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金正恩氏「脳死」を生々しく伝える韓国紙。北朝鮮を襲う後継者問題と経済危機=勝又壽良

北朝鮮最高指導者である金正恩氏が、脳死状態に陥っていると伝えられている。情報源は、中国の対北朝鮮政策のトップで、これまで北朝鮮へ50回も渡っている人物である。この枢要な人物から、韓国の金大中政権当時、大統領府の初代国政状況室長を務め、第16代国会議員を歴任した張誠ミン(チャン・ソンミン)氏へ、電話で伝えられたものである。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2020年4月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

金正恩氏「脳死説」の現実性

ここまで「正恩氏脳死」が生々しく伝えられている以上、北朝鮮政治に一大異変が起こっていることは否定し難い事実として受け入れざるを得ない。事態の詳報は、次のようなものである。『中央日報』(4月24日付)が、伝えた。

1)「世界と北東アジア平和 フォーラム」張誠ミン理事長が4月23日、中国高位関係者から金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が回復不可能な重態にあるという情報を入手した。張理事長は、「今朝、北朝鮮の最高要人が『これは死亡と見なすべきだ』という結論を下した」という話を聞いた。

2)正恩氏は呼吸しているが、事実上「植物(人間)」状態である。今朝(23日)、北朝鮮の高位職が状況を見て事実上死亡と結論を下したようだ。いかなる医術を動員しても、回復不可能な状態と判断しているようである。

3)米国政府は、この緊急事態に気付いたようだが、韓国政府は情報がない模様。金委員長が事実上、脳死状態であるので現在、権力の空白が現れている。韓国政府は、韓半島(朝鮮半島)のリスクを最小化する方向に戦略を講じて準備に入らなければならない。

4)張理事長は該当情報を伝えた中国側要人と情報の信頼性について、「長いつきあいの関係で、北朝鮮問題に関する情報が間違ったことが一度もなかった。99%以上信頼している」とし、「北朝鮮駐在中国大使が分からなくても、当該要人は情報を知りうる立場にあると」主張した。

以上のような経緯で、金正恩氏は再起不能の脳死状態に陥っている。突然、訪れた不幸である。

この衝撃的ニュースが、今後の北朝鮮後継問題、米朝関係、南北関係にいかなる影響を及ぼすか、焦点になってきた。現状で推測できる範囲で、前記の問題の行方にスポットを当てた。

後継は金ファミリーで

北朝鮮の政治体制は、古代の王政と同じである。一人の王が、全ての権限を掌握しているシステムだ。金正恩氏の統治活動が中断すれば、北朝鮮の「国家機能」そのものが麻痺しかねないのである。

例えば、金正恩氏が建設現場を視察した際、建物の仕上げ材やインテリアについてまで「細かな指示」を下すことがある。北朝鮮の最高指導者は、「現地指導」を通して北朝鮮を統治しているもの。正恩氏が脳死状態に陥れば、国家機能は動かないシステムである。

現在の北朝鮮は、すでにこの国家機能麻痺の事態になっている。早急に、後継体制をつくらなければならない。

北朝鮮は、「血統による統治」である。金日成→金正日→金正恩という金ファミリーが「首領」ポストを独占してきた。後継体制も、金ファミリーから出なければ、「革命」騒ぎの事態を迎える。穏便な後継体制づくりには、金ファミリーが必須条件であろう。

Next: 韓国の北朝鮮専門家は、実妹の金与正や実兄の金正哲などを中心に集団指導――



後継者選びを間違えると内紛へ

韓国の北朝鮮専門家は、実妹の金与正(キム・ヨジョン)や実兄の金正哲(キム・ジョンチョル)などを中心に「集団指導」のメカニズムが作動する可能性を指摘している。

金与正氏は、父親・金正日が4人の子どもの中で、最も政治性に富むとして目をかけてきた。ただ、「女性」であることが最大の難点で、後継者に選ばれなかった。

金正哲氏は生来、政治に無関心で文学や音楽を好む「文人派」とされ、早くから後継者レースから外されていた。

結局、「帯に短し襷に長し」である。前記の二人だけで、剛腕「金正恩」に代わって北朝鮮を統治できる可能性は低い。

脱北した元駐英北朝鮮公使で、4月15日の総選挙で当選した未来統合党の太救民(テ・グミン)氏(本名=太永浩)が23日、次のように指摘している。「金与正体制に移行するだろうが、現体制を支えている60から70代の勢力にとって、金与正(32)は完全に「ひよっ子」だと指摘。代わって、金平一(キム・ピョンイル、66)の存在に注目している。

金平一氏は、金正日の異母弟で、金正恩氏の叔父に当たる。金平一氏は、金正日との権力争いに敗れ、1979年以降はハンガリー、ブルガリアなどの海外公館で勤務し、昨年チェコ大使としての勤務を最後に40年ぶりに平壌に戻ったところだ。

前述の通り、金与正氏は子どもの頃から政治問題に並々ならぬ関心を持って来たとされる。それだけに、実兄の後を継ぐ意欲は満々であるはず。それが、「女性と年齢」でトップの座を外されれば、新たな紛争の種を持込むことになろう。

米朝交渉は米が有利に

北朝鮮最高指導者は、集団指導体制(金与正・金平一など)になるのが最も現実的な選択であろう。

問題は、核問題を初めとする外交政策や経済政策などを、どのように転換させるかである。現状の核保持政策では、問題がひとつも解決しないのだ。

力と力で米国に対抗する政策は、北朝鮮の力量を超えている。朝鮮戦争は現在、米朝の休戦に過ぎない。

これを、法的な戦争終結に導くために、後継体制にその準備と覚悟はあるのか。正恩氏と同じ軍事的な威嚇戦略の継続では、国連による北朝鮮への経済制裁の継続・強化をもたらすだけである。

この矛楯からいかに脱出するか。ハリネズミ政策から転換するには、新しい視点が必要である。

その点で、韓国平昌の冬季オリンピック開会式で見せた金与正氏の判断が貴重な存在になってくる。「女性の視点」で北朝鮮外交を再構築すれば、米国との妥協と西側諸国からの経済支援を引き出せるであろう。

世界最貧国に落ち込んでいる北朝鮮経済の立て直しには、まず法的に朝鮮戦争を終結させるしかない。

北朝鮮が、最も危惧している安全保障問題は、核を抜きにしてどのように解決するのか。疑心暗鬼に陥っている現状からの脱出には、国連の介在も必要であろう。

朝鮮戦争は歴史的に言えば、米国を中心とする国連軍が中朝軍と戦ったものだ。この経緯を踏まえれば、国連が北朝鮮の安全を保障するという手立ても有効であろう。

これをテコに、核放棄のスケジュールを明確にして、国連の査察を受入れることだ。

要するに、現在の米朝交渉の枠組を変えて、北朝鮮と米国を中心とする国連との対話へ舞台を移すなどの「飛躍」があれば、凍結状態の米朝交渉が一歩前へ進む可能性はないだろうか。

この方法しか、北朝鮮の経済的苦境を救う道はないであろう。

Next: 北朝鮮経済は、どん底状態にある。その経済状態(2018年)を見ておこう――



北朝鮮経済はどん底状態

北朝鮮経済は、どん底状態にある。その経済状態(2018年)を見ておこう。

実質GDP総額:156億4600万ドル(世界順位124位)
1人当り名目成長率:686ドル(同199位)
実質経済成長率:マイナス4.15%(同207位)
(注:世界の国々は213ヶ国)

以上のように、北朝鮮経済が最悪状態に落ち込んでいる背景は、市場経済システムの崩壊がある。

公平・迅速な市場の存在は、一国経済の発展に不可欠な要件である。具体的にOECD(経済協力開発機構)は、「政党と軍による息苦しい統制や、ルールの実施や変更の方法を巡る不確実性、広範囲にわたる腐敗」を低成長の理由に上げている。この状態では、中国やベトナムのような経済発展が困難とみられている。

北朝鮮は、国が運営し農作物から工業製品まで幅広く扱う市場が、2010年の約200カ所から19年には約500カ所まで急増した。

それでも、北朝鮮経済の将来に赤信号が灯っているのは、前記のように腐敗の深刻さがある。根深い腐敗は、経済成長を阻むのだ。

腐敗の弊害を除去するには、専制政治を止めること。つまり、民主政治による「法の支配」が確立されない限り、北朝鮮における経済発展は望めないという絶望的状態にある。

金ファミリー支配では経済発展は不可能

金ファミリーが、北朝鮮を支配している現状では、経済発展は不可能である。OECDは、これを示唆しているのだ。

それを打破するには、「北朝鮮革命」しか道がない。

韓国の1人当り名目GDPは、3万3,320ドル(2018年)である。北朝鮮は、韓国の2.1%に過ぎない。これだけの差があるかぎり、南北統一は不可能であろう。

もっとはっきり言えば、南北の経済的格差がありすぎて、統一すれば韓国経済が潰れるという危険性が出てくるからだ。南北格差がありすぎて、統一は不可能という皮肉な事態を迎えている。

韓国経済に支援が重荷

韓国の文政権は、南北統一目標を掲げている。同じ民族が、38度線で分断されている悲劇は、当事者でなければ理解できないであろう。

ただ、北朝鮮は金ファミリーに支配されている。この現状を打破しない状況で、南北の交流強化は金ファミリーを支援すると同じことである。文政権の南北交流目標は、皮肉にも金ファミリーの温存に手を貸し、それが南北統一をさらに遠ざけることになるはずだ。

こういうスッキリした理屈を踏まえれば、南北交流促進が韓国国民にとって不利益をもたらす。こういう理屈が成り立つだろう――

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勝又壽良の経済時評』(2020年4月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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