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米国株にピークの兆し。著名投資家とファンドが逃げ出し、大衆がトレードを始めた=江守哲

著名投資家やヘッジファンドは株式市場にピークの兆しを見て資金を引き揚げている。過去にも大衆がトレードに参加したあとで暴落が起きている。今回はどうだろうか。(『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)

本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年7月7日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

大衆がトレードに参加したら市場はピーク?

コモディティ王の異名を持つ著名投資家デニス・ガートマン氏が、株式市場で個人投資家の流入や熱狂に近い感覚が見られる点について、株式市場のピークの兆しと語っているようである。

米国で良く語られる株価のピークの兆候を示す話に、靴磨きの話がある。靴磨きがトレードし、大衆がトレードし、大衆が特にオプション、先物ほか幅広く投機をするときには、常に市場がピークを打つことを示している。

ガートマン氏は、多くの個人投資家が新たに株式市場に参加し始めたことに警戒感を示している。

ガートマン氏は、スポーツとポップカルチャーのブログサイトBarstool Sportsの創業者デイブ・ポートノイ氏が、最近になって突然投資家として活動を始め、奢り高ぶった発言をしていることを戒めている。ガートマン氏は、ポートノイ氏を直接批判することなく、より重要な論点を示している。

その中で、「ポートノイ氏はコロナ危機の前には、1銘柄しか株式を買ったことがなかった。つまり、初心者だった。それが、コロナ危機でスポーツもエンターテインメントもストップしたため、長い間ほったらかしにしてきた証券口座でデイトレードを始めた」としている。

さらに、ポートノイ氏は自身の銘柄選びをストリーミング配信さえ行っているという。スクラブルのピースをランダムに選び、ピースに書かれたアルファベットで出来るティッカーの株式を買ったというのである。

これは、ポートノイ氏が、どんな株も上がると考えていることを示しているという。歴史上、収束しなかったパンデミックは存在しない。だから、買えば成功すると言いたいのだろう。さらにポートノイ氏は、多くの著名投資家を事実上軽んずる発言まで行っているという。ポートノイ氏は「もちろんウォーレン・バフェットは偉大な人物だが、株に関してはしくじった。今は自分がキャプテンだ」としたのである。

わずか数か月の短い弱気相場の反転で儲けたからといって、ここまで自慢をするとは、なんとも恰好な道化が現れたものである。

最近、バークシャー・ハザウェイの運用成績が振るわないことを捉え、バフェット氏の手腕を疑問視する人が増えたのは事実だが、そういう人の中にバフェット氏と同様の業績を上げた人はいない。投資家としての手腕は、過去の厳しい市場サイクルを複数回乗り越えて初めてわかるものであろう。

素人投資家が自慢話を始めたら暴落が起きる

ガートマン氏は、ポートノイ氏のような鼻持ちならない投資家が自慢話をし始めていることに警戒をしている。

過去にもこのような個人投資家が市場に流れ込んできたことは何度もある。ガートマン氏は1972年、1987年、2000年にも同じことが見られたとしている。これらの年のあと、株価は大暴落している。

今回もそうならなければよいが、おそらくそうなるだろう。それが歴史であり、市場だからである。

ビギナーズラックが続くことはない。損失を被り、そこで「株式投資は簡単ではない」ことを、身をもって知ることになるだろう。それが過去の歴史である。

投資家は常に謙虚でいたいものである。

Next: デニス・ガートマン氏の別のコメントを見てみよう。ガートマン氏は、米国――



ガートマン氏は弱気

デニス・ガートマン氏の別のコメントを見てみよう。ガートマン氏は、米国株市場の変調を指摘し、インフレとコモディティについてコメントしている。

「約3週間前にピークを打ったダウ平均を見ても、約3週間前にピークを打ったS&P500を見ても、約2週間前にピークを打ったナスダック指数を見ても、約3週間前にピークを打ったラッセル2000を見ても、DAX、日経平均でも同じだ。世界中の株式市場で何かが起こっている」としている。

ガートマン氏は株式市場の変調の要因として、FRBのバランスシート、新型コロナの状況、個人投資家の動向、大統領選挙の動向を挙げている。

そのうえで、「おそらく、FRBのバランスシートが過去2週間で縮小した事実なのだろう」としている。

FRBのバランスシートは、株価上昇へのモメンタムを与える要因の1つだったが、それがなくなった。事実、FRBのバランスシートはピークからやや調整している。そのため、ガートマン氏は「これは少し問題で、株価は下がると思う」としているのである。ガートマン氏は、米国株式市場を下落方向と予想しているようである。

また、インフレへの懸念を示唆している。世界中のほとんどの中央銀行がかつてない水準で拡張的な政策を採っていることが理由とみている。ガートマン氏は「現在、ポピュリストが台頭し、反グローバル化政策が採られている。今後数年のうちにインフレが上がり始める」と警戒しているのである。

イノベーションとグローバル化が進んだ1990年代以降、世界的にインフレは沈静化したが、それぞれの国が保護主義的な政策を採れば、イノベーションにもグローバル化にも妨げになりかねないといえる。その結果、インフレを抑止していたタガが外れる可能性がある。そうなれば、インフレは不可避になる。

ガートマン氏のように、1970年代を知っている世代からすれば、インフレを良いものだとは到底思えない。

1980年のインフレ暴発と金相場の急騰は、当時の市場を知らなくても、チャートを見れば何が起きたかは容易に理解できる。当時は銀相場が吹き上がっていた。

金と穀物に注目?

ガートマン氏は、現在の市場で金と穀物に注目すべきとしている。さすが「コモディティ王」である。金はすでに上昇し、穀物は豊作にもかかわらず底を打ちつつある。これがインフレの足音なかもしれない。

ガートマン氏は、金は1,800ドルが視野に入っており、さらに上がるかもしれないと予想している。ガートマン氏は、以前は弱くなりそうな通貨建ての金を推奨していた。例えば、ユーロ建てや円建てでの金投資を奨めていた。しかし、いまやドル建ての金投資を奨めている。

ガートマン氏は、「2年半ほどユーロ建てや円建てでの金投資にきわめて強気で、すばらしいトレード結果を出した。しかし、今はFRBの拡張的政策、大統領・上院が民主党に変わりそうなことを恐れている。そうなればドルに悪影響が及ぶだろう」としている。

一方、銀については、金と銀の比価を見ると、いまは金がきわめて高く、銀がきわめて安いと指摘する。

しかし、銀はあまりにボラティリティが高すぎるため、年齢が高くなった自身では取引するのは厳しいとしている。しかし、これは裏を返せば、トレードチャンスがあると判断していることを意味する。念頭に入れておきたいところである。

Next: 米著名投資家ジョン・ポールソン氏は、外部顧客から預かった資金の運用を――



ポールソン氏はギブアップ

米著名投資家ジョン・ポールソン氏は、外部顧客から預かった資金の運用を停止し、ヘッジファンド会社のポールソン&カンパニーを私的な事業形態であるファミリーオフィスに転換すると発表した。

ポールソン氏は世界金融危機の前、過熱した住宅市場への逆張りで巨万の富を稼ぎ、一躍業界のスターとなった。まさにリーマン・ショックのときに一世を風靡した人物である。

しかし、最近では運用資産が縮小し、著名な従業員が退社するなど、業績も一本調子ではなかったようである。そのため、ファミリーオフィスへの転換は以前から予想されていた。

ポールソン氏は書簡で、外部投資家の資金は全額返金するとしたが、金額は明らかにしていない。また、市場での活動は続けるとしている。今年初めの時点で、ポールソン&カンパニーの運用資産は107億ドル。規制当局への届け出書類によると、ファンドの多くはポールソン氏自身が100%保有しており、すでに外部顧客の多くが離れていたことがうかがえる。

これまでにもカール・アイカーン氏、ジョージ・ソロス氏、スタンリー・ドラッケンミラー氏など、著名投資家の多くが外部投資家の資金を返還し、顧客に対する業績報告の重圧から逃れている。

ポールソン氏については、サブプライムローンの破綻に賭ける戦略で莫大な収益を上げたか、それまでは鳴かず飛ばずのヘッジファンドマネージャーだった。しかし、CDSの購入に賭け、それを数年間買い続けて耐えた。その結果、サブプライムローンが破綻し、なんとか収益を上げたのだが、それが想定以上の利益になったことで一躍有名になったのである。

いわゆる「一発屋」である。しかし、その収益の額が莫大だったため、その後のさえない成績でもまったく問題なくやっていけたわけである。

リーマン・ショック後は金に投資するファンドや、ファンドの通貨をドル建てではなく「金建て」で設定するなど、ユニークなファンドを立てていた。

また、その際にはUBSの著名金アナリストのジョン・リード氏をロンドンからスカウトするなど、相当力を入れていた。ちなみに、リード氏とは彼が移籍する前に彼のロンドンのオフィスで一度ミーティングを持ったことがある。190センチもある大柄な人物だった。いまどうしているのだろうか。

いずれにしても、著名なヘッジファンドマネージャーたちは、面倒な顧客との関係や運用方針の開示、また金融当局への報告など、煩わしい手続きから逃れたいと考え始めている。

高齢化すれば、さらにファミリーオフィスに転換しようするヘッジファンドは増えるだろう。こうなると、本物のヘッジファンドはどんどんいなくなっていくだろう。

もっとも、彼らのようなダイナミックなポジションを取るマネージャーも徐々に少なくなっている。また、投資家のニーズも変わってきている。時代の変化なのだろう。

ヘッジファンドは苦境

ヘッジファンド・リサーチ(HFR)が6月30日に発表したところによると、20年1〜3月期の世界のヘッジファンド清算件数が304件と、15年10-12月期の305件以来の高水準となった。19年10-12月期の198件からは50%の急増である。

新型コロナウイルスの影響で大きな損失が生じ、投資家が歴代4位となる計330億ドルもの資金を引き揚げたことが背景にある。

ファンドマネジャーは2月下旬から3月にかけての市場の変動に直面した。当時の投資家は、新型コロナの死者数や経済活動の停止、失業率の上昇を懸念し、一気に資金を引き揚げたようである。

一方、20年1-3月期のヘッジファンド新設件数は84件にとどまり、金融危機の08年10-12月期の56件以来の低水準だった。19年10-12月期は89件だった。

市場環境が良くないときにはどうしても新設件数は少なくなる。この数値は遅行指標であり、あくまで参考程度にしておきたいが、市場環境は良くないことは確認できるだろう。

Next: 米国株は引き続き堅調である。第2四半期は素晴らしい上昇となった。多く――



米国株の考え方

米国株は引き続き堅調である。第2四半期は素晴らしい上昇となった。多くの投資家が流入し、株価を押し上げたようである。新型コロナウイルスの給付金で取引を始めた若者がいるなどと解説されるが、それはともかく、株価が上昇しているという事実をまずは理解しておく必要がある。

長期ポートフォリオ戦略のポジションは、米国株が上昇すれば、何もしなくても勝手にリターンが増えていく。この積立型のポートフォリオと短期トレード戦略を組み合わせることで、現金を徐々に資産に変えていく作業を淡々と繰り返すわけである。大きく上げても、大きく下げても収益機会があるこの戦略の考え方が、まさに「オールウェザー(全天候)型」の運用スタイルである。これを習得すれば、あとは市場の動きに身を任せるだけである。

さて、米国株は上昇しているものの、上値が重く、高値警戒感を指摘する声が聞かれる。新型コロナへの警戒が根強く、完全には強気にはなれない状況である。とはいえ、株価は上昇しており、この矛盾に投資家は悩まされているといえる。この日もナスダック指数が史上最高値を更新した。FANG指数も上昇しており、これらのハイテク株を買わないと株式ではリターンが出づらくなっていることは事実である。

米ウィルシャー5000のリターンは、いわゆる「Big5」(アマゾン、アルファベット、フェイスブック、マイクロソフト、ネットフリックス)を除くと、2018年からほとんど変わっていないとの指摘がある。これが米国株の現実であることを認識したうえで、投資判断をしなければならないといえる。

これらの銘柄群には実は割高感はないというのが市場の評価である。したがって、個別では買えるといえる。しかし、心配なのは、市場の時価総額に占めるシェアがあまりに高くなっていることである。それだけが心配事である。しかし、個別企業の実力を考えれば、それを気にしていると何もできない。確かに極端かもしれないが、市場が崩れるまではこれらの銘柄を中心に見ていくべきであろう。

ただし、ナスダック100ミニ先物における投機筋のネットポジションが、過去の最高水準である4万枚に達している。警戒が必要な状況にあることは念頭に置いておくべきであろう。

一方、米雇用統計は数値こそポジティブに見えるが、それは大きく落ち込んだ後の回復が大きいからであり、勘違いしないことが肝要である。また、失業率は底打ちが株価の底打ちから9カ月遅れで確認できる。完全なる「遅行指標」であり、株式投資の判断には全く使えない。多くの経済指標はそうである。

過去を振り返るには経済データが重要だが、将来を見て投資判断をするには不要とも言える。そこまで極端に考える必要もないのだろうが、実態はそうであることは理解しておくべきである。その意味では、いわゆるエコノミストの発言には要注意である。彼らの思考は将来を見ておらず、過去を振り返る癖がついている。そのような発想の人間の見通しは常に市場の動きに遅れることになる。

新型コロナウイルスの問題はいずれ大きくなるだろう。ワクチン開発に期待がかかるが、専門家から見れば1年以内に出来上がることはまずないようである。期待はしたいが、現実を見ればそれは不可能であることを認識しておくべきである。事実、世界では感染者巣が拡大している。この状況で楽観的になることはできない。

経済活動を止めることができないことは、各首長が最も頭を悩ませている部分だろうが、経済活動が完全に戻ることはもはやないだろう。無論、ほとんどの企業の業績も戻らないだろう。この点を株式市場がいつ織り込むかを見ていくことになろう。

短期的にはFANGに投資するしかない

短期トレード戦略では、ナスダック指数やナスダック100、あるいはFANG指数などをロングするしかない。ナスダック指数は過去最高値を更新しており、トレンドを重視する短期トレード戦略では、まずロングするというのが私の流儀である。下げれば手仕舞うだけである。まずはロングにして様子を見る。これが重要である。上げているものを買うことで、収益が得られる。これを意固地になって空売りするからおかしなことになる。

相場の動きを批判すれば、それは自分に返ってくる。相場は自分の思う通りにはならない。自分が市場の変化に合わせるのである。

Next: 機関投資家やファンドマネージャーは株式から資金を流出させている――



市場の後付けの解説は不要

機関投資家やファンドマネージャーは株式から資金を流出させている。

買っているのは、先物のショート筋と一部の個人投資家であろうか。先週末には久しぶりの弱気サインが点灯し、これで下げ基調に入るかと思われたが、そう簡単には下げさせないということであろう。

このように、いろいろ考えても、市場はその通りにはならない。市場の動きに対応し、間違っていればやり直す。その作業を淡々と繰り返すだけである。

この作業を繰り返す中で、トレンドが出てくれば、それに乗り続ければよい。そうすれば、年に数回訪れるトレンド相場で収益を十分に確保することができるだろう。

ただし、収益を上げるには条件がある。それは、作業を繰り返すことをさぼらないことである。また、自身で勝手な判断をしないことである。自分の判断を市場が受け入れてくれることはほとんどないだろう。

そうであれば、自分が市場に合わせるしかない。相場では、理論が正しい者が生き残るのではなく、市場に順応に対応できる者が生き残り、収益を上げられるのである。頭で理解していても、身体を順応させなければ意味がない。

米中古住宅販売仮契約指数の内容が良かったからという理由で株価が戻したなどの解説がされているが、それはあくまで「株価が上げた材料を探した結果」であり、市場参加者が実際に何を考えて買い戻したのかがわからなければ、材料で判断する意味がない。

つまり、材料で株価予想や投資判断することはまったく意味がないということである。より明確に言えば、「再現性がない」ということである。

また、材料という意味では、この日の債券利回りの低下は懸念材料になるべきであろう。しかし、市場はこれをあまり材料視していない。FRBが社債の直接買い入れを始めたことが利回り低下の背景にあるのだろうが、それを好材料として扱っているようである。

この判断も難しいところであり、いかに市場の解説が後付けであるかがわかるだろう。

コロナウイルスの感染拡大は最大のリスクか

市場では「ワクチンが開発されれば、新型コロナウイルスへの不安は解消され、経済は戻り、株価も上昇する」という声が良く聞かれる。しかし、これも上記のパターンに当てはまる。いまの市場関係者のほとんどが、このようなコメントをしている。ワクチンが開発されれば、すべて解決するとみているわけである。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で3月のような株安を「あらかじめ」予想した市場関係者はほとんどない。下げ始めてから弱気な見方を示した向きはいたが、あのような下げを「あらかじめ」予測できた向きを私は知らない。

つまり、将来予測を的確に行うことや、材料で相場の方向性を判断することはほとんど不可能であるということである。

ところで、相場に対しても心配だが、人命という点でも新型コロナウイルスの感染者数が累計で1,000万人を超えたという報道は衝撃的である。米国に次いで多いのがブラジル、ロシア、インドの新興3カ国である。これら3国に共通するのは、深刻なコロナ禍に見舞われる中、政府が感染拡大抑止よりも経済活動再開を重視する姿勢を示している点である。

1日当たりの新たな感染者が4万人前後で推移するブラジルでは、3月下旬から州や市などが各国と同じように商業施設を閉鎖するなどの措置を取ったが、第1波がいつ終わるのか見通しすら立たない状況にある。

原因としては、濃厚接触が多い文化や保健衛生環境の悪さ、ほとんどの地域で外出が「自粛要請」にとどまったことなどが挙げられるが、ボルソナロ大統領があまりに適当な対応をしたことが感染者の増加の背景にある。

ボルソナロ氏は初期の段階で新型コロナを「ちょっとした風邪」と断言。「ロックダウンの先にあるのは、失業と飢餓、貧困だ」などと規制に異を唱え続けてきた。貧困層が多い開発途上国であることを考えれば一面では正論だが、知事や市長が一丸となっている封じ込めに冷や水を浴びせ続けたことで、最も重要な局面で国民の間に混乱と分裂を生んだことは事実である。規制開始から3カ月を経て、経済はボルソナロ氏の「予言」通り負荷に耐え切れなくなっており、州や自治体はなし崩し的に経済再開に動き始めている。

Next: ロシアで感染者数が多いのは「大量の検査を実施しているため」とされるが――



感染抑止か、経済か

ロシアで感染者数が多いのは「大量の検査を実施しているため」とされるが、ロシアで行われた検査は1,900万件に上る。プーチン大統領は23日の国民向けテレビ演説で「ロシアは検査数で世界の主要国をリードしている」と強調し、「大量の検査によって感染者を早期に発見できる」と強弁した。

しかし、新規感染者が増え続けているにもかかわらず、政権は5月12日に経済活動の制限を解除した。コロナ禍による経済の落ち込みで、プーチン氏の支持率が下落していることが背景にある。感染者が最も多い首都モスクワも今月9日に市民の外出制限を全面的に解除。プーチン氏の長期続投を可能にする憲法改正の全国投票が7月1日に行われることをにらんだものとみられるが、感染者が一層増加する恐れがある。

インドでは3月末から厳しい外出禁止措置を伴う全土封鎖を実施してきたが、4月下旬以降は段階的に解除。今月に入り経済活動を大幅に認めた結果、1日当たりの新規感染者数が2万人近い日が続いている。モディ首相は4月11日、それまでの「人命優先」から「人命も経済もどちらも大事だ」と方針を転換した。

全土封鎖実施で大量の失業者が生まれ、人口の6割近くを占めるとされる貧困層を中心に生活苦を訴える声が増えたことが影響したようである。人口2,800万人超の首都ニューデリーでは過去約2週間で感染者数は倍増し、累計で8万人を超えた。デリー首都圏政府は、7月末までに最大55万人が感染する可能性があるとみている。

このように、米国のみならず、上記の主要新興国も新型コロナウイルスと経済の両立に苦しんでいる。その結果、経済を優先させたことで感染者が増加している。

新興国が倒れれば、世界的な混乱は不可避になるだろう。一方で、中国での感染拡大がいまのところ止まっていると政府はしているが、そうであれば、ますます中国の台頭を許すことになる。まさに「中国覇権への移行」が加速する勢いである。

やはり世界は2020年を境に歴史的な転換を迎えているようである。詳しくは新刊『金を買え、米国株バブル経済終わりの始まり』(著:江守哲/刊:プレジデント社)を読んでいただければと思う。

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マーケット・ヴューポイント〜「米国株高はいつまで続くか」

株式市場〜米国株は堅調さを維持、日本株はレンジでの推移

為替市場〜ドル円の膠着状態は変わらず

コモディティ市場〜金は続伸、原油は高値圏での推移

今週の「ポジショントーク」〜米国株と金を買う

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年7月7日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

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江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2020年7月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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