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8月暴落にご用心。米国ばら撒き終了リスクと中国官製株式ブームが日本を飲み込む=藤井まり子

米国経済は、コロナショック前の好景気な水準からはほど遠いものの、V字回復を果たしつつあります。ところが、金融相場では「良い情報は悪い情報」です。米国経済がV字回復を遂げれば遂げるほど、共和党内部の「財政タカ派」からは、「景気回復がここまで順調ならば、『追加のヘリマネ:1.3兆ドル』は必要ないのでは?」といった疑問が生まれてきてしまいました。これは、とても由々しい事態です。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2020年7月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

中国、再び「官製の株式ブーム」へ

7月6日あたりから、中国株式、上海株式市場において、唐突に「株式ブーム」が始まったように見えます。

かねてより、中国北京政府は、人心の掌握手段として「バブル」を巧みに利用してきました。中国北京政府は、「不動産バブル」か「株式バブル」のどちらかの部門で常に「バブル」を煽って、人民をマネーゲームに熱中させることで、北京政府への不満をガス抜きしてきたのです。

今は、コロナ危機で中国不動産部門では価格上昇が見込めなくなったので、今の北京政府は、コロナ危機後は株式部門で「官製バブル」を再び造ろうと確信犯的に企んでいるようなのです。

もとより、中国の株式ブームは、2000年代のBRICSブームの時、2010年前後の新興国株式ブームの時、2014年から2015年のグローバル規模での過剰流動性相場の時と、ほぼ4~5年おきに
巻き起きています。

そろそろ再び、中国で4度目の株式ブームが巻き起きても何ら不思議ではありません。

株ブーム再開の「号砲」を高らかに打ち鳴らした北京政府

7月6日、国営の新華社系の「中国証券報」は、なんとなんと、「中国では資本市場改革が進み、国内外から投資マネーが流入してきている。中国経済はコロナ危機から回復しつつある。中国株式市場では『強気相場』が整いつつある」と報じ、官製の株式ブームの再開の「号砲」を高らかに打ち鳴らしました。

この「号砲」を受けて、上海株式市場は、7月に入るや否や、永らく抵抗ラインとなっていた3,000ポイントを軽々と飛び超え、昨年2019年4月の高値水準である3,288ポイントも軽々とク
リア。今では、2018年1月の高値水準3,587ポイントに迫る勢いです。

上海総合指数 週足(SBI証券提供)

もちろん、中国株式市場の参加者のおよそ9割は個人投資家が占めています。ですから、北京政府が「買いの号砲」さえ打ち鳴らしたならば、中国株式市場は簡単に過熱して危険なほど暴走する傾向が強いです。

そこで、先週金曜日の7月10日には、あまりにも急速の過熱する株式市場をクールダウンさせる目的で、政府筋はあえて「ネガティブ情報」をリークします。

「一部の政府系の基金が株式を売りに出た」といったニュースを流して、市場をクールダウンさせたのです。

今週明けの上海株式市場は足踏み状態ですが、遅かれ早かれ、「加熱→暴走→政府によるクールダウン→再び加熱」を繰り返しながら、再び「上がるから買い、買うから上がる」の「個人による株式ブーム」を形成していくことでしょう。

Next: 上海株式市場は、2014年の半ばまでは2,000ポイントちょっとを行ったり来――



5年前の「中国株ブーム」再来か?

上海株式市場は、2014年の半ばまでは2,000ポイントちょっとを行ったり来たりしていましたが、そこから駆け上がり始めて、わずか1年後の2015年6月には2.5倍の5,178ポイントを記録したことは記憶に新しいです(その後、2015年夏場にチャイナショックが走って弾けていきました)。

昨今の中国株式市場の熱気は、なにやら5年前の「中国株式ブーム」を彷彿とさせるような熱気です。

今の中国経済では、IT関連株が十分に実力を蓄えてきています。アメリカの投資家も、アメリカ株があまりにも高値圏に入ってきているので、新興国株式市場に目を向け始めています。

もしかしたらひょっとすると、5年前のような「株式ブーム」が再来するかもしれません。

しかも、中国北京政府は、7月第2週に入ってから、「株高・人民元高」政策へと打って出てきました。

とうとう、恐る恐るながらも、「ドル安・人民元高」が始まりだしたのかもしれません。いよいよ、恐る恐るながらも、穏やかな「ドル安」時代が始まったのかもしれません。

この「極めて穏やかなドル安」は、全世界、特に中国と競争関係にある、中国以外の新興国群が待ちわびてきたものです。

今後は、遅かれ早かれ、「グローバル規模での、揺るぎない景気回復の道しるべ」を先回りするかのように、「ドル安・コモディティー高」「ドル安・新興国株式高」が、今度こそ定着するかもしれません。

米国「追加のヘリマネ」法案は7月末日までに成立できるのか?

改めて「おさらい」すると、アメリカでは3月末日に総額2.2兆ドルの「新型コロナウイルスのパンデミックに対応する経済対策法(通称:CARES法)」が成立しました。いわゆる「巨大ヘリマネのバラマキ」です。

その内容は、個人向けだけに限定して解説すると、下記の通り。

・年収が7万5000ドル(約810万円)以下の個人および2人合わせて年収15万ドル(約1620万円)以下のカップルには、1人当たり1,200ドル(約13万円)の給付金(ヘリマネ)をばら撒く

・さらに、子ども1人につき500ドル(約5万4,000円)の給付金をばら撒く

これで、アメリカ人のおよそ90%は、給付金をゲットできることになりました。加えて、「失業保険制度も大きく強化」しています。

「従来型の失業給付金」については「給付期間を13週間へと延長」することとし、さらに「従来型の失業給付金」に上乗せする形で、「追加の上乗せ失業給付金」が1週間ごとに600ドル(約6万5,000円)、7月末日までばら撒かれます。

ただし、この「追加の給付金」は、目下のところ、7月末日までの「期間限定」。内外の株式市場は、この「追加の失業給付金」が8月以降もばらまかれるか否かに、とても注目しています。

さらにさらに、このCARES法では、フリーランサーや、解雇までは言い渡されないものの一時帰休を言い渡された従業員や、ギグエコノミーの労働者が、初めて「失業保険の給付対象」に追加されたことは、記憶に新しいです。

以上の「個人に向けてのヘリマネのばら撒き」の合計は、およそ2,500億ドル(約27兆円)と推定されています。

これらの給付金(ヘリマネ)の一部が、新しい個人トレーダーを続々と誕生させて、アメリカの株価を押し上げてきたわけです。

一方、「給付金がこれほど高いと、労働者はなかなか職場に戻って来ないのではないのか?」と心配されましたが、どうやら、その心配は杞憂に終わったようです。

6月および7月第一週のアメリカの雇用統計では、それぞれ5月には250万人が、6月にはなんとなんと450万人の人々が新たに職場復帰を果たしました!

アメリカ経済、ロックダウンが解除されてから、ものすごい回復力です。

これで、6月のアメリカの失業率は、まだまだ高水準ながらも11%まで回復しました(それでも、コロナ前の4%前後の低失業率と比べると、まだまだ高い水準です)。

大不況期のヘリコプターマネーは、とても効果が高いのです。

かくして、アメリカ経済は、「コロナショック前の好景気な水準」からはまだほど遠いものの、V字回復を果たしつつあります。

Next: ところが、金融相場では「良い情報は悪い情報」です。アメリカ経済が――



やっぱり「8月の波乱」にはご用心

ところが、金融相場では「良い情報は悪い情報」です。

アメリカ経済がV字回復を遂げれば遂げるほど、アメリカ共和党内部の「財政タカ派」からは、「景気回復がここまで順調ならば、『追加のヘリマネ:1.3兆ドル』は必要ないのでは?」といった疑問が生まれてきてしまいました。

これは、とても由々しい事態です。

トランプ政権およびムニューシン財務省は、かねてより、7月末日に期限の切れる「追加のさらなる失業給付金」に代わるものとして、「およそ1.3兆ドルのヘリマネ」を議会で通過させたいとの「強い思い」があります(ちなみに、民主党案はもっと巨大でおよそ3.0兆ドルの追加の財政刺激策を主張しています)。

アメリカの株式市場は、7月末日に期限が訪れる「個人向けヘリマネ」に代わる「1.3兆ドルの追加のヘリマネ」法案が、7月末日までに、あるいは8月第1週までに成立することを見越して、それを織り込んで上昇してきたところがあります。

この「追加の1.3兆ドルのヘリマネ」法案が、共和党内部の一部の財政タカ派の反対によって、8月第1週までに成立しなかったならば、マーケットにとっては「大きなネガティブ材料」になることでしょう。

アメリカ共和党内部の財政タカ派は、ちょっと「アンポンタンちゃん」なんです。彼らは、2008年のリーマンショックの真っ最中にあっても、「財政刺激」法案に大反対。この法案を議会で通過させませんでした。それで、あの「2008年秋の大暴落」が起きたわけです……。

大暴落が起きてからやっと、財政タカ派たちは「刺激策は必要だったんだ!」と反省するのでした……。その後、同法案は議会を通過します。

時は流れ流れて2020年夏。もしかするとひょっとすると、「追加の1.3兆ドルのヘリマネ」法案も、1回は否決されてしまうかもしれません。性懲りも無く、株式市場が大幅下落しないと、議会は通過させないかもしれません。

「8月の波乱」は、やっぱりいまだに「ご用心」です。

なにはともあれ、年末(?)に向けて、あるいは本格的な夏場に向けて(?)、内外の株式市場は史上最高値を試していくことでしょう。

すなわち、S&P500ならば3,400ポイント、ダウならば2万9,500ドル、日経平均ならば、2万4,100円あたりを再び試していくこと見ています。

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【要注意】資産形成および投資は、必ず「自己責任」でお願いします。この記事は藤井まり子の個人的見解を述べたもので、当メルマガ及び記事を読むことで何らかの経済的及び精神的被害を被ったとしても、当方は一切責任を負いません。

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2020年7月配信分
  • 今、上海株式市場が熱いかもしれない~やっっぱり「8月の波乱」にはご用心(7/14)
  • 引き続き、当面マーケットは一進一退へ~一時的に「15%~20%の大幅下落」の可能性には要注意(7/10)
  • 想定以上に強いアメリカおよび世界経済のV字回復~「8月の波乱」は回避可能か?(7/7)
  • 当面マーケットは「一進一退」へ:秋の「15%~20%の大幅下落」いは要警戒!(7/3)

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image by:Evan El-Amin | plavevski / Shutterstock.com

藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2020年7月14日号)より一部抜粋、再構成
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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