手っ取り早く稼げる(ように見える)迷惑系ユーチューバー。度を越して逮捕された有名配信者もいますが、うまくやればラクして大金を得られるという考え方もあります。彼らはアホなのか天才なのか。今回はそのボーダーラインを見極めます。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
※有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』好評配信中!興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
お金を求めて過激化する「迷惑系YouTuber」とは?
「へずまりゅう」というYouTuberが、スーパーで会計前の刺身を食べたとして逮捕・起訴されたことを受け、「迷惑系YouTuber」や「不謹慎系YouTuber(話題となっている事件や事故の関係者に成りすましたり揶揄したりする)」という言葉が注目を集めています。
そして、このような質問をいただきました。「迷惑系YouTuberは本当にアホなのか、天才なのか」「逮捕される、されないのラインはどこにあるのか」「稼ぎたいけど配信するものが何もない凡人として、迷惑系YouTuberという選択はアリかナシか」
私は今回、初めてそういう分類を知りましたが、「とにかく目立ちたい」「仲間からウケたい」「注目を集めたい」「再生回数を伸ばしてお金を稼ぎたい」「そのためには何でもアリ」という、若者特有の承認欲求の強さゆえにブレーキが利かなくなるのでしょう。
そして、こうした動画の視聴者もやはり若者が多いようです。観る側の心理としても、「自分はできないけど、自分の代わりに無茶苦茶やってくれてスカッとする」「やっちゃいけないことへの怖いもの見たさ」という側面がある様子。こうしたYouTuberに熱中し、熱狂的なファンの獲得につながっているようです。
そして、反響があればさらに配信者もエスカレート。結果、「へずまりゅう」こと原田将大容疑者(29歳)は違法なことに手を出して逮捕され、18日に起訴となりました。
(条件付きで)迷惑系もアリ?
確かに、発信すべきコンテンツが何もない人(あるいは工夫が苦手な人)が急速に注目を集めるなら、迷惑系・不謹慎系は「手っ取り早い」手段のような気もします。
それはアリかナシかと言われれば、「条件付きで初期のみアリ」かなというのが私の印象です。
むろん本来は「役に立つ」「面白い」「感動する」「癒される」「共感する」といった、教養やエンターテインメントの要素が強い動画が支持されます。
しかし一方で、たとえば「ドッキリ」や、TBSテレビ「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」などのイタズラみたいな、一見すると迷惑系とも思えるコンテンツも成り立ちます。ただし、これらは「クスっと笑える」要素を包含しており、観ている方も引っかかった方もほのぼのと笑えるものです。
つまり「仕掛けるイタズラの内容がユーモラス」「引っかかった人がネタばらし後も許せるレベル」であるかどうか。また、「動画配信を許可してもいいよと思えるような、カワイイ笑いを作り出せる」かどうか。そういう線引き・判断ができることが、迷惑系を配信して良い条件となるでしょう。
その意味では、かなり高度な構成力が求められると思います。
Next: 迷惑系の動画制作で「迷惑をかけずキレイに儲ける」4つの条件
迷惑系で「迷惑をかけない」技術が必要
そこで「条件付き」というわけですが、それは以下ではないかと考えます。
<条件その1:法律は遵守する>
冒頭のへずまりゅうは愛知県内のスーパーマーケット店内で会計前の魚の切り身を食べたことから窃盗容疑で逮捕されました。
法治国家の日本で法を犯すことをすれば即アウトで何をやっても無意味ですから、法律をよく勉強し、法の範囲内でやることです。
「ちょっと雨宿り」で他人の敷地に入っても不法侵入を問われることもあるし、昨今ニュースになっている「コロナで帰省してくるな」という張り紙も、不法行為や軽犯罪に触れますから、損賠賠償請求や処罰の対象になる可能性あります。
実際、過去にも、じゃがりこにつまようじを入れたり、万引きする動画を投稿していた19歳の少年が偽計業務妨害罪で逮捕。
ヤマト運輸の営業所でチェーンソーを使って従業員を脅す動画を投稿した男が、暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕。
覚せい剤に見せかけた白い粉末入りのビニール袋を交番前に落として警察官に追跡させる動画を投稿した男が、やはり偽計業務妨害罪で逮捕。
最近も、渋谷のスクランブル交差点にベッドを置いて寝る動画を投稿した男が、道路交通法違反で罰金が課されています。
アカウントが凍結されるだけならともかく、家族親族や職場・学校にも迷惑をかけますから、法に触れる行為はそもそも話になりません。
<条件その2:黒歴史にならないよう、最低限の公序良俗を守る>
ヘタに反響があると感覚がマヒしてきて、「目立てば何をやってもいい」という壮大なカン違いを起こしてしまいます。
以前も「バカッター事件」が世間を騒がせたように、マナーやモラルを大きく逸脱した行為を投稿すれば、住所氏名に所属先を特定されて顔写真も晒され、進学や就職にも悪影響が出てしまいます。また、前述と同様に関係者に迷惑をかけることになるので、これも避けなければなりません。
これはもう感性や良識といった問題です。ネット上に永遠に残る「黒歴史」としないためにも、「ウケるかどうか」の前に、「一生残っても胸を張れるかどうか」を納得したうえで投稿したいものです。
<条件その3:誰かに絡む場合は了解を得て、相手にもメリットを提供する>
へずまりゅうだけでなく、有名人を攻撃して注目を集めようとする人もいるようです。
しかし、相手の迷惑を顧みず自分の売名のためだけにやれば、やはり名誉棄損やら肖像権侵害、著作権侵害などで訴えられるリスクがあります。
コラボが成功するには、たとえば相手の動画やブログ・著書などの宣伝もしてあげるなど、コラボ相手にもメリットが出るよう配慮することです。
でなければ、悪いウワサが広がり、誰も相手にしてくれなくなるリスクがあります。
<条件その4:いのちを大事に、危険行為は避ける>
身体を張った動画は、コンテンツがない人にとっては手っ取り早い方法です。その中でも、特に危険な行為は確かに注目を集めやすいですが、死んでしまったら終わりです。
過去にも、ビルから落下したり山で滑落したりして命を落としたYouTuberがいましたし、野生動物と格闘しようとして殺害されたとか、ナメクジを食べたら寄生虫に脳が侵されて何年も植物状態になったのちに死亡といった話もありました。
しかし、これでは「何のために有名になりたかったのか?」ということになります。命と健康があってこその表現活動だということを、肝に銘じたいものです。
Next: 迷惑系は初期限定一発ネタ。YouTubeでは長期目線でこう稼げ
迷惑系をやりたいなら、スタートダッシュに使え
意外なことやサプライズ的な動画は、確かに何もない凡人が目立つには有効でしょう。
だから、上記の条件の範囲内であれば、突拍子もないことをやってみる価値はありますし、それを否定はしません。
たとえば今は普通になりましたが、かつての女性の大食いグルメチャンレンジなどがそうですね。ただし、最初は意外性があって注目を集めても、5年・10年とは継続できない可能性があります。
かんたんに注目を集められるものは、かんたんに誰かに真似されるようになるからです。
それに、共感や尊敬を得られければ、本質的な影響力を持ち得ないでしょう。だからある程度の視聴者を集めたら、オリジナルコンテンツの発信に舵を切る必要があると考えます。
お笑い芸人でも「一発屋」を抜け出し、司会業や俳優・コメンテーターなどに舵を切って生き延びるようなものです。
初期ハードルを超えたら、コンテンツをシフトする
ちなみにYouTubeで収益を得るには初期ハードルが設定されていて、そこそこ人気のあるコンテンツをラインナップしておく必要があります。
その条件は下記となっており、いきなりお金が生まれるわけではなく、それなりに再生されている実績が必要なのです。
・直近12ヶ月の総再生時間が4,000時間以上
・チャンネル登録者数が1,000人以上
ちなみに1点目の「4,000時間」というのはトータルの時間なので、1本あたりの再生時間が短くても、本数を増やしてトータルの再生時間を稼ぐことでもカバーできます。
※参考:YouTube パートナー プログラムの概要と利用資格 – YouTube ヘルプ
では、どれだけ稼げるのか?
YouTuberの報酬を推測する「チューバータウン」には日本のトップランキングが掲載されていて、1位の年収は3億1,482万円と推定されています
報酬の算出方法は公開されているわけではありませんが、一般のYouTuberは1再生あたり0.05~0.1円程度と言われていますから、月20万円稼ぐにも、200万~400万回くらいの再生回数が必要ということになります。
Next: 自分にウソをつかなければ、必ず突破口は見つかる
あの有名人と同じことができるか?
また、「ソーシャルブレイド」というSNSの影響力・収益力を測定(あくまで推定)するウェブサイトがあり、ここにYouTuberのURLを張り付ければ、どのくらい稼いでいるチャンネルなのかについても、ある程度推測することができます。
なので、有名人の動画を算出してみて、「これくらいなら自分でもできそうだ」と感じるか、「ここまでやらないといけないなら、ちょっと厳しいかも」と感じるか。それが判断の分かれ目になる人もいるでしょう。
そして、何がバズるか、何が拡散されるかは、誰にもわかりません。ですので、とにかく継続することが大切です。これは動画に限らず、ブログや他のネットメディアでも同じことですね。
なので、「儲かるかも」という打算では長続きせず、やはり自分が楽しいとか、やりがいや使命感が持てるテーマを選ぶ必要がありそうです。
同時に、上述の「迷惑系」で長続きできるのは、よほど特別な人しかいないだろうな、ということも想像ができます。
自分を曲げてまで動画を作る必要はない
最後に、どうでもいい私の話を(笑)。こんなにエラソーに自説をぶっておきながらなんですが、私はいまのところ、動画で名前を売ろうなどとは思っておらず、ほとんど興味はありません。
なぜかというと、自分とは関係のない人、自分に興味関心がない人に顔をさらすのは、不自由になるリスクがあると考えているからです。
たとえば私は寝ぐせのついたボサボサ頭に毛玉だらけのフリースを来て近所を歩いています。
赤信号でも車が通っていなければ渡ります。飲食店などでも接客や料理に問題があれば平気でクレームをつけます。
ベビーカー連れで電車に乗って見知らぬおっさんにベビーカーを蹴られたときも、「何するんだ!ふざけるな!」と大声で怒鳴ったことがあります。当然、電車内は凍り付きます。
しかし、そういうときに顔が知られていれば、「あ~、あの人~」と後ろ指を指されかねません。それは面倒くさい。
そのため、私は友人やお世話になった人から誘われて対談動画などに出ることはあっても、自分から配信することはありません。テレビ出演の依頼もすべて断っています。テレビに出れば著書が売れて講演の依頼も増えるかもしれませんが、私にとってはそれよりも自由の方が大切なのです。
それでも動画で勝負する場合のヒント
だから現在の主たる表現手段は、書籍やコラムといったテキストコンテンツ、講演や勉強会といったイベントです(ほかにもいろいろ仕事をしていますが、取引先は法人なので動画は関係ないのです)。むろん5G全盛の時代になれば、パケットの制約からも解放され、動画は強力なマーケティングツール・自己表現手段になるであろうことは間違いなさそうです。
特に今回のようなコロナ社会になれば、動画はより重要なメディアになりますから、私の周囲でもチャンネルを開設する起業家・経営者・自営業者・クリエイターがたくさんいます。
そして私自身、動画に参入せざるを得ない日が来るかもしれないと予想もしています。しかしそのときも、アニメーションや音声合成読み上げソフトを使い、自分は出ないようにしたいと思
っています。
<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>
※2020年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- 最初の1歩は情報発信から(8/17)
- コロナ時代のビジネスモデル(8/10)
- 富裕層とは何か?(8/3)
※有料メルマガ『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』好評配信中!興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,012円)。
- 抽象化思考の重要性(7/27)
- 宗教法人の買収を考えてみる(7/20)
- あきらめることは意味がある(7/13)
- 資本金は1円でいい理由(7/6)
- 草刈りはやはりやっかいでした(6/22)
- 香港動乱で考える(6/15)
- コロナで変わるキャリア戦略(6/8)
- 自分の仕事を仮想空間に持ち込めるか?(6/1)
- コロナでもほったらかしで稼ぐ方法とは?(5/25)
- 教育格差を乗り切るために(5/18)
- 起業塾なんて不要?(5/11)
- ピークエンドの法則で今を焦らない(5/4)
- アフターコロナ時代を見据えて人生戦略を見直す(4/27)
- マンガ始めました(4/20)
- 個人はコンテンツで勝負する(4/13)
- コロナで売上半減です(4/6)
- やはり投信積立は信頼できないが、今なら?(3/23)
- ついに強制ロスカットに遭いました!(3/16)
- 暴落相場は今か?待つべきか?(3/9)
- 意思を持てば世界の見え方は変わる(3/9)
- コロナで大暴落相場にチャンス?(3/3)
- イライラしない人になる!(3/2)
- イライラは人生の無駄遣い!(2/24)
- 家族や親戚に反対されたら・・・?(2/17)
- あきらめてもいいんじゃないか?(2/10)
- インフルエンザで倒れました。。(2/3)
- 読者のみなさまへ、バックナンバーのご案内(1/28)
- 「これだけは避けたい」という軸を持つ(1/27)
- 「場」を作れば何かが起こる(1/20)
- 誰でもお金になるネタを持っている(1/13)
- 2020年の計画(1/6)
- 【新年特別号】「汗水たらして働くほど貧乏になる」2020年代にお金を増やす5つの技術(1/1)
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年8月19日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門
[月額1,012円(税込) 毎月第1月曜日・第2月曜日・第3月曜日・第4月曜日]
フリー・キャピタリストとは、時代を洞察し、自分の労働力や居住地に依存しないマルチな収入源を作り、国家や企業のリスクからフリーとなった人です。どんな状況でも自分と家族を守れる、頭の使い方・考え方・具体的方法論を紹介。金融・経済情勢の読み方、恐慌・財政破綻からの回避方法。マネタイズ手段としての資産運用、パソコン1台で稼げるネットビジネス、コンテンツを生み出し稼ぐ方法。将来需要が高まるビジネススキルとその高め方。思考回路を変えるのに役立つ書籍や海外情勢など、激動の時代に必要な情報をお届けします。