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世界の真ん中で輝かなかった日本の2019年~首相認識と国民感覚に大きな乖離=今市太郎

安倍首相は21日、『2019年報道写真展』を訪れて「日本が世界の真ん中で輝いた年になったのではないか」と発言。実態とも国民の認識とも大きく乖離しています。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年12月26日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバッグナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

かつてない景気後退が訪れる?出生数激減が産業衰退の決定打に…

日本が世界の真ん中で輝いた?

安倍首相は21日に日本橋三越本店で開催中の『2019年報道写真展』を訪れ、約300点のニュース写真を鑑賞しました。そこで、ラグビーW杯で世界中のファンが来て「日本が世界の真ん中で輝いた年になったのではないか」などと耳を疑いたくなるような妄言を吐き捨てています。
※参考:安倍首相「日本輝いた年」 報道写真展を鑑賞:時事ドットコム(2019年12月21日配信)

毎年この報道写真展を訪れては1年を振り返って、どうでもいい耳障りの良いことを言い放ってお仕舞いにされているようです。

しかし、果たして本当に日本が世界の中で輝いた1年だったのでしょうか

巷では首相発言は実態と乖離しているという批判があるなかで、この御仁は本当に心からそう思っているのではないか?といったあきれ果てた発言も飛び交いはじめています。

決定的な乖離ができているのは、むしろ首相の目線国民感情なのではないかとさえ思うほど、国が直面している状況は相当悪化しているのが実情です。

さすがにこのメルマガで桜を見る会の問題点をいくら追及してみたところで、別に儲けが出るわけではありません。

ですから、もう少し国内の産業視点ということで、日本の企業がまったく輝かない2019年であったことをを振り返っておきたいと思います。

Next: 製造業はクルマ以外全滅。産業衰退は98年以降、凄まじい状況に凋落へ



産業衰退は98年以降、凄まじい状況に凋落

このメルマガでは、97年に無理やり消費増税を行った結果、翌年の98年から本格的に国民の労働分配率も実質賃金も大幅に減少しはじめて、結局デフレに突入し、今日もそこから実はまだ抜け切れずに逆戻りしようとしているという内容をご紹介しています。

産業衰退はこの98年あたりから実に顕著で、ほとんどの製造業というものが(かろうじてクルマを除けば)衰退の極みになってしまっていることを強く感じさせられます。

とはいえ、日経平均の株価を見ればそれほど心配するほどのことではない、という見方をする向きが多いのも事実です。

しかし、以前に当メルマガでHSBCの分析結果をご紹介したとおり、実に実態よりも35%もかさ上げして下駄をはかせたのが今の株価指数の現実であるとした場合には、足もとの株価など一切信用できるわけもありません。

存在感がまったくない日本のメーカー

シラーPERでここ10年の売上動向から分析すると、実は全然たいしたことのない日本企業が相当数存在することにも驚かされます。

ざっと見ても、この20年間に日本市場から消え失せたものといえば、再生可能エネルギー関連はシャープが消滅し、三菱電機京セラパナソニックがすべて消滅し、もはや国内には跡形もない状況です。

また通信領域も、米国ではアップルをはじめとして大きく市場が拡大して巨大化した企業が多かったとと拮抗するように、サムスンやファーウェイが市場を席捲する形となりました。

ここでも、もはや日本のメーカーの存在感はまるでありません

かろうじて部品の分野にその痕跡があるだけで、実は5Gについても関連企業はまだ結構残されており、国内個人投資家の投資先として物色されてはいるものの、5Gによって展開される本質的なビジネス領域に踏み込めている企業は皆無といってよい状況です。

「『桜を見る会』のデータは、シンクライアントベースでクラウドのサーバーに保管されていたが、捨てたのでもうありません」という形で注目を浴びたクラウドの世界も、主力はアマゾン、マイクロソフト、グーグル、オラクルが世界の主流・標準化の基本となっています。

国内では会計ソフトの「Freee」が東証マザーズにIPOして、SaaS型クラウドサービスとして話題になっていますが、国内だけを相手にしたきわめてニッチな市場を取り込む状況にすぎず、大勢に影響を与えるような存在では無くなっていることに改めて愕然とさせられます。

この視点で見ますと、もはやバイオ医薬もM&Aでなんとかする以外には本邦企業には先導的利益機会はありません。

リチウムイオン電池も最初は調子が良かったものの、もはや価格の下落スピードが早すぎて液晶の二の舞寸前の状況です。

IoTとAIを組み合わせた自動運転の領域も、これだけ大量に自動車を生産してきた日本のメーカーがイニシアチブをとることなくダメになりそうな状況です。

Next: 税金を大量投入しても復活できない?出生数激減が国内産業衰退の決定打に…



税金を投入しても日本企業は立ち上がれない

安倍政権はあらゆるものを売り渡して日本メーカーの対米輸出を確保するという、きわめて不平等なFTAにまんまとサインオフしました。

この判断が決定的な間違いであったことは、もう間もなく明らかになるものと思われます。

さらに言えば、凋落をたどる日本企業の再生のために機能すべき官民ファンドもボロボロです。

ここ20年、いろいろと名称だけは変更になっていますが、古くはダイエーのお取りつぶし、ルネサスの半導体もアウト、ジャパンディスプレーは粉飾の嵐で、もうこれ以上税金を投入しても立ち直れないのは明白です。

出生数激減は国内産業衰退の決定打

直近では、厚生労働省が24日に発表した2019年の人口動態統計の年間推計で、日本人の国内出生数は86万4千人となり、前年比で5.92%も減少するというかなり最悪な事態に追い込まれてきています。

経済統計予測の中でももっとも精度が高いのは、人口動態統計予測と言われてきました。

しかし、90万人を割るのは2020年以降とされていたものが完全に1年前倒しになっており、出生数が死亡数を下回る自然減もとうとう51.2万人のレベルに達しています。

このように、人口減少は想定を上回る速さで進んでいることがわかります。

さらにその一方で、企業の45才以上のリストラは大手を中心に驚くほど進んでおり、単純かつ安価な労働以外には、ホワイトカラーの過剰労働力の収容先すらない厳しい状況に及んでいるのです。

ここからは毎年、島根県1県がまるごと消滅するぐらいの人口減が続くことになるわけですから、本来、リストラにあった中年層といえども貴重な労働力のはずです。

悲観的なことを口走ってもなんら状況は好転しないし解決しないというご指摘をいただくことがありますが、ここで書き連ねたのは悲観的な話ではなく、すべてファクト(事実)である点はしっかり理解しておく必要があります。

Next: 庶民はかつてない景気の落ち込みを経験する?賢明な投資家は現実を直視せよ



庶民はかつてないほどの景気の落ち込みを経験する?

株式市場に戻りますと、日本の株価はもう下がりようがないなどとおめでたいことを口にするアナリストが登場してあきれること甚だしいわけですが、まあ相場が上がると思う方はどんどん購入していただければいいだけの話で、賢明な投資家はもっと事実を直視すべき時間帯に入ってきています。

足元の中央銀行バブル相場は、貧乏人にとってはバブルであることすら感じさせないというきわめて特殊な状況を作り出しています。

しかし、ひとたびこれが崩壊し始めると、我々はかつて経験したことのないほどの経済と景気の落ち込みを経験することになるのは間違いない状況です。

経済と社会がすべてダメな理由が安倍首相の存在にあるとまでは言いませんが、次世代社会に対するグランドデザインがまったくなく、今、そして自分の周辺だけに都合のいい社会さえ実現できればそれでいいという超刹那主義の結果がこうした事態を招いていることだけは事実です。

さすがに日銀の過剰緩和措置だけでは、この状況の破綻を(先延ばしはできても)支えることはできなくなる瞬間が必ず訪れることになります。

2020年を迎えるにあたって、このことは改めて理解しておく必要がありそうです。

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2019年12月配信分
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今市太郎の戦略的FX投資』(2019年12月26日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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