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10月からの消費税10%は経済に悪影響、軽減税率は言葉の印象操作にすぎない=柴山政行

日経朝刊2019年9月30日一面に、経済への影響に関するコメントが出ていました。10月1日から10%になる消費税と自社株買い10兆円突破について考察します。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)

日経一面でも「経済への悪影響」がある、と公言

利権の拡大以外の利点はあるのか?消費税、10月から10%

日経朝刊2019年9月30日一面に、経済への影響に関するコメントが出ていました。日経のトップに出るということは、日本経済全体に影響があると判断されているわけですね。10月1日からいよいよ消費税が8%から10%にあがります。
※参考:10月から消費税10% 公共料金上げ、ポイント還元開始‐日本経済新聞社(2019年9月30日公開)

ここでしょっぱなから、「注意すべきなのは経済への悪影響を最大限なくしていくことだ」と語られています。

消費増税は経済の悪影響だ、と増税前日にちらっと認めるわけです。

これ、どうなんだろう。

悪影響のものはやらなければよろしい。しかもその対策が「軽減税率」(?)ですからねえ。現場の困惑と間接コストの増大と不要な管理業務の増大と行政コストの増大による利権などの拡大以外なにがあるのか。

8%と10%の線引きも、飲食などでは恣意的で…理屈をつけてどうとでも制度を変えられそうなところです。

そもそも「軽減」というのはまやかしだと思っていて、8%の時から見ると単なる「据え置き」ですよ。

言葉の印象操作だということに気づく必要があります。

増税と据え置きのダブルスタンダードと事務負担の不要な増大が今回の制度の本質だと思っています。

あくまで想像ですが、政府としては将来的に欧米並みの10%代後半を狙っているのでしょう。

国民の反発を恐れて「10%超への再引き上げ」は当分の間どうとか言われてますが、もう上げる気満々だという気がします。そのことを読み取って、「消費減税の議論がなぜ出ないのか?」をもっという必要があるように思います。

上げることだけを最初から前提でいいのか。消費税が今の財政対策の本質ではないと考えています。

ほかに打つべき手が有り、そっちをやればむしろ消費税を下げることができるのでは、という議論もイーブンに取り上げてこそ、公平なマスメディアの役割が果たせている、と言えるはずなのですが…。

いまになって、日経一面でも「経済への悪影響」がある、と公言しているわけですから。

それが軽減(?)税率の導入くらいでなんとかなるわけがない。

その他補助金がどうとかインボイスがどうとか、ぜんぶ本質的な対策ではないでしょう。

消費税に限らず、最低価格の設定とか、補助金とか、上からの制度設定は、ぜんぶとはいいませんが、多くの場合、経済の抜本対策にはならないこともあると、そうイメージしておく思考態度も有益だと考えます。

以上はあくまで個人的な見解なので、そんな意見もあるのね~という感じでご参考程度でお読みください。

Next: 自社株買いが増加している背景とは?



3年連続の増加が確実視、自社株買い10兆円突破の勢い

もうひとつ、日経1面に自社株買いの話題が出ていました。
※参考:自社株買い、今年度10兆円突破へ‐日本経済新聞社(2019年9月30日公開)

2019年度は年度として初めて10兆円を突破する勢いだそうです。

米中対立などで景気に先行き不透明感が漂い、成長に向けた投資に踏み切りにくい状況下で、蓄積した自己資金の振り向け先として自社株の取得を選択するケースが増えているようです。

調査センターのアイ・エヌ情報センターによると、2019年4月~9月(25日集計)の自社株取得枠の設定は前年同期比9割増の5兆1,082億円とのこと。

すでに過去最高だった2018年度実績(7兆円弱)の7割を超す水準で、3年連続での増加が確実視されています。

上期の設定額は年度全体の5割弱のため、2019年度は10兆円に達する可能性が高いですね。

上場企業の経営者の宿命として、現金預金の残高が高すぎると、事業の投資リターンを高める適切な資金投下先を見つける能力を経営者が持っていない、と判断される可能性が高い背景が挙げられます。

上場企業の株主は、常に投資リターンの高い資金運用先を探しているため、現金預金で大事な資金を眠らせている経営者にいつまでも大事な元本をあずけては置けません。

だから、自社株の取得により株主への還元への動きをみせるなどしないと、すぐに株主から売り圧力=株価低迷というかたちでの報復を受けるリスクがあるわけです。

ここが未公開企業である中小企業のオーナーとの根本的な立ち位置の違いになるわけですね。

自社株を取得すれば、資本市場で流通する株式の供給量が減りますから、需要と供給の関係で見ても、株価が上がる有力な要因となりえます。

中小企業オーナーと上場企業経営者の大きなプレッシャーの違いが、会社の時価=株価を気にしなければいけないかどうか、という点に集約されます。

いずれにせよ、今年度は投資よりも株主還元が優先のトレンドが強くなっている、という日経トップの見解は非常に興味深いといえるでしょう。

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image by : soi7studio / Shutterstock.com

時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年9月30日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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