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韓国・文政権「反日続けば選挙で勝てる」は大誤算、止められない経済崩壊で大敗へ=勝又壽良

文政権は、来年4月の総選挙でどうしたら勝てるかに政策の焦点を絞っています。そのための反日ですが、経済成長を阻害する悪政に支持率が急低下しています。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年9月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

支持基盤の大企業労組に利益供与?文氏が経済成長を阻害している

文政権「来年4月まで反日気運が続けば勝てる」

韓国・文在寅政権は、来年4月の総選挙で、いかにしたら与党「共に民主党」が勝利できるかに政策の焦点を絞っています。

日韓問題は、その焦点の1つです。「NO JAPAN」という幟(のぼり)を立てたのも与党の首長である自治体でした。来年の総選挙まで反日気運が続けば、勝てるという認識を持っています。

与党の思惑通りに行くのでしょうか。

実は、逆風であることがわかってきました。これまで、日韓の経済関係が深かったゆえに、突然の「反日不買運動」開始で、消費者も企業もショックを受けているのです。

いわゆる「不確実性」という事態に追い込まれました。先行きの見通しがきかない状態で、消費者は財布の紐を引き締めます。企業は設備投資を棚上げします。こういう思わざる事態に直面しました。

反日が招いた内需不振

8月の1ヶ月間を見ますと、消費者の不安心理は高まっています。それが、財布の紐を締めさせたので、消費者物価は統計開始以来の前月比「-0.04%」になりました。消費者物価指数は、今年1月から一貫して「0%台」という過去にない動きです。その挙げ句が、マイナスになりました。

この背景には昨年10月末、韓国大法院の旧徴用工判決が影響しています。日本企業へ賠償命令を出したことに日本政府が反発、日韓関係が一挙に冷却化しました。これが、消費者心理に響く独特の構造になっています。朝鮮は、中国の属国という歴史ゆえ、民衆心理が政治不安に敏感な反応をする構造なのです。

こうして政治不安が、消費者心理に直接響きます。日韓関係の悪化こそ、消費者心理を不安にさせて消費を減らし、消費者物価を低迷させる要因となりました。

繰り返しますと、文政権による反日強化路線は、自業自得で「消費デフレ」を招く構造が存在しています。

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韓国経済は取り返しのつかない衰退局面へ

もう1つ。韓国経済は、文在寅政権の登場によって、もはや取り返しのつかない衰退局面へ舵を切ってしまいました。潜在成長率の減速が目立つためです。

文政権の最大の失策は、最低賃金を18~19年で29%も引き上げ、これが雇用構造を破壊しました。末端経済は、これまで自営業によって支えられてきましたが、2年間で約3割にも達する賃上げに耐えられるような自営業はそう多く存在しません。

自営業者は、相次いで廃業に追い込まれています。廃業で不要になった厨房用品、店舗の備品などの売却希望が廃物処理業者に殺到しています。過去、生産性上昇に見合った最低賃金引き上げで、こじんまりとした経営の可能な自営業に、「文旋風」が吹き荒れているのです。

この最賃大幅引き上げは、大企業労組の賃金を引き上げていることがわかりました。最賃と大企業賃金は一見、無関係のように見えますが、そうではなかったのです。

大企業労組の支援を受けている文政権は、この支援見返りに最賃の大幅引き上げを行っていたことを窺わせています。一種の利益供与にあたるでしょう。

その蔭で多数の自営業が店を畳み、従業員を解雇したのです。

事実、文政権が経済成長を阻害している

文政権登場が、韓国の潜在成長率にいかなる影響を与えているかを見ておきます。

潜在成長率とは、その国の労働と資本を最大に活用して達成できる成長率を指します。具体的には、次の3つの要素によって構成されます。

  1. 就業者数(労働投入)
  2. 設備・建設投資(資本投入)
  3. 技術革新・制度・法(総要素生産性)

これらの3項目を1つずつ見ていきますと、確かに韓国経済は厳しい局面にあることがわかります。項目別に、私のコメントをつけます。

1)労働投入では、総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)比率が、2013年にピークを迎え、その後は「人口オーナス(重荷)期」に入っています。こういう人口動態の変化に加え、最賃大幅引き上げによって、製造業の就業者が減っています。製造業での就業者減は、付加価値が下がるという構造的な悪化を招くので、最悪の政策と言うほかありません。

2)資本投入は、企業が世界最強と言われる労組の賃上げ闘争を回避すべく、国内投資よりも海外投資を選択していることです。自動車産業では、戦闘的な労組を相手にする時間の無駄を省くため、海外に工場を建設して国内を避けています。繊維産業では、最賃の大幅引き上げが賃金コスト増を招くとして、海外移転を完了しました。

3)総要素生産性上昇は、労組の非協力と文政権の規制強化によって阻まれています。「週労働時間52時間制」は、理想であっても移行への時間が必要です。そういう準備が不十分なままにこの制度を取り入れて混乱を増幅しています。要するに、文政権という「親労組」の政治勢力の拡大が、韓国経済の根幹を食い荒らしていることが浮き彫りになっているのです。

以上、潜在成長率に影響を与える3項目について見てきました。この結果、韓国の潜在成長率はどのような状況になるのでしょうか。

Next: 経済骨格破壊の文政権、2%割れ成長で危機へ



経済骨格破壊の文政権

韓国銀行(中央銀行)は、年平均潜在成長率推定値が2000年以降、次のように変わってきたと指摘しました。

2001~2005年:5.0~5.2%
2006~2010年:4.1~4.2%
2011~2015年:3.0~3.4%
2016~2020年:2.7~2.8%
19年と20年の潜在成長率は、2001年の半分水準(2.5~2.6%)にとどまる

今年と来年の潜在成長率は、2.5%程度としています。現実の経済成長率が、このレベルの前後に収まれば、不況感は出ないでしょう。失業者も減って一息入れられると見るべきです。しかし、既に見てきたように、そのような楽観論が許されない状況になっています。

日韓紛争が、消費者の不安心理を煽っており財布の紐を固く締めさせていること。企業は不確実性に伴い、投資を棚上げしています。

これには、輸出が昨年12月~今年8月まで、連続して前年比マイナスに落ち込んでいることも大きな要因であることは否めません。ただ、輸出に無関係な内需企業は、日韓紛争が不確実性要因として重くのしかかっているのです。

2%割れ成長で危機へ。もう日本には頼れない

韓国の4~6月期のGDP確報値は、前期比1.0%になり0.1%ポイントの下方修正でした。これを機に内外のシンクタンクや投資銀行は、今年のGDP予測を引き下げました。いずれも2%割れという衝撃的な内容でした。

次に、予測結果を取り上げます。

INGグループ:1.4%
野村証券:1.8%
シティグループ:1.8%
モルガン・スタンレー:1.8%
韓国経済研究院:1.9%

上記機関の予測通り、今年の経済成長率が2%割れとなれば、1962年に経済開発5カ年計画が始まった後で、4回目という不名誉な記録になります。『朝鮮日報』(9月9日付)の引用によります。

1回目:第2次石油ショック当時の1980年(-1.7%)
2回目:通貨危機がピークを迎えた1998年(-5.5%)
3回目:世界的な金融危機当時の2009年(0.8%)

前記3回のうち、1998年と2009年には、急激なウォン安による通貨危機が発生しました。今年の2%割れでは、いかなる事態が引き起こされるか予断を許しません。

その準備が、韓国政府にはありません。日本との関係は本来、最も緊密な関係を保つべきところ、逆方向で溝が深まるばかりです。韓国に何が起こっても、日本には「対岸の火事」であり傍観するしかありません

Next: 政府がアルバイトで雇った「偽装就業者」で雇用改善? 次の選挙は大敗か



政府がアルバイトで雇った「偽装就業者」で雇用改善?

今年の経済成長率が2%割れという事態に突入すれば、潜在成長率とのギャプは0.7%ポイントも開きます。失業者はさらに増えます

ただ、8月の統計では85万人と大きく改善したことになりました。これは、政府がアルバイトで雇った「偽装就業者」に過ぎません。実態は、100万人以上の「実質失業者」が存在しています。

韓国の「偽装就業者」では、こういうケースもあります。製造業で失職した若者が、やむなく故郷に帰って農林漁業に就職するケースが「就業者」に計算されています。この現象は、日本の昭和初期に襲った「昭和恐慌」で、地方出身の青年がやむなく帰村しました。経済学では、この現象を「潜在失業者」と名付けました。韓国では、逆に「偽装就業者」に仕立てています。

革新政権のやるべきことではありません。失業の実態を隠蔽するとは、保守政権顔負けの「悪知恵」です。

総選挙で与党の敗北論

2%割れの成長率で、潜在成長率との乖離が広がれば、どういう事態が起こるでしょうか。

国民の経済的な不満は高まらざるを得ません。それが、ストレートに表面化するのは、来年4月の総選挙です。

文政権と与党の選挙戦略は、次のようなものが予想されます。

それは、徹底的な日本批判によって国民を結束させる手を使ってくるでしょう。「反日」から「克日」(日本を超える)を実現して、1910年の日韓併合の恨みを晴らそうという露骨な反日戦略に出ると思います。これによって、南北統一を実現し、日本を追い抜き民族の屈辱を果たすというものです。

この「反日」には、親日=保守派とからめ、保守党を親日勢力と位置づけるでしょう。

こうした「排日論」は、過激な民族主義=共に民主党支持者には通じても、他の国民にはどういう響き方をするのか。韓国経済が、「マイナス物価」という過去にない停滞色と「GDP2%割れ」の事態の中で、いくら「排日」「克日」を訴えても限界があります。

経済政策の失敗は覆い隠すことはできません。米国の大統領選では、経済状況が悪ければ現職大統領が不利とされています。この状況は、韓国にも通用すると思います。

韓国与党は、既に経済状況で一歩も二歩も出遅れているのです。

Next: 剥いても剥いても疑惑が出る、文在寅氏の側近「たまねぎ男」がキーマンに



チョ・グク法務部長官の疑惑が選挙を左右する

韓国総選挙でほかに問われるべきテーマは、チョ・グク氏の法務部長官の疑惑です。

今後の捜査がどう進むか予断を許しませんが、多くの疑惑を抱える法務長官の適性が総選挙の争点になるでしょう。その際、与党と野党の支持率がどう分かれるか。それを占うのは、法務長官任命直後の世論調査結果です。

世論調査で、「チョ・グク氏に反対」の意思を示した人たちは、どういう層だったのか見ておきます。

自由韓国党(95.5% )
無党層(66.7%)
保守層(76.4%)
中道層(55.1%)

60歳以上(65.4%)
50歳代(52.3%)

大邱・慶北(61.2%)
釜山・蔚山・慶南(55.7%)→文氏とチョ・グク氏の出身地
京義・仁川(51.0%)

文在寅氏は、大統領選の得票率が41%でした。これが、基礎票とされています。市民団体と労組が有力基盤です。だが、選挙は基礎票だけでは勝てないことも事実です。無党派や中道派を味方に引き入れた陣営が有利になります。

そこで、注目すべきは無党層・保守層・中道層が、野党側の支持に回っていることです。

経済最悪なら与党が不利

決め手は経済情勢でしょう。

マイナス物価と高失業率の政権与党が、いくら「反日」「克日」「排日」を訴えたところで、最後は日々の暮しがポイントになります。

そうなれば、与党が不利という見通しが出てくると思います。与党敗北となれば、文大統領はレームダック化します。反日騒動は一段落する可能性も出てきます。

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2019年9月配信分
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勝又壽良の経済時評』(2019年9月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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