明け3連休を控えて利益確定やポジション調整の売りも出やすく、その後は前日終値を挟んで一進一退の展開となりました。連休中の1日に米国による対中制裁関税「第4弾」の発動が予定されていることも投資家心理の重石となりました。

S&P500は週間ベースで6月以来の高い伸びを記録しました。しかし、米中貿易摩擦の激化や米長短金利の逆転を背景にリスク選好度が低下する中、月間ベースでは5月以来の大幅安となっています。

結局のところ、株価推移も米中貿易戦争次第というわけです。

さて、トランプ政権は、中国からの輸入品3,000億ドル相当に15%の関税を上乗せする対中制裁「第4弾」の初回分を9月1日午前0時1分(日本時間1日午後1時1分)に発動しました。9月1日と12月15日の2回に分けて実施します。

米通商代表部(USTR)などによると、第4弾のうち9月の課税対象は約1,120億ドル分(3,243品目)、12月は約1,600億ドル分(555品目)です。対する中国も同様に2回に分けて、計750億ドル相当(5,078品目)の米国製品に5%または10%の追加関税を課す方針です。

さらに米国は10月1日に、昨年発動した第1-3弾の計2,500億ドル相当に上乗せする税率を現行の25%から30%へ引き上げる予定です。一方、中国はこれまで計1,100億ドル相当の米国製品に最大25%を課しています。

このように、両国の報復関税合戦はエスカレートするばかりです。当然、経済への景況も懸念されます。

トランプ政権が中国からの輸入品ほぼ全てに課税対象を広げる「第4弾」の初回分を発動するにあたり、最大団体の米商工会議所は「景気拡大の死はしばしば誤った政策が原因で起きる」と厳しく非難し、米中首脳に貿易交渉の再開を促しました。

また、米中ビジネス評議会は、「中国に進出する米会員企業のうち約8割が、両国の関税合戦の影響で売り上げ減少や部品調達先の変更などを強いられている」とし、「失った市場シェアを取り戻すのは非常に難しい」として、早期の摩擦緩和と関税引き下げを求めています。

米主要業界団体が参加する自由貿易推進組織「アメリカンズ・フォー・フリートレード」や、ナイキやアディダスなど靴関連の約200社が、発動見送りを求める書簡をトランプ大統領にそれぞれ送りました。

Next: 各所からの書簡を受けた、トランプ大統領の反応は?



貿易協議再開への意向を示すものの、本当に実現できるのか…

トランプ大統領は「貿易協議再開へさまざまなレベルで話し合いを続けていく」としていますが、前途多難な状況にあります。選挙対策もあり、どこまで本気でやれるのかは疑問もありますが、このような産業界の声を聴く耳を持っているのかはわかりません

これらの声は、多少は考慮するでしょうが、今回の対中関税のそもそもの問題は「知的財産権」「ハイテク分野」にあります。これらにおける中国の台頭を許すわけにはいかないというのが根幹です。

また、現在の米中貿易戦争は、もはや経済問題ではありません。ある種の国防・軍事問題といってもよいでしょう。このように考えれば、最終的には経済優先のようにみえるトランプ政権が、国防を優先して強硬な姿勢をさらに強めると考えておくほうが無難であるといえます。

つまり、株安になったからといって、安易にそれをゆるめるような発言や政策を打ち出すことに期待しないということです。

市場では「トランププット」なる言葉も聞かれ始めています。これは、過去のFRB議長が、市場の混乱が起きた時に口先介入で市場の下落を止めてくれるという「バーナンキプット」などになぞらえたものです。しかし、トランププットに期待するのは間違いでしょう。

明らかにスタンスが違います。そもそも、立場が違います。トランプ氏は大統領です。FRB議長ではありません。国全体のことを考える立場です。金融市場はその一部でしかありません。

そのトランプ大統領は、ゼネラル・モーターズ(GM)が自身の大統領就任前に中国に主要工場を移管したと批判し、中国で展開する事業を米国に回帰するよう要請しました。

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「GMはかつてデトロイトの最大手だったが、今では最小の自動車メーカーの1つだ。GMは私の大統領就任前に中国に主要工場を移管した。これは米国からの救いの手があったにもかかわらず行われた。GMは今再び米国への移管を始めるべきではないのか?」としています。

トランプ大統領の発言は、GMの米国内で働く時間給従業員が4万6,000人と、米自動車大手3社で最小とされるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の従業員数を下回ったという一部報道に反応したものとみられています。GMは過去40年で米従業員数を大幅に削減しています。1979年には約62万人が勤務していたといいます。確かに、この凋落ぶりはひどいの一言です。

GMは報告書で、「GM中国事業は米雇用への脅威ではない」と説明し、「GM本体が10年以降、中国合弁事業から160億ドルの持分利益を獲得した」と指摘した上で、米事業へは09年以降230億ドルを投じていることを明らかにしています。GMは昨年、中国で360万台を販売し、世界販売数の43%を占めました。昨年の中国事業の持分利益は20億ドルでした。

このように、実際には中国市場にかなり傾斜していることがわかります。しかし、その中国とのビジネスを見直せとのお達しが出ているわけです。これは民間企業への介入であり、あってはならないことではありますが、トランプ大統領にはそれは通用しません。その前提で見ていくことが肝要です。

Next: 米中貿易戦争の中国景気への影響は…?



8月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.5で、確実に表れている

一方、中国共産党は30日に中央政治局会議を開き、10月に重要会議である第19期中央委員会第4回総会(4中総会)を北京で開くと決めたもようです。主要議題は「国家統治能力の現代化」などとされ、米国のトランプ政権との貿易摩擦が続く中、新たな方針を打ち出す可能性があります。

4中総会は昨年秋に開かれる予定でしたが、対米関係の悪化と同時に経済の不透明感も強まったため先送りされました。今月上旬に河北省の避暑地、北戴河で開かれた非公式会議を経て、習近平国家主席は対米方針などについて長老らも含めて党内の合意を得たもようです。

17年10月に2期目の習指導部が発足した後、国家主席の任期制限の撤廃をはじめ、習国家主席の権限を強化する動きが続いていました。しかし、逃亡犯条例改正をめぐる香港の混乱もあり、習国家主席の強権的な手法への反発が広がっており、4中総会の議論が注目されています。

中国は米国からもやり込められ、いまや香港の民衆からの突き上げに遭っています。これで強硬姿勢に出れば、世界の各国から強い非難をされることは必至です。

しかし、この香港の騒動は、米国が仕掛けた可能性もありそうです。

その中国の8月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.5でした。回復が期待されましたが、再び低下傾向に入っています。
米中貿易戦争の影響が着実に出ている
といえます。

中国は米国の制裁関税「第4弾」発動を前に、事実上の対抗策として人民元安の容認に転じました。米国による関税の影響を最小限に食い止めるのが狙いのようですが、報復関税だけでは米国と競えない事情もあります。

人民元の対ドル相場は11年以上にわたって1ドル=6元台を維持してきました。中国当局は7元を「心理的な防衛ライン」と位置付け、市場介入で6元台を守ってきました。しかし、当局は8月5日に7元台入りを容認しました。

これにより、中国の政策が大きく転換した可能性を指摘する声があります。この結果、人民元安が進み、月末には7.15元付近を付けました。市場では7.2~7.3元で「第4弾」の影響をほぼ相殺できるとの見方があります。そうであれば、中国は米国の圧力に屈しない可能性もあります。

米国は「為替操作国」認定で中国をけん制するとともに、制裁関税の税率引き上げにより圧力を強化する方針です。しかし、すでに制裁関税をかけており、この認定はほぼ形骸化しています。

一方、中国は、過度の人民元安が国外への資金流出を招き、金融市場を混乱させることを警戒しています。一段の人民元安には慎重姿勢を示しています。制裁・報復関税の対象額は第1~3弾が米国2,500億ドル、中国1,100億ドル。第4弾(12月実施分を含む)は米国3,000億ドル、中国750億ドルで、貿易不均衡を背景に中国側の劣勢が際立っています。

市場では、中国による人民元安容認に加え、レアアースの輸出制限や米国債の売却、米企業との取引制限などに動くとの観測もあります。ただし、いずれも効果は限定的とみられ、米国の攻勢を前に有効な対抗策を打ち出せないのが実情です。中国もかなり大変な状況にあることだけは確かです。

Next: 米中の通商協議を受けて、投資家はどんな対処をしていくべきか?



今年1月以来でリスク資産に買いシグナルが点灯

いずれにしても、米中の通商協議がどのような結末を迎えるのかは不明です。トランプ大統領が再選されるようであれば、さらに先延ばしされる可能性もあります。そうなれば、まだまだ不透明感が払しょくされず、永遠に混乱状態や不安な状況が続くことになります。

このような状況にいかに対応できるかが、いまの市場でもっとも求められることでしょう。そのために、様々なことに目を向けながら対処していくことが肝要です。しかし、最終的にやることは、「買うか、売るか、見送るか」だけです。できるだけ確実なところでトレードすることが肝要です。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)は、市場のセンチメントを示す指標であるブルベア指数がきわめて弱気な水準に低下し、株式などのリスク資産への「逆張り」的買いシグナルが出たとしました。ブルベア指数は前週の2.4から1.3に低下しましたが、リスク資産の買いシグナルが出るのは今年1月以来とのことです。

このときは、その後株価は4月まで上昇しています。現在は、米中貿易戦争や世界的な景気後退懸念で、株式を売って債券や金を買う動きが続いています。8月28日までの週は、債券に124億ドル、金には19億ドルの資金が流入。株式からは76億ドル流出し、年初来の累計流出額は2,040億ドルとなりました。

このように考えると、いまは市場心理的には「買い場」とも言えます。その結果、前回のように3カ月程度上昇基調が続く可能性がありそうです。「Fear and Greed Index」は23に上昇してきました。一時は18まで低下していました。投資家心理も徐々に底打ちの可能性が示されています。そうなると、11月ごろまで堅調に推移し、株価も高水準が維持されることも想定されます。

しかし、繰り返すように、今年の11月は鬼門と見ています。過去のデータからも、いったん調整する可能性が高いことが示されています。上昇に転じた場合には、まずは10月いっぱいまでの上昇を視野に見ていくことになるでしょう。上昇すれば、過去最高値を目指す上昇になる可能性も出てきそうです。

S&P500は8月23日の週までに4週連続で下げました。ただし、30日には下げ止まり、反発しました。このパターンでは、今後1年程度は上昇しやすい傾向があります。とはいえ、下落しているときもありますので、注意は必要です。

直近では、5月に4週連続下げましたが、その後に7月後半まで大きく値を戻しています。これがまさに指摘しているパターンです。しかし、その後は下げていることからいったんは戻すかもしれませんが、長期的になものになるかについてはやはり注意は必要でしょう。

一方、米国ではFRBが重視するPCE物価指数が全く伸びません。これで底堅い個人消費を支える所得が落ち込めば、景気の足を引っ張る可能性があります。パウエルFRB議長は、「インフレ率目標の下振れは一時的」と説明していますが、FRB内には低インフレが長期化すれば、物価が継続的に下落して、景気が悪化するデフレに陥るとして、追加利下げを推す意見があります。

Next: 米国の市場を見極めるうえで、目先の重要な指標とは?



米大統領3年目の変動パターンから、株価上昇局面はありそうだが…

市場では、7月末に続いて9月のFOMCでも0.25%ポイントの利下げが決まるとの見方が大勢となっています。しかし、利下げや金融緩和でインフレ率を押し上げることができないことは、日銀やECBの政策の失敗を見ても明らかです。経済構造の変化が金融政策の影響度を著しく低下させたことは、金融政策当局も理解すべきでしょう。

今週は月の第一週ですので、重要経済指標の発表があります。トランプ大統領の発言がなければ、久しぶりに材料視されるかもしれません。最近の米国経済指標はやや緩んできています。その傾向が続いているのかを確認したいところです。

特に、米雇用統計で非農業部門雇用者数と失業率に変化があるかは重要なポイントになりそうです。非農業部門雇用者数が10万人割れだった場合や、失業率が上昇した場合には、今回はかなり大きな反応になるでしょう。もちろん、ネガティブな方向での反応になりますので、注意したほうがよさそうです。

ただし、今年の株価推移や米大統領3年目の株価変動パターンから、10月いっぱいはむしろ上昇しそうな雰囲気です。とはいえ、大きく上げるわけではありません。上手くいけば、過去最高値近辺までの上昇はあり得るでしょう。

しかし、11月には大きく下落するとみています。それが見えていますので、今後上昇局面に入った場合でも、賞味期限は2カ月と割り切り、あまり無理をする必要もなさそうです。

米国の経済指標を少し見ておきましょう。前述したように、徐々に変化の兆しもあります。

4-6月期の米実質GDP改定値は前期比2.0%増と速報値の2.1%増からわずかに下方修正されました。ただし、米景気の後退懸念が強まり、1%台の成長に落ちるとの見方も一部で出ていただけに、底堅い景気動向を確認できたとの安心感が広がったようです。

特に経済のけん引役である個人消費が4.7%増と、速報値の4.3%増から上方修正されたことも好感されています。しかし、これも株価次第です。株価が下げると個人消費が落ちるのが米国の典型的なパターンです。指標は株価の遅行指標であることを理解しておきたいところです。

一方、貿易摩擦などで不確実性が高まり、設備投資が13期ぶりのマイナスに沈んでいます。設備投資は0.6%減と、16年1-3月期の0.6%減以来のマイナスとなりました。また、住宅投資は2.9%減(同1.5%減)へ引き下げられ、6期連続のマイナスでした。これらの指標は非常に弱いといえます

輸出は5.8%減(同5.2%減)に引き下げられました。輸入は0.1%増で変わらず。世界経済の減速を受けて海外需要が落ち込んだほか、中国からの輸入品に対する追加関税の引き上げなどが響きました。

24日までの週の新規失業保険申請は21万5,000件と、前週比4,000件増加しました。失業保険受給者総数は17日までの週で169万8,000人と、2万2,000人増加しました。徐々に雇用指標も緩み始めているように見えます。

一方、6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(全米主要20都市)は前月比横ばい、前年比2.1%上昇でした。

米コンファレンス・ボード発表の8月の消費者信頼感指数は135.1と、前月の135.8から小幅低下しました。現況指数は177.2(前月は170.9)に上昇しましたが、期待指数は107.0(同112.4)に低下しました。

現在の景気に対する認識は「良い」との回答が42.0%(前月は39.9%)に上昇しました。「悪い」は9.8%(同11.2%)に低下しました。雇用については「求職が多い」が51.2%(同45.6%)に上昇する一方、「求職が困難」は11.8%(同12.5%)に低下しました。今後半年間の景気見通しは「改善する」が21.9%(同24.0%)に低下。「悪化する」は10.0%(同8.4%)に上昇しました。

消費者信頼感指数は逆張り指標です。高くなりすぎると、株価のピークを示すことがあります。もしかすると、7月の数値が高水準でしたので、それを示唆していた可能性がありそうです。

Next: 9月のFRB会合、逆イールドなど…目先の株価変動要因は?



11月6日までにS&P500が2,738ポイントを下回れば買いの局面も

ところで、FRBが公表した7月の公定歩合会合の議事要旨では、12地区連銀のうちNY連銀を含む6地区連銀が公定歩合の据え置きを提案していたことが判明しました。5地区連銀が0.25%ポイントの引き下げ、1地区連銀が0.50%ポイントの引き下げを提案しました。公定歩合会合はFRBが08年以来初めてとなる利下げを決定した7月30・31日のFOMCの1週間前に開かれましたが、この時点でFRB当局者の見解が予想よりも大きく分かれていたことが示唆されました。

公定歩合会合の議事要旨によると、据え置きを提案したのはNY連銀、ボストン、クリーブランド、アトランタ、カンザスシティー、リッチモンドの各地区連銀で、0.50%ポイントの引き下げを提案したのはミネアポリス連銀です。

FRBは7月30・31日のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.00-2.25%に0.25%ポイント引き下げることを決定しましたが、利下げは8対2で決定され、カンザスシティー連銀のジョージ総裁とボストン連銀のローゼングレン総裁が金利据え置きを主張しました。一方、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁はこれまでも0.50%ポイントの利下げを主張しました。一方、クリーブランド連銀のメスター総裁は今月に入り、7月の利下げに反対する姿勢を表明している。

こうなると、市場では100%織り込まれている9月のFOMCでの利下げですが、決定に至るまでかなり紛糾する可能性がありそうです。そうなると、将来の利下げに対する不透明感の台頭で、市場の混乱を招く可能性があるでしょう。

ところで、市場が注目しているのは2-10年債利回りスプレッドですが、私は3カ月物Tビルと10年債利回りスプレッドにも注目しています。これが逆イールド化したあと、かなり早く株価がピークアウトする傾向があることがわかっているからです。

場合によっては、株価がいま以上に上昇せずに下げに転じてもおかしくない状況です。住宅着工件数とのサイクルなども考慮すれば、10月までには方向性はかなりはっきりすることになりそうです。ちなみに、住宅着工サイクルでは、10月までに米国株はピークアウトすることになっています。参考にしてください。

今後も米中貿易戦争の影響で乱高下するでしょう。しかし、株安で慌てて前言撤回のパターンを市場はすでに理解しているはずです。したがって、厳しい発言が飛び出し、株価が急落した場合には、むしろリスクをとって買ったほうが良いとの判断になるでしょう。

このようなトレードは非常に面白いのですが、やはりリスクがあります。それよりも、素直に市場動向を見ていくほうがリスクは小さいでしょう。いずれにしても、「国防は経済に優先する」という言葉が重要です。厳しい態度が鮮明になってきましたので、注意が必要です。

また、繰り返すように、米中間選挙から1年後に株価は下げていないという過去データがあります。これをもとに考えると、11月6日時点でS&P500は2,738ポイントを下回らないということになります。11月6日までにここまで下げれば、いったん買うとよいでしょう。

ちなみに、5月末の下げでこのような状況になったとき、買いを仕込んで大幅な利益に結び付いたことは、すでにメルマガ読者の皆さんはご承知の通りです。大きな下げた到来した場合には、11月までは押し目買うをぜひ検討したいところです。

ただし、11月6日以降は関係ありません。かなり高い確度で調整モードに入ることになるとみています。

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2019年9月2日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

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