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さらなる金融緩和は行わなくていい、週明け日銀会合の行方/今週の動きと来週の予想=久保田博幸

今週はリスク回避の巻き戻しの動きとなり、9日の欧州市場では国債が軒並み売られ、米10年債利回りも1.64%に上昇。地合が変わってきた様子が見られた。(『牛熊ウイークリー』久保田博幸)

※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2019年9月13日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

週明けはFOMCと日銀金融政策決定会合に注目か

今週の動き

黒田日銀総裁の超長期債の利回りは少し下がり過ぎとの発言を受けて、6日に超長期債主体に売られていたが、9日の債券市場では買い戻しの動きが出た。債券先物は一時155円台を回復し、引けは6銭高の154円98銭。

ムニューシン米財務長官は米国と中国は貿易協議で大きく前進したと述べ、懸念がひとまず緩和した格好となった。リスク回避の巻き戻しの動きとなり、9日の欧州市場では国債が軒並み売られ、米10年債利回りも1.64%に上昇し、地合が変わってきた。

10日の円債も利益確定売りに押され、債券先物の引けは31銭安の154円67銭となった。

10日の欧米の国債は軒並み続落となり、米10年債利回りは1.76%に上昇。11日に債券先物は実質的に中心限月が12月限に移行した。この日の5年国債の入札はやや低調な結果となったこともあり、債券先物は売られ、12月限の引けは29銭安の154円54銭。10年債利回りは一時マイナス0.200%に上昇した。

12日の債券先物はECB理事会控え、ショートカバーの動きも出て、引けは10銭高の154円64銭となった。

12日にECBは利下げを含む包括的な緩和策を決定した。これに対しドイツなど中核国の国債は追加緩和余地が乏しくなるとして下落し、米債も下落した。それ以上に債券先物には売り圧力がかかり、13日の債券先物の寄り付きは34銭安の154円30銭となった。

来週の予想

日米欧の国債の動きにやや変化が生じている。米10年債利回りは9月3日に一時1.42%まで低下し、日本の10年債利回りも9月4日にマイナス0.295%まで低下して、2016年7月8日につけた過去最低のマイナス0.300%に迫った。このあたりがボトムとなり、日米欧の国債は売り込まれた。

その要因として米中の貿易摩擦緩和の動きが出てきたことや、英国の合意なきEU離脱の懸念が後退したことで、リスク回避の巻き戻しもあったことは確かである。

しかし、日米欧の国債利回りの急激な低下の背景にアルゴなどの仕掛け的な売りが入っていた可能性がある。追加緩和観測もあるECB理事会やFOMCを控えて、その前にいったん買いポジションを閉じてきたのではなかろうか。日銀の黒田総裁が超長期債の利回り低下に対して下がり過ぎではとの認識を示したことも影響した可能性もある。

いずれにしても日米欧の国債利回りはファンダメンタルズからは説明できないほどの低下となっていたことも確かであり、ここからの動きには注意する必要がある。

17、18日のFOMCでは0.25%の利下げが予想されている。ここでパウエル議長は打ち止め感を出してくることもありうるか。

18、19日の日銀の金融政策決定会合では現状維持と予想している。長期金利の急激な低下が一服したこともあり、現状、日銀は利下げなどを行う必要はないと思われる。

長期金利の予想レンジ -0.250~-0.100%

Next: 日銀は追加緩和を行う必要がない…その理由とは?



日銀の追加緩和は避けるべき理由

日銀の金融政策決定会合が9月18、19日に開催される。黒田総裁は日経新聞とのインタビューで、現在はマイナス0.1%の短期政策金利について「深掘りは従来から示している4つのオプションに必ず入っている」と述べており、追加緩和策の手段としては政策金利のひとつである短期金利の引き下げの可能性があることを示唆した。

日銀はこれまで、追加緩和の政策手段の具体策として、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース(資金供給量)の拡大ペースの加速の4つを示している。

現在の日銀の金融政策は「長短金利操作付き量的・質的緩和」となっており、政策金利となっている長期金利と短期金利、そして量と質の面から操作は一応、可能となっている。

しかし、現在の日銀による金融調節の目標は量ではなく金利となっている。

国債の買入については、保有残高の年間増加額80兆円という数字はほとんど有名無実化している。来年度の国債買入による増加額は10兆円を切るという試算もある。資産買い入れの拡大、マネタリーベース(資金供給量)の拡大については政策目標を量に戻すことも必要とみられ、これは現実的ではない。

質という面からはETFの買入増額などもないわけではないが、日銀による株式市場の依存度をさらに高めることにもなりかねず、株価も比較的安定しているなか、これも考えづらい。

金利という面からは、長期金利コントロールもあるが、こちらは黒田総裁が口頭でプラスマイナス0.2%という数字を出しているが、正式にはゼロ%となっている。長期金利のレンジ拡大というのは政策変更ということになるかは微妙なところとなる。

そして最後に残るのが短期金利となる。これは現状、日銀当座預金のうち政策金利残高につく金利である。現状はマイナス0.1%であり、これをマイナス0.2%に引き下げるということは可能ではあり、これが一番現実的とみられる。

そうはいっても、マイナス金利の深掘りにより、プラス圏にある国債利回りの一層の低下を招くことも予想され、これは金融機関の収益力をさらに悪化させかねない。マイナス金利の深掘りによる効果のほどがはっきりしていないなか、副作用が顕在化することも予想されることで、それを行う意味があるのかどうか疑問である。

結局のところ、日銀はあらゆる政策手段を使い切ってしまい、特に量の面からはその修復作業を行っている最中ともいえる。ここは大胆な金融緩和を「継続」することに意味があることを前面に押し出して、現状維持とするのが望ましいのではなかろうか。

Next: 来週、2019年9月17日~9月20日の主な予定



主な予定

9月16日 (月)
9月NY連銀製造業景気指数

9月17日(火)
FOMC初日
米8月鉱工業生産
米8月設備稼働率
米9月NAHB住宅市場指数
米月対米証券投資

9月18日(水)
国庫短期証券(1年物)入札
20年利付国債入札
金融政策決定会合初日
8月貿易統計
FOMC二日目
パウエル議長定例記者会見
イングランド銀行MPC初日
英8月消費者物価指数
英8月卸売物価指数
ユーロ圏8月消費者物価指数
米MBA住宅ローン申請指数
米8月住宅着工件数
8月建設許可件数

9月19日(木)
金融政策決定会合二日目
黒田日銀総裁会見
7月全産業活動指数
イングランド銀行MPC二日目
MPC議事要旨
米9月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
米新規失業保険申請件数
米8月景気先行指標総合指数
米8月中古住宅販売件数

9月20日(金)
国庫短期証券(3か月物)入札
資金循環統計速報)4~6月期)
8月全国消費者物価指数
ユーロ圏9月消費者信頼感


※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2016年10月7号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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image by : Takashi Images / Shutterstock.com

牛熊ウイークリー』(2019年9月13日号)より一部抜粋
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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