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AIでも5Gでもない。2020年に投資家が注目すべき業界と5銘柄はこれだ=栫井駿介

2020年の株式相場はどうなるのか?私がいま注目している分野は、実はAIでも5Gでもありません。2019年を振り返りながら、2020年の展望を考えてみましょう。『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

需要はさらに拡大? 2020年にプロ投資家が注目するセクターとは

「たくさん投資する年」と宣言した2019年の実績

私は毎年このマネーボイスに翌年の相場について寄稿しています。今年はまず2019年の振り返りから始めようと思います。

2018年末といえば、「クリスマス・ショック」で株価が大きく下落したタイミングでした。いよいよ「リーマン・ショックの再来か」とも言われたほどです。

私自身景気後退を懸念していましたが、一方で個別を見れば買いたくて仕方がない銘柄で溢れていました。記事にも以下のように書いています。

”株価の下落は怖くもありますが、ここで勇気を持って投資できるかどうかが今後10年の投資パフォーマンスを分けると言えるでしょう。2019年は割安になった銘柄をたくさん探し、たくさん投資する年になりそうです。”

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結果的に大発会(年内最初の取引日)を底に、特に年末にかけて大きく上昇し、日経平均株価は約20%の上昇となりました。クリスマス・ショックで投資できた人は良好なパフォーマンスを残せたことと思います。

日経平均株価 週足(SBI証券提供)

かく言う私も自ら資金を投じて実践している「パイロット運用」で+40%近い実績を残すことができました。株価が大きく下がったときに過度に恐れることなく果敢に投資を行った結果だと考えます。

2019年展望で紹介した銘柄はすべて上昇

2019年展望の記事では「中小型株」「中国関連」「高配当銘柄」に分類し、注目する6銘柄を挙げました。以下はそれぞれ昨年末からの変化率です(パフォーマンスはいずれも12月24日終値時点)。

【中小型株】
WDBホールディングス<2475> +14.0%
シュッピン<3179> +65.1%

【中国関連】
アリババ<BABA> +56.3%
コマツ<6301> +11.9%

【高配当銘柄】
みらかホールディングス<4544> +7.3%
AT&T<T> +36.5%

このようにすべての銘柄が上昇しました。平均上昇率は31.9%と、これも日経平均を上回ることになりほっとしています。

相場のおかげという側面が強いので、これを実力と勘違いするわけではありませんが、おかしな銘柄を選んだわけではないということはおわかりいただけると思います。

イケイケの銘柄に資金が集中した1年

相場全体の体感としては、勢いのある銘柄に資金が集中したということです。

例えば、成長銘柄の代表格であるエムスリー<2413>は、2018年後半に2500円から1500円まで下がり、そこから反転してこの1年で3000円超まで上がりました。

エムスリー<2413> 週足(SBI証券提供)

この間PERは2018年のピークで80倍、クリスマス・ショックで40倍まで下がり、現在では100倍を超えています。この会社が超優良企業なのは間違いありませんが、100倍を超えるPERは果たして正当化されるでしょうか

出典:バフェット・コード

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逆に言えば、再び昨年のクリスマス・ショックのようなことが起これば、株価は半分になってもおかしくないということです。半分になったところでPERは50倍ですから、なお割高感があります。

イケイケの銘柄には資金が集まりやすく、相場の上昇局面では上がりやすいものですが、PERが高くなるほど下がり方も急になります。だからこそ、バリュー株投資家は上昇局面で高PER銘柄に手を出すことを避けるのです。

エムスリーは喉から手が出るほど欲しい銘柄です。しかし、慎重なバリュー株投資家としては上がっているときにはじっと我慢し、下がったときにしたたかに買うことで「いい株を安く買う」を実現できます

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バフェットの投資手法とはまさにこのようなものです。

Next: トランプの手のひらの上にあった2019年相場。2020年はどう動く?



相場はトランプの手のひらの上

2019年の相場は、年間を通じてトランプ大統領の発言に右往左往させられることになりました。

その1つがFRBへの利下げ圧力です。クリスマス・ショックを受けて、景気後退を避けるためにと、TwitterでFRBに利下げを迫る圧力をかけ続けました。これを受け、利下げに対する市場の期待感が高まり、年前半の上昇が起こります。

しかし、元はと言えば昨年までトランプ大統領自らが仕掛けた米中貿易戦争により中国経済が減速し、株価が急落したのです。大統領としては自らの手腕で株価を上げたように発言していますが、見れば見るほど自作自演、マッチポンプなのです。

市場が利下げを織り込むと、夏頃には再び勢いがなくなってきます。そこで大統領は米中貿易戦争の和解をちらつかせ、投資家の心をくすぐったのです。すると、秋頃から年末にかけて、株価は見事に上昇しました。

米国株は史上最高値を更新し続け、大統領はご満悦です。Twitterを使った「株価操作」に関して彼の右に出る人はいないように思えます。

なぜトランプ大統領がここまで株価にこだわるのかと言えば、2020年11月3日には2期目をかけた大統領選挙が行われるからです。米国では大多数の国民が何かしらの形で株式を持っていますから、株価の上げ下げは支持率に直結します。

これから大統領選挙にかけてトランプ大統領の思い通りになるとすれば、株価はもう下がりようがないという気さえします。私のメインシナリオもここからのさらなる上昇を見込んでいます

しかし、もう少し先のことまで考えると、トランプが再選するかしないかにかかわらず、大統領選挙後はいよいよ「弾切れ」になるのではと考えています。米大統領に3期目はありませんから、再選されれば株価への関心も失われてくるでしょう。

そうなると、2020年後半、大統領選挙後はいよいよ株価の動向が怪しくなると私は考えています。

2019年8月31日 つばめ投資顧問作成

逆イールドは景気後退のサイン?今回は違う?

もう1つ気になるのが、今年8月に発生した「逆イールド」です。逆イールドとは、長短金利が逆転することで、投資家心理が慎重になっている時に起こるとされます。

歴史を振り返ると、逆イールドが発生してから約1年半で景気後退が起きると言われています。それを当てはめると、やはり2020年の後半が怪しくなってくるのです。

一方では、逆イールド発生後の景気後退に関し、様々な理由を挙げて否定する記事も目立っています。足元で株価が上昇していることから、ますますその論調が強くなっているように思えます。

これこそが危険な徴候です。確かに、過去の逆イールド発生時とは金利の絶対水準も異なり、まったく同じ状況とは言えないでしょう。それでも、過去数度にわたって結果として景気後退に陥っている事実は無視すべきではありません。

そもそも、景気は好不調を繰り返すものです。リーマン・ショック後の景気回復はすでに11年と過去に例を見ないほどの長さになっています。単純に長さによって区切られるべきではありませんが、いつか景気後退が起きることを忘れてはいけません

株式投資で最も危険な言葉は「今回だけは違う」です。特に景気サイクルの終盤では歴史を無視した挙げ句、無残にも敗れ去った投資家は少なくありません。私たちが肝に銘じるべきは「歴史は繰り返す」という言葉でしょう。

足元で株価は大きく上昇しています。これを「グレートローテーションのはじまり」と言う人がいますが、私はそうは思いません。ろうそくは消える前が一番良く燃えるのです。

Next: AIでも5Gでもない、2020年に注目すべきセクターは?



投資とは「ギャンブル的要素を消すこと」

ここまで相場見通しについて論じてきましたが、実は私はそれが当たるとは思っていません。なぜなら、投資家がすべきことは予想を当てることではなく、外れても大丈夫なように手を打つことだからです。

35億円を運用する個人投資家のテスタさんも「株で勝つというのは、いかにしてギャンブル的要素を消していくかということ。」だと言います。これが多くの人が見逃しがちな真実です。

その点、私たちバリュー株投資家がすべきことはシンプルです。相場環境にかかわらず、「いい株を安く買う」ことを徹底すれば、長い目で見ればどんな相場でも生き残っていくことができます。

AIでも5Gでもない。私が2020年に注目するセクター

私が今注目しているのは、実はAIでも5Gでもありません。どこにでもありそうな「トラック輸送」です。

トラック輸送と言えば、誰でも参入できることから小規模業者が乱立し、これまで投資に向いているとは思えない業界でした。

しかし、近年はインターネット通販の拡大で需要の拡大が続いています。一方で、人手不足が深刻化しているため、需要はあるのに捌ききれないという切実な状況が生まれています。

そこで台頭してきたのが、3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)というビジネスモデルです。これは、運送会社が企業の物流システムを一手に引き受け、効率化を成し遂げるものです。

委託した企業はアウトソースによりコスト削減ができ、一方で引き受けた運送会社は規模の拡大とノウハウの蓄積により、利益を出しやすい体質となります。一度アウトソースされたら業者を変更される心配の少ない「ストックビジネス」でもあるのです。

何より注目すべきは、これらを担う会社がとにかく「安い」ということです。具体的な銘柄を見てみましょう。

【銘柄<コード>:PER】
丸全昭和運輸<9068>:8.0倍
トナミHD<9070>:9.5倍
ハマキョウレックス<9037>:11.0倍
遠州トラック<9057>:11.5倍
センコー<9069>:11.6倍
(※PERは2019年12月25日時点)

PERが低い理由としては、利益率が低いこと、そして何より「地味」な点が挙げられます。このような銘柄こそお宝が眠っているものです。

各社とも業績を着実に伸ばし、利益率も向上しています。ぜひ四季報や有価証券報告書を見てチェックしてみてください。それで「良い」と思えたら買ってみてください。筋は悪くないと思います。

Next: 安くなった時に買い続ければ、数年後には必ず実を結ぶ



安くなった時に買い続ければ、数年後には必ず実を結ぶ

株価はどうしても相場に左右されるため、結果はすぐには出ないかも知れません。

しかし、粘り強く良い銘柄を探し、安くなった時に買い続けていれば数年後には必ず良い結果が出ています

これを少しでも早く始めることが、投資家として成功するための最も確実な道です。

2020年が皆さまにとって良い年になるよう、心から願っています。


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image by:XArtProduction / ShutterStock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年12月27日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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