マイナンバーカードを活用した上限5,000円のキャッシュレス還元施策「マイナポイント」の申込受付が7月1日より始まりました。決済事業者の戦いが勃発しており、消費者はお得を取るチャンスが来たと言えるでしょう。
上限5,000円以上の「お得」を各社が上乗せしており、楽天ペイはポイントの「三重取り」で合計26.5%還元になると宣伝、auPAYは最大1,000円相当をプラスして還元するといいます。イオングループも電子マネー「WAON」の紐付けで最大2,000円の還元を打ち出し、メルペイも最大1,000円分のポイントを付与すると発表しました。各社のオマケが出揃うのを待って選択するのがよさそうです。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)
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消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
コロナでマイナンバーカードが見直された?
マイナンバーカードとは、プラスチック製のカードで、公的な身分証明書として、広く一般に通用するものです。名前、住所、生年月日、顔写真などのほか、本人を特定する12桁の個人番号などの情報が詰め込まれたID(身分証明書)カードです。
カードの取得は任意ですが、このカードがあれば税金の電子申告「e-Tax」が利用できたり、自治体によってはコンビニのマルチコピー機から、住民票などの公的証明書の発行ができます。また、2021年には、健康保険証代わりに利用できるようになる予定です。
とはいえ、個人情報との紐付けなどの問題で、巷の評判はそれほど芳しいものではありませんでした。
ところが、今回のコロナパニックで見られたように、感染者の追跡にこれらIDカードが威力を発揮することが、台湾や中国、また韓国の例で明確になり、改めてこのカードに注目が集まったのです。
たとえば台湾では、国民が自販機で一定期間に決められた枚数だけマスクを購入することができます。そのときに使われるのが「健康保険カード」で、このカードを身分証明書がわりに使って個人を識別しているのです。
また、韓国や中国では買い物やサービスの利用のほとんどがキャッシュレス決済のため、スマホに載せたアプリを使い、感染者の行動をトレースして、彼らの位置情報をはっきりさせることで、クラスターと呼ばれる大規模な集団感染の発生を未然に防ぐことに成功したといいます。
このように、危機的状況下で、役に立つということがわかり、見直される機運が出てきているのです。
「マイナポイント」でマイナンバーカード普及を狙う政府
こうした中、普及を進めようと、総務省が決済事業者と提携し、マイナンバーカード所有者を対象にポイント還元を行うことになりました。これが、マイナポイント事業です。
この政策は、2020年6月末で終了した「キャッシュレス・消費者還元事業」の後継サービスとして、2020年9月〜2021年3月末までの7カ月間実施される予定です。
マイナポイントというと、「マイナンバーカードに独自のポイントが貯まる」あるいは「マイナンバーカードで支払ってポイントが貯まる」とイメージする人も多いと思いますが、実はそうではありません。
貯まるポイントは、事前に登録したクレジットカード、電子マネー、QRコード決済のキャッシュレスか、決済サービスのポイントです。
登録した決済サービスにチャージ、または買い物で支払いするときに金額の25%分(上限5,000円相当)のポイントが貯まる仕組みとなっています。所得や年齢などに関わらず、誰もが対象となります。
Next: 所得や年齢などに関わらず、誰もが対象となります。国はこのポイント還元――
紐付けられる決済サービスは1つだけ
国はこのポイント還元の原資として、約2,000億円を用意していると言われています。
マイナンバーカード自体、買い物するカードではないので、ポイントの貯まる機会はありません。それで考えられたのが、紐付けた決済サービスにチャージするときに、ポイントを付与する方法でした。
消費喚起を促すために25%という高率のポイントを付与することにしたのですが、これはあまりにも大盤振る舞いすぎるということで、5,000円の上限が設けられました。
注意したいのは、紐付けられる決済サービスは1つだけということです。
Suica・楽天Edyなどの「電子マネー」、PayPay・d払いなどの「QRコード決済」その他各種クレジットカードやデビットカードなど、主要な決済サービスのほとんどが対象となっているので、普段、自分がよく利用している決済サービスを選ぶようにするといいでしょう。
決済事業者同士の戦い勃発で、消費者はトクする?
ここで決済事業者の戦いが勃発していますから注目です。お得をとるチャンスです。
楽天は、楽天ペイを紐付けると「三重取り」ができて、合計26.5%還元になると宣伝しています。
auグループは、上限を6,000円と独自に1000円をプラスして、自社グループのカードを紐付けるようアピールしています。
これらのおまけを見て、紐付ける決済サービスやクレジットカードを決めるのもいいでしょう。
上限5,000円は、2021年3月末までの通算
ただ注意したいのは、ポイント還元で規定された「上限」の意味です。
これは、1回の買い物ごとではなく、マイナポイント還元期間の今年9月から来年の3月末までの7カ月を通してですから、あっという間に上限に達してしまいます。
2万円をチャージしたら上限5,000円に達して、そこで終わりとなります。過度な期待は禁物です。言ってみれば商品券ですね。マイナポイントの5,000円の商品券を最初にもらってすべて終了という感じですから、「キャッシュレス・消費者還元事業」に比べるとかなり見劣りがします。
Next: マイナポイントの申込みは、スマホやパソコンなどで行うことができます――
7月1日から申込受付が始まっている
マイナポイントの申込みは、スマホやパソコンなどで行うことができます。
スマホの場合は、マイナンバーカードと数字4桁のパスワード(暗証番号)を用意して、マイナポイントアプリを起動します。「マイナポイントの申込み」をタップして、紐付けしたいキャッシュレス決済サービスを選ぶだけです。簡単です。
個人情報の管理にはくれぐれも注意を
マイナポイントは新しいサービスなので、戸惑うことも多いのですが、注意したいのは、個人情報の管理についてです。
マイナンバーカードには、今後、保険証が載り、運転免許証も載るといわれています。これまでバラバラに持っていたセンシティブな情報がすべて1枚のカードに集約されるようになるので、非常に便利になります。
しかし、一方で、マイナンバーカードに個人情報を盛り込めば盛り込むほど、国や自治体に個人情報を把握されることになり、個人情報の漏洩や悪用されるリスクについて私たちは神経質にならざるを得ません。
とくにマイナンバーに銀行口座を紐付けることが義務化されるようになれば、せっかく変化の兆しがあった国民意識がまた元に戻りかねません。そのジレンマをどう解決するかが今後の課題となるでしょう。
いずれにしても、個人情報の保護については、マイナンバーカードがスタートする時点から議論されていたということもあり、十分に注意して使うようにしたいものです。
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- ニューノーマル時代のキャッシュレス(6/15)
- ポスト・コロナ時代にキャッシュレスはどう変容するのか?(6/1)
- 「出前ポイント」の大阪府~新しい取り組みをみせる自治体(4/15)
- ポイント還元事業の期間延長はあるのか?(4/1)
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年7月1日)
※タイトル、見出しはMONEY VOICE編集部による
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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。