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韓国、新型肺炎で3度目の経済危機へ?カギを握るのは崖っぷちのウォン相場=勝又壽良

韓国経済は中国に大きく依存している。その中国の経済が新型コロナウイルスの影響で減速すれば、韓国はどうなるか? いよいよ通貨危機から経済崩壊へ向かう。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2020年2月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

SARS以上の経済危機?中国で問題が起これば韓国がひっくり返る

中国からの入国規制をぎりぎりまで「先延ばし」した韓国

韓国は、外交的に中国を最も恐れている国である。絶えず、中国の顔色を伺う、哀しいまでに主体性のない国だ。

今回、中国武漢で発症した新型コロナウイルスについても、中国からの入国者に対する微温的な姿勢が、国内で非難されるほどである。

1月31日、世界保健機関(WHO)が「国際的な公衆衛生の非常事態」を宣言すると、米国は中国全域を対象に旅行を原則禁止した。日本は湖北省に滞在経験のある外国人の入国を禁止した。

日米は、同一歩調で防疫対策の切り札として、中国からの入国に制限を加えている。このほか、イタリア、ロシアも規制している。中国との接触を最大限減らすことで、感染源の流入遮断に動いている。

これに対して韓国は、中国の姿勢を見ながら時間稼ぎをしている状況だ。

韓国の航空会社は、中国40都市に就航し、1日に数百便が行き来している。航空便の数だけなら世界最高のレベルとされている。その結果、中国から韓国へ毎日2万人前後の搭乗客が訪問している。

『朝鮮日報』社説(2月2日付)は、前記の事情を踏まえ「新型コロナウイルスに関して、韓国は今や中国本土と同じレベルのリスクがあると見なければならない」と指摘するほどだった。

この声に押され、韓国政府は2日、中国・湖北省を14日以内に訪問したすべての外国人の入国を、2月4日午前0時から全面的に禁止することになった。ようやく、重い腰を上げた形だ。

韓国は朝鮮族の出入り多く敏感

中国東北部には、朝鮮族が存在する。総数は約180万人とされ、韓国へ出稼ぎして暮しを立てている人たちだ。

この朝鮮族にとっては、韓国とのつながりを切られたら、生活に難儀する。韓国政府はそれだけに、出入国に規制を加えることに慎重だったのだろう。

ただ、「中国政府が怖い」というのも、これまで入国規制を見送ってきた理由に違いない。

韓国は、中国朝鮮族を介して新型ウイルスが持ち込まれるリスクが最も高い国である。韓国人は、それだけにウイルス騒動で敏感に行動している。

ソウルの繁華街から中国人観光客の姿が消えただけでなく、韓国人までが外出しないで自宅に籠もっている現象が増えている。

Next: SARS以上のショック? 中国で問題が起これば韓国経済が「ひっくり返る」



中国で問題が起これば、韓国経済が「ひっくり返る」

前記のように中国朝鮮族を介して、韓国は中国の「延長」のような位置づけになっている。これが、韓国の消費行動に特別の影響を与えている。

中国が感染源であったSARS(2003年)では、韓国の経済成長に次のような影響を与えた。SARSは2012年11月に発症し、2013年初めから韓国経済に本格的な影響を及ぼした。

韓国経済の実質GDP成長率(前期比)推移
2002年07~09月期:+2.0%
2002年10~12月期:+1.1%
2003年01~03月期:− 0.7%
2003年04~06月期:− 0.2%

02年7~9月期は前期比2.0%成長率であった。それが、翌10~12月期はほぼ半減している。03年に入ると2・四半期連続のマイナス成長に落込んだ。02年の実質GDP成長率は7.7%であった。03年にはそれが半減して3.2%に落込んでいる。

これは、中国で問題が起これば、韓国経済が「ひっくり返る」現実を見せつけている。

03年当時、好調だった輸出も5月に大きな影響を受けた。同年の月別輸出は1~4月はいずれも前年比20%前後の増加率を見せたが、5月の増加率は3.5%にとどまった。

現在は、2018年12月から輸出全体がマイナスに落ち込んでいる。中国向け輸出不振が大きく響いて、今年1月は前年同月比6.1%減である。14カ月連続のマイナスである。

このように、SARS発症時と比べて、現在の輸出環境は格段の悪化である。SARS時には、韓国でのSARS感染者が03年4月に初めて現れた程度であった。今回は、1月から多数の感染者である。

韓国国民の受けているショックは、SARS以上と言わざるを得ない。

止まらぬ経済崩壊、文政権も窮地へ

今後の韓国経済は、どのような影響を受けるか。

これまで私は、中国の実質GDP成長率が、今年は1%ポイントの低下と見れば、これまでの「定石」通りのパターンで、その半分の0.5%ポイント低下と予想してきた。

だが、上述のような過去の展開と現在の状況を重ね合わせると、もっと違った悲観的なシナリオを考えざるを得なくなっている。詳細は、後で取り上げる。

韓国は、昨年の実質GDP成長率が2.0%であった。これは、10~12月期に短期のアルバイト雇用を増やした応急措置の結果である。一昨年も同じ手を使った結果、昨年1~3月期はマイナス成長になっている。

このことから、今年1~3月期も同様に、マイナス成長に落ち込む。さらに、今年は中国の新型コロナウイルスという悪条件が加わる。輸出も低迷している。

03年1~3月期の実質GDPは、前期比マイナス0.7%に止まった。今年1~3月期は、03年同期をはるかに超えるマイナス幅だ。

韓国の受けるショックは特別大きなものになろう。

今年4月15日は、韓国総選挙である。選挙前に1~3月期の大幅マイナス成長率が発表されれば、与党は大打撃を受ける。これを見越してGDP発表を遅らせば、野党とメディアに総攻撃を受ける。

いずれにしても、文政権は窮地に立たされ「レームダック化」だ。

これまでのように「積弊一掃」を声高に言う元気を失い、ひたすら守りに徹する政治を余儀なくされよう。野党と攻守ところを変える政治模様が想像できる。

Next: 韓国経済の運命は中国次第。中国にできることはまだあるか?



中国経済の回復策に何があるか

韓国経済は、中国に大きく依存している。その中国経済はどうなるか。

新型コロナウイルスによる中国国内の死者が、2月1日時点で304人となり、前日から45人増えた。中国国外で初となる死者が、フィリピンで確認されている。中国での新たな感染者は2,590人で、計1万4,380人に達した。

これまでは診療体制の不備で、診察を受けるに2日待ちという人々はざら。応急措置として、2月2日と5日に完成を目指してきた、ベッド数が計2,500床程度のプレハブ簡易病院を開院できる。これにより、感染者数は飛躍的に増えるであろう。

SARSなどでも、特効薬は生まれなかった。ただ、過去の治療に役立った薬品を中心にして、新たな治療薬が探されている。免疫学も飛躍的に進歩しているため、治療薬およびワクチンがずっと早期に利用可能な期待も出ている。

米国立衛生研究所(NIH)は、米国主要医薬品会社のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、モデルナ・セラピューティクス、イノビオ・ファーマシューティカルズなどと協力して既に、新ワクチン開発に取り組んでいるという。4月頃には成果が期待されている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月31日付)が伝えた。

中国では、中国科学院上海薬物研究所などが生薬製剤(漢方薬)に新型コロナウイルス抑制効果があることを発見したと報じた。それによると、「双黄連内服液は金銀花、黄?(おうごん)、連翹(れんぎょう)の三味の生薬から作られており、中国伝統医学(中医)においては清熱解毒、表裏双清の作用を持っているという。中国政府機関紙『新華社』(1月31日付)が伝えた。

米中が、揃って現代医薬と漢方薬の対照的な角度から治療方法を研究中である。

SARS以上の経済的ショックが訪れる

だが、実際に医療現場で使われるまでには数ヶ月を必要とする。早くて今秋ごろの話だ。それまでは、感染者を増やさない努力が求められる。

中国では、ウイルスの拡散防止のため春節(旧正月)休暇後も、企業に休業延長や従業員の出勤を控えるよう指示をしている。『日本経済新聞』(2月2日付)が確認したところでは、省、直轄市、自治区で少なくとも全体の約8割の25地方政府に上がっている。中国全土で8割の地方政府が休日延期を命じたとなれば、生産面への影響は甚大だ。現在は、9日までの休業が多いものの、感染者の増加基調が変らなければ休日再延期によって、就業再開はさらに遅れる。

今回の新型ウイルスが、中国に与える影響を予測するには、SARSによる経済的な損失が参考になる。

中国政府が、SARSを公式に認める前の2003年1~3月期実質GDPは11.1%であった。それが、4~6月期には9.1%まで低下した。下半期には回復して10%に戻っている。

この状況から見れば、SARSによる経済的な影響は軽微と言えよう。当時の中国経済は、「人口ボーナス期」の真っ只中にあった。つまり、生産年齢人口比率が上昇し続けていたのだ、潜在成長率が上昇局面であり、なんら問題なく「SARSの傷」は癒えたのである。

今回は、その生産年齢人口比率が、2010年をピークに下落局面(「人口オーナス期」)に移行した。潜在成長率が低下しているのだ。

今回は、SARS以上の大きな経済的な打撃を受ける。

Next: 中国の成長鈍化は確実? 日本も経験した「失われた20年」に突入する



中国の成長鈍化は確実

香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』は、中国専門研究機関分析を引用し、今年1~3月期のGDP成長率は最大で4%へ下落すると報道した。一般的にも、「1~3月期4%成長説」が出ているので驚くほどでない。

その場合、中国政府は、

(1)大規模な財政出動
(2)政策金利の引き下げ
(3)不動産購入規制の撤廃

などの景気刺激政策を発動させる可能性が予想されている。

これは、中国経済の「カンフル剤」に過ぎない。一時的に効果があっても、債務残高を増やすだけで終わるであろう。

(1)大規模な財政出動は、インフラ投資が飽和状態で無益。減税による消費刺激も家計の過剰債務で効果は少ない。
(2)政策金利の引き下げは、人民元相場の下落に拍車をかけ、外貨流出を促進させる。
(3)不動産購入規制の撤廃は、投機用住宅購入を再燃させ価格下落時の傷を深くさせる。

要するに、かつてのような効果は期待できない。

日本は、バブル経済崩壊(1990年)後に長い不況のトンネルを経験させられ、「失われた20年」という屈辱に甘んじた。経済構造がバブルによる水ぶくれ状態であったからだ。

中国も同じ泥道を歩むほかないだろう。中国だけ、バブル経済後遺症に特効薬があるはずがない。この現実を、早く受入れ「手術台」に乗ることである。

韓国は中国と一蓮托生の危機へ

中国経済の規模と影響力は大きくなっている。2003年、世界GDPに占める中国GDPの比率は4.3%であった。昨年は16.3%にも達している。韓国の対中貿易依存度は、2003年の18.1%から、昨年は25.1%へと7%ポイントも増えている。これは、韓国経済が、中国経済の動向から受ける影響度合いの増加を意味する。

中国が、すでに潜在成長率の低下局面にある。ここで受ける新型コロナウイルスの悪影響は、SARS時の潜在成長率上昇局面時と「天と地」である。

この認識は、当の中国はもとより海外にあるだろうか。私は、その認識のきわめて希薄なことが、事態の解決を誤らせると危惧する。それは、日本経済の辿った道からも十分に言える点なのだ。

韓国の新型コロナウイルスから受ける悪影響は、きわめて大きいであろう。今年1~3月期のマイナス成長は不可避であり、4~6月もその影響から抜け出せないだろう。

韓国の内需が、最低賃金の大幅引き上げと週52時間労働制の桎梏(しっこく)に苦しみ、輸出減少分をカバーできないとすれば、今年の通期成長率は1%見当まで低下する公算があろう。

Next: 韓国に3度目の経済危機が訪れる? カギを握るのは崖っぷちのウォン相場



韓国に3度目の経済危機が訪れる

韓国経済が、この程度の低成長率が見込まれる段階になった時、何が起こるだろうか。

ウォン相場がそのカギを握っている。1ドル=1200ウォンが「マジノ線」と言われてきた。だが、マジノ線といわれるごとく、これは「絶対防衛線」という意味である。

これが軽く破られ、韓国企業の「格付け」が一斉に引下げられる事態(確定的である)になれば、韓国株価の暴落リスクが大きくなろう。

まさに、韓国の3度目の経済危機が起こりかねない。

文政権の経済政策は、対外的に信用を失っている。財政赤字は膨らむ一方で、「反市場・反企業」政策は、まったく改められる兆候もないからである。

ウォン投機筋が勝負を仕掛ける理由は、山ほど転がっているのである。

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勝又壽良の経済時評』(2020年2月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

[月額864円(税込)/月 毎週木曜日(年末年始を除く)予定]
経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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